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Drug Atlas · A10 Local anesthetics / 局所麻酔薬 · 必修

リドカイン

lidocaine

分類
Local anesthetics / 局所麻酔薬Antiarrhythmics / 抗不整脈薬
商品名(日本)
キシロカイン
商品名(EU)
Xylocaine
科目
Pharmacology
トピック
A10: Local anestheticsB5: Drugs influencing cardiac electrophysiology
禁忌疾患
徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)
副作用
知覚異常耳鳴痙攣低血圧動悸
相互作用
プロプラノロール
対象疾患
間質性膀胱炎歯髄炎小径線維ニューロパチー心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)電気ストーム
原因となる疾患
Nicolau症候群メトヘモグロビン血症

🧠 全体像:はの基準薬であると同時に、Ⅰb群のでもある。同じ「」という機序が、・濃度・次第で「」にも「」にもなるというの好例で、この二面性を理解すると他の・の位置づけも見通しやすくなる。

薬効群の中での位置づけ

は化学構造でとに分かれ、代謝経路とアレルギー頻度がこの分類にきれいに対応する。

型 薬剤 代謝 特徴
短い 最初の合成。代謝物でアレルギー多い
血漿/ 短〜中 唯一カテコールアミン再取り込みを阻害し血管収縮
組織エステラーゼ 短い(表面のみ) に注意
肝(・) 中(1〜2時間) の基準薬。クラスⅠbも兼ねる
肝() 長い 単一。心毒性が低め・運動温存
肝(・) 長い の。長時間だが心毒性に注意
+肝 短〜中 アミドなのに追加エステル基を持ち血漿でも代謝。歯科用

⭐ は「i」が2つ、は「i」が1つという語形ヒントが定着している(lidocaine系 vs procaine系)。は血漿中で速やかに加水分解されるためが短くアレルギーの原因(代謝物)になりやすく、はでアレルギーがまれ——これが臨床での主力が(とくに)へ移った理由。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lidocaine'>リドカイン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Non-ionized'>非イオン型</span>)が神経細胞膜を通過"] --> B["軸索内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ionized form'>イオン型</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protonation'>プロトン化</span>体)に変化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated sodium channel'>電位依存性Naチャネル</span>の細胞内側開口部に結合"]
    C --> D["Naチャネルを不活化状態で固定<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='use-dependent block'>使用依存性ブロック</span>)"]
    D --> E["活動電位の閾値が上がり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction'>神経伝導</span>が止まる"]
    F["頻回に興奮する神経・虚血/脱分極した心筋ほど<br>開状態・不活化状態の割合が高い"] --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lidocaine'>リドカイン</span>がより強く結合"]
    G --> D
    D --> H["心室筋では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectopic excitation'>異所性興奮</span>を選択的に抑制<br>(Vaughan-Williams Ⅰb:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='action potential duration (APD)'>活動電位持続時間</span>を短縮)"]

💡 pKa(約7.9)が生理的pHに近いため、他の(系pKa約8.1)よりの割合が多く、膜透過が速い=作用発現が速い。 炎症・感染組織は酸性に傾くための割合が減り、細胞内へ届きにくくなる——「膿瘍の切開でが効きにくい」現象の機序。

⭐ Ⅰbとしては、正常なにはほとんど効かない。 心房のはもともと短く不活化状態のNaチャネルが少ないため結合しにくく、には無効。虚血・脱分極した心室筋を選択的に狙う薬という理解が、SVTでなくに使う理由につながる。

薬物動態

項目 値・特徴
局所(表面・浸潤・伝達・)/静注()
代謝 肝(主体、も関与)で。MEGX(毒性にも関与)
蛋白結合 ()。手術・などで上昇し遊離型が変化する
排泄 代謝物として
半減期 約1.5〜2時間
クリアランス (flow-limited)。心拍出量低下・肝硬変・肝血流を下げる薬で低下

