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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤 · 必修

インフリキシマブ

infliximab

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
レミケード
商品名(EU)
Remicade
科目
Pharmacology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
禁忌疾患
結核心不全(EUは中等症〜重症)
対象疾患
Cogan症候群Mooren潰瘍SAPHO症候群クローン病サルコイドーシスベーチェット病リポイド類壊死症悪性関節リウマチ化膿性汗腺炎回腸嚢炎壊疽性膿皮症乾癬性関節炎関節リウマチ急性・慢性尿細管間質性腎炎強直性脊椎炎強膜軟化症劇症型痤瘡高安動脈炎再発性多発軟骨炎若年性特発性関節炎尋常性乾癬川崎病中毒性巨大結腸症潰瘍性大腸炎頭部解離性蜂窩織炎肺動脈瘤慢性再発性多発性骨髄炎免疫関連大腸炎免疫関連有害事象
原因となる疾患
ウイルス性肝炎リンパ腫亜急性皮膚エリテマトーデス環状肉芽腫薬剤誘発性ループス

🧠 全体像:は抗抗体の“親玉”であり、マウス由来の可変部+ヒトのからなる(語尾 -ximab)という成り立ちそのものが臨床上の弱点を説明する。部分を持つぶん(ADA)ができやすく、単独では効果が落ちやすいのでメトトレキサート併用が事実上の標準になる。一方でIV投与・高いという特性を活かし、瘻孔を伴うCrohn病のような組織浸透が要る病態で強みを発揮する。

薬効群の中での位置づけ

生物学的製剤(B30)は「何を標的にするか」で整理すると全体像がつかみやすい。

標的 薬剤(語尾) 抗体の由来 主な適応
TNF-α (-ximab)・(-umab) /ヒト RA・・乾癬・
(-zumab)・(-umab) ヒト化/ヒト RA・・CRS
IL-17A (-umab)・(-zumab) ヒト/ヒト化 乾癬・PsA・
IL-17受容体A (-umab) ヒト 乾癬
IL-12/23 p40 (-umab) ヒト 乾癬・
IL-23 p19 (-umab)・(-zumab) ヒト/ヒト化 乾癬・PsA・Crohn病
IL-4Rα (-umab) ヒト ・喘息
CD80/86 (-cept) RA・PsA・JIA
BLyS/BAFF (-umab) ヒト SLE
α4-integrin (-zumab) ヒト化 MS・Crohn病
T細胞() ATG ・予防

⭐ 接尾辞は抗体の由来(=の強さ)を表す。 -ximab=(マウス可変部+ヒト定常部、が最も高い)、-zumab=ヒト化(骨格をヒト化しCDR部のみ非ヒト)、-umab=完全ヒト(が最も低い)、-cept=受容体。とは同じを狙うが、由来の違いがADA形成率と併用療法の必要性の差になって表れる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor necrosis factor-alpha'>TNF-α</span>に結合<br>(可溶性型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane-bound'>膜結合型</span>のどちらにも)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumour necrosis factor'>TNF</span>受容体(TNFR1/TNFR2)への<br>結合をブロック"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane-bound'>膜結合型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor necrosis factor-alpha'>TNF-α</span>を発現する細胞に<br>Fcを介して結合"]
    B --> D["下流の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cascade'>炎症カスケード</span><br>(NF-κB経路)が止まる"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement dependent cytotoxicity, CDC'>補体依存性細胞傷害</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Centers for Disease Control and Prevention'>CDC</span>)・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='antibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC)'>抗体依存性細胞傷害</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antibody-dependent cellular cytotoxicity'>ADCC</span>)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor necrosis factor-alpha'>TNF-α</span>産生細胞自体がアポトーシス"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>産生↓<br>血管新生↓・組織破壊↓"]
    F --> G

💡 がCrohn病の瘻孔閉鎖に強いのは「細胞を殺す」機序を持つから。 可溶性を中和するだけでなく、でを発現しているマクロファージ・T細胞そのものを/で排除する。も同様の機序を持つが、IV投与で高い血中濃度を作れるは組織浸透を要する病態でより選好される。

