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Drug Atlas · B27 Interstitial cystitis therapy / 間質性膀胱炎治療薬

ペントサンポリ硫酸ナトリウム

pentosan polysulfate sodium

分類
GAG layer replenishment / GAG層修復薬
科目
Pharmacology
トピック
B27: Drugs acting on smooth muscles. Drugs influencing uterus contractions
承認適応
間質性膀胱炎
副作用
霧視

🧠 全体像:ナトリウムは、ヘパリンに似た構造を持つの多糖体で、/に対して米国で長らく使われてきた唯一のである。効かせ方が他の(や)とはまったく異なり、膀胱粘膜の(層)を修復するという、薬に近い発想をで狙う薬である。だが長期使用者に特有のが見つかったことで、2020年代以降は「効くかもしれないが、目を定期的に診ながら使う薬」という位置づけに変わった。日本ではに承認されたが存在せず、この薬も未承認のままである。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 日本での承認
中枢性の鎮痛・抗ヒスタミン作用 適応外
抗ヒスタミン薬 肥満細胞の関与を抑える 適応外
(経口) ナトリウム 膀胱粘膜のを修復 未承認
() ヘパリン、DMSO(ジムソ) 膀胱粘膜に DMSOのみ承認(ハンナ型限定)

⭐ 経口での修復を狙うという発想は、この薬にほぼ固有のものである。 他のが神経系・免疫系を介した間接的な症状緩和なのに対し、この薬は薬と同じ「の修復」という標的を、飲み薬のまま実現しようとする点が異なる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pentosan polysulfate'>ペントサンポリ硫酸</span>ナトリウムを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> B["消化管から吸収され膀胱粘膜に到達・付着"]
    B --> C["障害された<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycosaminoglycan (GAG) layer'>GAG層</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycosaminoglycan (GAG)'>グリコサミノグリカン</span>層)を修復すると想定される"]
    C --> D["尿中溶質が膀胱壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory nerve'>知覚神経</span>を直接刺激するのを防ぐ"]
    D --> E["膀胱痛・頻尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary urgency'>尿意切迫感</span>の緩和が期待される"]

💡 ヘパリン様構造ゆえの二面性。 ヘパリンに構造的・化学的に類似した多糖体であるため、修復という主作用に加えて弱い抗凝固作用(ヘパリンの約1/15の活性)も併せ持つ1。これは有害事象()としても効いてくるため、機序を覚えるときは「」だけでなく「弱い抗凝固薬でもある」ことをセットで押さえる。

薬物動態

項目 値・特徴
剤形 カプセル(100mg)
服用方法 1回100mgを1日3回、食前1時間または食後2時間空けて水とともに服用(1日総量300mg)1
治療評価 3か月時点で再評価し、改善がまだ無くても限定的な副作用しか無ければさらに3か月継続できる1

適応

米国添付文書上の適応は「に伴う膀胱痛または不快感の緩和」1。米国ではIC/BPSのの1つとしてAUAガイドラインの治療分類にも挙がる2。

⚠️ 日本ではに承認されたが存在せず、本剤も未承認である。 2020年の審査報告書は、国内で承認されている薬剤がない状況を「に対して本邦で承認された薬剤がない」と明記しており、この薬も例外ではない3。日本でIC/BPS(ハンナ型)に承認されているのは薬のDMSO(ジムソ)のみで、はこの薬を含め保険診療の枠外にある。

用法・用量

米国添付文書では、100mgカプセルを1日3回(1日総量300mg)、水とともに食前1時間または食後2時間空けて服用する。💡 3か月時点の再評価では「改善が無いこと」は中止の理由にならない。 添付文書は「改善がまだ無くても、限定的な副作用しか無ければさらに3か月継続できる」と定めており、発現の遅い薬という前提で継続の可否を判断する1。⚠️ 日本では未承認のため、上記は米国添付文書に基づく参考値であり、国内での使用実績・用法は存在しない。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分・構造類似化合物・に対する過敏症の既往1
  • 抗凝固作用への注意:ヘパリンの約1/15の弱い抗凝固作用を持つため、抗凝固薬・の併用患者やを持つ患者では注意する。300mg/日投与時のは6.3%に生じた1
  • (次節を参照):長期使用者は定期的な眼科的経過観察の対象になる1

⚠️ ペントサンポリ硫酸黄斑症(PPSマキュロパチー)

⭐ この薬を語るうえで最も重要な安全性の話題である。 2018年にPearceらが初めて報告した独特ので、長期・高用量の使用者に特異的に生じる4。

項目 内容
リスク因子 量・服用期間が鍵。(35例70眼)では量の中央値が1.61kg、服用期間の中央値が15年だった4。米国添付文書は「大半は3年以上の使用後に生じるが、より短期間でも起こりうる」とする1
視覚症状 ・の遅延(暗い場所へのが遅くなる)が最も多く報告される症状で、困難やを伴うこともある4
視力への影響 💡 視力そのものは比較的保たれることが多い。 「視力は比較的保たれているにもかかわらず困難との遅延を訴えた」と報告されており、視力検査だけでは見逃しうる4
モニタリング 投与開始から6か月以内にOCT・自発蛍光撮影を含む網膜のベースライン検査を行い、以後も定期的な眼科的経過観察を行う1
可逆性 変化は不可逆となりうる。投与中止後も進行しうる1

⚠️ 米国添付文書にBOXED WARNING()は置かれていない。 網膜に関する記載は通常のWARNINGS節にあり、黒枠で囲まれた最のではない1。「リスクが指摘されている薬」という理解は正しいが、上の区分としてはではないという点を混同しないこと。

