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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 症候群

急性腎障害

Acute kidney injury

別名
AKI急性腎不全
臓器系
腎・泌尿器全身
科目
Internal MedicineIntensive Therapy and AnesthesiologyTranslational Medicine and PathophysiologyUrologyPediatrics
トピック
内科学 L-36:急性腎障害麻酔科学 B-01:ICUにおける急性腎障害病態生理学 II-8:急性腎不全の原因と全身的影響泌尿器科学 U-11:急性腎障害と慢性腎不全小児科 3-28:小児急性腎障害
合併症
肺水腫
続発疾患
慢性腎臓病腎性全身性線維症
関連疾患
心腎症候群
治療薬
フロセミド
原因薬剤
アミカシンアトルバスタチンカプトプリルシスプラチンコリスチンエナラプリルフォスカルネットゲンタマイシンイルベサルタンケトロラクロサルタンマンニトールネチルマイシンペリンドプリルラミプリルロスバスタチンテラバンシントブラマイシントレチノインバルサルタンバルサルタン+サクビトリルバンコマイシンベネトクラクスゾレドロン酸
症状
悪心意識障害出血傾向浮腫乏尿無尿
検査値
活動性尿沈渣尿素窒素カリウムクレアチニンヘモグロビン尿血算浸透圧尿酸尿沈渣Na排泄分画
画像所見
水腎症
下位分類
急性尿細管壊死造影剤腎症
元疾患
McKittrick-Wheelock症候群アルシン(ヒ化水素)ガス中毒ジストニア重積リチウム中毒レプトスピラ症悪性高熱症悪性症候群移植関連血栓性微小血管症横紋筋融解症肝硬変肝類洞閉塞症候群急性・慢性尿細管間質性腎炎急性腎盂腎炎・腎膿瘍急性妊娠脂肪肝血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)抗糸球体基底膜病(グッドパスチャー症候群)行軍ヘモグロビン尿脂肪塞栓症候群出血性膀胱炎腎症候性出血熱腎動脈狭窄症髄腔内バクロフェン離脱症候群多発性骨髄腫特発性細菌性腹膜炎尿道狭窄尿路感染症尿路結石症熱傷膿腎症泌尿生殖器外傷腹部コンパートメント症候群薬剤性免疫性溶血性貧血溶血性尿毒症症候群溶血性輸血反応溶連菌感染後糸球体腎炎
原因となる疾患
ANCA関連血管炎アマトキシン中毒コレステロール塞栓症悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症急性肝不全顕微鏡的多発血管炎後腹膜線維症好酸球性多発血管炎性肉芽腫症高血圧症骨髄腫腎腎性低尿酸血症全身性強皮症多発血管炎性肉芽腫症脱水毒性アルコール中毒熱中症・低体温症閉塞性腎症
禁忌薬
インダパミドマンニトールミドドリン

🧠 全体像:は、上昇またはで認識する急性の腎機能低下である。「・・」を順番ではなく同時に評価し、原因除去と体液・を進め、生命を脅かす合併症ではクレアチニン値を待たずを開始する。

定義

2026更新版は公開査読草案の段階であり1、現時点で正式発刊済みのは2012年版である2。その基準では、次のいずれかを満たすとと定義する。

は低下より遅れて上昇し、、輸液希釈、薬剤の影響を受ける。尿量は早期変化を捉える一方、カテーテル閉塞、利尿薬、でも変化するため、両方を追跡する。

KDIGO重症度

尿量
1 の1.5〜1.9倍、または0.3 mg/dL以上上昇 0.5 mL/kg/時未満が6〜12時間
2 の2.0〜2.9倍 0.5 mL/kg/時未満が12時間以上
3 の3倍、4.0 mg/dL以上への上昇、または開始 0.3 mL/kg/時未満が24時間以上、または12時間以上

