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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

多発血管炎性肉芽腫症

Granulomatosis with polyangiitis

別名
GPAWegener肉芽腫症
臓器系
免疫・膠原病呼吸器腎・泌尿器
科目
PathologyPediatricsInternal Medicine
トピック
病理学 C/25:肺の肉芽腫性疾患小児科 3-34:IgA血管炎・川崎病・小児多系統炎症性症候群・多発血管炎性肉芽腫症内科学 R-07:小血管炎
上位概念
ANCA関連血管炎
鑑別疾患
顕微鏡的多発血管炎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症再発性多発軟骨炎
合併症
ニューモシスチス肺炎
続発疾患
急性腎障害慢性腎臓病
治療薬
リツキシマブシクロホスファミドメチルプレドニゾロンプレドニゾロンアザチオプリンスルファメトキサゾール+トリメトプリム
症状
喀血血尿発熱体重減少関節痛鞍鼻
検査値
活動性尿沈渣腎生検
画像所見
反転ハロー徴候肺空洞結節肺胞出血

🧠 全体像(GPA、旧称Wegener腫症)は、ANCA関連血管炎という小血管炎ののなかで、壊死性を伴うという一点でMPA・EGPAと分かれる病型である。臨床像はELK(Ear-nose-throat・Lung・Kidney)という語呂で覚える上気道・肺・腎の3臓器連鎖に集約され、(c-ANCA)陽性がその血清学的裏づけになる。治療の骨格は「寛解導入(重症例はグルココルチコイド+リツキシマブまたは)」と「(リツキシマブが第一選択)」を明確に分けて考える設計で、はルーチンではなく高リスク例に限った選択肢という位置づけが2021年ACR/VFガイドラインで整理されている。

病態

GPAはANCA関連血管炎の一亜型で、細動脈・毛細血管・という小血管を、免疫沈着をほとんど残さずに(pauci-immune)壊死させる点はANCA関連血管炎全体と共通する。GPAに固有なのは、この血管炎に壊死性が伴う点で、組織学的にはMPA(腫を欠く)と対比される。

flowchart TD
    A["PR3に対するANCA(c-ANCAパターン)"] --> B["好中球が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='priming'>プライミング</span>され活性化"]
    B --> C["好中球が血管内皮を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pauci-immune'>直接傷害</span>"]
    C --> D["小血管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='necrotizing vasculitis'>壊死性血管炎</span>"]
    C --> E["壊死性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulomatous inflammation'>肉芽腫性炎症</span>(GPAに固有)"]
    D --> F["上気道:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saddle nose'>鞍鼻</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subglottic stenosis'>声門下狭窄</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic rhinosinusitis'>慢性副鼻腔炎</span>"]
    D --> G["肺:結節・空洞・肺胞出血"]
    D --> H["腎:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pauci-immune'>半月体形成性糸球体腎炎</span>"]

(c-ANCAパターン)陽性が大半を占める。 GPA症例の約75%で陽性、陽性は約10%にとどまり、ANCA陰性は10%未満である。の感度は約90%とされるが、陰性でも臨床像が典型的なら否定できない1

臨床像

ELK(Ear-nose-throat・Lung・Kidney)の3臓器を侵すという語呂がGPAの臨床像そのものである。

臓器 代表的所見
上気道(E) から続発する、難治性の痂皮性鼻炎、中耳炎、(特に小児で問題になる)
肺(L) 肺胞出血喀血・低酸素)
腎(K) 血尿・急速な腎機能低下

全身症状として発熱体重減少関節痛も伴う。発症は45〜60歳に多いが、3〜7%は小児・思春期例であり、この年代ではが特に重要な合併症になる1

⚠️ でも生じるため、の有無や耳介・気道軟の合併で両者を鑑別する。 GPAは壊死性による破壊が機序であるのに対し、は軟骨そのものへの自己免疫が機序である。

性糸球体腎炎は未治療のまま進行すればに至り、寛解導入後も糸球体のが残ればへ移行しうる。腎病変の重症度(血清Cr値、の割合)は治療強度を決める要因でもあり、腎機能を定期的に追跡する。

⚠️ 喀血+血尿・急速なCr上昇()は診断確定を待たず対応を急ぐべき組み合わせである。 上気道・腎症状に先行して肺症状だけが目立つ非典型例もあるため、上気道所見が乏しいからといってGPAを除外しない。

画像所見

胸部CTでは多発結節とが特徴的で、結節は壊死・しやすい。急性期には肺胞出血によるも重なる。

反転を呈しうる。 中心のを辺縁のが取り囲む反転は当初の所見として報告されたがではなく、GPAでも報告例がある(異常HRCT1546件中に反転を呈した108例の内訳の一つとして、頻度の低い群に含まれる)2。この所見単独でGPAを診断することはできず、上気道・腎症状やANCAと合わせて解釈する。

