疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

ANCA関連血管炎

ANCA-associated vasculitis

別名
AAV
臓器系
免疫・膠原病腎・泌尿器
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/61:急速進行性糸球体腎炎内科学 R-07:小血管炎内科学 S-47:血管炎内科学 N-01:糸球体疾患
上位概念
血管炎
鑑別疾患
IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)IgG4関連疾患サルコイドーシス結節性多発動脈炎抗糸球体基底膜病(グッドパスチャー症候群)
続発疾患
急性腎障害慢性腎臓病
関連疾患
腎肺症候群
治療薬
メチルプレドニゾロンプレドニゾロンシクロホスファミドリツキシマブアザチオプリンメトトレキサートスルファメトキサゾール+トリメトプリム
原因薬剤
プロピルチオウラシルチアマゾール
症状
関節痛出血体重減少発熱乏尿喀血多発性単神経炎強膜炎周辺部潰瘍性角膜炎触知可能紫斑
検査値
活動性尿沈渣血中好酸球数好酸球増多尿沈渣腎生検
画像所見
すりガラス影結節肺空洞肺胞出血
スコア
ACR/EULAR分類基準
下位分類
顕微鏡的多発血管炎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症多発血管炎性肉芽腫症

🧠 全体像:ANCA関連血管炎(AAV)は、が好中球を異常活性化し、細動脈・毛細血管・という小血管を壁に免疫沈着をほとんど残さずに(pauci-immune)壊死させていく血管炎群である。臨床像・ANCAの型・組織像での3疾患に分かれるが、いずれも「上気道/肺+腎()」を主戦場とする点は共通で、腎生検で(RPGNのIII型・型)を来す。寛解導入はグルココルチコイド+リツキシマブまたはが中心で、は全例へのルーチンではなく選択例に限られる。

概要・病態

  • ANCA関連血管炎は小血管(細動脈・毛細血管・)を主座とするで、GPA・MPA・EGPAの3病型を包括する呼称。
  • 病理学的な核心は:免疫複合体やの沈着がほとんどないまま血管壁が壊死する点で、免疫複合体性血管炎(IgA血管炎、など)と対比される。
  • ANCAには2つの主要な・標的抗原があり、疾患ごとに偏りがある。
ANCAの型 標的抗原 主に関連する病型
c-ANCA(細胞質型) GPAに多い
p-ANCA(核周囲型) MPAに多い、EGPAの一部

⚠️ ANCAの型だけで疾患を確定してはならない。ANCA陰性でもAAVは否定できず、・薬剤性などでも陽性になり得るため、必ず臨床像+組織像と統合して判断する。

  • 好中球はANCAに結合されるとサイトカインでされた状態から産生を起こし、血管内皮を直接傷害する(抗体が直接組織へ沈着するのではなく、好中球を介した間接傷害である点がや免疫複合体性GNと異なる)。

臨床像

  • 3病型は「小血管炎」という土台を共有しつつ、標的臓器と随伴所見で見分けられる。
GPA
MPA
EGPA
上気道 副鼻腔炎、中耳炎、など破壊性病変 目立たない
結節・空洞影、肺胞出血 ・肺胞出血 成人発症の難治性喘息
頻度は前二者より低い
神経 が高頻度
血液 特異的でない 特異的でない 好酸球増多
組織像 壊死性腫性炎症 腫を欠く
主なANCA (c-ANCA) (p-ANCA) 陽性率は約半数のみ、陽性なら主に
  • ⭐ GPAの語呂:鼻(上気道破壊)→肺(結節・空洞)→という上から下への臓器連鎖として覚えると、旧称ウェゲナー腫症の病像がつながる。
  • ⭐ EGPAは「成人発症の喘息+好酸球増多」というアレルギー性のを経てから血管炎期(紫斑・単・心病変)に移行する点が、GPA・MPAと大きく異なる臨床経過をたどる。EGPAのANCA陽性率は約半数にとどまり、陰性例では心病変(心筋炎・)が予後を左右しやすい。
  • 全身症状として発熱、体重減少、関節痛、皮膚のも共通してみられる。