18歳未満では、が35 mL/min/1.73 m²未満へ低下することも3基準に含まれる。クレアチニン基準と尿量基準が異なるを示す場合は、重い方を採用する。

原因と病態

flowchart TD
    A["急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular filtration rate'>GFR</span>低下"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prerenal'>腎前性</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced renal perfusion'>腎灌流低下</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrinsic renal'>腎実質性</span>:腎組織障害"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postrenal'>腎後性</span>:尿路閉塞"]
    B --> E["持続すると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic tubular injury'>虚血性尿細管障害</span>"]
    C --> F["糸球体・尿細管・間質・血管病変"]
    D --> G["尿細管内圧上昇・水腎症"]
    E --> H["体液・K・酸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uremic toxin'>尿毒素</span>の排泄低下"]
    F --> H
    G --> H
    H --> I["肺水腫・高K血症・アシドーシス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uremia'>尿毒症</span>"]
分類 代表原因 診断の手掛かり
出血、脱水、敗血症、心不全、肝硬変、過度の、病変 体液喪失、低灌流または、循環是正への反応
虚血・毒性、糸球体腎炎、間質性腎炎、血管炎、TMA、 、蛋白尿、血尿、皮疹、溶血、上昇
、結石、腫瘍、、、 、、水腎症、両側性閉塞

はの拡張を妨げ、阻害薬・はを拡張するため、依存状態でを低下させ得る。造影剤、アミノグリコシド、バンコマイシン、シスプラチン、色素、結晶、腫瘍崩壊関連薬も確認する。

造影剤によるは、現在は「(CI-AKI)」と、造影剤に曝露はしたが他の要因も寄与した可能性を含む「()」を区別して考える。腎機能低下患者における静注単独のAKIリスクは従来過大評価されていたとされ、予防は禁忌(心不全など)がなく維持透析を受けていないAKIまたは 30 mL/min/1.73 m²未満の患者で適応とされ( 30〜44は個別の高リスク状況で考慮、安定した 45以上では不要)、行うときはによる等張のが望ましい方法である。かつて推奨されたは無作為化試験でに優らず推奨されない一方、は予防効果がと同等らしいものの薬剤師による調製を要するため優先されない3。

では虚血・毒性による上皮障害、細胞脱落と、、炎症、血管収縮が低下を維持する。基底膜が保たれればは再生し得る。

⚠️ 上の3分類のどこにも素直に収まらない機序として、による腎障害がある。 が上がるとと腎血管抵抗がともに有意に上昇し、血流は腎皮質と機能する糸球体から逸れて糸球体・尿細管機能が落ちる。総説は逐語で「の圧迫がの主役を果たし、心拍出量の低下は二次的な役割にとどまるとみられる」とし、これに腎実質の直接圧迫(「腎」)による虚血が加わるとする。⚠️ 一方、尿管の直接圧迫はを用いた研究で原因として否定されており、閉塞として扱わない。 乏尿は15 mmHg、は30 mmHgで生じうるとされ、これらの変化は重篤なに至る前にを認識して治療すれば可逆でありうる4。💡 輸液を追加しても乏尿が改善しにくいのはこの機序による——見かけはでも、下げるべきはの側である。大量輸液を要した重症患者・・重症の乏尿で、循環是正に反応しないときに疑う。

臨床像と合併症

乏尿を伴わないAKIも多く、は両側閉塞、重度血管障害、などを疑うである。

領域 主な問題
体液 浮腫、肺水腫、低酸素血症、心不全悪化
電解質 高K血症、Na異常、、低Ca血症
酸塩基 代謝性アシドーシス
悪心、意識障害、、
薬物 薬の蓄積と毒性、への感受性増加
長期 AKI再発、、心血管イベント、死亡リスク上昇

診断

flowchart TD
    A["クレアチニン上昇または乏尿"] --> B["以前の値・尿量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='time course'>時間経過</span>を確認"]
    B --> C["バイタル・体液反応性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ血</span>を評価"]
    B --> D["薬剤・造影・感染・出血・筋障害を確認"]
    B --> E["カテーテル確認+膀胱スキャン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal and urinary tract ultrasonography'>腎尿路超音波</span>"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinalysis (dipstick / qualitative)'>尿定性</span>・沈渣+血算・電解質・血液ガス"]
    E --> G{"閉塞があるか"}
    G -->|"はい"| H["感染の有無を確認し緊急解除"]
    F --> I["尿沈渣と全身所見から実質性疾患を分類"]
    C --> J["循環異常を原因別に是正"]
    I --> K{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapidly progressive glomerulonephritis'>急速進行性腎炎</span>・血管炎などか"}
    K -->|"はい"| L["腎専門医・血清学的検査・腎生検を急ぐ"]

