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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

結核

Tuberculosis

別名
TB肺結核潜在性結核感染
臓器系
感染症呼吸器全身
科目
Pulmonology and Thoracic SurgeryInternal MedicineMedical MicrobiologyDermatologyPediatrics
トピック
呼吸器内科 27:結核内科学 S-55:結核微生物学 2/34:ヒト結核の起因菌・らい菌皮膚科 1-10:皮膚結核の病型・診断・治療小児科 3-49:HIV感染症と結核
鑑別疾患
Caplan症候群コクシジオイデス症サルコイドーシスノカルジア症化膿性リンパ節炎市中肺炎髄膜癌腫症炭鉱夫塵肺症肉芽腫性乳腺炎猫ひっかき病肺吸虫症肺膿瘍非結核性抗酸菌症不明熱放線菌症
続発疾患
肺動脈瘤気管支拡張症結節性紅斑胸水気胸原発性副腎不全胸膜炎
関連疾患
ハンセン病免疫再構築炎症症候群
治療薬
イソニアジドリファンピシンリファペンチンピラジナミドエタンブトールモキシフロキサシンレボフロキサシンプレトマニドリネゾリドベダキリンデラマニドクロファジミンエチオナミドプロチオナミド
原因微生物
Mycobacterium tuberculosisMycobacterium bovisMycobacterium africanum
症状
冷膿瘍咳喀痰喀血発熱寝汗体重減少食欲不振倦怠感胸痛呼吸困難皮膚結節辺縁角膜浸潤・フリクテン性角結膜炎
検査値
汎血球減少
画像所見
無気肺石灰化結節性パターン肺空洞
組織像
結核性リンパ節炎肺結核の乾酪壊死(肉眼標本)肺結核(HE染色)肺結核(Ziehl-Neelsen染色)肺結核(肉眼標本)
下位分類
結核腫結核性脊椎炎多剤耐性結核
原因となる疾患
2型糖尿病HIV感染症・AIDS過敏性肺炎・塵肺症慢性腎臓病
適応薬
エチオナミドクロファジミンパラアミノサリチル酸プロチオナミドリファブチンリファペンチン
禁忌薬
アダリムマブアバタセプトイネビリズマブインフリキシマブウステキヌマブウパダシチニブエタネルセプトエマパルマブカナキヌマブグセルクマブゴリムマブサトラリズマブサリルマブトシリズマブトファシチニブフィルゴチニブミリキズマブリサンキズマブ

🧠 全体像:結核は「感染したか」「発病したか」「させる病変か」「どの薬が効くか」を分けて考える。活動性肺・喉頭結核を疑えば確定を待たずを始め、・塗抹・培養・を並行する。治療は感受性に合う複数薬を十分な期間併用し、患者中心の服薬支援と対応までを一つの介入として行う。

定義と臨床上の区別

結核はによる症で、肺だけでなくほぼ全臓器を侵しうる。主な起因菌は*Mycobacterium tuberculosisであり、M. bovis、M. africanum*などもに含まれる。

状態 菌の状態と症状 伝播 診断の考え方
免疫により菌の増殖が抑え込まれ、結核症の症状・臓器障害がない しない (TST)または()が感染を支持する。を除外してからを検討する
菌が増殖し、症状、画像・病理異常または細菌学的所見を生じる 肺・気道・喉頭病変では起こりうる 臓器検体の、塗抹、培養・を軸に診断する
病変 過去の感染・治療に伴う線維化や石灰化 それ自体はしない 画像だけで活動性を決めず、症状、、微生物検査を統合する

塗抹陰性でもまたは培養が陽性なら、単なるではなく細菌学的に確認されたである。反対に、TSTやが陽性でもとは限らない。

感染経路と発病リスク

感染性の肺・気道・喉頭結核患者が咳、発声、歌唱などで排出した微小なは空中に長くしうる。これを吸入して肺胞へ到達するが中心であり、表面接触で伝播する疾患ではない。感染性は空洞、喀痰菌量、咳の強さ、換気、接触時間、治療の有効性に左右される。

リスクの段階 主な因子
曝露・感染しやすい 感染性患者との同居・濃厚接触、高罹患地域での生活、換気不良の集団生活、医療・検査室曝露
感染後に発病しやすい 最近の感染、5歳未満、感染、阻害薬・移植・ステロイドなどの免疫抑制、、、糖尿病、
重症・播種しやすい 乳幼児、を含む高度免疫不全、高齢、診断・有効治療の遅れ

