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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

再発性多発軟骨炎

Relapsing polychondritis

別名
多発軟骨炎
臓器系
免疫・膠原病運動器耳鼻咽喉科呼吸器
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 09:耳介・外耳道の疾患
鑑別疾患
耳介軟骨膜炎多発血管炎性肉芽腫症
治療薬
プレドニゾロンダプソンメトトレキサートアザチオプリンシクロスポリンAシクロホスファミドリツキシマブトシリズマブインフリキシマブ
症状
強膜炎難聴めまい関節痛鞍鼻
検査値
赤沈

🧠 全体像は、症状を一つひとつ覚えるより先に「軟骨のある場所だけが繰り返し腫れる病気」というパターンを掴むと診断にたどり着きやすい。耳介・鼻・気道・関節・眼という一見バラな症状も、「軟骨(と眼のなど軟骨に近い結合組織)が標的になる」という一点で貫かれている。最も特徴的なのが耳介の腫脹が軟骨をもたないを避けるという所見で、これを見た瞬間に本疾患が鑑別のに上がる。診断は特異的な検査ではなく主にの組み合わせ(McAdam・Damiani・Michetの各基準)による一方、気道軟骨の虚脱は致死的になりうるため、耳介・鼻の所見だけで安心せず全身の位を系統的に評価する姿勢が要る。

病態:軟骨だけが標的になる理由

軟骨特異的なコラーゲン(II型コラーゲンなど)やマトリリン1(軟骨に富み、成熟したにはほとんど発現しない蛋白)に対するが、軟を破壊すると考えられている。軟骨は血流に乏しくの常在も少ないため、一度破壊が始まると修復が追いつかず、線維性組織への置換と構造破綻が進む。

flowchart TD
    A["軟骨特異的抗原<br>(II型コラーゲン・マトリリン1など)への自己免疫"] --> B["軟<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone matrix'>骨基質</span>の炎症・破壊"]
    B --> C["耳介軟骨:反復する発赤・腫脹<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobule'>耳垂</span>は保たれる"]
    B --> D["鼻軟骨:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saddle nose'>鞍鼻</span>変形"]
    B --> E["気道軟骨:気管気管支の虚脱・狭窄"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='articular cartilage'>関節軟骨</span>周囲:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonerosive arthritis'>非びらん性関節炎</span>"]
    B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>・眼窩結合組織:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periorbital'>眼窩周囲</span>炎"]
    B --> H["内耳・前庭の血管炎様機序:感音難聴・めまい"]

臨床像:部位ごとのパターン認識

耳介炎症がを避けるのは、に軟骨が存在しないためである。 両側の耳介が発赤・腫脹し、軟骨のある部分だけが熱感・圧痛を伴って腫れ、軟骨をもたないは保たれる——この所見を一度見れば見逃しにくい1。反復すると軟骨が萎縮し、耳介が柔らかく垂れ下がる「」に至る。

部位 所見 重要度
耳介 両側性の反復する発赤・腫脹・圧痛。は保たれる 最も特徴的な所見
鼻軟骨の炎症→反復すると変形 との鑑別が必要
気道 気管・気管支軟骨の炎症→狭窄・気道軟化症(虚脱) ⚠️ 致死的になりうる。主要な死因の一つ
、ぶどう膜炎 全身性自己免疫疾患の一群として現れる
内耳・前庭 感音性難聴めまい 血管炎様の機序が想定される
関節 非びらん性・血清反応陰性の関節痛・関節炎 関節破壊は来さない
その他 大動脈・動脈瘤などの心血管病変 頻度は低いが重篤化しうる

⚠️ 気道病変は患者の約50%に生じ、主要な死因の一つである。 気管・の肥厚、軟、動的な気道虚脱(吸気・呼気での狭窄)を来し、初期は喘息やCOPDとされて対応が遅れることがある。地理的な差も大きく、中国の295例のコホートでは気道病変合併率が70.5%、日本の報告でも68%と、欧州の約50%より高い頻度が報告されている2

診断基準

特異的な検査()はなく、の組み合わせで診断する。歴史的に3つの基準が提案されてきた。

基準 内容
McAdam基準 ①両側、②非びらん性血清反応陰性炎症性、③鼻軟、④眼炎症、⑤呼吸器軟、⑥蝸牛・——6項目中3項目で診断
Damiani・Levine変法 McAdam基準1項目+組織学的確認、または2項目+ステロイド/への反応
Michet基準(現行主流) 耳介・鼻・喉頭気管軟骨のうち2部位以上の証明された炎症、または1部位+眼炎症・障害・非びらん性血清反応陰性関節炎・難聴のうち2項目以上

いずれも生検・血清反応は補助的な位置づけで、臨床像そのものが診断の中心にある1

疫学

年間発症率は人口100万人あたり3.5〜4.5例とまれな疾患で、好発年齢は40〜60歳(平均45〜55歳)、性差はやや女性に多い(男女比およそ1:1.2〜1.5)2。小児発症はきわめてまれである。

VEXAS症候群との関係——近年の重要な知見

一部の「」は、実はVEXAS症候群という別の疾患である。 VEXAS症候群は、に生じるUBA1遺伝子の体細胞モザイク変異(大半がp.Met41の置換)を原因とする成人発症・男性に多いで、皮膚病変・血球減少・様の血液所見・血栓症などとともに軟を来し、臨床的にと見分けがつかないことがある。VEXAS症候群のでは、Georgin-Lavialleコホート(116例)で36%、Ferradaコホート(83例)で52%がの臨床像を満たし、軟自体は32〜64%にみられた3

