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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

結節性血管炎

Nodular vasculitis

別名
Bazin硬結性紅斑erythema induratum of Bazin硬結性紅斑
臓器系
皮膚感染症
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-10:皮膚結核の病型・診断・治療皮膚科 3-27:血管炎・多形紅斑・結節性紅斑
鑑別疾患
結節性紅斑
治療薬
リファンピシンイソニアジドピラジナミドエタンブトールコルヒチン
原因薬剤
プロピルチオウラシル
原因微生物
結核菌
症状
皮膚結節

🧠 全体像(Bazin性紅斑)は、と見た目が重なる下腿の有痛性皮下結節だが、病理が根本的に違う——(血管炎を伴わない)であるのに対し、こちらは小葉性+血管炎である。歴史的核心は、これが抗原に対するとして位置づけられてきたことで、病変にはそのものは増殖していないのにPCRでは菌DNAが検出されうるという一見矛盾した所見がその根拠になっている。診断は「疑ったら必ずを行い、陽性なら治療への反応で診断を確定する」という診断的治療の発想が軸になる。

病態

に対する既存の細胞性免疫を持つ宿主で、血行性に播種した抗原に対するIII型・織の血管壁に生じ、小葉を主座とする腫性・好中球性のと、細動脈・の血管炎(フィブリン沈着、血管壁破壊)を来す。病変局所には生きたが増殖しているわけではなく、培養は陰性になるが、PCRでは病変から菌DNAが検出されることがあり、ある研究ではnested PCRでの陽性率が78.6%に達したと報告されている1。この「培養陰性・PCR陽性でありうる」という組み合わせこそが、tuberculidという過敏反応の概念を裏づける鍵であり、PCRが陰性でも診断を否定できない2

結核との関連が確認・強く示唆される例を狭義にBazin性紅斑、結核との関連が証明できない例をと呼び分ける流儀があるが、両者は臨床像・病理像が同一で、実務上は同じ疾患スペクトラムとして評価・治療される1

⚠️ 結核以外にもC型肝炎ウイルス感染、Crohn病、Takayasu動脈炎、やTNFα阻害薬・BRAF/MEK阻害薬などの薬剤が背景疾患・誘因になりうる1

💡 「結核に対する過敏反応」という位置づけを知っていると、この疾患を単なる皮膚病ではなく全身結核のとして読める。皮疹だけを診て終わらせず、必ず全身の結核検索へつなげる発想が診療の核になる。

臨床像

との対比で覚えるのが最も効率的である。

項目 (Bazin性紅斑)
病理 小葉性+血管炎 (血管炎を伴わない)
好発部位 下腿後面 下腿前面
しばしばする 通常はしない
瘢痕 瘢痕を残しうる 通常は瘢痕を残さず消退する
背景として最も重要なもの 結核(としての過敏反応) 感染、など

臨床的には、中年女性の下腿後面(腓腹部)に生じる、有痛性の紅色〜紫紅色の皮下結節・局面として現れる。慢性・反復性の経過をとり、進行すると中心が軟化・し、治癒後に瘢痕を残すことがとの重要な違いである2

診断

深い織まで十分に届く検体)が診断の鍵になる。通常の外来織の採取量が乏しく、血管炎の所見が最も出やすい脂肪織を捉えられないため偽陰性になりやすい。生検で十分量の脂肪織を採取すると診断感度が上がる3。組織では小葉優位の腫性炎、そして細動脈・壁のフィブリノイド変性・血管壁破壊を伴う血管炎像を確認する。

flowchart TD
    A["下腿後面の有痛性皮下結節、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>・瘢痕を伴う"] --> B["深い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incisional biopsy'>切開生検</span>で小葉性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panniculitis'>脂肪織炎</span>+血管炎を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tuberculin reaction (Mantoux test)'>ツベルクリン反応</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interferon-gamma release assay'>IGRA</span>を必ず施行"]
    C --> D{"陽性か"}
    D -->|"はい"| E["結核として全身検索(胸部画像・喀痰・抗酸菌培養)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antituberculous'>抗結核</span>治療を開始(診断的治療)"]
    F --> G{"数週〜数か月で改善するか"}
    G -->|"はい"| H["Bazin<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induration'>硬結</span>性紅斑として診断確定"]
    G -->|"いいえ・反応不十分"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nontuberculous'>非結核</span>性の誘因(HCV・薬剤・Crohn病等)を再検索"]
    D -->|"いいえ"| I
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nodular vasculitis (erythema induratum)'>結節性血管炎</span>として対症療法"]

⭐ 抗酸菌培養・PCRは陰性になりやすく、単独での確定は難しい。またはを全例で行い、陽性であれば治療への反応そのものを診断根拠とするという診断的治療の考え方が実地診療の軸になる2

治療

結核との関連が示唆される(陽性など)場合は、リファンピシンの4剤併用をの標準治療とし、その後の継続期へ移行する。難治例では継続期がさらに延び、最長2年に及ぶ治療を要した報告もある1治療で軽快することそのものが、事後的に診断を裏づける。

結核との関連が証明できない、または除外されたでは、安静・挙上などの支持療法に加え、を中心に、による対症療法を行う。原因薬剤が同定されれば中止し、Crohn病など基礎疾患があればその治療を優先する。

まとめ

  • (Bazin性紅斑)は下腿後面に好発する、小葉性+血管炎を病理とする有痛性皮下結節で、のみで血管炎を伴わないと対比して覚える。
  • 歴史的に抗原への)として位置づけられ、病変に菌の増殖はなくとも培養陰性・PCR陽性という組み合わせがありうる。
  • 診断は織まで届く深いが鍵で、全例でを行い、陽性なら治療への反応で診断を確定する診断的治療が実地診療の軸になる。
  • 結核以外にC型肝炎、Crohn病、Takayasu動脈炎、などの薬剤も背景になりうる。

出典

  1. 1.Tuberculids(DermNet NZ・2021)tuberculidはM. tuberculosis抗原の血行性播種によるIII/IV型過敏反応であり皮疹から菌が分離できないこと、一方でPCRでは菌DNAが検出されうること(培養は陰性のまま)、Bazin硬結性紅斑は下腿後面に好発し潰瘍化・瘢痕を残しうること、診断にツベルクリン反応・IGRAが有用であること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Tuberculids: A Narrative Review(Indian Dermatology Online Journal・2023)結核との関連が証明できない場合の呼称は「結節性血管炎」を用い、C型肝炎・Crohn病・Takayasu動脈炎・プロピルチオウラシルやTNFα阻害薬などの薬剤も背景となりうること、IGRA陽性率が高い症例群があること、nested PCRでの菌DNA検出率が78.6%であったこと、標準治療は4剤併用(イソニアジド・リファンピシン・ピラジナミド・エタンブトール)を強化期に用い、症例により最長2年に及ぶ継続期を要すること閲覧 2026-08-11
  3. 3.Program-wide review and follow-up of erythema induratum of Bazin and tuberculosis-associated ocular inflammation management in a TB low-incidence setting(BMC Infectious Diseases・2019)パンチ生検は皮下脂肪織の採取量が不十分になりやすく、血管炎の変化が最も出やすい皮下脂肪織を十分含む切除生検(深い切開生検)が診断感度を高めること、抗酸菌培養・分子検査が非診断的であることが多いため抗結核治療による診断的治療がしばしば行われ、症例の76%で改善・軽快がみられたこと閲覧 2026-08-11