尿検査の読み方

所見 主に考える病態
・・蛋白尿 糸球体腎炎
白血球・ 間質性腎炎、腎盂腎炎
ヘム陽性で赤血球が少ない 、
結晶 薬剤、尿酸、などによる

/クレアチニン比、尿浸透圧、、、は補助所見である。利尿薬、、敗血症、早期、糸球体疾患などで外れるため、単独でかかを決めない。

初期治療

原因治療と支持療法

  • 出血、敗血症、、糸球体腎炎、血管炎、などの原因を治療する。
  • にはを反応を見ながら投与し、うっ血患者へ機械的に追加しない。
  • を中止・最小化し、すべての薬を変化する腎機能とに合わせて調整する。
  • 尿量、体重、血圧、体液、K、Na、Ca、リン、Mg、酸塩基、栄養を反復評価する。
  • AKIは膀胱カテーテル、、などで解除する。は泌尿器救急である。

はの症状管理には使えるが、AKIそのものの予防、腎回復促進、の期間・頻度の短縮を目的に用いない。を腎保護目的に用いない。

⚠️ 平坦に並べると、推奨の強さの差が消える。 2012 は「推奨する(recommend)」と「提案する(suggest)」を書き分けている2。

条項 内容 強さ 根拠の質
3.4.1 利尿薬をAKIの予防に用いないことを推奨 1(強い) B
3.5.1 低用量ドパミンをAKIの予防または治療に用いないことを推奨 1(強い) A
5.2.2 利尿薬を腎機能回復の促進・の期間や頻度の短縮の目的で用いないことを提案 2(弱い) B
3.4.2 利尿薬をAKIの治療に用いないことを提案(ただしの管理は除く) 2(弱い) C

⚠️ 1A・1B の数字と英字は別のものを表す。 はGRADEに倣い、数字が推奨の強さ(level 1=strong「推奨する(We recommend)」/level 2=weak「提案する(We suggest)」)、英字が根拠の質(A=高、B=中、C=低、D=非常に低)を表すと明記している2。⭐ したがって 3.4.1(1B)と 3.5.1(1A)は推奨の強さが同じで、違うのは支持するエビデンスの質だけである。「1Aは1Bより強い推奨」と読まない。

💡 同じ薬でも、目的が変われば強さが変わる。 利尿薬は予防に用いないことが level 1(強い推奨)なのに対し、治療に用いないことは level 2(弱い提案)にとどまり、しかも「の管理」は除外される(3.4.2)。否定されているのは「尿量が増えれば腎臓が守られる」という発想のほうであって、利尿薬という薬そのものではない。

腎代替療法

は生命を脅かす体液、電解質、酸塩基異常があれば緊急に開始する。単一の・クレアチニン閾値ではなく、変化速度、治療反応、代謝需要、腎の処理能力、回復可能性、全身予後、患者のを統合する。切迫した適応が無い患者では、加速的な早期開始が標準的な戦略と比べて生存などの転帰を改善しないことが(STARRT-AKI・AKIKI)で示されており、数値のみで開始を急ぐ根拠にはならない5。

適応 代表例
難治性電解質異常 内科治療で制御できない高K血症
難治性酸塩基異常 原因治療・内科治療に反応しない重症代謝性アシドーシス
利尿薬などで制御できない肺水腫・低酸素血症
合併症 、脳症、出血など
除去可能な中毒 病態とから透析が有効な薬物・毒物

は迅速な溶質・水分除去に適し、は循環不安定、脳浮腫リスク、緩徐なが必要な患者で選ばれやすい。方式名より、患者に合う処方、アクセス、抗凝固、、治療中断の最小化が重要である。

小児での注意

小児は基礎クレアチニンが低いため、小さな絶対上昇にも意味がある。下痢・敗血症、、、、腫瘍崩壊、薬剤曝露を年齢に応じて評価し、体重と時間尿量を正確に追跡する。

循環不全に輸液が必要でも、体重当たり投与量と反応を細かく再評価し、肺水腫を避ける。成長、栄養、薬剤量、家族への説明も治療計画へ組み込む。

回復後の管理

退院時に腎機能、薬剤、体液・血圧、再検時期を明確にする。はAKIから3か月後に、回復、新規、既存の悪化を評価するよう勧める2。が元に戻っても、再発との高リスク状態として尿アルブミン、血圧、を見直す。

