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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 症候群

間質性膀胱炎

Interstitial cystitis / bladder pain syndrome

別名
膀胱痛症候群interstitial cystitis/bladder pain syndromeIC/BPSハンナ型間質性膀胱炎
臓器系
腎・泌尿器生殖・産婦人科
科目
Gynecology
トピック
婦人科 32:骨盤痛
鑑別疾患
前立腺炎尿路感染症
関連疾患
過敏性腸症候群線維筋痛症
症状
慢性骨盤痛頻尿尿意切迫感恥骨上部痛性交痛

🧠 全体像は、膀胱にたまる尿の量が増えるほど痛み、排尿すると楽になるという期優位の膀胱痛と、感染など他の原因がすべて除外されることの2点で成立するである。診断名の核心は所見にある——Hunner病変という特有の炎症性粘膜病変があるかどうかで、病態も治療もまったく別の疾患のように分かれる。Hunner病変がある型は膀胱に限局した炎症性疾患として・切除で直接治療できるのに対し、無い型はと重なるを伴う慢性疼痛症候群に近く、治療は多面的な症状マネジメントが中心になる。このを知らずに「」を単一疾患として扱うと、治療の組み立てを誤る。

病態・分類:Hunner型と非Hunner型

IC/BPSは単一の病因を持つ疾患ではなく、症状・所見で緩やかに定義された症候群である1。中でもHunner病変の有無が最も重要なになる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine storage (bladder filling)'>蓄尿</span>時に増悪し排尿で軽快する膀胱痛<br>+頻尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary urgency'>尿意切迫感</span>が6週間超持続"] --> B["尿培養陰性・他の原因を除外"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscopy'>膀胱鏡検査</span>"]
    C --> D{"Hunner病変<br>(正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜)を認めるか"}
    D -->|"あり"| E["Hunner型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial cystitis'>間質性膀胱炎</span><br>膀胱に限局した炎症性疾患"]
    D -->|"なし(水圧拡張後の点状出血のみ)"| F["非Hunner型=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder pain syndrome'>膀胱痛症候群</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='central sensitization'>中枢感作</span>を伴う慢性疼痛症候群に近い"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Foley'>経尿道的</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ablation'>焼灼</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triamcinolone'>トリアムシノロン</span>注入が直接的に有効"]
    F --> H["行動療法・薬物療法・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physiotherapy'>理学療法</span>を組み合わせた症状マネジメント"]

💡 なぜ二分するのか。 Hunner型は高齢者に多く、症状が重く、病理学的にもまでの強い炎症所見を伴う——膀胱という臓器そのものが病んでいる疾患である2。一方、非Hunner型は所見に乏しく、、慢性疲労症候群を併存しやすい。これは膀胱だけの問題ではなく、痛みの処理系そのものが過敏になったが背景にあると考えられている。同じ「」という診断名の下に、局所疾患と全身性疼痛症候群という異なる病態が同居している。

⭐ 日本の基準では、このを診断名の段階から分けている。ハンナ病変を有するものを「ハンナ型」(指定難病226)、ハンナ病変がなく膀胱水圧拡張術後の点状出血のみを認めるものをとして、最初から異なる病名を与える2。これに対し米国AUA基準は両者を “IC/BPS” という1つの傘の下にまとめ、表現型(Hunner病変型・骨盤底型・全身疼痛型など)で治療を枝分けする立場を取る1同じ疾患でも、どちらの基準で診断名を付けるかによって「病名」自体が変わるという点は、他国の文献を読むときに混乱しやすい。

診断

IC/BPSはで確定する疾患ではなく、症状+所見+の組み合わせで成立する12

要素 内容
症状 期に増悪し排尿で軽快する膀胱部の痛み・不快感・圧迫感、頻尿
所見 Hunner病変(正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜)、またはこれを認めない場合は麻酔下水圧拡張後の点状出血
尿路感染症、放射線性膀胱炎、など症状を説明しうる他疾患の除外

⚠️ 尿培養が陰性であることは必須条件だが、それだけで診断は完成しない。前立腺炎(男性のCP/CPPS)など、症状が重なる疾患を能動的に除外して初めて診断が成立する。