薬物動態

項目 値・特徴
(レミケード/Remicade)はIVのみ。⚠️ ただし「に皮下注製剤は無い」は現在は誤りで、ではのRemsimaに120mgの皮下注製剤があり、静注で導入したのち120mgを2週間隔で皮下注射する1
分布 血漿・炎症組織中心。分子量が大きくは小さい
代謝 標準的な代謝を受けず、により処理される
排泄 (RES)でのFc介在クリアランス
半減期 約8〜10日
のため(ADA)ができやすい。ADA形成は効果減弱・と相関する

⭐ メトトレキサート併用はADA抑制が主目的。 単剤で効果が落ちてきた患者では、増量・短縮間隔に加えて併用でADA形成を抑える戦略が定石になる。

適応

領域 使いどころ
リウマチ・ 関節リウマチ(不応例)、、
消化器 Crohn病(瘻孔を伴う中等症〜重症で特に選好)、
皮膚
血管炎・ (不応例の追加治療)、(ステロイド・に不応の第三選択)
腎(非典型) 関連のでの場合に追加されることがある

用法・用量

IV。体重換算の投与量で、代表的には0・2・6週に導入投与し、以後6〜8週ごとにするレジメンが用いられる。投与前に結核(を含む)・スクリーニングを必ず行う。 効果減弱時はADA・血中を確認したうえで増量・間隔短縮を検討する。実際の用量は適応・体重・レジメンで変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌欄の記載は国ごとに違う。 ・使用上の注意に置かれているだけの項目を禁忌と読むと、スクリーニングと対策で治療できる患者を除外してしまう。

文書 禁忌欄に挙がっているもの
EUのSmPC 4.32 本剤成分・他のマウス由来蛋白質・添加剤への過敏症、結核およびその他の重篤な感染症(敗血症・膿瘍・日和見感染など)、中等症または重症の心不全(心III/IV)
日本の電子添文 2.3 重篤な感染症(敗血症等)、、成分またはマウス由来蛋白質への過敏症の既往、(等)およびその既往、
米国の添付文書 44 中等症・重症の心不全に対する5mg/kgを超える用量、・添加剤・マウス由来蛋白質への重篤な過敏症の既往

💡 同じ薬でも「禁忌」の切り方が3通りある。 結核は、のSmPCが限定語なしに tuberculosis と書くのに対し、日本の電子添文はに限る。心不全は、が中等症〜、日本は限定なしの「」、米国は5mg/kgを超える用量だけを禁じるという用量つきの書き方で、5.5では「中等症・重症の心不全に5mg/kg以下を投与すると決めた場合(あるいは軽症の心不全に承認用量を投与する場合)は、治療中に十分に監視し、心不全の症状が新たに出るか悪化したら中止する」と続けている234。どれか1つを「の禁忌」として暗記しない。

  • ⚠️ は禁忌ではなく「先に治療してから使う」対象。 ただしこれは4.4の規定から言えることであって、上で見たとおり**の禁忌欄そのものは tuberculosis としか書いておらず活動性に限定していない。のSmPCは投与前に活動性・の両方を評価し、と診断されたら治療を先行させてからRemicadeを開始すると4.4で定めている。さらに、結核のリスク因子が複数あっての検査が陰性の患者や、・の既往があって十分な治療歴を確認できない患者でも治療を考慮するとしている2。はの維持に必須のサイトカインであり、これを止めると封じ込められていたが再活性化する。投与前に・胸部画像でスクリーニングする**
  • ⚠️ 再活性化も禁忌ではなく。 のSmPC 4.4・日本の電子添文8.3および9.1.3はいずれも投与前に感染の有無を確認し、キャリアおよび者(HBs抗原陰性かつHBc抗体またはHBs抗体陽性)では肝機能・肝炎ウイルスマーカーを監視するという内容である(の項も参照)23
  • ⚠️ 心不全で悪化しうる機序:は心筋にも生理的役割があり、これを遮断すると心不全が増悪しうる
  • (MSなど)の新規発症・悪化、悪性腫瘍(リンパ腫を含む)リスク増加が知られる。日本の電子添文ではこのうち(およびその既往)が禁忌に格上げされている3

