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Microbe Atlas · 細菌

Mycobacterium tuberculosis

結核菌

分類
抗酸菌 / Acid-fastMycobacterium
性状
抗酸菌 Acid-fast桿菌 Bacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/34: Causative agents of human tuberculosis, Mycobacterium leprae5/8: The most important microbial pathogens of the urinary tract (list)5/12: The most important bacteria causing meningitis and encephalitis (list), their diagnosis, and principles of treatment
原因となる疾患
HIV感染症・AIDS胸膜炎結核結核腫結核性脊椎炎結節性血管炎結節性紅斑原発性副腎不全多剤耐性結核腸腰筋膿瘍肺動脈瘤免疫再構築炎症症候群
作用する薬剤
アミカシンイソニアジドエタンブトールエチオナミドオクテニジンカナマイシンカプレオマイシンクロファジミンクロルヘキシジンシクロセリンストレプトマイシンデラマニドテリジドンパラアミノサリチル酸ピラジナミドプレトマニドプロチオナミドベダキリンモキシフロキサシンリファブチンリファペンチンリファンピシンレボフロキサシン転化石鹸

🧠 全体像:を読み解く軸は「の厚いでマクロファージの中に隠れる」の一点に尽きる。この壁がグラム染色を拒み、同時にの消化機構からも菌体を守るため、感染はほぼ必ず肉芽腫による封じ込め→潜伏感染→数十年後の再活性化という時間軸をたどる。同じMycobacterium tuberculosis complex(MTBC)に属すM. bovis・M. africanumとはほぼ同一の病態を起こすが、ヒトを主要なとする点が本種の中心的な位置づけを決める。

微生物学的な特徴

項目 内容
形態 桿菌、芽胞なし、莢膜なし、線毛なし
細胞壁 約60%が脂質()——疎水性で、・多くの抗菌薬の透過を妨げる
酸素要求性
発育速度 極めて緩徐(分裂に約18時間)。液体培地でも数週間を要する

Ziehl-Neelsen(抗酸)染色:を加熱して厚い脂質壁に浸透させると、による脱色に抵抗して色素を保持する(=)。抗酸菌は赤色、でされた背景・他の細胞は青色に見える。

💡 グラム染色不可とは、同じ壁が持つ2つの側面。 脂質に富む壁は-ヨウ素複合体を保持できずグラム染色では脱色されてしまうが、いったん加熱して浸透させたフクシンは逆に手放さない。「染まりにくいが、いったん染まると落ちない」という一見矛盾する性質は、どちらも壁の疎水性から生じている。細胞壁が厚すぎて染まらない点は、細胞壁が存在しないために染まらないMycoplasma属(M. pneumoniaeなど)とは理由が正反対である。

病原性の仕組み

  • :ヒトの肺
  • 伝播経路:感染性の肺・気道・喉頭結核患者が排出するの吸入()。換気不良の屋内、近距離・長時間の曝露ほど伝播しやすい
  • ——最大の。マクロファージに貪食された後もその中で増殖する
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>を吸入(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airborne transmission'>空気感染</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar macrophages'>肺胞マクロファージ</span>に貪食される"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cord factor'>コード因子</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycolipid'>糖脂質</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='granuloma formation'>肉芽腫形成</span>を誘導"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfatide'>スルファチド</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfation'>硫酸化</span>脂質)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='phagosome-lysosome fusion'>ファゴソーム-リソソーム融合</span>を阻害"]
    D --> E["マクロファージ内で生存・増殖"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Primary TB'>一次結核</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ghon complex'>Ghon複合体</span><br>(中/下葉+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hilar lymph node'>肺門リンパ節</span>)"]
    F --> G["多くは線維化・石灰化し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='TB infection'>結核感染</span>(潜伏)へ"]
    G --> H["一部が再活性化<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumour necrosis factor'>TNF</span>阻害薬・移植など)"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Post-primary TB'>二次結核</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper lobe'>上葉</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apex of the lung'>肺尖部</span>"]
    F -.-> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematogenous dissemination'>血行播種</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miliary tuberculosis'>粟粒結核</span>(致死的)"]
    H -.-> J

