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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

結核腫

Tuberculoma

別名
脳結核腫頭蓋内結核腫肺結核腫
臓器系
感染症神経呼吸器
科目
Medical MicrobiologyPathologyPulmonology and Thoracic Surgery
トピック
微生物学 2/34:ヒト結核の起因菌、らい菌病理学 C/109:中枢神経系感染症(髄膜炎・脳炎)病理学 C/25:肺の肉芽腫性疾患呼吸器内科 13:呼吸器領域の画像診断法
上位概念
結核
鑑別疾患
クリプトコーマ犬糸状虫症中枢神経系腫瘍転移性脳腫瘍肺癌
合併症
水頭症
治療薬
イソニアジドリファンピシンピラジナミドエタンブトールデキサメタゾンプレドニゾロン
原因微生物
Mycobacterium tuberculosis
症状
頭痛痙攣発作嘔吐発熱盗汗体重減少咳
検査値
C反応性蛋白(CRP)赤沈
画像所見
リング状増強病変結節石灰化

🧠 全体像:は「を中心にもつ肉芽腫が、炎症としてではなく塊(腫瘤)として振る舞うようになったもの」である。が封じ込められた結果できる病変なので、菌量は少なく、周囲は線維性の被膜で囲まれる。この「うまく封じ込めた」という成り立ちが、そのまま2つの臨床的な厄介さを生む——画像では腫瘍と見分けがつかないこと、そして被膜のせいで薬が届きにくく、治療への反応が遅いことである。中枢神経系ではの、肺では孤立性結節の鑑別として、それぞれ別の顔で登場する。

定義と病理

は、Mycobacterium tuberculosisによるが融合・増大して境界のはっきりした腫瘤を形成したものを指す。成熟したは、中心のと、それを取り囲む線維芽細胞・・・リンパ球からなる被膜という構造をとる1。

⚠️ とは別物である。 は中心が膿としてしているのに対し、の中心はであり、していても膿ではない1。両者は治療反応もドレナージの適否も異なる。

💡 なぜ「腫」なのか。 肉芽腫は本来びまん性の炎症反応だが、宿主の細胞性免疫が菌を局所に封じ込めることに成功すると、病変は周囲へ広がらず一箇所でに成長する。結果としてとして振る舞い、腫瘍と同じ症候——頭蓋内圧亢進、、あるいは無症状の——を生む。

中枢神経系の結核腫

は中枢神経系結核における最も多い実質病変で、頭蓋内のどこにでも生じ、単発のことも多発のこともあり、髄膜炎を伴うことも伴わないこともある1。で到達するため、・肺結核が背景にあることが多い。

画像所見

所見
・・と一定しない
造影CT が典型。結節状・不整な不均一増強のこともある
中心のを取り囲む。診断を示唆する所見として知られる(総説が先行文献を引用して紹介している)
(乾酪性・) 、T2で著明な低信号。中心の細胞密度がより高いことを反映する
(乾酪性・中心) T2で中心が高信号()、被膜は低信号(・高蛋白・低含水)。造影でに増強される
() T1低〜・で、は均一に増強される
治癒後 でとして残る

⭐ 「T2で低信号の腫瘤」はを強くさせる。 多くの腫瘍・膿瘍がを示すなかで、のはT2で著明に低信号になる1。この逆転がほぼ唯一の画像的な手がかりになる場面がある。

リング状増強病変としての位置づけ

多発するをみたときの鑑別に必ず入る。・・と並び、病期によって結節状からへ形態が変わるため、単一時点の形だけでは決められない。

肺の結核腫

肺結核腫は球形・ので、多くは30 mm以下のとして現れる2。活動性のものはと・を含み、のものは無細胞のと線維化が主体になる。

  • 主のすぐ近くに小さなを伴いやすく、石灰化を伴うこともある(いずれも総説が引用する先行報告の所見)2。
  • 造影CTでの増強パターンは辺縁性・中心の線状・均一・部分的と一定せず、パターンだけで良悪性を決められない2。
  • ⚠️ 肺癌との鑑別が最大の課題であり、と肺癌が併存することもある。「適切な治療をしても縮小しない」という経過は、鑑別が済んでいない徴候として扱う2。

