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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

腎梗塞

Renal infarction

臓器系
腎・泌尿器循環器
科目
Internal MedicineUrologyPathology
トピック
内科学 N-03:腎疾患の鑑別診断泌尿器科学 U-07:急性腹症の鑑別診断(泌尿器科疾患を中心に)病理学 A/04:凝固壊死(臓器別の所見)
鑑別疾患
尿路結石症脾梗塞
治療薬
ヘパリンアピキサバン
症状
側腹部痛血尿悪心
検査値
乳酸脱水素酵素
画像所見
楔状の造影欠損

🧠 全体像は「痛+血尿」という提示だけを見るととうり二つで、発症から2日以内に正しく診断される患者は半数未満という見逃されやすさが最大の学習ポイントである1。落とし穴は検査の選び方にある——を除外する目的のではは写らない。造影CTのでなければの造影欠損は見えない。 もう一つの手がかりは⭐ LDHので、AST・ALTの上昇を伴わずにLDHだけが正常の4〜5倍まで上がるという乖離が、や腎盂腎炎とは違う特徴になる1

病態と原因

本幹または区域枝の急性閉塞により、の腎実質がに陥る。腎は動脈の終末循環に近くが乏しいため、閉塞は蒼白()なの梗塞を形成し、底辺を被膜側に、側に向ける。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal artery'>腎動脈</span>本幹・区域枝の急性閉塞"] --> B{"原因は"}
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardioembolism'>心原性塞栓</span>(最多、最大55%)<br>その64〜75%が心房細動"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal artery'>腎動脈</span>原発性血栓症<br>解離・外傷・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiography'>血管造影</span>後"]
    B --> E["血管炎・凝固異常"]
    B --> F["特発性(約20〜30%)<br>若年・喫煙者に多い"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='territory of innervation'>支配域</span>の腎実質が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic necrosis'>虚血性壊死</span>"]
    D --> G
    E --> G
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge-shaped'>楔状</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anemic hypoxia'>貧血性</span>梗塞<br>被膜側が底辺・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal hilum'>腎門</span>側が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pointed end'>尖端</span>"]
    H --> I["LDH<span class='jp-term jp-term-diagram' title='markedly elevated'>著明高値</span><br>AST/ALTは相対的に低値"]

が原因の最大55%を占め、その64〜75%は心房細動に由来する。解離、血管炎、などの凝固異常も原因となる。約20〜30%は原因不明の特発性で、若年・喫煙者に多いとされ、の標的として位置づけられている1

⚠️ 若年で明らかな誘因がないは、検索と凝固異常の精査を省略しない。 経胸壁・必要に応じ・弁膜症・などのを検索し、血管炎・などの凝固異常をあわせて評価する。

臨床像

  • 突然発症のまたは腹痛がで、悪心・嘔吐、血尿を伴う。
  • 発熱を伴うこともあり、との鑑別を難しくする。
  • 高血圧を新規に来すことがある(虚血によるレニン・の活性化)。
  • 両側性や広範な梗塞では乏尿・を来しうる。

