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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

サルコイドーシス

Sarcoidosis

臓器系
呼吸器全身免疫・膠原病
科目
PulmonologyPathology
トピック
呼吸器内科 40:サルコイドーシス病理学 C/25:肺の肉芽腫性疾患
鑑別疾患
ANCA関連血管炎ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)過敏性肺炎・塵肺症結核特発性肺線維症不明熱
続発疾患
結節性紅斑
治療薬
プレドニゾロンメトトレキサートアザチオプリンインフリキシマブ
症状
リンパ節腫脹乾性咳嗽顔面神経麻痺胸痛倦怠感視力低下涙液分泌低下体重減少脳神経麻痺発熱労作時呼吸困難皮膚結節
検査値
表皮内神経線維密度
画像所見
肺野陰影結節性パターン遅延造影FDG-PET
組織像
肺サルコイドーシス
禁忌薬
コレカルシフェロール

🧠 全体像は原因不明のを全身のどこにでも作りうる多臓器疾患である。約90%で胸部(肺・/)が侵されるが、眼・皮膚・心臓・神経・肝脾・骨関節にも及ぶ。診断は「一発検査」ではなく、①矛盾しない臨床像・画像、②可能であれば組織でのの証明、③結核・真菌・悪性疾患・曝露など似た腫を作る他疾患の除外、の3本柱で行う除外的総合診断である。治療も全例には行わず、無症状で軽快が期待できる病型は経過観察し、症候性・進行性の肺病変、視力を脅かす、心臓病変、神経病変、高Ca血症など臓器障害・生命予後に関わる病変にのみステロイドを中心とした治療を行う。

定義と疫学

は、腫を形成する既知の原因(感染、異物、悪性腫瘍、薬剤、曝露など)が除外された後に残る、原因不明の全身性である。

  • 若年〜中年成人に好発し、と未同定の環境・感染性抗原への異常なが想定されているが、単一の原因は同定されていない。
  • 曝露は組織学的に区別できない腫()を起こすため、職業歴(金属加工、電子機器、航空宇宙産業など)の聴取はに不可欠である。

病理

は慢性炎症の特殊型で、活性化マクロファージが主体となり周囲にリンパ球がする。

  • 中心(活性化マクロファージが変化したもの、境界不明瞭な細胞質)
  • が融合したもの。を含み、細胞質内に(層状の石灰化・蛋白)を認めることがあるが、いずれも所見ではない。
  • 辺縁:リンパ球、線維芽細胞。慢性化した腫は線維化を伴う。
  • 腫は非乾酪性を欠く)であることが特徴で、これがを伴う結核の腫との重要な鑑別点になる。
flowchart TD
    A["未同定の抗原に対する異常なTh1型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell-mediated immune response'>細胞性免疫応答</span>"] --> B["マクロファージの活性化と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelioid cells'>類上皮細胞</span>への分化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelioid cells'>類上皮細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multinucleated giant cell'>多核巨細胞</span>・リンパ球からなる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncaseating granuloma'>非乾酪性肉芽腫</span>の形成"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary hilum (hilum of the lung)'>肺門</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mediastinal lymph nodes'>縦隔リンパ節</span>・肺間質・眼・皮膚・心臓・神経など多臓器への沈着"]
    D --> E["自然消退(多くの例)"]
    D --> F["慢性化・線維化(一部の例)"]

💡 「非乾酪性」であることの意味:結核の腫は中心がするのに対し、は壊死を伴わない。ただし以外(真菌感染、異物反応、悪性腫瘍周囲の腫反応など)でも生じるため、組織所見単独では確定診断にならず、常に他疾患の除外とセットで解釈する。

臨床像

無症状で健診の胸部画像異常として見つかる例から、多臓器症状で発症する例まで幅が大きい。

臓器・系統 主な所見
肺・縦隔 無症状のことが多い、、胸痛、
全身 感、、体重減少
ぶどう膜炎、(治療が遅れると失明リスク)
皮膚 、皮下結節、瘢痕部への腫沈着
心臓 房室ブロック、、心不全、
神経 が代表的)、、末梢神経障害
リンパ節・肝脾 表在リンパ節腫大、肝脾腫
骨・関節 急性関節炎、慢性の骨嚢胞性病変
代謝 腫マクロファージによる産生を介した高Ca血症・、腎結石

+急性関節炎(しばしば発熱を伴う)の組合せで、比較的急性に発症し予後良好なことが多い臨床パターンである。典型像がそろえば、後述のとおり断を省略できることがある。

胸部画像とScadding病期

胸部単純X線は初期評価の中心で、無症状者の偶発的異常として発見されることも多い。異常があればHRCTで実質・を精査する。

HRCTでは、・胸膜・に沿うが典型的である。も混在しうるため、分布だけで確定せず、両側腫脹や臨床像と統合する。

Scadding病期 胸部X線所見
0 明らかな異常なし
I のみ
II BHL+肺実質陰影
III BHLを伴わない肺実質陰影
IV

⚠️ Scading病期は画像上の分類であり、数字が大きいほど重症・進行しているという的な重症度スコアではない。病期IとIIは自然軽快しやすいが、病期IVの線維化は不可逆的というように、病期ごとの経過の傾向を示すに留まる。は病期の数字ではなく、症状・肺機能・臓器障害リスクで判断する。

