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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 先天性疾患

腎性低尿酸血症

Renal hypouricemia

別名
家族性腎性低尿酸血症特発性腎性低尿酸血症RHUC
臓器系
腎・泌尿器内分泌・代謝
科目
PediatricsInternal Medicine
トピック
小児科 3-26:小児腎尿細管疾患内科学 E-09:プリン・鉄・銅代謝および希少代謝疾患
鑑別疾患
ファンコニ症候群キサンチン尿症
続発疾患
急性腎障害尿路結石症
症状
側腹部痛血尿
検査値
尿酸

🧠 全体像:は、で尿酸を再吸収するトランスポーターが働かないために血清尿酸が下がる病態である1。同じ「」でも、産生側の酵素が欠けているとは入口が正反対で、この2つはを見れば一目で分かれる——では捨てすぎているので尿中尿酸が多く、では作れていないので尿中尿酸もわずかしかない。日本人に比較的多く(男性約0.2%・女性約0.4%)、それ自体は無症状だが、(EIAKI)とという2つの合併症が診療上の要点である1。⚠️ 「尿酸が低いのだから痛風の心配が無くて結構」ではない。

機序:どこで再吸収が止まるのか

ヒトの血中尿酸が他のより高い(200〜500 µM)のは、進化の過程で肝を失った一方で効率のよい腎系を持っているためである2。は、その再吸収系が壊れた状態にほかならない。

病型 遺伝子 タンパク質
1型 SLC22A12 URAT1()
2型 SLC2A9 GLUT9

URAT1は長く仮説上の存在だったヒト腎のとして同定されたで、血中尿酸値を調節し、・が作用する標的そのものである。の患者がSLC22A12に欠損を持つことも同じ研究で示された2。GLUT9のほうは、「糖シグネチャー1/2」という高度に保存された領域に生じたが報告され、発現系で野生型が高い尿酸輸送活性を示すのに対しでは著明に低下した。GLUT9の局在に関する既報と併せると、の両側でが落ちることが2型の機序と考えられている3。

⚠️ どちらの遺伝子にもが見つからない患者が存在するため、未知のがあると考えられている1。が陰性でも診断は否定されない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urate reabsorption'>尿酸再吸収</span>トランスポーター<br>URAT1・GLUT9"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss-of-function variant'>機能喪失変異</span>"]
    B --> C["再吸収されず尿へ捨てられる"]
    C --> D["血清尿酸低値"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary uric acid excretion'>尿中尿酸排泄</span>の増加<br>FEUA上昇"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urolithiasis'>尿路結石</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic exercise'>無酸素運動</span>を契機に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='exercise-induced acute kidney injury'>運動後急性腎障害</span>(EIAKI)"]

診断:血液と尿の単純な検査で決まる

診療ガイドラインの診断ガイダンスは、必須項目3つと参考項目3つからなる1。

区分 内容
必須① 血清尿酸 2.0 mg/dL(120 µmol/L)以下の
必須② (FEUA)および/または(CUA)の上昇
必須③ を来す他疾患の除外
参考(1) (SLC22A12・SLC2A9)の変異
参考(2) EIAKIの既往
参考(3) の家族歴

必須①と②は持続して確認する(1回の値で決めない)。FEUAの正常範囲は8.3(5.5〜11.1)%、CUAは11.0(7.3〜14.7)mL/minである1。

⭐ このガイダンスの要点は「を必須にしていない」ことである。 血液と尿の単純な検査だけで診断できるよう設計されており、は参考項目に置かれている。

⚠️ 2.0 mg/dLという線は絶対の閾値ではない。 血清尿酸2.1〜3.0 mg/dL(121〜180 µmol/L)でも軽症のでありうるため、参考項目のいずれかが当てはまるときはとくに再検が望ましい1。

⚠️ EIAKIを起こしている最中の血清尿酸は必ずしも低くない。 発症前(可能なら)または軽快後に測る1。急性期の正常値を根拠に除外すると診断できない。

鑑別:低尿酸血症は「捨てすぎ」か「作れない」か

ガイドラインの鑑別表は、を2群に大別する1。

群 該当するもの
、、、SIADH、悪性腫瘍、糖尿病、薬剤(・など)、妊娠、
(I型・II型)、、、合成酵素活性低下、、、薬剤(など)、るいそう

⭐ 薬剤性を除くと、無症状のままを示す疾患はとの2つだけである。 そしてこの2つはで分かれる——ではがわずかしかない1。

💡 も尿酸を捨てるが、そちらはの全般的な再吸収障害なので、・・・喪失を伴う。尿酸だけが漏れているのか、他も一緒に漏れているのかがになる。

合併症①:運動後急性腎障害(EIAKI)

