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Drug Atlas · C2 Antimycobacterials / 抗結核薬 · 必修

ベダキリン

bedaquiline

分類
Antimycobacterials / 抗結核薬
商品名(日本)
サチュロ
商品名(EU)
Sirturo
科目
Pharmacology
トピック
C2: Antimycobacterial drugs
標的微生物
Mycobacterium tuberculosis
副作用
悪心頭痛めまい関節痛
相互作用
リファンピシン
対象疾患
結核多剤耐性結核

🧠 全体像:は2012年に登場した治療の転換点となった薬で、他のがや蛋白合成を狙うのに対し、のそのものを止めてを断つという完全に独立した機序を持つ。この機序の独立性ゆえに既存薬とのがなく、でも使える。QT延長という代表的な副作用と、半減期が数か月に及ぶという他のにない特異なが、この薬の臨床上の注意点をほぼ決めている。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 機序 位置づけ
阻害(を断つ) /BPaL/BPaLC・BDLLfx/Cの両系統の中核。既存薬となし
+NO産生 代替(BDLLfx/Cなど)
+NO産生 /BPaL/BPaLCでと必ず組む相方
など 細胞壁・ 薬剤感受性結核が対象。機序が異なるためがない

⭐ 2026年指針(第2版)では、適格な多剤耐性/に6か月の全経口(++リネゾリド+)が提案され、の肺結核()では非重症ならBPaL、重症ならを加えたBPaLCが用いられる。 かつての「注射薬を含む18〜24か月治療」という固定方針はもはや標準ではなく、はこの転換の中心にいる薬剤である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bedaquiline'>ベダキリン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP synthase'>ATP合成酵素</span>(F1F0-ATP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synthase'>シンターゼ</span>)に結合"] --> B["Fo サブユニットのプロトン輸送を阻害"]
    B --> C["ATP産生ができなくなる"]
    C --> D["増殖中の菌だけでなく<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dormant state'>休眠状態</span>の菌の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='energy production'>エネルギー産生</span>も断たれる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>に作用"]

💡 「休眠中の菌にも効く」という点が他のRIPE構成薬との違いを生む。 が分裂中の菌にしか効かないのに対し、ATP合成そのものを止めるは代謝の遅い菌にも作用しうるため、難治性のに効果を発揮する。

薬物動態

項目 値・特徴
食後投与で吸収が高まる(食事の影響が大きい)
分布 脂肪組織を含め広く分布
代謝 で代謝(N-モノデスメチル体を生成、QT延長への寄与もある)
排泄 主に
半減期 で約5.5か月という極めて長い半減期

⚠️ 半減期が月単位に及ぶことが臨床上の最大の特殊性。 投与終了後も血中濃度が数か月にわたり残るため、QT延長リスクや他剤との相互作用が服薬終了後も続く点、逆にが多少不完全でもが維持されやすい点の両方に影響する。阻害薬(一部のなど)は血中濃度を上げ、(リファンピシンなど)は著しく下げるため併用を避ける。

適応

:必ず他剤との併用療法の一部として使用する。2026年指針(第2版)では6か月の全経口(++リネゾリド+)が中心的なレジメンで、では非重症ならBPaL、重症ならBPaLCとする1。を使えない患者向けのBDLLfx/C(++リネゾリド++)にも含まれるが、重症のにBDLCは用いない——例で耐性が増幅しうるためである1。単剤や2剤以下での使用は行わない。

用法・用量

PO。に投与し、投与開始から2週間は1日1回、その後は週3回(48時間以上あける)投与へ切り替えるが用いられる。/BPaL/BPaLCなどの併用レジメンの一部として使用し、投与前後で心電図(QT)・肝機能・電解質のモニタリングを行う。実際の用量・期間は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:著明なQT延長、単剤使用(必ず併用療法の一部として使用)
  • ⭐ 米国添付文書のは現在「延長」のみである。 承認根拠となった第IIb相プラセボ対照試験(Study 1)では120週時点の死亡が本剤群9/79例(11.4%)・プラセボ群2/81例(2.5%)と本剤群で多く原因は不明とされたが、この死亡数の不均衡はではなく通常のWarnings and Precautions項に記載され、その後のでは40週投与群11/211例(5.2%)対対照群8/202例(4%)と差が縮小している2。
  • ⚠️ QT延長は他のQT延長薬との併用でリスクがされる。 で併用する、BPaLC・BDLLfx/Cで併用する(BDLLfx/Cでは・も)もQT延長作用を持つため、開始前・投与中の定期的な心電図評価と電解質(カリウム・・カルシウム)補正が欠かせない
  • リファンピシンなどの強いは血中濃度を著しく下げるため併用を避ける
  • 半減期が長いため、投与終了後も一定期間はQT延長・相互作用リスクが残ることを念頭に置く

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心・嘔吐・下痢、頭痛、めまい
注意 関節痛・筋肉痛、
重篤・まれ QT延長、

まとめ

  • を阻害しのを断つ、既存薬とのない独立した機序を持つ。
  • 2026年指針(第2版)の中心である全経口/BPaL/BPaLCレジメンの主軸で、治療の転換点となった薬。
  • QT延長が代表的な重篤副作用。同じレジメン内の・とのに注意し、心電図・電解質を監視する。
  • 半減期が約5.5か月という他のにない特異なを持ち、投与終了後もリスク・相互作用が残る。
  • 基質のため、リファンピシンなどの強いは血中濃度を下げ、阻害薬は上げる。
  • 単剤使用は禁忌。必ず併用療法の一部として使う。

出典

  1. 1.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: treatment and care, second edition(World Health Organization・2026)2026-09-27に第2版(ISBN 978-92-4-012512-4)のPDF本体で確認した。推奨B1.1(更新)がMDR/RR-TBに6か月のBPaLM(ベダキリン・プレトマニド・リネゾリド・モキシフロキサシン)を提案し、B1.1a・B1.1b(新規)が肺pre-XDR-TBのうち非重症にBPaL、重症にクロファジミンを加えたBPaLCを提案すること。B1.2(更新)がBDLLfx/C(ベダキリン・デラマニド・リネゾリド・レボフロキサシン・クロファジミン)をBPaLMを使えない患者の選択肢として残し、B1.2b(新規)が重症の肺pre-XDR-TBにBDLCを用いないよう提案し、その理由として治療失敗例でベダキリン耐性が増幅しうることを挙げること。ベダキリンがいずれのレジメンにも含まれる構成薬であること。閲覧 2026-09-27
  2. 2.SIRTURO (bedaquiline fumarate) tablets, for oral use, full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration・2025)2025年7月改訂の米国添付文書では枠組み警告(boxed warning)が「QTc延長」のみとなっており、承認根拠となった第IIb相プラセボ対照試験(Study 1)で見られた死亡数の不均衡(本剤群9/79例11.4%対プラセボ群2/81例2.5%、原因不明)は枠組み警告ではなく通常のWarnings and Precautions(5.2項)に記載が移っていること、その後の活動比較試験(Study 4)では40週投与群11/211例5.2%対対照群8/202例4%と差が縮小していること、承認適応は2歳以上・体重8kg以上の多剤耐性肺結核への併用療法であり単剤や潜在性結核・薬剤感受性結核・肺外結核・非結核性抗酸菌感染症には用いないことを確認した。閲覧 2026-08-27