臨床像

慢性の頻尿で、を伴うことも多い。「たまると痛く、出すと楽になる」という期優位の痛みが、感染性膀胱炎(排尿時に痛む)との最大の鑑別点になる。

⚠️ 非Hunner型では、慢性疲労症候群を高率に併存する。単一臓器の疾患として膀胱だけを診ていると、これらのを見逃し、症状マネジメント全体が後手に回る。

治療

治療はHunner病変の有無で大きく枝分かれし、それ以外は非侵襲的な方法から段階的に進める1

段階 内容
行動療法・食事 患者教育、ストレス管理、刺激物(・アルコール・柑橘類など)の制限、(特に骨盤底型)
、ペントサンポリ硫酸など(米国AUAガイドラインに基づく分類。ペントサンポリ硫酸は日本国内では承認薬に含まれない
DMSO、ヘパリン、など。日本では2021年にDMSO液50%(ジムソ®)が希少疾病用医薬品として承認され、に対する初の保険収載薬となった3
Hunner病変への手技 (レーザー・電気)または局所注入。Hunner型では最も直接的に有効な治療
難治例 Hunner病変に反応しない場合の経口、オナボツリヌストキシンA膀胱注射、神経調節、末期例での膀胱全摘・

⚠️ 日本と欧米では使用できる薬剤が異なる。 米国では経口ペントサンポリ硫酸がFDA承認薬として使われてきたが、日本では2021年にDMSOがようやく保険収載されるまで、に対する保険適用の薬物治療そのものが存在しなかった(それ以前の保険収載治療は膀胱水圧拡張術のみ)3。海外文献の肢をそのまま日本の標準治療と読み替えない。

⚠️ ペントサンポリ硫酸の長期使用には黄斑障害・視覚関連の有害事象リスクが指摘されている。 AUAガイドラインは、処方にあたって患者へこのリスクを説明し、を行うよう求めている1

⭐ Hunner病変の有無で治療の重心が変わることを踏まえると、非Hunner型()に安易にを行っても病変が無いため効果は乏しい。 逆にHunner型に対して全身疼痛症候群としての多面的治療だけを続けても、局所の炎症病変そのものは残る。

まとめ

  • IC/BPSは、期に増悪し排尿で軽快する膀胱痛+頻尿・が持続し、感染など他の原因が除外されて初めて成立するである。
  • Hunner病変の有無が最大の:Hunner型は膀胱に限局した炎症性疾患で注入が直接的に有効、非Hunner型()はを伴う慢性疼痛症候群に近く多面的な症状マネジメントが中心になる。
  • 日本の基準はこのを診断名の段階から分ける(ハンナ型=指定難病226/)のに対し、米国AUA基準はIC/BPSという1つの傘の下で表現型により治療を枝分けする。
  • 経口ペントサンポリ硫酸は米国では使われるが日本では承認薬に含まれず、日本の薬物治療は2021年承認のDMSOが中心である。ペントサンポリ硫酸の長期使用には黄斑障害・視覚関連の有害事象リスクが指摘されており、処方前の説明を要する。
  • などの慢性疼痛症候群を併存しやすく、単一臓器の疾患として診るだけでは症状マネジメントが不十分になりやすい。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)IC/BPSを「6週間を超える下部尿路症状に関連した膀胱由来の不快感・疼痛・圧迫感で、感染や他の明確な原因がないもの」と定義し除外診断としていること、Hunner病変陽性例には焼灼(レーザー・電気焼灼)またはトリアムシノロン注入を行い、それに反応しない難治例では経口シクロスポリンAを検討する一方、非Hunner表現型(骨盤底型・全身疼痛型)には行動療法・薬物療法・理学療法を主体とする個別化した多面的治療を行うこと、治療を行動療法/経口薬/膀胱内注入/手技/大手術の5分類に整理していること、ペントサンポリ硫酸使用時は黄斑障害・視覚関連の有害事象リスクについて患者へ説明する共同意思決定を要すること閲覧 2026-08-11
  2. 2.間質性膀胱炎(ハンナ型)(指定難病226)(難病情報センター・2025)日本の基準ではハンナ病変を有するものを「ハンナ型間質性膀胱炎」(指定難病226)、ハンナ病変を認めず膀胱拡張術時の点状出血のみを認めるものを「膀胱痛症候群」として区別すること、ハンナ型は非ハンナ型に比べ高齢・症状が重症で病理学的炎症所見が強い傾向にあること、診断基準が症状(頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱不快感・膀胱痛)+膀胱鏡所見(ハンナ病変または点状出血)+除外診断の3点であること閲覧 2026-08-11
  3. 3.間質性膀胱炎の症状を改善する膀胱内注入薬(日経メディカル・2021)2021年1月22日にDMSO膀胱内注入液50%(ジムソ®)が希少疾病用医薬品として製造販売承認され、間質性膀胱炎に対して保険収載された初の膀胱内注入薬となったこと、それ以前に間質性膀胱炎の適応で保険収載されていた治療法は膀胱水圧拡張術のみであったこと閲覧 2026-08-11