まとめ

  • AKIはと尿量の両方で認識し、重い方のを用いる。
  • ・・を並行評価し、尿沈渣、循環評価、薬剤歴、超音波を組み合わせる。
  • 輸液も利尿薬も一律には行わず、とうっ血を見分けて反応を再評価する。
  • は単一の数値でなく、治療抵抗性の体液・電解質・酸塩基・合併症で判断する。

出典

  1. 1.KDIGO 2026 AKI and AKD Guideline: Public Review Draft(KDIGO・2026)2012年版以来初めての全面改訂が2026年3月に公開査読草案として公開されたが、2026年8月時点で正式発刊はされておらず、現行の正式な診断基準は引き続き2012年版である閲覧 2026-08-03
  2. 2.KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury(KDIGO・2012)AKIの定義(48時間以内0.3 mg/dL以上上昇、7日以内1.5倍以上上昇、尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上)とKDIGO重症度ステージ1〜3の閾値(小児のeGFR基準を含む)、および回復後3か月時点でのCKD評価の推奨。2026-09-05に全文PDFを再取得し、介入の推奨番号と強さが 3.4.1 利尿薬をAKIの予防に用いないことを推奨(1B)、3.4.2 体液過剰の管理を除き利尿薬をAKIの治療に用いないことを提案(2C)、3.5.1 低用量ドパミンをAKIの予防または治療に用いないことを推奨(1A)、5.2.2 腎機能回復の促進や腎代替療法の期間・頻度の短縮を目的に利尿薬を用いないことを提案(2B)であることを逐語で確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Use of Intravenous Iodinated Contrast Media in Patients With Kidney Disease: Consensus Statements from the American College of Radiology and the National Kidney Foundation(American College of Radiology / National Kidney Foundation・2020)同時掲載のKidney Medicine版全文(PMC7525144)で確認した。静注ヨード造影剤による急性腎障害リスクは腎機能低下患者でも過大評価されてきたとし、予防(生理食塩水の静注)は禁忌(心不全など)がなく維持透析を受けていないAKIまたはeGFR 30 mL/min/1.73 m²未満の患者で適応、eGFR 30〜44は個別の高リスク状況で考慮しうる、安定したeGFR 45以上では適応とならないとする。予防を行うときは生理食塩水による等張の容量負荷が望ましい方法で、炭酸水素ナトリウムは予防効果が生理食塩水と同等らしいが薬剤師による調製を要するため優先されず、N-アセチルシステインは推奨されない閲覧 2026-09-24
  4. 4.Abdominal Compartment Syndrome: pathophysiology and definitions(Scandinavian Journal of Trauma, Resuscitation and Emergency Medicine・2009)Europe PMC(PMC2654860)で全文を取得して逐語確認した。腎の項が、腹腔内圧上昇に伴い「Renal vein pressure and renal vascular resistance are both significantly elevated」となり「All of these changes shunt blood away from the renal cortex and functioning glomeruli leading to impaired glomerular and tubular function and significant reductions in urinary output」と述べること、機序の整理が「Recent studies suggest that compression of the renal vein likely plays the primary role in the development of renal dysfunction with reduced cardiac output playing a secondary role」であり、実質の直接圧迫による腎コンパートメント症候群も機序として挙げられること、尿管の直接圧迫は尿管ステントを用いた研究(Harmanら)で原因として否定されていること、乏尿は腹腔内圧15 mmHg・無尿は30 mmHgで生じるとされること、「All of these pathophysiologic changes appear to be potentially reversible if the patient's IAH is recognized and treated appropriately before significant organ dysfunction has developed」と述べていることを確認した。単著(Cheatham ML)であることはCrossrefで照合した閲覧 2026-09-17
  5. 5.Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury (STARRT-AKI)(STARRT-AKI Investigators・2020)生命を脅かす明確な適応が無い重症患者では、加速的な早期腎代替療法開始は標準的な待機戦略と比べて90日死亡率を改善せず、不要な導入につながり得る閲覧 2026-08-03