を介するM. bovis感染や皮膚へのはまれだが、の原因となりうる。

病態

はへ取り込まれても、ファゴソーム成熟とを妨げて細胞内で生存する。感染後数週でT細胞・NK細胞がIFN-γを介してマクロファージを活性化し、とを含む肉芽腫を形成する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>を吸入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar macrophages'>肺胞マクロファージ</span>内で増殖"]
    B --> C["T細胞・IFN-γでマクロファージを活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='caseating necrotizing granuloma'>乾酪壊死性肉芽腫</span>で封じ込め"]
    D --> E{"菌の増殖を抑えられるか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='TB infection'>結核感染</span><br>無症状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-infectious'>非感染性</span>"]
    F --> G["免疫低下で再活性化しうる"]
    E -->|"いいえ"| H["進行性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Primary TB'>初感染結核</span>"]
    G --> I["二次性肺結核・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrapulmonary tuberculosis'>肺外結核</span>"]
    H --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>"]
    I --> K["空洞・組織破壊・伝播"]
    J --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miliary tuberculosis'>粟粒結核</span>・髄膜炎など"]

肉芽腫は菌を「排除」する構造ではなく、増殖を抑えて閉じ込める構造である。と所属リンパ節病変はをつくり、線維化・石灰化すればとなる。再活性化はの高い・に好発し、が気管支へ排出されると空洞を形成する。

臨床像

肺結核

再活性化ではの線維、融合影、空洞が典型的だが、初感染、小児、感染、高齢者では・腫大、病変、びまん性影など非典型像を示しうる。正常に近いや塗抹陰性だけでは除外できない。

肺外・播種性結核

病型 主な臨床像 特に注意する点
リンパ節結核 頸部などの無痛性腫脹、癒合、瘻孔 感染で多い。組織を培養・分子検査へ提出する
が融合して腫瘤を作る。中枢神経では、肺ではとして現れる ⚠️ 腫瘍と紛らわしい。Ranke複合の実質側成分であるGhon巣とは別物
結核性 発熱、、片側胸水 胸水だけでなく胸膜組織の検査が有用なことがある
頭痛、発熱、意識変容、 を含め直ちに評価し、疑いが強ければ治療を遅らせない
骨・関節結核 、、、 ・不安定性を評価する
泌尿生殖器結核 、血尿、不妊 尿など病変部位の複数検体を用いる
腹部結核 腹痛、腹水、、リンパ節腫大 悪性腫瘍・との鑑別が必要
発熱、体重減少、肝脾腫、低酸素、 胸部画像の微細なびまん性を見逃さず、複数臓器から検体を得る

⭐ は播種性・でみられる所見であり、通常の肺結核では期待されない。にを伴う症例ではを念頭に置き、骨髄を含む複数部位からの検体採取を検討する。

小児結核

小児は成人より初感染後早期に発病しやすく、・病変、、、が重要である。特に乳幼児と感染児は播種リスクが高い。長引く咳・発熱だけでなく、体重増加不良、活気低下、感染性患者との同居・濃厚接触を手掛かりにする。

小児肺結核はで、自発喀痰を出せないことも多い。胸部画像でやを探し、、、、便など年齢と利用できる検査法に適した検体から・培養を行う。TST・・塗抹の陰性だけで除外しない。

皮膚結核

病型群 代表例 成立機序・皮膚所見
外因性接種 、 接種部の無痛性潰瘍、または免疫獲得後の・局面
隣接からの進展 リンパ節・骨などの深部から皮膚へ連続し、、瘻孔、瘢痕をつくる
血行・ 、、 赤褐色丘疹・、無痛性皮下結節、多発丘疹・潰瘍など
遠隔感染への免疫反応 、 病変内の菌が検出されないことも多く、遠隔の活動性を検索する