診断

診断は、①矛盾しない臨床像・画像、②可能な場合は組織でのの確認、③他の・類似疾患の除外、の3要素を統合して行うである。

flowchart TD
    A["矛盾しない臨床像・胸部画像"] --> B["結核・真菌感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beryllium'>ベリリウム</span>曝露・悪性疾患などを除外"]
    B --> C{"典型的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Löfgren syndrome'>Löfgren症候群</span>など臨床診断で十分か"}
    C -->|"はい"| D["生検を省略し臨床経過を追う"]
    C -->|"いいえ"| E["安全で診断率の高い部位を生検(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mediastinal lymph nodes'>縦隔リンパ節</span>へのEBUS-TBNA・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transbronchial lung biopsy'>気管支肺生検</span>など)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncaseating granuloma'>非乾酪性肉芽腫</span>を確認"]
    F --> G["臓器病変の広がりと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic indications'>治療適応</span>を評価"]
    D --> G
  • 血清ACE高値・高Ca血症は補助所見にとどまり、感度・特異度が不十分なため単独で診断・除外に用いない。
  • 組織学的なも他疾患で生じうるため、ではない。
  • 生検は最もリスクが低く陽性率が高い部位を選ぶ。胸部リンパ節へはが第一選択になることが多い。
  • ・培養が陰性であることを確認し、結核をはじめとする感染性腫症を除外する。
  • 診断後は眼科診察、心電図、必要に応じ・FDG-PETによる心臓病変評価、肝腎機能、血清・尿Ca、肺などで臓器病変の広がりをする。

心臓サルコイドーシスの評価

心臓病変は無症状のことも多い一方、につながるため、系統的な評価が重要である。

  • 全例に心電図でのスクリーニングを行い、・失神・原因不明の房室ブロックなど心臓病変を疑う症状・所見があればによる瘢痕・炎症の評価)を第一に行う。
  • が陰性・・禁忌などの場合、または心臓病変の疑いが高い場合はFDG-PET(適切な食事調整下での炎症性ホットスポット評価)を追加する。いずれの検査単独でも確定診断はできず、臨床像と組み合わせて総合判断する。
  • ICD(の適応は、心停止・の既往()、35%以下()が明確な適応であり、が保たれていても失神、MRI/PETでの心筋瘢痕、適応、での誘発性を伴う例は個別に適応を検討する。

治療

治療の目的は生命予後・臓器機能・QOLに関わる病変を制御することであり、無症状で自然軽快が見込める病変まで一律に治療しない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span>と診断"] --> B{"臓器障害リスクの高い病変か"}
    B -->|"いいえ(無症状・低リスク)"| C["経過観察・定期再評価"]
    B -->|"はい(症候性・進行性肺病変、視力を脅かす<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular lesion'>眼病変</span>、心臓・神経病変、高Ca血症など)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic corticosteroid'>全身副腎皮質ステロイド</span>を開始"]
    D --> E{"効果不十分・副作用で継続困難か"}
    E -->|"いいえ"| F["最小<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effective dose'>有効量</span>まで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>し維持"]
    E -->|"はい"| G["メトトレキサート・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steroid-sparing agent'>ステロイド節約薬</span>を追加"]
    G --> H{"なお制御不良か"}
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span>など生物学的製剤を検討"]
    H -->|"いいえ"| F
  • 経過観察:Scadding病期I〜IIの無症状例など、自然軽快が期待でき臓器機能障害がない病変は治療せず定期的に再評価する。
  • 第一選択(全身副腎皮質ステロイド(:症候性・進行性の肺病変、視力を脅かす、心臓病変、神経病変、高Ca血症などで開始する。高用量(相当40 mg/日超)は数週間を超えて継続するとが低下しやすく、低〜中等量でも長期使用は症・・易感染性・精神症状などのを来しうるため、有効な最小量まで計画的にする。
  • 第二選択(:ステロイドで効果不十分、または副作用で継続困難な症候性肺では、メトトレキサート(優先順位が高い)やなどを早期に追加し、ステロイドのを減らす。
  • 第三選択(生物学的製剤):ステロイドや上記のでもが持続する例では、抗TNF-α抗体であるを追加する。
  • (ぶどう膜炎)は視力予後に直結するため眼科と連携して早期に治療を判断し、心臓は不整脈管理・の判断を循環器科と共同で行う。

⚠️ 高Ca血症を来している患者では、ビタミンD・Ca摂取やビタミンD製剤投与が病態を悪化させうるため、日光曝露・の見直しとステロイド治療の適応を優先して検討する。

鑑別:肉芽腫性疾患としての位置づけ

肺のを鑑別する際は、の有無・分布・自己抗体・臓器障害パターンで整理すると覚えやすい。

疾患 腫の性状 診断の要点
非乾酪性 、多臓器病変、Asteroid/
結核 乾酪性( 上葉・優位の再活性化病変、、Langhans巨細胞 ・培養・陽性
ANCA関連血管炎( 壊死性腫+血管炎 上下気道の壊死性病変、糸球体腎炎、多くはc-ANCA陽性 臨床三徴+ANCA+組織の血管炎所見(ANCA関連血管炎参照)

による(Scadding病期IV)は、としての経過や治療戦略の観点からなど他のとも鑑別・比較の対象になる。

まとめ

  • は原因不明の性疾患で、約90%に胸部病変(が代表的)を認めるが、眼・皮膚・心臓・神経など全身に及びうる。
  • 診断は矛盾しない臨床像・画像、可能なら組織でのの確認、そして結核をはじめとする類似のの除外を組み合わせた総合診断であり、血清ACEや高Ca血症は補助所見にすぎない。
  • Scadding病期は画像分類であり、そのままを決める重症度スコアではない。
  • 心臓病変は心電図でスクリーニングし、・FDG-PETで評価する。ICDは心停止・の既往や35%以下で明確な適応となる。
  • 治療は全例には行わず、症候性・進行性肺病変、視力を脅かす、心臓・神経病変、高Ca血症などにステロイドを第一選択とし、効果不十分・副作用時はメトトレキサート・などの、さらにへ段階的に進める。