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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

抗糸球体基底膜病(グッドパスチャー症候群)

Anti-GBM disease (Goodpasture syndrome)

別名
Goodpasture症候群
臓器系
腎・泌尿器呼吸器
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 N-01:糸球体疾患病理学 C/61:急速進行性糸球体腎炎
鑑別疾患
ANCA関連血管炎
合併症
急性腎障害
続発疾患
慢性腎臓病ネフリティック症候群
関連疾患
腎肺症候群
治療薬
メチルプレドニゾロンプレドニゾロンシクロホスファミドリツキシマブアザチオプリン
原因薬剤
アレムツズマブ
症状
血尿呼吸困難出血乏尿喀血
検査値
腎生検
画像所見
肺胞出血
原因となる疾患
アルポート症候群

🧠 全体像は、のNC1ドメインという単一のに対する抗体が、の両方を直接攻撃する疾患である。肺・腎の両方が侵される表現型を(肺胞出血+RPGN)と呼ぶが、腎もあり喀血がないことでは除外できない。の中でも進行が最も速い部類に入るため、血清と腎生検を待たずに治療を開始する姿勢がKDIGOガイドラインで明確に推奨されている。

病態

自己抗体が結合する標的は基底膜構成蛋白のうち特定の一分子・一ドメインに限られており、それが肺と腎の両方に共通して存在することが「」という表現型を生む。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type IV collagen alpha-3 chain'>IV型コラーゲンα3鎖</span>NC1ドメイン(α3(IV)NC1)に対する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune tolerance'>自己免疫寛容</span>の破綻"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM antibody'>抗GBM抗体</span>(主にIgG)の産生"]
    B --> C["抗体が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular basement membrane'>糸球体基底膜</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar basement membrane'>肺胞基底膜</span>に共通して沈着"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement activation'>補体活性化</span>と好中球・単球の動員"]
    D --> E["基底膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragmentation'>断片化</span>"]
    E --> F["フィブリノゲンの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Bowman&#39;s space'>Bowman腔</span>への漏出"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crescent formation'>半月体形成</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapidly progressive glomerulonephritis, RPGN'>急速進行性糸球体腎炎</span>"]
    C --> H["肺胞毛細血管の破綻"]
    H --> I["肺胞出血(喀血・低酸素)"]

💡 喫煙、有機曝露、呼吸器感染などによる肺胞毛細血管の透過性亢進は、循環抗体がに到達しやすくする増悪因子として働く。そのため喫煙者や曝露歴のある患者では肺病変を伴いやすい。

はRPGNの中でも代表的なI型(である。免疫複合体を介さず抗体が直接基底膜に結合するため、(IF)ではGBMに沿った線状のIgG沈着を示し、免疫複合体性疾患のや、ANCA関連血管炎のパターンと対照的である。

臨床像

  • 腎病変:血尿、蛋白尿、急速に進行する腎機能低下という典型的なRPGN像を呈する。無治療では数日〜数週でに至りうる。
  • 肺病変:喀血、呼吸困難、による低酸素血症。喫煙者や呼吸器感染直後に増悪しやすい。
  • 肺・腎の両方が侵される古典的なのほか、腎(喀血なし)、まれに肺も存在する。
  • 発症は二峰性(20〜30代の若年男性と60〜70代)とされ、若年群では肺病変を、高齢群では腎を呈しやすい傾向がある。