の慢性瘢痕病変では、では交通するリンパ節・を見逃さない。皮膚生検は病理だけで終えず、組織・膿を、、へ提出する。

診断

活動性結核を疑うとき

flowchart TD
    A["咳・全身症・画像・接触歴から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active tuberculosis'>活動性結核</span>を疑う"] --> B["肺・気道・喉頭病変なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airborne precautions'>空気予防策</span>"]
    B --> C["治療前に良質な病変部位検体を採取"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>推奨<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapid molecular test'>迅速分子検査</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acid-fast smear'>抗酸菌塗抹</span>"]
    C --> F["液体・固形培養+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antimicrobial susceptibility testing'>薬剤感受性試験</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>検出・初期耐性を評価"]
    E --> H["菌量・感染性の目安"]
    F --> I["菌を分離し感受性を確定"]
    G --> J["画像・病理・臨床像と統合"]
    H --> J
    I --> J
    J --> K["有効な多剤治療+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='public health'>公衆衛生</span>対応"]
  1. 胸部X線を行い、必要に応じてで空洞、リンパ節、、胸水、気道病変を評価する。
  2. 呼吸器検体を通常複数回採取する。喀痰を出せなければを優先し、必要に応じ、、を検討する。小児では年齢と利用する迅速検査に応じてや便も候補となる。
  3. 推奨を初期検査とし、と機種に応じたを迅速評価する。
  4. は感染性の目安になるが、とを区別できず、陰性でも結核を除外しない。
  5. 液体・固形培養と表現型を行う。分子学的耐性検査と食い違う場合も専門的に解釈する。
  6. では胸水、髄液、リンパ節、骨、皮膚、尿など病変部位から組織と体液を採取し、病理・微生物検査を組み合わせる。

2025年診断指針では、になりやすい集団に対し、初診時から複数種類の検体を同時に検査して感度を高める。成人・青年の感染者で症状・陽性スクリーニング、または進行病があれば、呼吸器検体のと尿LF-LAMを併用する。陰性または感染状況不明の小児では呼吸器検体と便のを同時に行い、感染児ではこれらに尿LF-LAMを加える選択肢がある。一部の検体を採れないことを理由に、採取できた検体の検査を遅らせない。

が陰性でも、の小児・感染・では除外できない。病変部位、検体量、治療前確率を踏まえて再採取や別部位の検査を行う。

結核感染の免疫学的検査

検査 利点 限界
TST 安価で広く利用できる 48〜72時間後に発赤ではなくのを測る。・の影響、免疫不全での偽陰性がある
の影響を受けにくく、再来院が不要 免疫不全では偽陰性・があり、採血・検査設備を要する

どちらも感染と活動性疾患を区別せず、の単独除外検査ではない。陽性時は症状、画像、微生物検査でを除外してからへ進む。

治療

治療原則

  • 治療前検体を確保し、リファンピシン耐性を含む迅速耐性検査と培養・を行う。
  • 感受性が不明な単剤追加を避け、同時に複数の有効薬を用いる。
  • 体重、年齢、妊娠、腎肝機能、病変部位、治療との相互作用で薬剤・用量・期間を個別化する。
  • 症状、体重、・培養、画像、毒性、服薬状況を追跡する。
  • 、調査、治療支援を部門と連携する。

薬剤感受性結核

対象 推奨される代表的レジメン 留意点
一般的な薬剤感受性結核 2HRZE/4HR H=、R=リファンピシン、Z=、E=。多くの肺結核・の標準となる
適格な12歳以上の肺結核 2HPMZ/2HPM1 P=、M=を含む4か月レジメン。適格条件と除外規定は下の⚠️にまとめる
3か月〜16歳の非重症結核 2HRZ(E)/2HR 末梢リンパ節、気道閉塞のないリンパ節、非空洞性で一に限局する病変などが対象。重症・播種性病変には用いない
・など 病変別レジメン 標準肺結核より薬剤構成・期間が異なりうる。髄膜炎では副腎皮質ステロイドを併用する

⚠️ 4か月レジメンは対象が細かく限定されており、除外規定がそのまま安全性に直結する。 米国の2022年暫定指針は、対象を12歳以上かつ体重40 kg以上で、が判明も疑われもしていない肺結核であり、このレジメンの禁忌が無い患者としている。投与は8週のHPMZに続く9週のHPMで計119回を連日・食後に行い、標準レジメンと同じく週7回のうち5回以上を直接服薬確認下とする。そのうえで、同指針は次の群について研究されておらず推奨しないと明記する2。

  • 体重40 kg未満、12歳未満
  • 妊娠中または授乳中
  • 大半の(例外は下記の相談群に回る)
  • の既往、または以外にQT延長をきたす薬剤を1剤以上併用している場合
  • ・・・と臨床的に問題となる薬物相互作用をもつ薬剤を服用している場合
  • 治療開始前のが・・リファンピシン・フルオロキノロンのいずれかに耐性と判明、または耐性が疑われる場合

💡 QT延長の条件がこのレジメンに固有なのは、構成薬にが入るためである。 同指針の原文は「に加えて」1剤以上と書いており、以外にもう1剤された時点で除外側に回る。