鑑別

ANCA関連血管炎の中でGPA・MPA・EGPAを区別する軸は、腫の有無臨床パターンである。

項目 GPA
上気道病変 破壊性病変()が目立つ 目立たない
肺病変 結節・空洞、肺胞出血 ・肺胞出血 、成人発症の難治性喘息
組織像 壊死性腫性炎症 腫を欠く
主なANCA (c-ANCA)が多い (p-ANCA)が多い 陽性は約半数のみ、陽性なら主体
血液所見 特異的でない 特異的でない 好酸球増多

⚠️ ANCAの型だけで3疾患を区別しない。臨床像+組織所見の統合が必須で、GPAでも上気道所見が乏しい非典型例、MPAでも陽性例が一定数存在する。

治療

治療は寛解導入を明確に分けて考える。

flowchart TD
    A["GPAの診断確定"] --> B{"臓器・生命を脅かす重症例か"}
    B -->|"はい"| C["グルココルチコイド+リツキシマブ<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>より条件付きで推奨)"]
    B -->|"いいえ"| D["非重症例として個別化"]
    C --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapidly progressive'>急速進行性</span>の腎機能悪化など高リスク例か"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>の追加を考慮"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>をルーチン追加しない"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='maintenance of remission'>寛解維持</span>へ"]
    G --> H
    H --> I["リツキシマブを優先<br>(メトトレキサート・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>より)"]
    C --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>またはリツキシマブ投与中は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pneumocystis prophylaxis'>ニューモシスチス肺炎予防</span>を行う"]
  • 寛解導入: 重症・臓器型GPAには、グルココルチコイド+リツキシマブまたはを用いる。2021年ACR/VFガイドラインはリツキシマブを、好中球減少・膀胱障害・不妊・悪性の低さからより条件付きで推奨する3
  • 糸球体腎炎・肺胞出血のいずれに対してもルーチンでの追加は条件付きで推奨されない。ただしの腎機能悪化など高リスク例では、感染リスクのを踏まえたうえで考慮しうる3
  • またはリツキシマブによる寛解導入後は、メトトレキサート・よりリツキシマブを条件付きで推奨する(率が低い)3

⚠️ の予防を忘れない。 またはリツキシマブを投与中の患者には、によるが条件付きで推奨される3。免疫抑制の強さに気を取られて感染予防を後回しにしない。

まとめ

  • GPAはANCA関連血管炎のうち壊死性を伴う病型で、ELK(上気道・肺・腎)の3臓器を侵し、(c-ANCA)陽性が約75%を占める。
  • 上気道の、肺の結節・空洞・肺胞出血、腎のが臨床像の骨格で、反転などの非特異的画像所見も呈しうる。
  • MPA(腫を欠く)、EGPA(喘息・好酸球増多)とは組織像・臨床パターンで区別するが、ANCA型だけで確定・除外しない。
  • 治療は重症例でグルココルチコイド+リツキシマブ(または)による寛解導入と、リツキシマブによるを分けて考える。はルーチンでなく高リスク例に限る。
  • ・リツキシマブ投与中はを怠らない。

出典

  1. 1.Granulomatosis With Polyangiitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)GPAの臨床像がELK(上気道・肺・腎)のパターンで整理されること(副鼻腔炎・鞍鼻変形・声門下狭窄などの上気道病変、肺結節・空洞化・肺胞出血、pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎)、PR3-ANCAがGPA症例の約75%で陽性(MPO-ANCAは約10%、ANCA陰性は10%未満)でありPR3-ANCAの感度は約90%とされること、年間発症率が人口100万人あたり10〜20例、有病率が欧米で人口100万人あたり120〜140例、発症年齢が45〜60歳に多いが3〜7%は小児・思春期例であることを、Epidemiology・Etiology・History and Physical・Evaluation各節で確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis(American College of Rheumatology / Vasculitis Foundation・2021)重症・臓器脅威型GPA/MPAの寛解導入はリツキシマブをシクロホスファミドより条件付きで推奨すること(Recommendation 1)、糸球体腎炎・肺胞出血いずれに対しても血漿交換のルーチン追加は条件付きで推奨しないが急速進行性の腎機能悪化など高リスク例では考慮しうること(Recommendation 2-3)、寛解維持はシクロホスファミドまたはリツキシマブで寛解導入後にメトトレキサート・アザチオプリンよりリツキシマブを条件付きで推奨すること(Recommendation 9)、シクロホスファミドまたはリツキシマブ投与中の患者にはニューモシスチス肺炎予防を条件付きで推奨すること(Recommendation 24)を各推奨文で確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Reversed Halo Sign: Presents in Different Pulmonary Diseases(PLOS ONE(Zhan X, et al.)・2015)異常なHRCT1546件のうち反転ハロー徴候を呈した108例の内訳に多発血管炎性肉芽腫症1例が含まれていたこと(肺結核40例・器質化肺炎43例・肺癌16例・サルコイドーシス7例・肺クリプトコッカス症1例と並ぶ頻度の低い一群として)を確認した。閲覧 2026-08-11