💡 肉芽腫は「封じ込め」であって「排除」ではない。 が誘導する肉芽腫は菌の拡散を防ぐ宿主側の防御反応だが、菌体そのものはその中で生き延び続ける——これが何十年も潜伏し続ける理由であり、産生が低下する状況(・阻害薬・移植)で肉芽腫の維持が破綻し再活性化が起こる理由でもある。

起こす疾患

病型 好発部位 臨床像
中葉/下葉+ =を伴う症。線維化・石灰化すると
二次(再活性化)結核 ・ 生涯発病リスクは感染者の約5〜10%だが、直近の感染・・阻害薬・移植で大きく上昇する。発熱、、体重減少、・喀血
肺外・多臓器 一次・二次いずれからも起こりうる生命を脅かす。髄膜・腎・骨・脾・骨髄・腸に及ぶ
腎 まれな血行性の尿路感染経路。上行性が主体のの中で例外的な位置づけ

として、(、疼痛→→・)、、(腫瘍と紛らわしい肉芽腫性腫瘤。中枢神経に多いが肺にも生じてを作る)も重要。病型ごとの詳細は結核の疾患ノートを参照。

診断

活動性肺結核を疑った時点でを開始する。

方法 内容
推奨(自動) 呼吸器検体からを迅速検出し、リファンピシンも推定する。成人・青年の肺結核疑いでは塗抹検鏡・培養に代わる初期として用いる。を疑えば脳脊髄液にも用いる1
菌量・感染性の目安。菌種は確定できず、陰性でも結核を除外できない
培養 液体培地・固形培地(など)を併用。発育が遅いためと並行する
で早期に推定し、培養に基づくで確認する

⚠️ TSTとはいずれもへの免疫応答を見ているだけで、と(潜伏)を区別できない。 陽性なら症状・画像・微生物検査で活動性疾患の有無を確認する。両者の使い分けが問われやすい一点は次の通り。

検査 原理 接種歴の影響
(TST) を皮内注射し、48〜72時間後の径を測定() 接種で偽陽性になりうる
に特異的な抗原(株には含まれない)刺激によるIFN-γ産生を測定 接種の影響を受けない

治療と予防

感受性不明の単剤治療・不規則な服薬は耐性選択に直結するため、開始時から複数の有効薬を併用する。

病型 治療の原則
薬剤感受性結核 標準は2か月の+リファンピシン++、続いて4か月の+リファンピシン(2HRZE/4HR)。は12歳以上の肺結核に4か月の2HPMZ/2HPM(・・・)も条件付きで認め、生後3か月〜16歳の非重症結核には4か月の2HRZ(E)/2HRを推奨する2
/ リファンピシン耐性()/+リファンピシン耐性()。は6か月の(++リネゾリド+)を9か月・18か月レジメンより提案する(条件付き推奨)。専門管理で選ぶ2
/ に少なくとも1つのが加わればpre-XDR、さらにまたはリネゾリドへの耐性が加わればXDR。の2026年第2版は、肺ので非重症ならBPaL、重症ならを加えたBPaLCを提案する2

⚠️ を全例に含める「RIPES」の画一運用は現行標準ではない。 髄膜炎・・妊娠・合併・腎肝障害では薬剤・期間を個別化する。

予防:

  • ワクチン:M. bovis由来の。乳幼児の・など重症病型を減らすが感染や肺結核を完全には防がず、では接種しない
  • の治療:が推奨する選択肢は6H/9H(6か月または9か月)・3HP(+週1回3か月)・3HR(+リファンピシン3か月)で、1HP(+連日1か月)と4R(リファンピシン4か月)が代替。リファンピシンなどでリファンピシンを使えなければ6か月以上のが最も適切になりうる。MDR/患者のには6か月のを用いる3