除外ではなくへの相談を要する群として、同指針は別に次を挙げる2。

  • 構成薬へのが高い者——直近6か月にまたはの治療を5回分超受けた、あるいは直近30日に理由を問わず・リファンピシン・・・・フルオロキノロンのいずれかを5回分超受けた
  • またはがの3倍超、が2.5倍超、あるいは既存の進行した肝疾患
  • ・、あるいはクレアチニンがの2倍超
  • 血漿カリウム3.5 mEq/L未満
  • で死亡・機能障害の重大なリスクを伴わず長期治療を要さない型の(すなわち胸膜結核・リンパ節結核)
  • 治療開始前に耐性検査用の検体を提出できなかった者

感染者では、CD4数100/µL以上で、かつをの一部として使用中または開始予定であり、とのあいだに他の既知の相互作用が無い場合に用いてよい2。⚠️ 治療中に妊娠が判明した場合は、本レジメンを中止して妊婦により安全と考えられる別のレジメンへ切り替えるかを、臨床相談のうえで決める2。

も原則として他の薬剤感受性と同じ多剤治療を行う。の切除は診断、整容、残存病変への補助となりうるが、の代わりにはならない。

主な薬剤毒性

薬剤 主な有害事象 監視・対策
肝障害、末梢神経障害 症状・肝機能を監視し、栄養不良、妊娠、、糖尿病、腎不全などではを併用する
リファンピシン 肝障害、血球減少、体液橙赤色化、強い薬物相互作用 ART、抗凝固薬、、避妊薬などを処方全体で確認する
肝障害、、関節痛 症候性肝障害・状を評価する
治療前と治療中に視力・を年齢に応じて評価し、視覚症状を直ちに確認する
QT延長、、、 QT延長薬、電解質、心電図、状を背景リスクに応じて確認する
リネゾリド 骨髄抑制、末梢・ 血算、神経症状、視覚症状を反復する

薬剤耐性結核

分類 定義
リファンピシン耐性
少なくとも+リファンピシン耐性
MDR/+
MDR/++またはリネゾリドの少なくとも一方への耐性

2026年指針(第2版)では、適格なMDR/に6か月の全経口(++リネゾリド+)を第一に提案する。を伴う肺結核()では重症度で分け、非重症ならBPaL、重症ならを加えたBPaLCとする。を使えない患者にはBDLLfx/C(++リネゾリド++)があり、非重症のではを外したBDLCを用いるが、⚠️ 重症のにはBDLCを用いない(耐性増幅のおそれ)1。重症とは、胸部X線のに1+以上が重なる場合、または空洞が無くても塗抹2+以上の場合を指す1。感受性結果、既治療歴、病変部位、年齢、妊娠、薬剤毒性から選び、全例へ注射薬入り18〜24か月治療を行う旧来の固定方針は用いない。

6か月レジメンに適格でない場合は、が除外されたMDR/に9か月の全経口基盤レジメンを用いる(推奨B2.1・条件付き)。(6か月)+/+++高用量++を4か月(4か月終了時にが続けば6か月まで延長可)、続いて/+++を5か月投与する。をリネゾリド2か月に置き換えた変法があり、リネゾリド版は妊婦にも使える1。2025年の第1版はさらに、endTB試験に基づく改変9か月レジメン(BLMZ、BLLfxCZ、BDLLfxZ=・リネゾリド・を軸に、/・・を組み合わせる)を18か月超の長期レジメンより提案する推奨を新設し(第2版の推奨B2.2として変更なく存続)、3つの中では BLMZ、次いで BLLfxCZ を提案する(いずれも条件付き)。改変版は広範な病変や、中枢神経・骨関節・多臓器を除く、小児、妊婦・にも適用できる1。⚠️ ここは「推奨」と「エビデンス評価の中間」を分けて読む。 指針が推奨文として置いているのは推奨B1.1(6か月のを9か月・18か月のレジメンより提案する)で、その注記は、が記録された場合に非重症ならを抜いたBPaL、重症ならをに替えたBPaLCを開始または継続すると定める(第2版で新設の推奨B1.1a・B1.1b)。一方、レジメンを比較したPICO 5の中間は、を伴わない肺MDR/について、BPaL(リネゾリド600 mg・26週)を版9か月レジメン・18か月の長期レジメン・をリネゾリド2か月に置き換えた9か月レジメンのいずれよりも条件付きで推奨する、という評価の到達点を述べたものである。つまりフルオロキノロン感受性例で実際に用いるのはであり、を落としたBPaLはが記録された非重症例の形である。いずれにせよ9か月レジメンは第一に選ぶものではない1。

