婦人科学

婦人科学 · 32

骨盤痛

Pelvic pain

前提:正常
骨盤・会陰:神経骨盤・会陰:骨盤内臓
疾患
間質性膀胱炎骨盤うっ血症候群
症状
月経困難症骨盤痛膀胱痛
画像所見
ハンナ病変糸球体様出血
スコア
ESSIC分類間質性膀胱炎症状スコア

🧠 全体像:の初期対応では、まず、、、感染などの緊急疾患を除外する。その後、月経との関係と急性・慢性を手掛かりに、婦人科、消化管、尿路、筋骨格、を並行して評価する。

最初に確認する危険徴候

  • 失神、頻脈、低血圧、などの徴候
  • 、など
  • 突然の激烈な片側痛と悪心・嘔吐
  • 発熱、悪寒、敗血症徴候
  • 妊娠中または陽性の疼痛・出血
  • 、体重減少、骨盤腫瘤
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic pain'>骨盤痛</span>"] --> B["ABC・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodynamics'>循環動態</span>を評価"]
    B --> C{"妊娠可能性"}
    C -->|"あり"| D["尿/血清β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transvaginal ultrasound, TVUS'>経腟超音波</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serial'>経時的</span>β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span><br>不<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confirmed'>確定例</span>は腹腔鏡で確認"]
    C -->|"なし"| F["病歴・診察・尿検査"]
    E --> G{"ショック・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal signs'>腹膜刺激</span>・捻転疑い"}
    F --> G
    G -->|"あり"| H["輸液・採血・緊急婦人科/外科評価"]
    G -->|"なし"| I["婦人科・消化管・尿路・筋骨格を鑑別"]

⚠️ だけではを除外できない。 診断はとβ-の組み合わせが基本で、いずれでも判定できない症例では腹腔鏡が診断手段になる。未破裂で血行動態が安定していればメトトレキサート、破裂例や薬物治療不成功例では卵管摘出術・を行う1。

原因の整理

主な疾患 手掛かり
周期性 原発性、、 月経前後に増悪、・
中の一過性 周期中央、片側、短時間で改善
突然・片側 、卵巣嚢胞破裂 悪心・嘔吐、、
突然・妊娠関連 、流産 無月経、出血、β-陽性、ショック
亜急性・感染性 PID、TOA、虫垂炎、腎盂腎炎 発熱、、圧痛、炎症反応
慢性 内膜症、癒着、、、 6か月以上2、多臓器症状、
腫瘍性 子宮・卵巣・消化管・尿路腫瘍 、腫瘤、増加、体重減少

診断の進め方

  • 、妊娠可能性、との関係、出血・、排尿・排便症状、、を確認する。
  • 虐待・歴やは、患者の安全と同意に配慮して尋ねる。
  • 腹部診察、腎、、を行う。妊娠の可能性がある全例でβ-を測定する。
  • 尿検査、血算、炎症反応、性感染症を臨床像に応じて追加する。
  • は婦人科病変の第一選択画像である。捻転の血流が保たれていても捻転を除外できない。

⭐ は臨床的に疑えば緊急腹腔鏡の対象であり、画像確定を待って卵巣救済を遅らせない。は5番目に多い婦人科救急で、術前に捻転を確定できる・画像所見は存在せず、Doppler血流だけで判断してはならない。腹腔鏡の約50%では捻転が見つからないが、多くは代わりの婦人科病変が同定されて治療される。壊死様の外観でも切除せず捻転解除と付属器温存を原則とする3。

💡 小児・思春期の捻転は「腫瘤があるはず」という思い込みが通じない。 成人と異なり、小児・思春期例では最大46%が腫瘤や嚢胞を伴わない正常な卵巣に生じる。この年齢層で捻転に伴う卵巣病変として多いのはとで、悪性はまれである3。

治療

急性骨盤痛

  • 循環不安定なら太い、採血・、輸液・輸血、緊急手術を整える。
  • 疼痛評価と並行して、、必要時オピオイドを用いる。鎮痛は診断を妨げる理由で遅らせない。
  • 原因に応じ、、捻転、PID、、虫垂炎などを治療する。

慢性骨盤痛

💡 の多くは「骨盤の病気」ではない。 女性の推定26%が経験し、米国では腹腔鏡の40%・子宮摘出の12%がこの症状を理由に行われるが、80%では原因がではない。の疼痛・機能障害は50〜90%に認められる4。単一臓器に絞った検索を避け、婦人科・消化管・筋骨格・尿路・神経・血管を横断する統別の評価を行う2。

