検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

定量的感覚検査

Quantitative sensory testing

別名
QSTquantitative sensory testing
臓器系
神経
科目
Physiology
トピック
生理学 8.2:体性内臓感覚系:受容器の性質、求心路、視床と大脳皮質の役割。触覚。生理学 8.3:痛覚の生理学。

🧠 全体像が映すのは)だけで、感覚障害の主因になりやすいはほとんど反映されない。その空白を埋める検査のうち、)が線維の「数」を、QSARTが自律神経の「機能」をに測るのに対し、だけが患者の感じ方そのもの——知覚閾値——を心理物理学的に定量する。 検体もも要らず被験者の応答そのものを測定する点が、この検査の価値と限界の両方を生む。

何を測っているか

は、した刺激(温度・機械的圧・振動)を皮膚へ加え、患者が「感じた」「痛いと感じた」と応答した強度をとして記録する検査である。は太さごとに得意なが決まっており(線維構成の詳細は生理学 8.2:体性を参照)、どので異常が出るかによって障害されている線維群を推定できる。

担当線維
振動覚・触覚 (太い
(薄い

の感作機序(一次・二次・による温度感受性)は生理学 8.3:痛覚の生理学に譲る。はその感作が閾値の変化として実際にどこまで現れているかを数値化する検査である。

手順と代表的なプロトコル

刺激の与え方には2通りある。

  • :刺激強度を連続的に上昇(または下降)させ、患者が検出・痛みを報告した時点の強度を閾値とする。簡便だが、患者の反応時間の遅れが閾値を実際より高く見積もらせやすい。
  • :あらかじめ設定した固定強度の刺激を無作為な順序で提示し、感じたかどうかを強制選択で答えさせて閾値を統計的に算出する。反応時間の影響を受けにくいが時間がかかる。

ベッドサイドの感覚診察(・鈍端/鋭端の針で「違いが分かるか」をに確認する診察)と異なり、)・(機械的刺激)・といった済みの機器で刺激強度そのものを段階的に変え、閾値を数値として求める。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calibration'>較正</span>した刺激を皮膚へ提示(温度・機械的圧・振動)"] --> B["患者が検出・痛みを応答"]
    B --> C["反応した強度を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory threshold'>感覚閾値</span>として記録"]
    C --> D["年齢・性別・部位別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='baseline / reference value'>基準値</span>と照合"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory phenotype'>感覚表現型</span>に分類"]

(ドイツ研究会)の標準化プロトコルは、7つの検査で13を測定する構成で、1部位あたり約30分を要する1の冷を区別できるか)といった熱性と、といった機械的の両方を含み、感覚の「喪失」と「亢進」を同じプロトコルの中で拾い上げる設計になっている。

異常所見の意味

所見 機序
閾値上昇( の脱落・
閾値低下・ 末梢または中枢の感作(過敏化)

が他の検査と一線を画すのは、「感じなくなる」だけでなく「過剰に感じる」も同じ物差しで定量できる点である。 通常より弱い刺激で痛みを感じる()、本来痛みを伴わない刺激で痛みを感じる()といった感作所見は、や皮膚生検では直接捉えられない。

この閾値パターンの組み合わせから、患者をに分類する試みがある。代表的には、大径・機能の喪失を主体とする型、保たれた感覚機能の上に過敏が乗る型、の喪失とともに機械を伴う型の3型が報告されており、表現型によって特定の治療への反応が異なることが示されている1を「疾患名」ではなく「表現型」で層別化する発想の土台がである。

⚠️ 測定上の注意

  • であり、患者の協力・注意・理解に依存する。 注意・・精神科的、そしてに関連するの影響を受けやすく、の結果だけでかを判定できない1
  • 左右差・部位別の正常値が必要で、装置・プロトコル・室温・検者の手技で値が変わる。 施設独自のとの照合が前提になり、施設間で結果をそのまま比較しにくい。
  • 検査に時間がかかる。 標準プロトコルは1部位あたり約30分を要し、複数部位を測定すると患者の疲労・集中力低下が閾値そのものに影響しうる1
  • 単独で診断しない。 の診断は、・皮膚生検()のうち2項目を満たすことを基本とする考え方が広く使われる2
  • 神経障害の局在(節前/節後、末梢/中枢)を決められない。 閾値異常は受容器から大脳皮質までの経路のどこでも起こりうるため、は機能的な異常の有無は示せても、それがどこで起きているかまでは特定できない1はこの点でを補完する。

位置づけ/次に進むべき検査

の評価は、・自律神経(QSART)・構造(皮膚生検)という3つの異なる軸から成り立ち、どれか1つで完結しない。

検査 評価する軸 患者の応答
知覚閾値(心理物理学的) 必要(主観が入る)
QSART 自律神経機能( 不要(定量)
線維の構造的密度(皮膚生検) 不要(形態評価、侵襲的)

では、のような簡便なで異常が疑われた後、・QSART・皮膚生検という確定的な検査へ進む位置づけになる。はこの中で唯一、だけでなくという「」を定量できる検査であり、疼痛を訴える患者の表現型を層別化する場面で他の2検査にない価値を持つ。

まとめ

  • した温度・機械的刺激を皮膚へ加え、患者の応答からを定量するである。振動覚・触覚はを反映する。
  • 刺激の与え方にはがあり、の標準化プロトコルは7検査・13で1部位約30分を要する。
  • 閾値上昇はの脱落を、閾値低下・は末梢・中枢の感作を示す。は「感じなくなる」と「過剰に感じる」の両方を定量でき、による層別化に使われる。
  • 患者の協力に依存する検査でありの影響を除外できず、施設間比較が難しく、単独でを診断せず、病変の局在も決められない。
  • ・自律神経(QSART)・構造(皮膚生検)という3軸の評価でを総合的に判断する。

出典

  1. 1.Quantitative sensory testing: a practical guide and clinical applications(BJA Education(van Driel MEC, Huygen FJPM, Rijsdijk M)・2024)DFNS標準化プロトコルが7つの検査・13パラメータから成り1部位あたり約30分を要すること、感覚表現型が感覚喪失型・熱痛覚過敏型・機械痛覚過敏型の3型に分類され表現型によって治療反応が異なりうること、QSTが被験者の注意・動機づけ・認知機能・詐病に関連するバイアスの影響を受けやすく病変の正確な局在を決定できないことを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Small Fiber Neuropathy(StatPearls(Cascio MA, Mukhdomi T)・2022)小径線維ニューロパチーの診断基準が臨床所見・定量的感覚検査・皮膚生検のうち2項目を満たすことを基本とすることを確認した閲覧 2026-08-04