短期レジメンを組めず長期レジメン(多くの患者で総治療期間18〜20か月)になる場合も、組み込む薬に優先順位がある。と/は、「・リネゾリド・・を用いない場合、またはそれ以上によい構成が組めない場合に限って含めてよい」という条件を付けた条件付き推奨(推奨B3.12・B3.13)に置かれ、だけが「含めるべきでない」という強い推奨(推奨B3.14)である1。⚠️ とは中枢神経への移行が悪く、MDR/髄膜炎では有効な薬として数えない(髄膜炎では小児の痙攣リスクからよりが好まれ、高用量とも感受性があれば有用)1。

⚠️ リファンピシン耐性を検出したら、通常の2HRZE/4HRを漫然と続けず、・フルオロキノロン・・リネゾリドなどへの耐性を速やかに評価し、結核と有効薬を組み直す。

HIV併存

結核予防治療とBCG

を除外してから、感染源の感受性、年齢、妊娠、治療、併用薬、可能性に応じて結核を選ぶ3。

レジメン 内容 主な位置づけ
6H・9H 毎日を6または9か月 感染の有無を問わず推奨される選択肢(勧告19・強い推奨)。リファンピシンなどリファマイシンを使えないときは6か月以上のが最も適切になりうる。期間が長く、肝障害と率に注意する
3HP 週1回+を3か月 同じく勧告19の推奨レジメン。年齢、妊娠、ARTとの相互作用を確認する
3HR 毎日+リファンピシンを3か月 同じく勧告19の推奨レジメン。小児・成人で利用でき、ARTとの適合性を確認する
1HP 毎日+を1か月 感染の有無を問わない代替(勧告20・条件付き推奨)。年齢、妊娠、ARTとの相互作用を確認する
4R 毎日リファンピシンを4か月 同じく勧告20の代替。耐性・リファンピシン感受性の感染源にも選択でき、薬物相互作用に注意する
6Lfx 毎日を6か月 MDR/に曝露したへの強い推奨(勧告21、確実性は中等度)。第2版で新設され、2018年の条件付き推奨を置き換えた。を確実に除外し、感染源の耐性と禁忌を確認する

細菌学的に確認された肺結核患者の家庭内接触児で5歳未満なら、を除外したうえで、の検査が利用できなくてもを行う(強い推奨)。感染の成人・青年も、免疫抑制の程度やART・結核治療歴を問わず、の検査が利用できなくても対象になる。5歳以上の家庭内へのは条件付き推奨で、感染検査による裏づけが望ましい。感染源がMDR/なら、2024年指針に基づき6Lfxを含む感受性に合うを部門と進める。

はM. bovis由来ので、乳幼児の・などを減らすが、や成人肺結核を完全には防がない。接種時期・適応は各国の制度に従い、既知のでは接種しない。

TNF-α阻害薬を始める前に

は肉芽腫を維持する中心的なサイトカインなので、その阻害は封じ込められていた菌の再活性化につながる。は、抗治療を開始する人を、透析中の人・臓器または造血器移植を控えた人・の人とともに、を系統的に検査して治療する対象として強く推奨している(勧告7、確実性は低〜非常に低い)3。

⚠️ 禁忌の書き方は薬剤ごと・国ごとに違うので、「だから同じ」と読まない。

薬剤 のSmPC 4.3 日本の電子添文 2. 禁忌 米国の添付文書 4.
「結核その他の重篤な感染症」。活動性という限定語が付かない4 5 中等症・への5 mg/kg超と過敏症の2項目だけで、結核はの側6
その他の重篤な感染症7 8 禁忌欄は「なし」9
過敏症・敗血症またはそのリスク・(慢性・限局性を含む)では開始しないの3段。結核を名指しするのは4.4(と診断されたら開始してはならない)10 11 敗血症の1項目だけ12

いずれの文書も(既感染)結核そのものは禁忌としない。のSmPCはと診断されたら治療を先行させてから開始するとし10、日本の電子添文(9.1.2)は結核に合致する陰影・肺外を含む結核の治療歴・やで既感染が強く疑われること・結核患者との濃厚接触歴のいずれかがあれば、原則として開始前にを投与するとしている8。