⚠️ 肝血流を下げる病態・併用薬ではが体内に蓄積しやすい。 心不全、肝硬変、そしてのようなは肝血流を減らしクリアランスを落とすため、通常量でもに近づく。

適応

領域 使いどころ
皮膚・粘膜(内視鏡前の咽頭スプレー、挿管前の抑制)
創傷処置・小手術
、
循環器 (静注)。ACLSでの抵抗性VF/VTでと並ぶ選択肢
歯科 急性(など)の即時。2%+1対10万アドレナリン
泌尿器 /への()

⭐ 急性では「まず麻酔で止める」が推奨の1番目に来る。 米国歯科会の2024年ガイドラインは、確定的な歯科治療にすぐ到達できない状況の——症候性、あるいはにかを伴うもの——について、即時のを目的とした短時間作用型(2%+1対10万アドレナリン、または4%+1対10万アドレナリン)の使用を推奨1として提案している(条件付き推奨・エビデンスの確実性はきわめて低)1。⚠️ この推奨が対象とするのは12歳以上である——同ガイドラインは対象年齢を青少年12歳以上17歳未満・成人17歳以上65歳未満・高齢者65歳以上と定義しており、12歳未満の小児は対象に含まれない1。⚠️ これは受診後のを置き換えるものではない——同ガイドラインはを「その場の」に位置づけ、帰宅後のには別にを第一選択として掲げている1。

💡 を長く持たせたい場合は別の推奨枠になる。 同ガイドラインは推奨3として、帰宅直前のブロックまたはによる0.5%+1対20万アドレナリン、あるいはによる4%+1対10万〜20万アドレナリンを、補助的に用いることを提案している(条件付き推奨・エビデンスの確実性はきわめて低)1。⚠️ これもによるの必要性を置き換えるものではない、と同ガイドラインは明記している1。

⭐ は「を治療として使う」用法である。 米国AUAガイドラインは、DMSO・ヘパリン・の3剤をベット順に並べた(優劣は含意しない)薬として推奨17に挙げ、推奨の強さはいずれも Option、エビデンスの質はだけが Grade B(他2剤は C)である2。多施設RCT(8.4%でした200 mg10 mLを1日1回5日間・1時間保持)では、臨床的に有意な改善が3日後30%対10%、10日後24%対11.5%で、有意差が付いたのは3日目だけで10日目には付いていない2。効果が2週間未満と短く手技自体が痛みを伴いうることが、Option にとどまる理由である。

💡 は「効かせる操作」であると同時に「毒性を上げる操作」でもある。 同ガイドラインは Alkalinization increases urothelial penetration of lidocaine and therefore is expected to improve efficacy, but it also can increase systemic absorption and potential toxicity. と書き、の有無を直接比較した試験は無いとしている2。これは本ノートの機序の節そのままで、pHを上げればが増えて膜を越えやすくなる——粘膜を越えて効く分だけ、血中へも入る。⚠️ DMSOとの「カクテル」ではさらに注意が要る。 同ガイドラインは DMSOが他の物質の吸収を高めるため、のような薬剤で毒性が生じうると明記している2——膀胱内というでも、副作用の節にあるを考えなくてよいわけではない。

用法・用量

では、アドレナリン非含有で1回4.5 mg/kg(目安上限約300 mg)、アドレナリン含有で1回7 mg/kg(目安上限約500 mg)までとされる。としては静注1〜1.5 mg/kgをし、以後1〜4 mg/分で持続静注。効果不十分なら0.5〜0.75 mg/kgを追加できるが総量3 mg/kgを超えない。実際の用量は適応・年齢・体重・肝機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

はCNS症状が先行し、進行するとに至る。

頻度 内容
高頻度 注射部位の(口周囲の・、初期の)
注意 、めまい、(の)
重篤・まれ 痙攣、低血圧・()、まれに

⭐ はCNS抑制系ニューロンが先に麻痺するため、まず「興奮」(痙攣)が起こり、その後に心血管抑制へ進む。 誤って血管内に注入した場合に起こりやすく、による治療が知られている。