  • 内膜症・へのホルモン治療、膀胱痛・の臓器別治療、を組み合わせる。
  • 、睡眠、気分、性機能を評価し、必要に応じ・疼痛専門診療を加える。
  • 薬物は単独の解決策ではなく、原因疾患の治療・疼痛教育・・を組み合わせた管理の一部として、疑われる疼痛機序に合わせて選ぶ52。薬を全般へ一律に用いる根拠は乏しく、適応を選ぶ。長期オピオイドは一般に避ける。
  • 診断目的だけのや前神経切断・子宮神経切断をルーチンに行わない。
  • は、腸閉塞を伴わない慢性の腹部・に対する疼痛治療としては有効性が示されていない。慢性腹痛100例の盲検無作為化試験では、群とのみの群で12か月後の変化に差がなかった(差3ポイント、p=0.53、95%CI -7〜13)6。

まとめ

  • では、、・捻転徴候を最初に評価する。
  • 、発症速度、片側性、出血・発熱・尿路消化管症状が鑑別の軸になる。
  • は単一臓器疾患に限定せず、骨盤底・・心理社会面を含む多職種治療を行う。原因の80%はではなく、薬物は疼痛教育・・と組み合わせて機序に応じて選ぶ補助的手段である。
  • は単独では除外できず、β-との併用、必要なら腹腔鏡で詰める。も術前に確定できる所見がないため、疑った時点で腹腔鏡へ進む。

出典

  1. 1.Tubal Ectopic Pregnancy: From Diagnosis to Treatment(Biomedicines・2025)卵管妊娠の診断は経腟超音波と経時的β-hCG測定の組み合わせが基本で、結果が不確定な症例では腹腔鏡が診断手段になる。治療は卵管の破裂の有無と血行動態で決まり、未破裂・安定例ではメトトレキサートが第一選択、破裂例や薬物治療不成功例では卵管摘出術・卵管切開術を行う閲覧 2026-08-21
  2. 2.Evaluation and Treatment of Chronic Pelvic Pain(Obstetrics and Gynecology・2026)慢性骨盤痛は世界の女性の15〜26%に生じ、骨盤の臓器・構造に由来すると感じられる通常6か月以上続く痛みと定義される。単一疾患ではなく多くは複数の要因が併存するため、婦人科・消化管・筋骨格・尿路・神経・血管を横断する臓器系統別の診断を行い、疑われる疼痛機序に合わせて行動療法・薬物・手術を組み合わせる閲覧 2026-08-21
  3. 3.Adnexal Torsion in Adolescents: ACOG Committee Opinion No. 783(American College of Obstetricians and Gynecologists・2019)付属器捻転は5番目に多い婦人科救急で、術前に確定できる臨床所見・画像所見は存在せずDoppler血流だけで判断してはならない。捻転は外科的診断であり、腹腔鏡の約50%では捻転が見つからないが多くは代替病変が同定される。小児・思春期例では最大46%が腫瘤や嚢胞を伴わない卵巣に生じ、外観にかかわらず捻転解除と付属器温存を行う閲覧 2026-08-21
  4. 4.Chronic Pelvic Pain in Women: A Review(JAMA・2021)慢性骨盤痛は女性の推定26%に生じ、米国では腹腔鏡の40%・子宮摘出の12%の理由になるが、80%では原因が婦人科疾患ではない。筋骨格系の疼痛・機能障害を50〜90%に認め、単一臓器に絞った検索は避けて生物心理社会的評価と多職種治療を行う閲覧 2026-08-21
  5. 5.Guideline No. 445: Management of Chronic Pelvic Pain(Society of Obstetricians and Gynaecologists of Canada・2024)慢性骨盤痛の管理は中枢感作・侵害可塑性疼痛を含む多因子を考慮し、疼痛教育・理学療法・心理療法・薬物治療を組み合わせた学際的な生物心理社会的アプローチを取る閲覧 2026-08-21
  6. 6.Laparoscopic adhesiolysis in patients with chronic abdominal pain: a blinded randomised controlled multi-centre trial(The Lancet・2003)慢性腹痛患者100例の無作為化試験で、腹腔鏡下癒着剥離群と診断的腹腔鏡のみの群は12か月後のVAS変化に差がなく(差3ポイント、p=0.53、95%CI -7〜13)、癒着剥離は慢性腹痛の治療として推奨できない閲覧 2026-08-21