感染対策と公衆衛生

  • :入口で症状をし、活動性肺・気道・喉頭結核を疑う患者を速やかに分離して、診断と有効治療を遅らせない。患者へ咳エチケットを説明し、移動時は医療用マスクを用いる。
  • 環境的対策:自然・を最大化し、可能ならを用いる。施設リスクに応じ空間の殺菌用紫外線も組み合わせる。
  • :医療者は適合確認したN95相当以上の粒子用を用いる。だけに依存せず、管理・環境対策と一体化する。
  • 、気管支鏡などを発生しうる処置は、適切な換気と呼吸用防護を確保した場所で行う。
  • 感染性の解除は「治療を始めて一定日数」だけで決めず、有効治療、臨床反応、塗抹・培養、耐性、環境とリスクを統合する。
  • 、感染源調査、家庭・職場・学校などの、の治療を地域の結核対策と連携する。
  • 服薬支援は非難ではなく障壁の解消を目的とし、対面・ビデオによる服薬確認、通訳、交通・住居・栄養支援などを個別に組み合わせる。

まとめ

  • とを区別し、TST・陽性だけでと診断せず、塗抹陰性だけで除外しない。
  • 活動性肺・気道・喉頭結核を疑えば、確定前から、、塗抹、培養・を並行する。
  • 薬剤感受性結核の標準は2HRZE/4HRで、適格な成人・青年や非重症小児には検証済み4か月レジメンがある。ただし+の4か月レジメンは、12歳未満・体重40 kg未満・妊娠/授乳中・大半の・の既往や他のQT延長薬の併用・構成薬への耐性を除外規定として持つ2。
  • MDR/は現行の耐性定義と感受性に基づき、・BDLLfx/Cなど6か月のを専門管理する。は重症度で分け、非重症はBPaL(またはBDLC)、重症はBPaLCとする。
  • 小児、感染、皮膚・髄膜・骨関節などのは・非典型になりやすく、陰性検査を過信せず病変部位から検体を得る。
  • 阻害薬の開始前、透析中、移植前、ではを系統的に検査して治療する。禁忌の書き方は剤と国で違うが、はどの文書でも禁忌ではなくを先行させる対象である。
  • 治癒には有効薬だけでなく、服薬支援、毒性監視、、調査、結核が不可欠である。

