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Disease Atlas · 神経 · 疾患

小径線維ニューロパチー

Small fiber neuropathy

別名
SFN小径線維神経障害小繊維ニューロパチー
臓器系
神経
科目
NeurologyMicroscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因組織学 5.4:神経組織:神経線維病態生理学 P-1-24:体性神経障害の診断のための診察法
鑑別疾患
むずむず脚症候群線維筋痛症
続発疾患
肢端紅痛症
関連疾患
舌痛症糖尿病性ニューロパチー
治療薬
デュロキセチンアミトリプチリンガバペンチンプレガバリンリドカイントラマドールベンラファキシンノルトリプチリンフルドロコルチゾンカプサイシン
原因薬剤
オキサリプラチンドセタキセルボルテゾミブ
症状
灼熱痛神経障害性疼痛知覚異常しびれ乏汗症蟻走感
検査値
表皮内神経線維密度定量的感覚検査定量的軸索反射性発汗試験温熱発汗試験交感神経皮膚反応HbA1c神経伝導検査角膜共焦点顕微鏡
原因となる疾患
Fabry病HIV感染症・AIDSアミロイドーシスサルコイドーシスシェーグレン症候群甲状腺機能低下症前糖尿病糖尿病

🧠 全体像:の幹は一文で言える——とだけが落ちるので、通常のは正常のままである。この一点が診療をすべて決める。「検査は異常なし」と言われた患者が灼けるような痛みを訴え続けるという構図が生まれ、診断はから皮膚生検()とへ移る。そしてもう一つ——は痛覚・温度覚だけでなくも担うので、「痛みの病気」と思って診ると・を取りこぼす。診断がついたら仕事は終わらない。約半数は特発性にとどまり、残り半分の原因検索こそが治療になる。

どの線維が落ちているのか

末梢神経を線維の太さで分けると、で速く伝える(Aα・Aβ)と、遅く伝えるに分かれる(線維の構造そのものは組織学 5.4:神経組織:を参照)。はさらに2種類ある。

線維 髄鞘 伝えるもの
薄い髄鞘あり 25℃未満の、45℃超の熱覚と、1
35℃超の、5℃未満のと、多様式の1
共通 — (発汗・・消化管・心血管)1

⭐ は伝導が遅すぎてに反応が乗らない。 したがってだけが障害された症例ではが正常になる2。NEURODIAB基準が伝導検査の正常を診断要件に含めているのはこのためで、正常であることが除外条件ではなく支持所見として働く1。

💡 太い線維の徴候——筋力低下・振動覚低下・——が前面に出ていれば、それは純粋なではない。診察で「温度覚・痛覚は落ちているのに振動覚と腱反射は保たれている」という乖離を確認することが、より先に来る(診察の型は病態生理学 P-1-24:障害の診断のための診察法)。

臨床像と分布パターン

灼けるような痛み、、、が主症状で、・・・しびれとして訴えられる。自律神経症状としては、(低血圧の項)、、がある。

分布のパターンが原因検索の入口になる。

パターン 特徴 示唆する原因
(最多) 足先から始まり近位へ上がる。 代謝性・(糖尿病・、アルコール、化学療法)1
体幹・顔面・近位から、あるいは斑状に始まる。まれで診断が難しい 自己免疫性病態、抗TS-HDS・抗FGFR-3抗体を伴う型1
単一の領域に限られる。は三叉神経領域の障害として提唱されている1 —

オランダの調査では発症率12/10万人年、53/10万人と報告され、男性にやや多く、65歳を超えてからの診断が多い2。

原因を洗う

⭐ 約半数は特発性にとどまる21。裏を返せば残りの半分は同定でき、そこには治療可能なものが並ぶ。

群 具体例
代謝性 糖尿病(1型・2型)が最も広く関わる。・というの段階でも関連する1
シェーグレン症候群、(が最も多いと推定される)1
。とくに遺伝性型は自律神経優位の障害を来す1
遺伝性 SCN9A・SCN10Aなどの変異2、
アルコール、化学療法(・・)1
欠乏・感染・内分泌 ビタミンB12欠乏、感染症・、甲状腺機能低下症1

⚠️ が正常でも異常を除外しない。 の段階から関連するため、HbA1cとだけで止めず、まで進めるかを検討する1。「糖尿病はないから原因不明」というに最も早く到達してしまう落とし穴である。

💡 家族歴では、痛みの表現型を持つを意識して聞く。 遺伝性のはと同じの異常を基盤に持つことがあり、「親も足が焼けるように痛かった」という話が診断を動かす1。逆向きに、は二次性のの原因としても現れる——(温めて悪化・冷やして軽快)が明確なら、痛みの型はの側で整理したほうが早い。

診断

flowchart TD
    A["遠位優位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burning pain'>灼熱痛</span>・温度覚異常<br>筋力・振動覚・腱反射は保たれる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>"]
    B -->|"異常あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='large fiber'>大径線維</span>も含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyneuropathy'>多発ニューロパチー</span>として扱う"]
    B -->|"正常"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='small fiber neuropathy'>小径線維ニューロパチー</span>を疑う"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quantitative sensory testing'>定量的感覚検査</span>・皮膚生検のうち<br>2項目以上の異常を確認"]
    E --> F["原因検索:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose metabolism'>糖代謝</span>・自己抗体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid'>アミロイド</span>・遺伝子・欠乏・薬剤"]
    F --> G["同定できた原因の治療+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic pain'>神経障害性疼痛</span>の薬物療法"]