副作用

頻度 内容
高頻度 (発熱・悪寒・掻痒)、
注意 、陽性化(様症候群)
重篤・まれ 結核・HBVの再活性化、重症感染、悪性腫瘍(リンパ腫)、の誘発・悪化、心不全の増悪

まとめ

  • 抗(マウス可変部+ヒトFc)。語尾-ximabは由来を示し、の高さ(ADA形成)を説明する。
  • 可溶性の中和に加え、発現細胞を/で直接排除する二重機序を持つ。
  • はIV投与のみ。組織浸透力を活かし、瘻孔を伴うCrohn病で特に選好される(のには皮下注製剤がある1)。
  • 投与前に結核・スクリーニング必須。阻害=肉芽腫維持機構の破綻=という因果を理解する。⚠️ もも禁忌ではなく、先に手当てして使う対象である。
  • 心不全は禁忌だが線の引き方が国で違う——は中等症〜、日本は限定なしの、米国は5mg/kgを超える用量だけ234。
  • ADA形成を抑えるため、メトトレキサート併用がより優先されることが多い。
  • とは標的が同じでも「由来( vs ヒト)」「の(IV vs SC)」が違い、この対比が阻害薬全体の理解の軸になる。

出典

  1. 1.Remsima 120 mg solution for injection in pre-filled syringe — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)インフリキシマブのバイオシミラーであるRemsimaに皮下注製剤(120mgのプレフィルドシリンジおよびペン)が存在し、静注による導入後の維持投与として120mgを2週間隔で皮下注射すること、その4.3の禁忌が点滴静注用のRemicadeと同一であることを確認した閲覧 2026-09-14
  2. 2.Remicade 100 mg powder for concentrate for solution for infusion — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)4.3の禁忌が「本剤成分・他のマウス由来蛋白質・添加剤への過敏症」「結核その他の重篤な感染症(敗血症・膿瘍・日和見感染など)」「中等症または重症の心不全(NYHA心機能分類III/IV)」の3項目であること、アダリムマブのSmPCと違って結核に活動性という限定語が付いていないこと、潜在性結核は4.4で抗結核薬治療を先行させてから開始する対象でありB型肝炎ウイルスの再活性化も4.4の警告であることを確認した閲覧 2026-09-14
  3. 3.レミケード点滴静注用100 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2.禁忌が重篤な感染症(敗血症等)・活動性結核・本剤成分またはマウス由来の蛋白質に対する過敏症の既往・脱髄疾患(多発性硬化症等)及びその既往・うっ血性心不全の5項目であること、EUのSmPCと違って結核に活動性という限定が付き心不全にNYHA心機能分類の限定が付かないこと、結核の既感染者は9.1.2、B型肝炎ウイルスキャリア及び既往感染者は9.1.3として禁忌ではなくモニタリングの対象であることを確認した閲覧 2026-09-14
  4. 4.REMICADE (infliximab) for injection, for intravenous use — Highlights of Prescribing Information(Janssen Biotech, Inc. / U.S. Food and Drug Administration(DailyMed収載、2025年2月改訂)・2025)4.CONTRAINDICATIONSが「中等症または重症の心不全の患者への5mg/kgを超える用量」と「インフリキシマブ・添加剤・マウス由来蛋白質に対する重篤な過敏症の既往」の2項目であり、心不全が用量つきの禁忌として書かれていること、5.5で5mg/kg以下を中等症・重症の心不全に投与する場合や軽症の心不全に承認用量を投与する場合は十分に監視し症状が新たに出るか悪化したら中止すると定めていること、結核が禁忌ではなく枠組み警告と5.警告の側に置かれていることを確認した閲覧 2026-09-14