💡 中高年男性で血球減少・原因不明の発熱を伴う「」を見たら、VEXAS症候群を疑う。 典型的なは性差なくやや女性に多いのに対し、VEXAS症候群は男性優位という違いが手がかりになる。UBA1変異の検索は、ステロイド反応が乏しい・血液所見を伴う非典型例で特に検討される。

鑑別

⚠️ を来す疾患としてとの鑑別が要る。 両者とも鼻軟骨・の破壊でを来すが、機序が異なる——軟骨そのものへの自己免疫による直接破壊であるのに対し、壊死性を破壊する。は上気道・肺・腎のELKパターンと陽性を特徴とし、温存)と気道軟、眼・内耳症状を特徴とする。両疾患は臨床像が重なる部分があり、同一患者に合併しうることも報告されている。

は、であるとも紛らわしい。を避けるが、片側性で外傷・ピアスなどの契機を伴い緑膿菌感染が主体であるのに対し、両側性かつ鼻・気道・眼・内耳など他の軟骨/結合組織部位の症状を伴うである点で区別する。

治療

治療は重症度に応じて段階的に強化する。軽症(耳介・鼻の限局した炎症)ではNSAIDsやで対応できることがあるが、グルココルチコイドが治療の基本であり、多くの患者でに必要となる。呼吸器・血管病変を伴う重症例やステロイド抵抗・依存例には全身性グルココルチコイドに加え、メトトレキサート・などのをステロイド減量目的で用いる。糸球体腎炎・急性気道閉塞など臓器や生命を脅かす病変には、より強力なIVが選択肢となる1。ステロイド抵抗例には・リツキシマブ・などの生物学的製剤が選択肢となり、早期の生物学的製剤導入が重度のの回避につながる可能性が示唆されている2

⚠️ ・気道軟化症が高度な例では、薬物治療だけでは救命できないことがある。 気道拡張術・、重症例ではECMOによる呼吸循環管理、小児例でのなどの気道インターベンションが必要になる2。耳介・鼻の所見が軽微でも、嗄声・喘鳴・があれば気道病変の評価を急ぐ。

まとめ

  • は「軟骨のある場所だけが繰り返し腫れる」というパターンで捉える。耳介の腫脹が軟骨をもたないを避ける所見が最も特徴的。
  • 気道病変は約50%に生じ主要な死因の一つで、致死的になりうる。耳介・鼻の所見だけで安心しない。
  • 診断はMcAdam・Damiani・Michetの各臨床基準による組み合わせ判定で、特異的な検査はない。
  • 中高年男性で血球減少・発熱を伴う非典型例は、UBA1遺伝子変異によるVEXAS症候群を疑う——では36%(116例)・52%(83例)が様の臨床像を呈する。
  • を来す(血管炎による破壊)、片側性で感染が主体のとの鑑別が要る。
  • 治療はグルココルチコイドが基本で、重症・難治例には・生物学的製剤を追加する。高度なには気道インターベンションが必要になる。

出典

  1. 1.Relapsing Polychondritis(Case Reports in Dermatological Medicine・2014)McAdam基準(耳介・鼻軟骨・呼吸器軟骨の軟骨炎、非びらん性血清反応陰性関節炎、眼炎症、蝸牛・前庭障害の6項目中3項目)、Damiani・Levine変法(McAdam基準1項目+組織学的確認、または2項目+ステロイド/ダプソン反応)、Michet基準(耳介・鼻・喉頭気管軟骨のうち2部位以上の証明された炎症、または1部位+眼炎症・前庭機能障害・非びらん性血清反応陰性関節炎・難聴のうち2つ以上)の3種の診断基準を原著の表とともにIntroductionで確認し、症例提示の身体所見(Figure 1a/b)で「両側耳介の腫脹・発赤が軟骨を欠く耳垂を避けている」ことを直接確認した。治療はグルココルチコイドが基本でNSAIDs・ダプソンは軽症例、メトトレキサート・アザチオプリン・シクロスポリンが呼吸器/血管病変を伴う重症例・ステロイド抵抗/依存例に用いられ、糸球体腎炎・急性気道閉塞など臓器/生命を脅かす病変にはIVシクロホスファミド・血漿交換が用いられることをDiscussionで確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Diagnosis and treatment strategies for airway involvement in relapsing polychondritis: a comprehensive review(Frontiers in Immunology・2026)気道病変は再発性多発軟骨炎患者の約50%に生じ主要な死因の一つであること、年間発症率は人口100万人あたり3.5〜4.5例で好発年齢は40〜60歳(平均45〜55歳)、性差は女性がやや多く男女比はおよそ1:1.2〜1.5であること、地理的には中国295例のコホートで気道病変合併率70.5%、日本の報告で68%と欧州の約50%より高いこと、治療はグルココルチコイド+免疫抑制薬が基本だが不応例には抗TNF薬・リツキシマブ・トシリズマブなどの生物学的製剤や気道ステント・ECMO・気管切開などの気道インターベンションが選択肢になることを本文3章(Epidemiology of RP)およびAbstractで確認した。閲覧 2026-08-12
  3. 3.VEXAS Syndrome: an Updated Literature Review(European Journal of Rheumatology・2025)VEXAS症候群は骨髄系前駆細胞に生じるUBA1遺伝子の体細胞モザイク変異(大半がp.Met41の置換)による成人発症・男性優位の自己炎症性疾患で、Georgin-Lavialleコホート(116例)で36%、Ferradaコホート(83例)で52%が再発性多発軟骨炎の臨床像を呈し、軟骨炎自体は32〜64%にみられたこと、UBA1変異の有病率は50歳以上男性で約1/4,269と推定されベーチェット病・骨髄異形成症候群に匹敵する頻度であることを本文のEpidemiology・Clinical Manifestations(Table 1)で確認した。閲覧 2026-08-12