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表皮内神経線維密度

Intraepidermal nerve fiber density

別名
IENFDintraepidermal nerve fiber density
臓器系
神経
科目
NeurologyHistology
トピック
神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因組織学 5.4:神経組織:神経線維
関連疾患
サルコイドーシスシェーグレン症候群糖尿病

🧠 全体像:通常ので評価できるのは)に限られ、感覚障害を引き起こすという細径線維の障害はに映らない。が正常でも、を否定できない——この空白を埋めるのが、皮膚生検による)の評価である。ただしも万能な単独診断法ではなく、と組み合わせて初めて診断的な意味を持つ。

何を測っているか

)はで高速に興奮を伝えるためで捉えやすいが、(薄い髄鞘の)はが遅く、通常のではほとんど反映されない(の違いは組織学 5.4:神経組織:を参照)。は、が届かないこの領域を形態学的に直接見る検査である。

3 mm上10 cm)から採取し、切片を、軸索全般を標識するマーカーであるPGP9.5で免疫染色する。を越えて表皮内へ入るの数を数え、表皮の長さ1 mmあたりの本数(線維密度)として表す1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distal lower leg'>下腿遠位部</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral malleolus'>外果</span>上10cm)で3mm<span class='jp-term jp-term-diagram' title='punch biopsy'>パンチ生検</span>"] --> B["PGP9.5で免疫染色"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidermal basement membrane'>表皮基底膜</span>を越えて表皮内へ入る<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve fiber'>神経線維</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='counting'>計数</span>"]
    C --> D["表皮長1mmあたりの本数として算出"]

近位部(大腿)でも同様に生検してと対で評価すると、の障害パターンかどうかを判定できる。

基準値と単位

単位は本/mm。年齢・性別・生検部位ごとに正規化されており、参照集団の5を下回る値を低下と判定する1は加齢とともに生理的に低下し、5は年代が一つ上がるごとに約0.54本/mm低くなる。性差もあり、女性のは男性よりおよそ1.0本/mm高い1自施設・年齢・性別に対応した参照値と照合し、覚えた一律の数値で判定しない。

所見の読み方(低下の解釈)

が読むのは低下の有無だけでなく、低下のパターンである。遠位・近位の対比が鑑別の入口になる。

パターン 特徴 示唆される病態
遠位(下腿)で低下、近位(大腿)は保たれる・軽度 糖尿病など代謝性・の病態
近位でも低下する、または斑状に低下する 症候群、遺伝性(SCN9Aなどの変異)、傍腫瘍性

は代謝性・の病態に多く、に多いという対比が鑑別の出発点になる2。⭐ を見たら、代謝性の原因検索だけで止めず、自己免疫・遺伝性・傍腫瘍性を積極的に探す。 遺伝性ではSCN9A(Nav1.7)などの稀なが報告されており、患者の皮膚生検でが予測値の1未満まで低下した症例がある3

単独ではと診断しない。 ・皮膚生検()のうち2項目を満たすことを基本とする考え方が広く使われ、皮膚生検の代わりにQSARTを含める考え方もある2。金標準となる単一検査は確立していない。

⚠️ 測定上の注意

  • 採血ではなく生検である。 部位・固定・染色・法の標準化が結果を左右し、EFNS/PNSのガイドラインはPGP9.5染色による皮膚生検を推奨度Aとしている1
  • 施設間差がある。 同一切片でも判定者間で線維密度0.4±1.5本/mm程度のばらつきが報告されており、には熟練を要する1
  • 生検部位は、抗凝固薬服用中の、感染、浮腫、瘢痕、などがある場所を避けて選ぶ。
  • 付近の境界域の値は、それだけで正常・異常を断定しない。
  • 正常値であっても、臨床的にを否定しきれない。 病初期に状に始まる例や、生検部位が実際の障害部位と一致しない例がある。

経時変化とモニタリング

繰り返し施行できる低侵襲な検査で、治療反応や進行の追跡に使える。ただし表皮内の再生は遅く、短期間での再検査は意味のある変化を捉えにくい。経過を見るなら十分な間隔(年単位)を空け、同一施設・同一手技で比較する。

まとめ

  • は、通常のが評価できない)の障害を、の3mmによって直接可視化する検査である。
  • は年齢・性別・部位で正規化され、参照集団の5を下回れば低下と判定する。
  • 遠位優位に低下するは糖尿病などの代謝性病態を、近位も低下する症候群・・遺伝性(SCN9A等)・傍腫瘍性を示唆する。
  • ・皮膚生検のうち2項目を満たすことを基本とし、単独では診断しない。
  • 生検の標準化(部位・染色・法)が結果を左右し、施設間差がある。正常値でも臨床的に否定しきれない。
  • 再生は遅いため短期間での再検査は意味が乏しい。経過は年単位の間隔で同一施設・手技で比較する。

出典

  1. 1.Intraepidermal Nerve Fiber Density as Measured by Skin Punch Biopsy as a Marker for Small Fiber Neuropathy: Application in Patients with Fibromyalgia(Diagnostics(Kelley MA, Hackshaw KV)・2021)標準的な生検部位(下腿遠位部・外果上10cm)と3mmパンチ生検・PGP9.5免疫染色による計測法、EFNS/PNSガイドラインがPGP9.5染色による皮膚生検をgrade A推奨としていること、参照値の5パーセンタイルカットオフによる低下の判定、年代が一つ上がるごとに5パーセンタイルカットオフが約0.54本/mm低下すること、性差(女性のカットオフが男性よりおよそ1.0本/mm高い)、判定者間で線維密度0.4±1.5本/mm程度のばらつきが報告されていることを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Small Fiber Neuropathy(StatPearls(Cascio MA, Mukhdomi T)・2022)小径線維ニューロパチーの診断基準が臨床所見・定量的感覚検査・皮膚生検のうち2項目以上の異常を満たすことを基本とし金標準となる単一検査は確立していないこと、長さ依存性パターンが糖尿病などの代謝性病態に多く非長さ依存性パターンが傍腫瘍性疾患やシェーグレン症候群などの免疫介在性病態に多いことを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Association of small-fiber polyneuropathy with three previously unassociated rare missense SCN9A variants(Canadian Journal of Pain(Kelley MA, Oaklander AL)・2020)SCN9A(Nav1.7)の稀なミスセンス変異が家族性・孤発性の小径線維ニューロパチーの原因となりうること、患者の皮膚生検で表皮内神経線維密度が予測値の1パーセンタイル未満まで低下していた症例があることを確認した閲覧 2026-08-03