出典

  1. 1.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: treatment and care, second edition(World Health Organization・2026)2026-09-27に第2版(ISBN 978-92-4-012512-4)のPDF本体で確認した。推奨A2.1は12歳以上の薬剤感受性肺結核に4か月のイソニアジド・リファペンチン・モキシフロキサシン・ピラジナミド(脚注で2か月HPMZ→2か月HPM)を用いてよいとする(薬剤感受性結核の推奨は第1版から不変)。推奨B1.1(更新)はMDR/RR-TBに6か月のBPaLMを9か月・18か月レジメンより提案し、B1.1a・B1.1b(新規)は肺pre-XDR-TBのうち非重症にBPaL、重症にBPaLCを提案する。重症は胸部X線の空洞性病変かつ塗抹1+以上、または空洞が無くても塗抹2+以上と定義される。B1.2(更新)はBDLLfx/Cをフルオロキノロン耐性の有無を問わず提案し、BPaLMを使えない患者の選択肢と位置づけ、B1.2a(新規)は非重症の肺pre-XDR-TBにBDLCを提案し、B1.2b(新規)は重症の肺pre-XDR-TBにBDLCを用いないよう提案する。推奨B2.1の9か月全経口レジメンの構成とリネゾリド版が妊婦に使えること、B2.2の改変9か月レジメン(BLMZ>BLLfxCZ>BDLLfxZ)の適用範囲が広範な病変・中枢神経・骨関節・播種型を除く肺外結核・小児・妊婦・授乳婦に及ぶことは第1版から不変。PICO 5–2022の中間結論は、フルオロキノロン耐性を伴わない肺MDR/RR-TBでBPaL(リネゾリド600 mg・26週)をエチオナミド版9か月・18か月長期・リネゾリド版9か月の各レジメンより条件付きで推奨する評価であると述べる。推奨B3.12・B3.13はエチオナミド/プロチオナミドとパラアミノサリチル酸を「ベダキリン・リネゾリド・クロファジミン・デラマニドを用いない場合、またはそれ以上によい構成が組めない場合に限って含めてよい」とする conditional recommendation, very low certainty of evidence、B3.14はクラブラン酸を含めない強い推奨、B3.15は長期レジメンの総期間18〜20か月。肺外結核と髄膜炎の項は、パラアミノサリチル酸とエタンブトールは中枢神経への移行が悪く有効薬として数えないこと、小児の痙攣リスクからイミペネム・シラスタチンよりメロペネムが好まれること、高用量イソニアジドとピラジナミドは感受性があれば有用なことを述べる。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Interim Guidance: 4-Month Rifapentine-Moxifloxacin Regimen for the Treatment of Drug-Susceptible Pulmonary Tuberculosis - United States, 2022(Centers for Disease Control and Prevention・2022)2026-09-21にWayback Machineのid_付き生HTML(2023-09-29保存分)でMMWR 71巻8号285-289頁の全文を取得し、次を逐語で確認した。対象が「patients aged ≥12 years with body weight ≥40 kg with pulmonary TB caused by organisms that are not known or suspected to be drug-resistant and who have no contraindications to this regimen」であること。強化期8週のRPT・MOX・INH・PZAに続く維持期9週のRPT・MOX・INHで計119回を連日・食後に投与し、週7回のうち5回以上を直接服薬確認下で行うこと。推奨しない群が「body weight <40 kg; age <12 years; pregnant or breastfeeding; most types of suspected or documented extrapulmonary TB infection (see exceptions below); history of prolonged QT syndrome or concurrent use of one or more QT-prolonging medications (in addition to MOX); patients receiving medications with known clinically relevant drug-drug interactions with RPT, MOX, INH, or PZA; or patients infected with a baseline Mycobacterium tuberculosis isolate known or suspected to be resistant to INH, PZA, rifampin (RIF), or fluoroquinolones」であること。HIV感染者では「CD4 counts ≥100 cells/μL and are receiving or planning to initiate efavirenz as part of their antiretroviral therapy (ART) regimen in the absence of any other known drug-drug interactions between antituberculosis and antiretroviral medications」の場合に用いてよいとすること。臨床相談を要する群として直近6か月の抗結核治療または潜在性結核感染治療5回分超、直近30日のINH・RIF・rifabutin・RPT・PZA・フルオロキノロン5回分超、ALTまたはASTが基準上限の3倍超もしくは総ビリルビン2.5倍超もしくは既存の進行した肝疾患、腎機能障害・末期腎不全もしくはクレアチニン2倍超、血漿カリウム3.5 mEq/L未満、少菌性で死亡・機能障害の重大なリスクを伴わず長期治療を要さない型の肺外結核(胸膜結核・リンパ節結核)、治療開始前に耐性検査用検体を提出できなかった者を挙げること。治療中に妊娠した場合は本レジメンを中止して別のレジメンへ替えるかを臨床相談で決めるとすること。本文中に体重40 kg以上を求めるのは本暫定指針であり、WHOの側に同じ体重条件があるかは本実行では確認できていない。閲覧 2026-09-21