EIAKIは、後の激しいと斑状のを伴う(ALPE)とも呼ばれる病態である1。ではとともに、この臨床徴候が初回診断の契機になることが多い。

⚠️ 予防としての阻害薬には、まだ確立した推奨が無い。 病態の仮説的な機序に基づいてが予防目的に投与された症例報告はあるが、有効性の説得力ある証拠は欠けている1。ガイドラインのCQ2に対する推奨は次のとおりである。

確たる規則を定めることはまだできない。ただし阻害薬はEIAKIの発症または再発を予防しうるため、とくにアスリートやEIAKIの既往のある高リスク患者では、潜在的な利益と害を考慮して投与を決めるべきである1。

💡 「効くかもしれないが証拠が足りない」を、そのまま推奨文に書いてあるという点を読み取る。競技者や既往のある人に限って個別に判断する、という運用である。

合併症②:尿路結石

に対してはによるが有効で、予防には十分な飲水が推奨される1。

見つけたらどうするか

ガイドラインのCQ1は「血清尿酸2.0 mg/dL以下の人にのを検討すべきか」であり、推奨は「強く推奨する」である1。

flowchart TD
    A["健診などで血清尿酸の低値を指摘"] --> B{"血清尿酸 2.0 mg/dL 以下か"}
    B -->|"はい"| C["血清尿酸を再検し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary uric acid excretion'>尿中尿酸排泄</span>(FEUA・CUA)を測る"]
    B -->|"いいえ<br>(2.1〜3.0 mg/dL)"| D["軽症の可能性を残し<br>家族歴を聴取して再検する"]
    D --> C
    C --> E["診断ガイダンスに照らして<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal hypouricemia'>腎性低尿酸血症</span>を診断"]
    E --> F{"EIAKI・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urolithiasis'>尿路結石</span>があるか"}
    F -->|"ある"| G["それぞれの標準治療を行う"]
    F -->|"ない"| H["合併症のリスクがあることを説明し<br>予防行動につなげる"]

⚠️ 合併症が無い人にも説明が要る。 ガイドラインの臨床アルゴリズムは、合併症を持たない患者に対しても「EIAKIやのリスクがあるため予防のための行動をとるべきだと助言する」ことを求めている1。無症状だから何もしない、では足りない。

まとめ

  • はのトランスポーター(URAT1/SLC22A12=1型、GLUT9/SLC2A9=2型)の機能障害による病態で、日本人では男性約0.2%・女性約0.4%と比較的多い。
  • 診断は「血清尿酸2.0 mg/dL以下」「FEUA・CUAの上昇」「他疾患の除外」の3つを持続して確認することで成立し、は必須ではない。
  • 血清尿酸2.1〜3.0 mg/dLの軽症例があり、EIAKIの急性期には尿酸が低くないことがあるため、1点の値で除外しない。
  • はとに分かれ、無症状のまま起こるのはとだけである。両者はで区別する。
  • 合併症は(EIAKI/ALPE)と。EIAKIは一過性・反復性でAKIの標準治療を行い、結石にはと飲水で対応する。
  • EIAKI予防の阻害薬は確たる推奨に至っておらず、アスリートや既往のある高リスク患者で利益と害を比較して個別に決める。

