疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

劇症型痤瘡

Acne fulminans

臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 3-23:尋常性痤瘡の臨床型と治療
上位概念
尋常性痤瘡
鑑別疾患
集簇性ざ瘡
治療薬
プレドニゾロンイソトレチノインダプソンシクロスポリンインフリキシマブエリスロマイシン
原因薬剤
テストステロンウンデカン酸エステル
症状
皮膚結節疼痛発熱関節痛筋痛食欲不振体重減少肝腫大脾腫
検査値
白血球数CRP赤血球沈降速度ヘモグロビン
画像所見
溶骨性骨病変

🧠 全体像は、とよく似た潰瘍性・痂皮性の重症でありながら、発熱・関節痛・肝脾腫という全身症状と、というを伴う点で一線を画す、思春期男性にほぼ限られる急性の病態である。実務上の核心は治療薬そのものが誘因にもなりうるというにある——経口の標準治療の柱であると同時に、高用量から開始すると発症を誘発しうる。このを解く鍵が、で炎症をあらかじめ制御してから、を低用量からゆっくり増量して追加するという治療手順である。性病変やSAPHO症候群への進展を見逃さない視点も欠かせない。

病態

炎症の実体は感染そのものではなく、長期にわたる重症の毛包内容物(Cutibacterium acnes抗原を含む)に対する免疫系の過剰反応である1。毛包・が腫脹し破裂すると、炎症性の内容物が周囲の真皮へ放出されて強い炎症反応と組織破壊を引き起こす。テストステロン高値・使用がこの過程を後押しし、思春期男性という好発集団の背景をなす21

flowchart TD
    A["長期の重症<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acne'>痤瘡</span>・高アンドロゲン状態"] --> B["Cutibacterium acnes抗原への免疫過剰反応"]
    B --> C["毛包・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebaceous gland'>脂腺</span>の腫脹・破裂"]
    C --> D["炎症性内容物が真皮へ放出"]
    D --> E["潰瘍性・出血性の重症炎症"]
    E --> F["発熱・関節痛・肝脾腫などの全身症状"]
    E --> G["まれに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteolysis'>骨溶解</span>性病変"]

⚠️ 経口の標準治療そのものであると同時に、誘因にもなりうる。 高用量からの開始や性病変の存在がこのリスクを高めるとされ3、既存の重症を導入する際は突然のの可能性を念頭に置く。予防的な対策は「治療」の節で扱う。

臨床像

診断

急速な発症、潰瘍性・出血性の皮疹、全身症状と炎症所見の組み合わせから臨床診断する。標準的な治療に反応しない急な悪化という経過が手掛かりになる1。関節痛が持続する例やを伴う例では画像検査でとSAPHO症候群への進展を確認する。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acne fulminans'>劇症型痤瘡</span>の診断"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic corticosteroid'>全身性副腎皮質ステロイド</span>を開始"]
    B --> C["2〜4週間で炎症を制御"]
    C --> D["低用量<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotretinoin'>イソトレチノイン</span>を追加"]
    D --> E["最低4週間は両者を併用"]
    E --> F{"改善するか"}
    F -->|"はい"| G["ステロイドを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>しつつ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotretinoin'>イソトレチノイン</span>を緩徐に増量"]
    F -->|"いいえ・不応"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dapson'>ダプソン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclosporin'>シクロスポリン</span>・<br>TNF阻害薬など代替薬を検討"]

治療の骨格は「ステロイド先行→低用量追加→併用しながらの」という順序である。 0.5〜1 mg/kg/日で炎症をまず制御し、2〜4週間後にを非常に低用量から追加して緩徐に増量する。両者は最低4週間併用してからステロイドを減量し、総治療期間は3〜4か月に及ぶことが多い31

⚠️ を先行させたり通常量からいきなり開始したりしない。 炎症が制御されないままを高用量で開始すると、既存の炎症をかえって急激に悪化させうる(前述の誘因の)。ステロイドによる炎症制御が先、の低用量からの緩徐な増量が後、という順序を守ることが実務上のになる23

位置づけ 治療
第一選択(炎症制御) を数週間投与し、導入前に炎症を鎮める
第一選択(そのもの) を低用量から緩徐に増量し、ステロイドと並行する
代替・難治例 などのTNF阻害薬21
高用量などの抗菌薬2

