病理学

病理学 · C/25

肺の肉芽腫性疾患

Granulomatous diseases of the lung

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High-yield / ポイント
応用トピック
結核サルコイドーシス
疾患
サルコイドーシス結核腫多発血管炎性肉芽腫症

🧠 全体像:肺のは「中心が壊死しているか」で最初に鑑別が分かれる。(壊死性肉芽腫)があればまず結核や真菌などの感染症を考え(・・培養で確認。は結核に特異的ではない)、なら感染症を否定したうえでの()、そして肉芽腫に+糸球体腎炎が伴えば(GPA、旧称)を疑う——診断アプローチの違いがそのまま3疾患の性格を映す。

肉芽腫 — おさらい

  • :慢性炎症の特殊型 = 散在するリンパ球を伴うの
  • 構成:+(変化したマクロファージ)+巨細胞(融合した)+リンパ球+線維芽細胞
  • 形態(H&E):(の細胞質、不明瞭な境界)、リンパ球の襟に囲まれる、古い肉芽腫は線維芽細胞・結合組織に囲まれる、Langhans・(40〜50 µm、の融合)

A)結核

起因菌

⭐ 肺の肉芽腫は結核以外の原因も多い。 7か国10施設の肺肉芽腫500例(壊死の有無を問わない)を病理専門医が見直した検討では、原因を特定できたのは58%にとどまり、27%、抗酸菌または真菌感染25%を占め、42%は組織検査後も原因を決められなかった。地域による内訳の違いも大きく、米国内では真菌19%・抗酸菌8%、米国外では抗酸菌19%・真菌4%と逆転する1。(壊死性肉芽腫)も結核に特異的ではない。 壊死性肉芽腫は感染症と関連しやすいが、・コクシジオイデス・ヒストプラズマなどの真菌も結核に類似した境界明瞭な壊死性肉芽腫を作りうる(免疫不全患者では境界不明瞭な肉芽腫として播種性に広がることもある)。逆に結核も宿主の免疫状態によってはを示し、は組織像だけでは結核と区別できない2。

臨床型

:

  • (結核結節・tubercle):中心の、、線維芽細胞・リンパ球・で縁取られる、時に
  • 肺病変がリンパ節へ広がる → :
    • Ghon巣(初感染時のの小さな=実質病変)→ → リンパ節炎
    • ⚠️ と混同しない。 は肉芽腫が融合して腫瘤を作ったで、Ranke複合の成分ではない

二次(再活性化)結核:

  • 既に感作された宿主に生じる。多くは初感染で休眠したの再活性化(数十年後のこともある)で、宿主の抵抗力が低下したとき(免疫不全・高齢など)に起こりやすい
  • 肺の+を侵す
  • 症状:発熱、喀血、、胸痛、

全身性(粟粒)結核:

  • 肺外への → リンパ管+血流を介して細菌が拡散 →

診断

  • 、、または培養
  • 抗酸菌は赤、背景は青に染まる

B)サルコイドーシス

形態

  • の()
  • +をもつ巨細胞

その他の病変

診断と治療

  • :培養+(抗酸菌)が陰性
  • 治療:重症例にステロイド

⭐⭐ はに特異的ではなく、自体がである。 診断は(1)矛盾しない臨床像、(2)組織標本での性炎症、(3)抗酸菌・真菌感染やなどの、を含む他のの除外、という3基準に基づき、これらを満たしたかを判定する普遍的な指標がないため決して完全には確実にならない3。

⚠️ の肉芽腫は境界不明瞭な「ゆるい」で、の明瞭なと対照的である。 の組織学的三徴はの慢性炎症・境界不明瞭な小さな非壊死性間質性肉芽腫・巣2。分類も旧来の「急性・亜急性・慢性」という時間区分から、「線維化を伴う(fibrotic)/伴わない(nonfibrotic)」の2表現型へ整理し直された——旧分類が誤りというわけではないが、2020年の/JRS/ALATガイドラインは病理・画像上の線維化の有無で病型を再整理している4。

💡 病期(0〜IV期)によって率は異なり、多くはする。 全体では約3分の2が12〜36か月以内にする時間限定型の経過をたどる一方、10〜30%は慢性化し長期治療を要し、胸部X線病期III・IVは予後不良と関連する。は良性でしやすく、慢性化(2年以上の遷延)は8〜22.6%にとどまる(患者の79〜82.5%が病期I、14.6〜23%が病期IIで発症し、病期III/IVはみられない)5。

C)多発血管炎性肉芽腫症(旧称Wegener肉芽腫症)

💡 現行名は。 2012年改訂Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)がをGPAへ、を(EGPA)へ改称した。講義資料・古い教科書では旧称が使われるため、本ノートでは旧称も併記する6。

を特徴とする:

  1. 上・下気道の急性壊死性肉芽腫
  2. 小・中血管の
  3. ・びまん性(腎血管炎)

発生機序

  • 吸入した感染性・環境因子への細胞介在性過敏
  • 多くの症例でc-ANCA(主に)陽性

⭐ 肺病理は実質壊死・血管炎・の3所見が中心となる。 67例87検体のを検討した研究では、実質壊死を84%(65%、大小の壊死67%/69%)に、血管のを94%に認め、巨細胞に囲まれたが69%、境界不明瞭な肉芽腫(poorly formed granulomas)が59%、散在する巨細胞が79%にみられた。様の境界明瞭な肉芽腫はまれ(4%)だった7。