⭐ (Dirofilaria immitis)による、、など、をつくる非腫瘍性疾患との鑑別も同じ土俵に並ぶ。

診断

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass lesion'>占拠性病変</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solitary nodule'>孤立性結節</span>を指摘"] --> B{"結核の既往・接触歴・<br>免疫不全・流行地滞在があるか"}
  B -->|あり| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active tuberculosis'>活動性結核</span>の検索<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sputum smear'>喀痰塗抹</span>・培養・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid amplification test, NAAT'>核酸増幅検査</span>、胸部画像"]
  B -->|なし| D["腫瘍としての精査を優先しつつ<br>結核も鑑別に残す"]
  C --> E{"他部位で結核が<br>細菌学的に証明されたか"}
  E -->|はい| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tuberculoma'>結核腫</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antituberculosis drugs'>抗結核薬</span>治療を開始し<br>画像で経過を追う"]
  E -->|いいえ| G["病変からの組織採取<br>(生検・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stereotactic aspiration'>定位吸引</span>・切除)"]
  D --> G
  G --> H["組織学的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='caseating necrotizing granuloma'>乾酪壊死性肉芽腫</span>を確認<br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acid-fast stain'>抗酸菌染色</span>・培養・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid amplification test, NAAT'>核酸増幅検査</span>"]
  • 中枢神経系では(細胞数・糖・蛋白・・)を併せて行うが、髄膜炎を伴わないでは髄液が正常なこともある。
  • 全身検索で他部位のが細菌学的に証明できれば、の生検を回避できることがある。逆に証明できなければ、腫瘍・との区別のために組織診断が必要になる。
  • 画像だけで確定しない。もも、支持所見であって確定所見ではない。

治療

抗結核薬

も、・リファンピシン・・による2か月のから始め、感受性が確認・推定されればとを中止してとリファンピシンを継続する3。

病型 総治療期間
大部分の 6〜9か月3
で最適期間は確立していないが、多くの・学会が12か月を処方する(2か月後に+リファンピシンをさらに7〜10か月)3

⚠️ // 2016年版ガイドラインは、そのものの治療期間を定めていない(本文に「tuberculoma」の語が現れない)。実地では髄膜炎の有無・病変の反応で個別に判断され、中枢神経系病変では髄膜炎に準じた長期治療が選ばれることが多い。「だから6か月」と機械的に当てはめない。

補助的ステロイド

に対しては、またはを6〜8週かけてする補助的ステロイド療法が、死亡率の改善を根拠に強い推奨(中等度の確実性)とされている3。でも周囲浮腫・が強い場合にステロイドが用いられるが、この推奨は髄膜炎について述べられたものである。

逆説的増大

⚠️ 適切な治療中に、既存のが増大したり、新しいが出現したりすることがある。 これはとは限らず、治療を継続することで最終的には消退するのが通常である1。画像悪化だけを理由に薬剤を変更しない——ただし、増悪が続く場合は耐性菌・(腫瘍・他の感染症)の可能性を検討する。

外科

肺結核腫では、径3 cm超、の遷延、、陽性、肺実質の破壊、同一葉内の多発、原発性・転移性肺癌の疑いのいずれかがあるときに切除が検討される2。中枢神経系では、水頭症・結核性・がへの紹介を要する合併症として挙げられている3。