外用治療薬は急性期には無効で、皮疹の治癒後に瘢痕治療として検討する2

集簇性ざ瘡との役割分担

両者はともに重症化しただが、区別点は明快である。

経過 突然・急性 慢性・難治性
全身症状 あり(発熱・関節痛・肝脾腫) なし
検査異常 ・貧血 通常なし
病変の性状 潰瘍性・出血性の炎症性結節 交通・相互に交通する膿瘍と瘻孔
まれに 通常なし
主な誘因 テストステロン高値、導入 特定の誘因は明確でない

⚠️ SAPHO症候群はの重篤な合併症になりうる。 ・膿疱症・骨化過剰症・を特徴とするで、持続する骨状を伴うではその可能性を念頭に置く2。SAPHO症候群自体の・治療については出典が取れておらず、ここでは合併しうるという関連の指摘にとどめる。

まとめ

  • は、潰瘍性・出血性の重症に発熱・関節痛・肝脾腫という全身症状とを伴う、思春期男性にほぼ限られる急性病態である。
  • とは全身症状の有無・経過(急性 vs 慢性)・病変の融合様式で区別する。
  • は標準治療の柱であると同時に誘因にもなりうるというを持ち、全身性ステロイドで炎症を制御してから低用量で追加するという順序が実務上のになる。
  • まれにを来し、持続する骨状を伴う例ではSAPHO症候群への進展を念頭に置く。
  • 難治例では・TNF阻害薬を検討する。

出典

  1. 1.Acne fulminans(DermNet NZ・2014)劇症型痤瘡を全身症状を伴う集簇性ざ瘡の最重症型と定義し、思春期男性にほぼ限られること、胸背部を主体とする潰瘍性の炎症性結節と出血性痂皮を呈すること、発熱(変動性)、関節痛(仙腸関節が20%、他に足関節・肩・膝)、倦怠感、食欲低下・体重減少、肝脾腫を伴うこと、検査所見として貧血、白血球増多、赤沈・CRP上昇、画像上の骨溶解性病変がありうることを述べていること。誘因としてテストステロン・アナボリックステロイドと経口イソトレチノインを挙げ、イソトレチノインは全身性ステロイドで炎症を制御したのちに低用量から導入するという治療手順を示していること。SAPHO症候群が劇症型痤瘡の重篤な合併症になりうると述べていること。治療は経口副腎皮質ステロイド(プレドニゾン20〜60 mg/日)、サリチル酸系抗炎症薬、ダプソン(50〜100 mg/日)、シクロスポリン、二次感染への高用量エリスロマイシン、低用量から導入するイソトレチノイン、難治例へのインフリキシマブを挙げ、外用痤瘡治療薬は無効であるとしていること。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Use of Interleukin-12/23 Inhibitor for the Management of Acne Fulminans(Cureus・2023)症例報告の背景節で、劇症型痤瘡が思春期男性に多く13〜22歳で長期の痤瘡歴を持つ患者に生じること、潰瘍性結節嚢腫性病変と出血性痂皮が顔・背部・胸部に生じること、発熱・関節筋肉痛・倦怠感・食欲低下・肝脾腫という全身症状と貧血・好中球優位の白血球増多・炎症マーカー上昇という検査所見を伴うこと、まれに骨溶解性病変を来す骨病変を合併しうること、イソトレチノインの使用が主要な誘因であり高用量開始と面皰性病変の存在がリスクを高めること、標準治療がプレドニゾン0.5〜1 mg/kg/日を2〜4週間投与したのち低用量イソトレチノインを追加し両者を最低4週間併用してから減量する設計であり総治療期間が3〜4か月に及ぶことを確認した。本症例では標準治療に反応しなかった17歳男児にIL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)を追加しステロイド減量とイソトレチノイン増量を可能にしたことを報告している。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Acne Fulminans(Cleveland Clinic・2026)病態を「免疫系が重症痤瘡に対して過剰に反応し、毛包・脂腺が腫脹・破裂して炎症物質が周囲皮膚へ広がる」非感染性の過程として説明していること、好発集団が思春期の13〜22歳男性でテストステロン高値と関連すること、危険因子として遺伝的・炎症性の免疫疾患素因と重症痤瘡の家族歴を挙げていること、誘因として高用量イソトレチノイン・アナボリックステロイド使用・特定の抗菌薬/免疫関連薬を挙げていること、治療の第一選択が経口副腎皮質ステロイド(プレドニゾンまたはプレドニゾロン)で炎症を鎮めたのち「非常に低用量から開始し緩徐に増量する」イソトレチノインを追加する設計であること、副腎皮質ステロイド・イソトレチノインが禁忌・無効な場合の代替としてダプソン、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリン、TNF阻害薬、光線力学療法を挙げていることを確認した。閲覧 2026-08-12