⭐ 診断は・・皮膚生検の3項目のうち2項目以上の異常で立てる。皮膚生検の代わりにQSARTを置く考え方もある2。単一のは存在しない。

治療

原因が同定できたらそちらを治すのが本筋であり、はその上に重ねる。2020年のフランスのガイドラインに基づく整理では、(・)・・が第一選択、が第二選択で、限局した痛みにはとが第一選択に置かれる。第二選択には・併用療法・・が並ぶ1。実務上の初期選択肢として・・・・・5%が挙げられる2。

自律神経症状には個別に対応する。にはなどの対症療法を用いる1。

鑑別

痛みがで検査が正常という構図は、次の疾患と共有される。はこれらの「」ではなく、皮膚生検・で積極的に立てる診断であるという順序が重要になる。

鑑別 分ける手がかり
広汎なの痛みで、分布が神経のに従わない。ただし一部での低下が報告されており、明確に切れない領域がある
安静時に増悪し動かすと軽快するという時間・行動依存性がある。のは動かしても引かない
発赤・熱感を伴い、温めると悪化し冷やすと軽快するが一貫している

まとめ

  • はとだけが障害される病態で、伝導が遅い線維はに映らないため、通常のは正常のままになる。
  • は痛覚・温度覚とを担うので、だけでなく・・消化管症状を必ず確認する。
  • 診断は・・皮膚生検()のうち2項目以上の異常で立て、皮膚生検の代わりにを用いる考え方もある。単一のはない。
  • は代謝性・を、はを示唆する。分布そのものが原因検索の入口になる。
  • 原因は糖尿病・が中心で、シェーグレン症候群・・・変異・アルコール・化学療法・ビタミンB12欠乏が続く。約半数は特発性にとどまる。
  • とが正常でも異常は除外できない。の段階から関連する。
  • 治療は原因疾患の治療が本筋で、疼痛には・・を第一選択とし、限局した痛みにはを用いる。

出典

  1. 1.Small-Fiber Neuropathy: An Etiology-Oriented Review(Brain Sciences(Furia A, Liguori R, Donadio V)・2025)Aδ線維が25℃未満の冷覚・45℃超の熱覚と侵害受容・機械的侵害受容を、C線維が35℃超の温覚・5℃未満の冷覚と侵害受容・多様式侵害受容を伝え、いずれも節後自律神経機能を担うこと(Introduction節・Table 1)、NEURODIAB基準が腓腹神経伝導検査の正常を診断要件に含むこと(Diagnosis節・Table 2)、1型・2型糖尿病が最も広く関わる原因群であり空腹時血糖異常・耐糖能異常という前糖尿病段階でも小径線維ニューロパチーと関連すること、約50%が特発性にとどまること、サルコイドーシスでは小径線維ニューロパチーが最も多い神経合併症と推定されること、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスが自律神経優位の小径線維障害を来すこと、他の原因としてアルコール・ビタミンB12欠乏・化学療法(オキサリプラチン・ドセタキセル・ボルテゾミブ)・HIV・甲状腺機能低下症・Fabry病があること(Etiology節)、長さ依存性が最も多く非長さ依存性はまれで診断が難しく自己免疫性病態や抗TS-HDS・抗FGFR-3抗体と関連すること、限局型として舌痛症が三叉神経領域の小径線維障害として提唱されていること(Introduction節)、家族歴では肢端紅痛症のような痛みの表現型を持つ血縁者を意識して聴取すること、皮膚生検がPGP9.5染色により下腿遠位(外果近傍)で行われ年齢・性で補正した基準値と照合されること、定量的感覚検査にDFNSの標準プロトコル(7検査13パラメータ)があること、QSARTがアセチルコリンのイオントフォレーシスによる直接・間接の発汗反応を評価すること、角膜共焦点顕微鏡が非侵襲的な神経支配の定量法として有望であること(Diagnosis節)、2020年のフランスのガイドラインに基づく整理でSNRI(デュロキセチン・ベンラファキシン)・三環系抗うつ薬・ガバペンチンが第一選択、プレガバリンが第二選択、限局した痛みにはリドカイン貼付剤とTENSが第一選択、第二選択にトラマドール・併用療法・カプサイシン貼付剤・A型ボツリヌス毒素が置かれること、起立性低血圧にはフルドロコルチゾンなどの対症療法を用いること(Treatment節・Table 4)を確認した閲覧 2026-08-20
  2. 2.Small Fiber Neuropathy(StatPearls(Cascio MA, Mukhdomi T)・2022)障害されるのが薄い髄鞘のAδ線維と無髄のC線維であること(Introduction節)、約半数が特発性にとどまること(Etiology節)、オランダの調査で発症率12/10万人年・有病率53/10万人と報告され男性にやや多く65歳超での診断が多いこと(Epidemiology節)、小径線維は伝導が遅く神経伝導検査では捉えられないため単独の小径線維障害では神経伝導検査が正常になること、診断基準が臨床所見・定量的感覚検査・皮膚生検のうち2項目以上の異常であり皮膚生検の代わりにQSARTを用いる考え方もあること(Evaluation節)、温熱発汗試験が診断基準の項目には含まれず、発汗パターン異常のある患者に対する付加的な検査として挙げられていること(Evaluation節)、長さ依存性パターンと非長さ依存性パターンで原因の分布が異なること(History and Physical節)、遺伝性ではSCN9A・SCN10Aが挙げられること(Etiology節)、初期治療の選択肢がガバペンチン・プレガバリン・アミトリプチリン・ノルトリプチリン・トラマドール・5%リドカイン貼付剤であること(Treatment/Management節)を確認した閲覧 2026-08-20