  3. 3.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 1: Prevention – Tuberculosis preventive treatment, second edition(World Health Organization・2024)結核予防治療のレジメン(3HP・1HP・4R・3HR・6H/9H、MDR/RR-TB接触者への6Lfx)が2024年時点のWHO現行推奨であることを確認した。2026-09-17にIRISのPDF本体(第2版、2024年9月9日公開)を取得し、次を確認した——勧告19が6か月または9か月のイソニアジド・3HP・3HRをHIV感染の有無を問わず推奨する強い推奨であり、勧告20の1HPと4Rが代替の条件付き推奨であること(第2版で2020年版の1つの勧告を推奨と代替の2つに分けた)。リファンピシン単剤耐性などリファンピシンが使えない場合は6か月以上のイソニアジドが最も適切な選択肢になりうるとし、イソニアジド耐性・リファンピシン感受性の感染源の接触者には4Rを提示すること。勧告21(本版で新設、2018年の条件付き推奨を置き換え)がMDR/RR-TB曝露者への6か月レボフロキサシンを強い推奨・確実性中等度で求めること。勧告5が細菌学的に確認された肺結核患者の5歳未満の家庭内接触児に、結核感染の検査が利用できなくても予防治療を行う強い推奨であり、5歳以上は勧告6の条件付き推奨であること。勧告1がHIV感染の成人・青年について免疫抑制の程度やART・結核治療歴を問わず、結核感染の検査が利用できなくても予防治療を行うとすること。勧告7が抗TNF治療を開始する人・透析中の人・臓器または造血器移植を控えた人・珪肺の人を、結核感染の系統的な検査と治療の対象とする強い推奨(確実性は低〜非常に低い)であること。閲覧 2026-09-17
  4. 4.Remicade 100 mg powder for concentrate for solution for infusion — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)4.3の禁忌が成分・他のマウス由来蛋白質・添加剤への過敏症、「結核その他の重篤な感染症(敗血症・膿瘍・日和見感染など)」、中等症または重症の心不全(NYHA III/IV)の3項目で、ヒュミラのSmPCと違って結核に「活動性」の限定語が付かないこと、4.4は活動性結核と診断されたら開始してはならないとし、不活動性(潜在性)結核では抗結核薬治療を先行させると定めることを確認した。閲覧 2026-09-17
  5. 5.レミケード点滴静注用100 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2.禁忌の2.2が「活動性結核の患者」であり、EUのSmPCと違って活動性の限定が付くこと、9.1.2が結核の既感染者に対し原則として抗結核薬の投与をしたうえで本剤を投与すると定めることを確認した。閲覧 2026-09-17
  6. 6.REMICADE (infliximab) for injection, for intravenous use — Highlights of Prescribing Information(Janssen Biotech, Inc. / U.S. Food and Drug Administration(DailyMed収載、2025年2月改訂)・2025)4.CONTRAINDICATIONSが「中等症または重症の心不全の患者への5mg/kgを超える用量」と「インフリキシマブ・添加剤・マウス由来蛋白質に対する重篤な過敏症の既往」の2項目で結核を含まず、結核は枠組み警告の重篤な感染症の筆頭に置かれていることを確認した。閲覧 2026-09-17
  7. 7.Humira 20 mg solution for injection in pre-filled syringe — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)4.3の禁忌が成分・添加剤への過敏症、「活動性結核その他の重篤な感染症(敗血症・日和見感染など)」、中等症から重症の心不全(NYHA III/IV)の3項目であること、4.4が活動性結核と診断されたら開始してはならないとし、潜在性結核と診断された場合は抗結核薬の予防投与を先行させると定めることを確認した。閲覧 2026-09-17
  8. 8.ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL/40mgシリンジ0.4mL/80mgシリンジ0.8mL/40mgペン0.4mL/80mgペン0.8mL 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2.禁忌の2.2が「活動性結核の患者」であること、9.1.2が結核の既感染者を禁忌ではなく注意の対象とし、陳旧性結核に合致するか推定される陰影・肺外結核を含む結核の治療歴・IGRAやツベルクリン反応で既感染が強く疑われること・結核患者との濃厚接触歴のいずれかに当てはまる患者には原則として本剤の開始前に適切な抗結核薬を投与すると定めることを確認した。閲覧 2026-09-17
  9. 9.HUMIRA (adalimumab) injection, for subcutaneous use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2025)4.CONTRAINDICATIONSの記載が None(禁忌なし)で結核も含まれず、活動性結核と潜在性結核の再活性化は枠組み警告の側に置かれていることを確認した。閲覧 2026-09-17
  10. 10.Enbrel 25 mg powder for solution for injection — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)2026-09-17にPDF全文を再取得し、4.3が「成分または添加剤への過敏症」「敗血症またはそのリスク」「慢性・限局性を含む活動性感染のある患者では本剤による治療を開始してはならない」の3段からなることを確認した(規格違いの全6製剤で同一)。4.3には結核という語が1度も現れず、活動性結核はこの3段目の活動性感染として掛かる。結核を名指しするのは4.4で、「活動性結核と診断されたらエンブレルを開始してはならない」「不活動性(潜在性)結核と診断されたら抗結核薬による潜在性結核の治療を先行させる」と定める。閲覧 2026-09-17
  11. 11.エンブレル皮下注25mgペン0.5mL/エンブレル皮下注50mgペン1.0mL 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2.禁忌の2.3が「活動性結核の患者」であること、2.1が「敗血症の患者又はそのリスクを有する患者」で、その根拠として敗血症患者を対象とした臨床試験で本剤投与群の死亡率が用量の増加に伴い上昇したことが角括弧内に記されていること、結核の既感染者は禁忌ではなく9.1.2として抗結核薬を先行投与する対象であることを確認した。閲覧 2026-09-17
  12. 12.ENBREL (etanercept) injection, for subcutaneous use — Highlights of Prescribing Information(Immunex Corporation / U.S. Food and Drug Administration(DailyMed収載、2024年10月改訂)・2024)4.CONTRAINDICATIONSが「敗血症の患者」の1項目だけで結核を含まず、結核は枠組み警告の重篤な感染症の筆頭に置かれていることを確認した(Highlights末尾の改訂表示は10/2024、labelerはImmunex Corporation)。閲覧 2026-09-17