まとめ

  • はを中心にもつ肉芽腫が腫瘤化したもので、中心のと線維芽細胞・・・リンパ球からなる被膜という構造をとる。中心が膿としてするとは別物。
  • 中枢神経系では最多の実質病変で、造影CT・でを示す。中心の石灰化+=、のT2著明低信号が手がかりになる。
  • 肺では30 mm以下のとして現れ、を伴いやすい。肺癌との鑑別が最大の課題で、併存もありうる。
  • 大部分のは6〜9か月だがは12か月が通例で、ガイドラインはそのものの期間を定めていない。
  • 治療中のはと同義ではない。画像だけで薬を変えない。

出典

  1. 1.Central Nervous System Tuberculosis: An Imaging-Focused Review of a Reemerging Disease(Radiology Research and Practice・2015)結核腫が中枢神経系結核における最多の実質病変であること、成熟した結核腫が乾酪壊死の中心とその周囲の線維芽細胞・類上皮細胞・Langhans巨細胞・リンパ球を含む被膜からなること、単純CTで等吸収・高吸収・混合吸収を示し造影でリング状または結節状・不整な不均一増強を示すこと、中心の石灰化の周囲がリング状に増強される所見を標的様徴候と呼ぶこと(この記載は本総説が先行文献を参照番号つきで引用したもの)、乾酪性の充実性肉芽腫がT1で低信号・T2で著明な低信号を示す一方で非乾酪性肉芽腫はT1低〜等信号・T2高信号で均一に増強されること、治癒した結核腫が単純CTで石灰化巣として残ること、適切な治療中でも既存結核腫の逆説的増大や新規結核腫の出現が起こりうるが治療継続で通常は消退することを確認した。結核性膿瘍は中心が膿による液化を示す点で乾酪壊死を中心とする結核腫と区別される。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Recent advances in the management of pulmonary tuberculoma with focus on the use of tubeless video-assisted thoracoscopic surgery(Journal of Thoracic Disease・2017)肺結核腫が球形・無血管性の肉芽腫性病変で、多くは30 mm以下の孤立性肺結節として現れること、活動性のものは類上皮細胞とLanghans巨細胞・乾酪化を含み、非活動性のものは無細胞の乾酪物質と線維化が主体であること、被包化・線維化と乾酪壊死のために薬剤到達が悪く抗結核薬への反応が乏しく長期治療を要すること、外科的切除が径3 cm超・微熱の遷延・結核中毒症状・喀痰培養陽性・肺実質の破壊・同一葉内の多発結核腫・肺癌(原発性または転移性)の疑いで検討されることを確認した。石灰化を20〜30%に認めること、主病巣近傍に衛星病巣を伴いやすいこと、切除孤立性肺結節の最大25%を占めること、結核患者の約7〜9%に生じること、平均11.5±3.6か月の治療で3か月時点の25%超の縮小が40%にとどまり12か月時点で76.2%に改善したことは、いずれも本総説が参照番号つきで引用した先行報告の値である。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Official American Thoracic Society/Centers for Disease Control and Prevention/Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines: Treatment of Drug-Susceptible Tuberculosis(American Thoracic Society / CDC / Infectious Diseases Society of America・2016)肺外結核もイソニアジド・リファンピシン・ピラジナミド・エタンブトールによる2か月の初期強化期から開始し、大部分の肺外病変では6〜9か月のイソニアジド・リファンピシン含有レジメンで足りるが、結核性髄膜炎だけは例外で最適期間がランダム化比較試験で確立しておらず多くの専門家・学会が12か月を処方すること、髄膜炎では2か月後にピラジナミドとエタンブトールを中止しイソニアジドとリファンピシンをさらに7〜10か月継続すること、結核性髄膜炎に対する補助的ステロイド(デキサメタゾンまたはプレドニゾロンを6〜8週かけて漸減)が強い推奨・中等度の確実性で推奨されること、水頭症・結核性脳膿瘍・対麻痺が脳神経外科紹介を要する合併症であることを確認した。⚠️ 本ガイドライン本文に「tuberculoma」の語は1度も現れず、結核腫そのものの治療期間は定めていない。閲覧 2026-09-03