⚠️ 喀血がないことはを除外する根拠にならない。腎は診断が遅れやすく、初診時にすでに乏尿・透析導入となっている例も少なくない。

診断

  • 血清(ELISA等、α3(IV)NC1を標的抗原とする)は感度約90%とされるが、陰性でも臨床的に強く疑えば否定できない(抗体陰性・IF陽性のの報告もある)。
  • 確定診断は腎生検による。ではを伴うではGBMに沿った線状IgG沈着(しばしばC3を伴う)を認める。
  • ANCA(が多い)とのが約30%に見られる。例はANCA関連血管炎に近いしやすい経過をとることがあり、寛解後も長期の維持療法・が必要になりうる。
  • 疑いが強い時点(喀血+血尿+急速なCr上昇など)では、血清抗体・生検結果を待たずに治療を開始することがKDIGOガイドラインで推奨されている。
RPGNの型 機序 IF所見 代表疾患
I型 GBMに沿った線状IgG
II型 免疫複合体 沈着 、SLE腎炎、IgA腎症
III型 陰性(pauci-immune)

治療

進行が極めて速いため、初期対応の遅れが不可逆的な腎機能廃絶に直結する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM disease'>抗GBM病</span>を強く疑う(喀血+血尿+急速なCr上昇)"] --> B["血清抗体・生検結果を待たず治療開始"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>:抗体陰性化まで連日〜隔日で継続"]
    B --> D["副腎皮質ステロイド(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulse therapy'>パルス療法</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>"]
    C --> F{"透析依存+腎生検で100%近い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crescent'>半月体</span>+肺胞出血なし"}
    F -->|"はい"| G["腎機能回復の見込みは極めて低く、免疫治療の利益とリスクを個別に判断"]
    F -->|"いいえ"| H["標準治療を継続し腎機能回復を目指す"]
    D --> I["ANCA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-positive'>二重陽性</span>なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>リスクを踏まえ維持療法を検討"]
    I --> J["寛解導入後の維持は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>・感染リスクを監視しながら個別化"]

標準治療

治療を控える・個別化すべき例

  • 透析依存かつ腎生検でほぼ全数の糸球体にがあり、肺胞出血を伴わない症例は、免疫を行っても腎機能回復の可能性が極めて低いとされ、感染などの治療リスクとの兼ね合いで個別に利益を判断する。
  • 一方、肺胞出血を伴う例では、腎機能の回復が期待しにくくても生命予後改善のために治療を行う価値がある。

難治例・ANCA二重陽性例

  • 標準治療に反応不良な難治例では、リツキシマブの使用が選択肢として報告されているが、エビデンスは限定的である。
  • ANCA(主に)とのは約30%に認められ、単独よりしやすい経過をとりうる。ANCA関連血管炎に準じ、寛解導入後はなどによる維持療法と長期を検討する。

腎移植のタイミング

  • 血清抗体が陰性化してから一定期間(目安として6か月程度)を確認したうえで腎移植を計画する。抗体陽性のまま移植するとに病変がしうる。
  • ⚠️ これは「自己免疫性」の(本ノートの主題)における移植タイミングの話であり、患者が腎移植を受けた後に生じる性腎炎とは機序が異なる。患者はα5鎖を欠くため、正常なα5鎖を持つのGBMを「未経験の抗原」として認識してしまう点が、自己抗体が原因の本疾患とは区別される。

の治療の骨格は「+副腎皮質ステロイド+」であり、・pauci-immune型RPGNとは異なりが一貫して中心的役割を持つ点が国家試験・臨床双方で問われやすい。

まとめ

  • NC1ドメインに対する自己抗体がを共通して攻撃する疾患で、肺・腎両方が侵される表現型をと呼ぶ(腎もあり、喀血なしでは除外できない)。
  • RPGNのI型()に分類され、でのGBMに沿った線状IgG沈着が、、ANCA関連血管炎のパターンと鑑別の軸になる。
  • 診断は血清(感度約90%)と腎生検の組み合わせによる。約30%にANCA(主に)とのを認め、しやすい経過をとりうる。
  • 進行が極めて速いため、生検結果を待たず・副腎皮質ステロイド・による治療を開始する。
  • 透析依存かつ100%近いがあり肺胞出血を伴わない例は腎機能回復の可能性が低く、治療の利益を個別に判断する。
  • 腎移植は血清抗体の陰性化を確認してから計画し、難治例ではリツキシマブが選択肢になりうる。