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Microbe Atlas · 細菌

Mycobacterium szulgai

分類
抗酸菌 / Acid-fastMycobacterium
性状
抗酸菌 Acid-fast桿菌 Bacilli
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
2/33: Actinomyces and Nocardia genus, atypical and apathogenic mycobacteria1-11: Nontuberculous Mycobacterial Skin Infections

🧠 全体像:Mycobacterium szulgaiは()の中でも全感染症の0.2〜0.5%未満というきわめてまれな菌種でありながら、肺・皮膚・骨関節・播種性と病型がきわめて多彩な点で他のと一線を画す。微生物学的な最大の特徴はの——37℃では(Runyon II群)、25℃では(Runyon I群)という、単一の菌が2つのRunyon群の性質を併せ持つ点にある。基礎に肺疾患や免疫抑制状態(生物学的製剤使用など)を持つ患者に生じやすく、標準的なだけで機械的に「性だから軽症」と判断せず、他のと同様に組織診断・・治療が要る。

微生物学的な特徴

  • 1972年に初めて記載された緩徐発育抗酸菌で、他の抗酸菌と同じくを含むを持ち、で検出する1。
  • ⭐ 温度によってパターンが変わる。 体温に近い37℃培養では暗所でも色素を産生するだが、25℃培養では光曝露で初めて色素を産生するという珍しい二面性を示す1。2〜4週間の培養で平滑または粗ぞうなコロニーを形成する1。
  • この二面性のため、上は主にII群(緩徐発育・)に位置づけられるが、培養温度によってI群(、M. marinum・M. kansasiiなど)の性質も示す点でM. scrofulaceumなど純粋なとは異なる。
  • 魚水槽・プール・病院の給水設備など環境水中に生息するで、ヒト-ヒト感染はしない1。

病原性の仕組み

病原性そのものは強くなく、基礎に肺疾患(、など)または免疫抑制状態(抗薬などの生物学的製剤使用、副腎皮質ステロイド過剰など)を持つ宿主に日和見感染として生じやすい2。では、免疫正常者でも皮膚バリアの破綻(外傷、水槽の清掃などの侵襲的な曝露)があれば感染が成立する1。

感染経路と疫学

  • 全感染症のうち0.2〜0.5%未満という、報告数のきわめて少ない菌種である(文献により推計に幅がある)12。
  • 魚水槽の水換え・清掃、プール、病院の給水設備といった環境水への曝露が感染源になる1。
  • 皮膚感染例の文献レビュー(17例)ではが10例(58.8%)を占め、罹患部位は右上肢が最も高頻度だった1。

起こす疾患

肺感染が最も頻度の高い病型で、の一亜型として、・気管支拡張・など結核と酷似した画像所見を呈しうる2。

そのほか、(丘疹・結節・膿瘍)、骨髄炎、、(炎の報告が知られる)、角膜炎、、免疫抑制患者でのなど、病型がきわめて多彩である1。

診断

  • 肺感染は/基準(・画像所見・微生物学的所見の3基準をすべて満たす)で診断する。喀痰2検体以上、または()検体の培養陽性が微生物学的基準を満たす2。
  • は表面ではなく・をに出し、まで行う。
  • 診断がついたら、背景に免疫抑制状態(生物学的製剤使用、基礎肺疾患)が無いかを確認する2。

治療と予防

⭐ 他のと異なり、in vitro感受性が臨床反応をよく予測する菌種とされる。

病型 レジメン 期間
肺感染 +リファンピシン+の3剤(症例では300mg/日・リファンピシン600mg/日・15mg/kg/日)2 から16か月(症例)。韓国のコホート(8例)では同様のレジメンをより短期間で用い再発が無かったと報告されている2
皮膚・ リファンピシン・・の併用(しばしばフルオロキノロンを追加)+1 は限局性皮膚感染より長期を要する。症例では6か月+外科的処置で治癒1