⭐ AUAガイドラインは、本剤を検討する患者にこのリスクを説明すべきとしている(Statement 15)2。「」自体はIC/BPS治療全般に関する同ガイドラインの(Statement 5)であって、本剤に限定された要求ではない——両者を混同しないこと。中止後も進行しうる例が報告されているため、症状に気づいてからの対応では手遅れになりうる——定期的な眼科受診を治療開始時から組み込むことが前提になる。

副作用

頻度 内容
消化器 、下痢、悪心
(300mg/日投与時6.3%)、点状出血、、など、弱い抗凝固作用を反映した出血症状1
脱毛 投与開始後4週以内に出現する脱毛が1〜4%に報告されている1
重篤・長期使用時 ・の遅延を伴う(前節を参照)4

まとめ

  • ヘパリンに似たの多糖体で、膀胱粘膜のを修復するという、としては珍しい機序を持つ。
  • 同じヘパリン様構造ゆえに弱い抗凝固作用(ヘパリンの約1/15)も併せ持ち、などのが有害事象として現れる1。
  • 米国ではIC/BPSのとして使われてきたが、日本ではに承認されたが存在せず、本剤も未承認である3。
  • 長期・高用量使用で(PPSマキュロパチー)のリスクがある。 ・の遅延が主症状で、視力は比較的保たれたまま進行しうるため見逃されやすい4。
  • 米国添付文書上はBOXED WARNING()ではなく通常のWARNINGS節の記載だが、変化は不可逆となりうる点・中止後も進行しうる点は変わらないため、投与開始から6か月以内のベースライン網膜検査と定期的な眼科的経過観察が求められる1。
  • AUAガイドラインは本剤を検討する患者へのリスクの説明を求めており(Statement 15)、単に「効く」として扱ってよい薬ではない2。

出典

  1. 1.ELMIRON (pentosan polysulfate sodium) capsule — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed) / Janssen Pharmaceuticals・2024)2024年7月改訂版の添付文書を確認した。適応が「間質性膀胱炎に伴う膀胱痛または不快感の緩和」であること、用法・用量が100mgカプセルを1日3回(1日総量300mg)水とともに食前1時間または食後2時間空けて服用し3か月時点で再評価すること、禁忌が本剤・構造類似化合物・添加物への過敏症のみであること、本剤は弱い抗凝固作用(ヘパリンの1/15の活性)を持ち300mg/日投与時の直腸出血が6.3%に生じたこと、WARNINGS節に「網膜色素変化(文献上は色素性黄斑症と報告されている)が長期使用で確認されている」との記載があり大半は3年以上の曝露後だが短期間でも起こりうること・視覚症状として読字困難、暗所への順応低下、霧視が挙げられていること、投与開始から6か月以内にOCT・自発蛍光撮影を含む網膜のベースライン検査を行い以後定期的に経過観察すること、変化は不可逆となりうること・中止後も進行しうることが記載されていること、および本剤の警告表示にBOXED WARNING(枠組み警告)は置かれておらず上記は通常のWARNINGS節の記載であることを確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)IC/BPSを「6週間を超える下部尿路症状に関連した膀胱由来の不快感・疼痛・圧迫感で、感染や他の明確な原因がないもの」と定義し除外診断としていること、Hunner病変陽性例には焼灼(レーザー・電気焼灼)またはトリアムシノロン注入を行い、それに反応しない難治例では経口シクロスポリンAを検討する一方、非Hunner表現型(骨盤底型・全身疼痛型)には行動療法・薬物療法・理学療法を主体とする個別化した多面的治療を行うこと、治療を行動療法/経口薬/膀胱内注入/手技/大手術の5分類に整理していること、ペントサンポリ硫酸使用を検討する患者には黄斑障害・視覚関連の有害事象リスクについて説明すべきこと(Statement 15)、IC/BPSの治療方針は一般に共同意思決定を原則とすること(Statement 5、ペントサンポリ硫酸に限定されない全般的な原則)閲覧 2026-08-11
  3. 3.ジムソ膀胱内注入液50%(ジメチルスルホキシド)審議結果報告書・審査報告書(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課/医薬品医療機器総合機構・2020)令和2年12月2日の医薬品第一部会で本品目を承認して差し支えないとされ再審査期間が10年とされたこと、本薬が「間質性膀胱炎」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されていること(指定番号(29薬)第402号、平成29年9月7日付け)、本薬が米国では1978年・カナダでは1980年に間質性膀胱炎の症状緩和の効能・効果で承認されていること、国内では「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと判断されたことを受けて承認申請がなされたことを確認した閲覧 2026-09-08
  4. 4.Phenotypic Spectrum of Pentosan Polysulfate Sodium-Associated Maculopathy: A Multicenter Study(JAMA Ophthalmology・2019)35例70眼(97%が女性、年齢中央値60歳)を後ろ向きに検討した多施設研究。ペントサンポリ硫酸の累積曝露量の中央値が1.61kg(範囲0.44〜4.31kg)、服用期間の中央値が15年(範囲3〜22年)、1日用量の中央値が300mg(範囲150〜592mg)であったこと、報告された視覚症状として霧視(17例)と暗所順応の遅延(17例)が最多で変視症(4例)もみられたこと、「視力は比較的保たれているにもかかわらず読字困難と暗所順応の遅延を訴えた」と記載していること、1例では曝露期間3年で中止後数年を経て症状が顕在化した例があり中止後の長期経過はさらなる検討を要するとしていることを確認した。閲覧 2026-09-08