⚠️ (喀血+急速な腎機能低下)はAAV・に共通する緊急所見。喀血、低酸素化、Crの、乏尿、、心筋炎は診断確定を待たずに対応を急ぐべきである。

flowchart TD
    A["紫斑・急速な腎機能低下・肺症状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononeuritis multiplex'>多発性単神経炎</span>"] --> B["尿沈渣、Cr、CBC、胸部画像"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proteinase 3-ANCA'>PR3-ANCA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myeloperoxidase ANCA'>MPO-ANCA</span>、補体、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM antibody'>抗GBM抗体</span>"]
    C --> D{"ANCA関連血管炎を示唆"}
    D -->|"はい"| E["臨床像でGPA・MPA・EGPAを鑑別"]
    D -->|"いいえ"| F["IgA血管炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryoglobulinemia'>クリオグロブリン血症</span>性・PANなど他の血管炎を再検討"]
    E --> G["可能な臓器(腎・皮膚・肺)から生検"]

診断

  • 診断は臨床像+ANCA血清学+組織所見の統合で行う。分類基準として2022年がGPA・MPA・EGPAそれぞれに定められているが、これは疫学研究向けの分類基準であり、個々の患者の確定診断は臨床的総合判断による。
  • 血清学:に測定する(のc-ANCA/p-ANCAだけに頼らない)。
  • 腎病変が疑われれば、尿沈渣()、蛋白尿定量、Crを確認し、腎生検で(RPGNのIII型・型)を確認する。
  • 肺病変は胸部CTで結節・空洞・(肺胞出血)を評価し、喀血や低酸素があれば緊急性が高い。
  • EGPAでは、心エコー・による心病変の評価を追加する。

💡 RPGNの3型分類(病理 C/61参照)の中で、AAVによる腎炎はIII型・にあたる:で陽性所見に乏しいにもかかわらず高度な糸球体傷害()を来す点が、I型()・II型(免疫複合体の)と対照的である。

治療

  • 重症度(臓器・生命を脅かすか)で治療戦略を分ける。
flowchart TD
    A["GPA・MPAの診断確定"] --> B{"臓器・生命を脅かす重症例か"}
    B -->|"はい"| C["グルココルチコイド+リツキシマブまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>で寛解導入"]
    B -->|"いいえ"| D["リツキシマブ・メトトレキサートなどを個別化"]
    C --> E["グルココルチコイドは急速に減量(PEXI<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual analog scale'>VAS</span>方式)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='maintenance of remission'>寛解維持</span>:リツキシマブまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>など"]
    D --> F
  • 寛解導入:臓器・生命を脅かすGPA/MPAには、グルココルチコイド+リツキシマブまたはを用いる。腎機能が高度に障害された例(血清Cr>4 mg/dL相当)ではが優先されることがある。
  • グルココルチコイドの減量:PEXI試験の結果を受けて、高用量を漫然と継続せず、換算5 mg/日程度を目標に4〜5か月かけて急速に減量する低曝露レジメンが標準となっている。
  • :PEXI試験では死亡・に対する一律の効果は否定された。したがって全重症例へのルーチン施行ではなく、透析を要する重度腎障害、低酸素を伴う肺胞出血、重複例など選択的な状況でのみ検討する。
  • で、リツキシマブまたはと併用し、グルココルチコイドのを大きく減らす目的で選択できる新しい選択肢である。
  • :リツキシマブ、ないしメトトレキサートなどで維持し、と易感染性の両方を監視する。を併用することが多いが、これは全身性AAVの単独寛解導入薬ではない。
  • EGPA:非重症・再発性例では)を用い、臓器障害例ではグルココルチコイドに(リツキシマブ、など)を組み合わせる。
  • 感染予防、骨保護(症対策)も治療の一部として組み込む。

PANとの鑑別

ANCA関連血管炎(GPA/MPA/EGPA)
血管径 小血管(細動脈・毛細血管・ 中型動脈
ANCA 陽性のことが多い 陰性
糸球体腎炎 性GNを来す 通常伴わない(はきたす)
肺胞出血・肺病変 多い(特にMPA、GPA) 通常伴わない
、喘息・好酸球増多(EGPA) 皮膚での
病因 特発性が主体 一部はB型肝炎ウイルス関連

まとめ

  • AAVはGPA・MPA・EGPAの総称で、いずれも小血管のという土台を共有する。
  • GPAは(c-ANCA)と上気道破壊・、MPAは(p-ANCA)と肺胞出血、EGPAは喘息・好酸球増多と関連するが、ANCA型だけで確定診断しない。
  • 腎病変は(RPGN III型)として現れ、腎生検が病型診断と重症度評価の要となる。
  • 寛解導入はグルココルチコイド+リツキシマブまたはが中心、グルココルチコイドは急速減量、は選択例のみ、はステロイド節減の新選択肢である。
  • 中型動脈が主座でANCA陰性、腎炎・肺病変を伴わないPANとの鑑別が重要である。