は膿瘍・で転帰を改善する1。予防は魚水槽の清掃・取り扱い時の手袋着用など、他の皮膚感染と同様の曝露対策が中心になる。

まとめ

  • M. szulgaiは全感染症の0.2〜0.5%未満というまれな菌種だが、肺・皮膚・骨関節・播種性と病型がきわめて多彩である。
  • 微生物学的には37℃で、25℃でというの二面性を持ち、上はII群()の代表として扱われることが多い。
  • 基礎の肺疾患・免疫抑制状態(抗薬など)を持つ宿主に生じやすく、免疫正常者でも皮膚バリアの破綻があれば皮膚感染が成立する。
  • 肺感染は+リファンピシン+、皮膚・はリファンピシン++(±フルオロキノロン)を軸に、他のより長期(月単位〜16か月)の治療と、ではを要する。

出典

  1. 1.Cutaneous Mycobacterium szulgai infection in a patient with Cushing's syndrome: a case report and literature review(BMC Infectious Diseases・2023)Europe PMCのfullTextXML(PMC10134568、BMC Infectious Diseasesはオープンアクセス)で全文を取得して確認した。M. szulgaiが1972年に初めて記載された緩徐発育抗酸菌で、37℃では暗発色性(scotochromogenic)だが25℃では光発色性(photochromogenic)という温度依存性の色素産生パターンを示すこと、2〜4週間の培養後に平滑または粗ぞうな色素性コロニーを形成すること、全非結核性抗酸菌(NTM)感染症の0.5%未満というきわめてまれな菌種であること、魚水槽・プール・病院の給水設備などの環境水から分離されること、肺感染が最多だが皮膚感染・骨髄炎・腱鞘滑膜炎・滑液包炎・角膜炎・頸部リンパ節炎・播種性感染など多彩な病型を起こすこと、皮膚感染例の文献レビューでは17例中10例(58.8%)が播種性感染だったこと、免疫抑制患者でリスクが高い一方、皮膚バリアの破綻(侵襲的医療処置・外傷)があれば免疫正常者にも生じること、右上肢が最も高頻度の罹患部位であること、標準治療がリファンピシン・エタンブトール・クラリスロマイシンの併用(しばしばフルオロキノロンを追加)で外科的デブリードマンが転帰を改善すること、播種性感染は限局性皮膚感染より長期の治療期間を要することを確認した。症例は48歳男性でACTH非依存性Cushing症候群(副腎腺腫)を新規に発症しており、魚水槽の清掃後に右手の皮膚感染を発症し、リファンピシン・レボフロキサシン・クラリスロマイシン・エタンブトールの併用療法を6か月間と副腎摘出術・外科的デブリードマンを併用して治癒し、治療終了1年後も再発が無かったことを確認した。閲覧 2026-09-17
  2. 2.Mycobacterium szulgai Pulmonary Infection in an Immunocompromised Patient(Cureus(Neves S, Pos E, Horta A, Vasconcelos AL)・2023)Europe PMCのfullTextXML(PMC10826269、Cureusはオープンアクセス)で全文を取得して確認した。M. szulgaiが全NTM感染症の0.2%未満とさらに低い頻度で報告する資料もあり、基礎に肺疾患または免疫抑制状態を持つ患者に主に生じること、ATS/IDSA基準(臨床所見・画像所見・微生物学的所見の3基準を満たす)で診断すること。症例は23歳女性でCrohn病に対しアダリムマブ(抗TNF-α薬)を10か月投与中、6か月間の喀痰を伴う咳嗽で受診し、胸部CTで右下葉に厚い壁を持つ空洞性病変(44×32×52mm)・気管支拡張・小葉中心性小結節を認め結核と類似する画像所見を呈したこと(小児期の肺炎後遺症である閉塞性細気管支炎の既往あり)、喀痰2検体とBALの培養でM. szulgaiが分離され診断が確定したこと、イソニアジド300mg/日・リファンピシン600mg/日・エタンブトール15mg/kg/日の3剤を培養陰転化から16か月間投与し症状・画像所見とも完全に改善したこと、韓国のコホート研究では同様のレジメンをより短期間で用いたM. szulgai感染症8例で再発が無かったと報告されていることを確認した。閲覧 2026-09-17