診断

⚠️ 痛+血尿でに結石が無い」で終わらせない。 ・腎盂腎炎の除外には有用だが、では乏しい所見(組織の濃度上昇、軽度腫大程度)しか示さないことが多い1

flowchart TD
    A["突然発症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar region (flank)'>側腹部</span>痛+血尿"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncontrast CT'>単純CT</span>で結石を除外"]
    B --> C{"結石なし・症状に不釣合いか"}
    C -->|"はい"| D["LDHを測定"]
    C -->|"いいえ"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urolithiasis'>尿路結石</span>として管理"]
    D --> F{"LDH<span class='jp-term jp-term-diagram' title='markedly elevated'>著明高値</span><br>(AST/ALTは目立たない)"}
    F -->|"あり"| G["造影CT(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial phase'>動脈相</span>)で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge-shaped'>楔状</span>の造影欠損を確認"]
    F -->|"なし"| H["他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar region (flank)'>側腹部</span>痛の原因を再検討"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal infarct'>腎梗塞</span>と診断"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='embolic source'>塞栓源</span>検索(心エコー・心電図)<br>凝固異常の評価"]
  • LDHのマーカーとして正常の4〜5倍まで上昇しうる一方、AST・ALTの上昇を伴わない。この乖離は・腎盂腎炎では見られず、を積極的に疑う手がかりになる1
  • 画像検査:造影CTので、腎皮質からに向かうの造影欠損を認める。被膜下の菲薄な皮質のみが腎被膜動脈からの血流で保たれ増強される「皮質辺縁徴候」を伴うことがある。
  • 検索として心電図・心エコー、凝固異常の評価として血管炎マーカー・・凝固因子活性を追加する。

治療

治療の中心はではなくであり、これは発症から評価までに時間が経っていることが多いためである。

  • :血栓塞栓症を有する全患者にヘパリンによるを開始する2や凝固異常が背景にあれば、長期のワルファリンまたはなどの)を継続する1
  • (血栓溶解・・外科的)の適応は限られる。 発症から3時間以内など早期に治療できた場合に腎機能改善が期待できる一方、完全な機能回復は稀で、早期・晩期死亡率も高い2。外科的より死亡率が高く、腎機能回復における優位性も示されていない2
  • ⚠️ 発症から数日以上が経過した患者では、は有益とは考えにくく、抗凝固・療法が治療の第一選択になる1

鑑別診断

疾患 鑑別のポイント
疝痛(体位で軽快しない波状痛)が主体。で結石が確認できる
発熱・を伴う持続痛。LDHのは伴わない
同じ塞栓性・梗塞の機序を共有するが左上腹部痛が主体

まとめ

  • 痛+血尿という提示がと酷似し、発症2日以内に正しく診断される例は半数未満にとどまる見逃されやすい疾患である。
  • では診断できず、造影CTのの造影欠損を確認する必要がある。
  • LDHがAST・ALTの上昇を伴わずに正常の4〜5倍まで上昇する乖離が診断の手がかりになる。
  • 原因は(最多、心房細動が中心)が最大55%を占め、解離・血管炎・凝固異常が続き、約20〜30%は特発性である。若年で誘因がなければ検索と凝固異常の精査を行う。
  • 治療はが中心で、の適応は発症早期の限られた症例に留まる。

出典

  1. 1.Renal Infarction(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)腎梗塞は発症から2日以内に正しく診断される患者が半数未満にとどまり見逃されやすいこと、単純CTでは尿路結石・腎盂腎炎の除外はできても腎梗塞では所見に乏しく造影CTの動脈相で楔状の造影欠損として描出されること、LDHが細胞壊死のマーカーとしてAST・ALTの上昇を伴わずに正常の4〜5倍まで上昇しうる点が尿路結石や腎盂腎炎など他の原因では見られない特徴であること、心原性塞栓が原因の最大55%を占めそのうち64〜75%が心房細動によること、約20〜30%は特発性で若年・喫煙者に多いこと、発症から数日以上経過した患者では血行再建より抗凝固・抗血小板療法が治療の第一選択であり心原性塞栓や凝固異常があれば長期抗凝固を要することを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Renal Artery Stenosis and Occlusion(Merck Manual Professional Version・2024)腎動脈の急性完全閉塞が心房細動・心筋梗塞後・感染性心内膜炎の疣贅などに由来する心原性塞栓、大動脈由来のアテローム塞栓、または外傷・手術・血管造影後の腎動脈原発性血栓症により生じること、症状発現から3時間以内の血行再建で腎機能改善が期待できる一方で完全回復は稀であり早期・晩期死亡率が高いこと、外科的血行再建は線溶療法より死亡率が高く腎機能回復に優位性がないため血栓塞栓症を有する全患者にヘパリンによる抗凝固療法を行うことを確認した閲覧 2026-08-11