出典

  1. 1.Clinical practice guideline for renal hypouricemia (1st edition)(Human Cell(Nakayama A, Matsuo H, Ohtahara A, et al.、日本痛風・核酸代謝学会と共同編集)・2019)腎性低尿酸血症を腎近位尿細管細胞の尿酸再吸収トランスポーターの障害による病態と定義し、先天性プリン代謝異常や二次性低尿酸血症に由来するものを含めないこと、日本での有病率が男性約0.2%・女性約0.4%であること、URAT1/SLC22A12とGLUT9/SLC2A9の機能障害がそれぞれ1型・2型の原因でありどちらにも機能喪失変異が無い患者が存在するため未知の原因遺伝子の存在が示唆されること、診断ガイダンスが「血清尿酸2.0 mg/dL(120 µmol/L)以下の低尿酸血症」と「尿酸排泄分画(FEUA)および/または尿酸クリアランス(CUA)の上昇」が持続して確認され、かつ低尿酸血症を来す他疾患が除外されることを必須項目とし、原因遺伝子の変異・EIAKIの既往・家族歴を参考項目とすること、FEUAの正常範囲が8.3(5.5〜11.1)%、CUAが11.0(7.3〜14.7)mL/minであること、血清尿酸2.1〜3.0 mg/dLでも軽症の腎性低尿酸血症でありうるため再検が望ましいこと、EIAKI発症時には血清尿酸が必ずしも低くないため発症前または軽快後に測るべきこと、鑑別表が低尿酸血症を排泄過剰型(腎性低尿酸血症・Fanconi症候群・Wilson病・SIADH・悪性腫瘍・糖尿病・ベンズブロマロンやプロベネシドなどの薬剤・妊娠・難治性下痢)と産生低下型(キサンチン尿症I型・II型、モリブデン補因子欠損症、PNP欠損症、PRPP合成酵素活性低下、特発性尿酸産生低下型低尿酸血症、重症肝障害、アロプリノールなどの薬剤、るいそう)に分けること、薬剤性を除けば無症状のまま低尿酸血症を来す疾患は腎性低尿酸血症とキサンチン尿症だけであり、キサンチン尿症は尿中尿酸排泄がわずかである点で区別されること、多くは健診で偶然発見され尿路結石とEIAKIの臨床徴候が初回診断の契機になること、EIAKIは無酸素運動後の激しい腰痛と斑状腎虚血を伴う急性腎不全(ALPE)とも呼ばれ血液透析を要することもあるが一般には一過性かつ反復性のAKIでAKIの標準治療を受けること、アロプリノールが病態の仮説的機序に基づき予防目的で投与された症例報告があるものの有効性の説得力ある証拠は欠けること、尿路結石にはクエン酸製剤による尿アルカリ化が有効で予防には十分な飲水が推奨されること、CQ1「血清尿酸2.0 mg/dL以下の人に低尿酸血症の鑑別診断を検討すべきか」への推奨が「強く推奨する」であること、CQ2「腎性低尿酸血症患者にEIAKI予防のためXOR阻害薬を投与すべきか」への推奨が「確たる規則を定めることはまだできない。ただしXOR阻害薬はEIAKIの発症または再発を予防しうるため、とくにアスリートやEIAKIの既往のある高リスク患者では潜在的な利益と害を考慮して投与を決めるべきである」であることを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels(Nature(Enomoto A, Kimura H, Chairoungdua A, et al.)・2002)ヒトの血中尿酸濃度が他の哺乳類より高い(200〜500 µM)のは、肝ウリカーゼを進化の過程で失った一方で効率的な腎尿酸再吸収系をもつためであること、長く仮説上の存在だったヒト腎の尿酸トランスポーターをURAT1(SLC22A12がコードする尿酸アニオン交換体)として同定したこと、URAT1が血中尿酸値を調節し尿酸排泄促進薬・排泄抑制薬の標的であること、特発性腎性低尿酸血症の患者がSLC22A12に欠損を持つ証拠を示したことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Mutations in glucose transporter 9 gene SLC2A9 cause renal hypouricemia(The American Journal of Human Genetics(Matsuo H, Chiba T, Nagamori S, et al.)・2008)腎性低尿酸血症を腎の尿酸再吸収障害とそれに続く低血清尿酸値を特徴とする遺伝性疾患とし、運動誘発性急性腎不全と腎結石という重篤な合併症を伴うと位置づけていること、著者らが以前にSLC22A12(URAT1)を原因遺伝子として同定していたこと、URAT1に変異を持たない低尿酸血症患者の存在とSLC2A9(GLUT9)と尿酸値のゲノムワイド関連解析の結果からGLUT9がもう一つの原因遺伝子でありうると考えられたこと、大規模データベースからGLUT9の機能喪失型のヘテロ接合変異2つを「糖輸送タンパク質シグネチャー1/2」という高度に保存された領域に同定したこと、いずれの変異も正電荷の消失をもたらし一方は膜トポロジーの重要な決定因子と報告されていること、卵母細胞発現実験でGLUT9の両アイソフォームが高い尿酸輸送活性を示したのに対し変異型では著明に低下したこと、GLUT9の局在に関する既報と併せてこれらの変異が近位尿細管の両側での尿酸再吸収低下を通じて腎性低尿酸血症を起こすと考えられることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03