臨床像

💡 ポイント: 結核 = 、、、。 = 、、Asteroid+、。GPA(旧称Wegener)= 三徴:壊死性肉芽腫+血管炎+糸球体腎炎、c-陽性、寛解導入はグルココルチコイド+リツキシマブまたは。

まとめ

  • は(・巨細胞)とリンパ球のからなる慢性炎症の特殊型。
  • 結核:、、での、は・、で確認。ただしは真菌感染でも生じ、結核に特異的ではない。
  • :、、・、。
  • (旧称):壊死性肉芽腫++の三徴、c-陽性。寛解導入はグルココルチコイドにリツキシマブまたはを併用する。
  • 診断は結核が・培養、が、GPAがc-という違いを反映する。

出典

  1. 1.Causes of pulmonary granulomas: a retrospective study of 500 cases from seven countries(Journal of Clinical Pathology・2012)抄録で、7か国10施設の肉芽腫を含む肺生検・切除500例(壊死の有無を問わない肺肉芽腫一般)を肺病理専門医が後ろ向きに見直した研究で、原因を特定できたのは58%(290/500)にとどまり、内訳はサルコイドーシス136例(27%)、抗酸菌または真菌感染125例(25%)であったこと、抗酸菌は米国外の19%に対し米国内は8%、真菌は米国内19%に対し米国外4%と地域で逆転したこと、42%(210/500)では組織検査後も原因を決定できなかったことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Differential diagnosis of granulomatous lung disease: clues and pitfalls(European Respiratory Review・2017)PMC全文(PMC9488688)で、過敏性肺炎の組織学的三徴は細気管支周囲の慢性炎症・境界不明瞭な小さな非壊死性間質性肉芽腫(poorly formed granulomas)・器質化肺炎巣であること、感染症は壊死性・非壊死性の両方の肉芽腫を示しうるが壊死性肉芽腫のほうが感染症と関連しやすく、結核も宿主の免疫状態によって非壊死性肉芽腫を示しうること、非結核性抗酸菌症の組織像だけでは結核と区別できないこと、クリプトコッカス・コクシジオイデス・ヒストプラズマなどの真菌は結核に類似した境界明瞭な壊死性肉芽腫の中に残存しうる一方、免疫不全患者では境界不明瞭な肉芽腫として播種性に広がりうることを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Diagnosis and Detection of Sarcoidosis: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society・2020)サルコイドーシスの診断は標準化されておらず、(1)矛盾しない臨床像、(2)1つ以上の組織標本での非壊死性肉芽腫性炎症、(3)抗酸菌・真菌感染や慢性ベリリウム症などの塵肺、過敏性肺炎を含む他の肉芽腫性疾患の除外、という3基準に基づく除外診断であり、肺病変を含め各基準を満たしたかを判定する普遍的な指標は無いため決して完全には確実にならないことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Diagnosis of Hypersensitivity Pneumonitis in Adults: An Official ATS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society / Japanese Respiratory Society / Latin American Thoracic Society・2020)過敏性肺炎の分類を、旧来の時間経過に基づく急性・亜急性・慢性という3区分から、病理・画像上の線維化の有無による非線維性(nonfibrotic)・線維性(fibrotic)の2表現型へ整理し直したこと、曝露評価・BALリンパ球分画・必要時の組織採取を統合する診断方針を確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.Sarcoidosis: A Clinical Overview from Symptoms to Diagnosis(Cells・2021)PMC全文(PMC8066110)で、サルコイドーシスには3分の2の患者が12〜36か月以内に自然寛解する時間限定型の経過と、10〜30%が長期治療を要する慢性の経過があること、胸部X線病期III・IVが予後不良と関連することを確認した。Löfgren症候群は良性・自然寛解性の経過をたどり、2年以上遷延する慢性化は8〜22.6%であること、Löfgrenの原コホートと近年の研究で79〜82.5%が病期I、14.6〜23%が病期IIで発症し病期III/IVで発症した患者はいなかったことを確認した(いずれも本総説が先行研究を引いた値)閲覧 2026-08-27
  6. 6.2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides(Arthritis & Rheumatism (American College of Rheumatology)・2013)CHCC 2012が血管径に基づく分類を整理し、Wegener肉芽腫症を多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、Churg-Strauss症候群を好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と改称したことを確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.Surgical pathology of the lung in Wegener's granulomatosis. Review of 87 open lung biopsies from 67 patients(The American Journal of Surgical Pathology・1991)Wegener肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症)67例87検体の開胸肺生検を検討した研究で、実質壊死を84%に認め(好中球性微小膿瘍65%、大小の地図状壊死67%/69%)、血管の炎症性変化を94%に認め、肉芽腫性病変として巨細胞を伴う微小膿瘍69%・境界不明瞭な肉芽腫(poorly formed granulomas)59%・散在する巨細胞79%を認めたこと、実質壊死・血管炎・肉芽腫性炎症の3所見が主要な診断的病理所見であったことを確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.EULAR recommendations for the management of ANCA-associated vasculitis: 2022 update(European Alliance of Associations for Rheumatology・2024)全文(Ann Rheum Dis 早期公開版PDF)で、新規発症または再発のGPA・MPAで臓器または生命を脅かす病態の寛解導入にはグルココルチコイドとリツキシマブまたはシクロホスファミドの併用を推奨し(再発例ではリツキシマブを優先)、臓器・生命を脅かさないGPA・MPAの寛解導入にはグルココルチコイドとリツキシマブの併用を推奨してメトトレキサートまたはミコフェノール酸モフェチルを代替としうること、グルココルチコイドを4〜5か月以内にプレドニゾロン換算5 mg/日まで漸減することを確認した閲覧 2026-09-24