まとめ

  • の基準薬。をに遮断する。
  • 同じ機序で心室筋のも抑える→Vaughan-Williams Ⅰbを兼任。には無効。
  • 肝(主体)で代謝され、クリアランスは。心不全・肝硬変・β遮断薬併用でが上がる。
  • はCNS症状(→痙攣)が先行し、その後にへ進む。
  • から、の静注まで用途が最も広い。/では薬3剤の中で唯一エビデンスの質が Grade B だが、効果は2週間未満と短い2。
  • はへの移行を高める一方で全身吸収と毒性も上げる。DMSOとの併用は他剤の吸収を高めるため毒性に注意する2。
  • はよりアレルギーがまれ——代謝物を作らないことが理由。

出典

  1. 1.Evidence-Based Clinical Practice Guideline for the Temporary Pharmacologic Management of Acute Dental Pain — Toothache in Adolescents, Adults, and Older Adults With No Immediate Access to Definitive Dental Treatment (chairside guide)(American Dental Association, University of Pittsburgh School of Dental Medicine, University of Pennsylvania School of Dental Medicine・2024)PDFを取得しpdftotextで全文を読んだ。推奨1が歯痛の確定的歯科治療前の一時的管理として「即時の除痛のために短時間作用型局所麻酔薬(例:2%リドカイン+1対10万アドレナリン、または4%アルチカイン+1対10万アドレナリン)を用いることを提案する」としていること(Conditional・Very low certainty)、推奨2が受診後の疼痛管理としてオピオイド鎮痛薬ではなく非オピオイド鎮痛薬を第一選択とすること(Conditional・Low certainty)、推奨3が延長した一時的管理として「0.5%ブピバカイン+1対20万アドレナリンのブロックまたは浸潤麻酔、あるいは4%アルチカイン+1対10万/1対20万アドレナリンの浸潤麻酔を補助的に用いる」ことを提案していること(Conditional・Very low certainty)、その脚注9が「帰宅直前のブロックまたは浸潤麻酔は延長した除痛を得るための追加の補完的介入の一つであり、鎮痛薬による疼痛管理の必要性を置き換えるものではない」と明記していること、脚注2の「歯痛」が症候性歯髄炎(可逆性または症候性不可逆性歯髄炎で症候性根尖性歯周炎の有無を問わない)と歯髄壊死+症候性根尖性歯周炎または急性根尖膿瘍を指すこと、脚注1によりこれらの推奨が確定的歯科治療を受けられない状況にのみ適用されること、脚注3が対象年齢を「Adolescents (aged 12-<17 years), adults (aged 17-<65 years), and older adults (≥65 years)」と定義しており12歳未満は対象外であることを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)AUAの当該ガイドラインページ(Published 2011; Amended 2014, 2022)の全文を取得して確認した。推奨17が「DMSO, heparin, and/or lidocaine may be administered as intravesical treatments (listed in alphabetical order; no hierarchy is implied).」であり、推奨の強さは Option、エビデンスの質は3剤それぞれ Grades C, C, and B(アルファベット順なのでリドカインだけが B)であること。本文が、多施設無作為化比較試験(PSD597=8.4%炭酸水素ナトリウムでアルカリ化した200 mgリドカイン10 mLを1日1回5日間、1時間保持)で臨床的に有意な改善が3日後30%対プラセボ10%・10日後24%対11.5%であり3日目のみ有意で10日目は有意でなかったこと、「Alkalinization increases urothelial penetration of lidocaine and therefore is expected to improve efficacy, but it also can increase systemic absorption and potential toxicity.」と述べ、アルカリ化の有無を直接比較した試験は無いとしていること、効果が2週間未満と短期で手技自体が痛みを伴いうるため Option としたこと、有害事象が排尿困難・尿道刺激・膀胱痛であること、DMSOとの「カクテル」については「DMSO potentially enhances absorption of other substances, creating the possibility for toxicity from drugs such as lidocaine」と注意していることを確認した閲覧 2026-09-13