まとめ

  • に富むのためグラム染色不可・Ziehl-Neelsenで検出。マクロファージ内に寄生する。
  • が(封じ込め)を、が阻害(細胞内生存)を担う——肉芽腫は「排除」ではなく「封じ込め」。
  • ()の多くは潜伏感染となるが、・阻害薬・移植などで5〜10%が再活性化し・・(など)へ進む。
  • TSTは接種で偽陽性になりうるが、はの影響を受けない——この非対称性が両者の使い分けを決める。
  • 治療は2HRZE/4HRが標準で、4か月レジメン(12歳以上の2HPMZ/2HPM、小児の非重症例の2HRZ(E)/2HR)もある。MDR/は6か月の(など)を専門管理する。
  • ワクチンはM. bovis由来の株。

出典

  1. 1.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 3: diagnosis(World Health Organization・2025)2026-09-27に発行元ページからPDF本体(第4版、ISBN 978-92-4-010798-4)を取得し、推奨表で次を確認した。推奨1は結核の症状・徴候がある、またはスクリーニング陽性の成人・青年に、呼吸器検体での低複雑度自動核酸増幅検査を塗抹検鏡・培養に代わる初期診断検査として用いる強い推奨(確実性高)、推奨2は細菌学的に確認された結核でリファンピシン耐性の初期検査として培養法の薬剤感受性試験に代えて同検査を用いる強い推奨、推奨3は結核性髄膜炎を疑う場合に脳脊髄液で同検査を初期診断に用いる強い推奨であること。閲覧 2026-09-27
  2. 2.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: treatment and care, second edition(World Health Organization・2026)2026-09-27に発行元ページ(2026年9月23日掲載、ISBN 978-92-4-012512-4)からPDF本体を取得して確認した。推奨A1.1は新規の肺結核患者に2HRZE/4HRを強い推奨とし、A2.1は12歳以上の薬剤感受性肺結核に4か月レジメン2HPMZ/2HPM(イソニアジド・リファペンチン・モキシフロキサシン・ピラジナミド)を用いてよいとする条件付き推奨、A2.2は生後3か月〜16歳の非重症結核(MDR/RR-TBの疑いなし)に4か月レジメン2HRZ(E)/2HRを強い推奨とする。B1.1はMDR/RR-TBに6か月のBPaLM(ベダキリン・プレトマニド・リネゾリド・モキシフロキサシン)を9か月・18か月レジメンより提案し(条件付き・非常に低い確実性、2026年更新)、B1.1a(新規)は非重症の肺pre-XDR-TBにBPaL、B1.1b(新規)は重症の肺pre-XDR-TBにクロファジミンを加えたBPaLCを提案する。用語の定義で、pre-XDR-TBはリファンピシン耐性に加え少なくとも1つのフルオロキノロン(レボフロキサシンまたはモキシフロキサシン)に耐性、XDR-TBはさらに少なくとも1つの他のGroup A薬(ベダキリンまたはリネゾリド)に耐性とする。本書は2025年の第1版の有効な推奨をすべて引き継ぎ、薬剤感受性結核の推奨は変更していないと述べる。閲覧 2026-09-27
  3. 3.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 1: Prevention – Tuberculosis preventive treatment, second edition(World Health Organization・2024)2026-09-27に発行元ページからPDF本体を取得し、推奨19が6か月または9か月の連日イソニアジド・週1回リファペンチン+イソニアジド3か月・連日イソニアジド+リファンピシン3か月をHIV感染の有無を問わず推奨する選択肢として並べ、推奨20が連日リファペンチン+イソニアジド1か月と連日リファンピシン4か月を代替として挙げること、推奨21がMDR/RR-TB曝露者に6か月の連日レボフロキサシンを用いるとすること、本文がリファンピシン単剤耐性などでリファンピシンを使えない場合は6か月以上のイソニアジドが最も適切な選択肢になりうるとしていることを確認した。閲覧 2026-09-27