病理学

病理学 · A/04

凝固壊死(臓器別の所見)

Coagulative necrosis and its organ manifestation

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
疾患
腎梗塞遊走脾脾梗塞
症状
エスカー化学眼外傷
画像所見
楔状の造影欠損

🧠 全体像:は「タンパク質の変性が酵素によるより先行する」ために組織の輪郭(ghost細胞)が保たれる壊死で、臓器の動脈閉塞に典型的。梗塞の色調は原因臓器そのものではなく「血流の入りが絶たれたか(白色)、出が滞って血液が貯留するか(赤色=疎な組織・・・再灌流)」という一点で決まる。

定義とメカニズム

  • :細胞は死んでいるが、基本的な(細胞の輪郭)は保たれ、質感は硬くなる。
  • 傷害(虚血に伴うなど)がタンパク質と酵素を変性させる → 分解酵素自体も働けずが阻まれる → 数日にわたり組織の輪郭が保たれた「ghost(幽霊)」細胞となる(教科書的な機序説明)。
  • 変性タンパク質がに結合 → 無核の細胞が好酸性を示す。
  • 後から炎症細胞が遊走してきて壊死組織を消化する。
  • 主に心臓・腎臓・脾臓で起こる(古典的には虚血による。脳は例外)。

梗塞 — 色調による分類

  • 白色()梗塞 — 流入の問題。臓器(心臓・脾臓・腎臓)の動脈閉塞で、組織が密なため出血が制限される。
  • 赤色(出血性)梗塞 — 排出の問題。、疎な組織、(肺・腸管)、または再灌流後に生じる。
(流入) 出血性(排出・再灌流)
再灌流後のAMI
腸梗塞

臓器別の所見

腎梗塞

  • の原因: 血栓症()または塞栓症(左房の心房細動、、など心臓由来が重要)。⚠️ が「大半」というわけではない。 1989〜2011年の94例をに集めた症例集積では、原因は23例(約4分の1)、自体の傷害(解離・外傷・血管内操作)29例、15例、原因不明27例に分かれた1——ただしこれは単一の症例集積で、紹介元の診療科の偏りを受けうる。心房細動を背景とする44例の検討では平均年齢69.5±12.6歳で、を反映し93%が血清 400 U/dL超(単位は原著の表記のまま)であった2。
  • 形態: 蒼白での壊死、は髄質側、周囲に。を残して治癒する。
  • 臨床: 症状が乏しく見逃される例もあるが、臨床的に診断されたでは腹痛・側腹部痛がほぼ全例にみられる(94例の症例集積で96.8%、上昇90.5%)1。心房細動を背景とする44例では腹痛68%・血尿54%であった2。高血圧を来すことがある(の活性化)。

脾梗塞

  • はと類似した蒼白な病変で、被膜はしばしばフィブリンに覆われ、陥凹した瘢痕を残して治癒する。
  • 原因は塞栓性が古典的だが、それだけではない。もっとも一般的な原因はとの2つで、40歳未満ではがもっとも多い原因とされる3。
  • 症状は一様でない。26例の症例集積では限局性のが50%で、31%は脾の領域に限局する徴候・症状をもたなかった3。

乾性壊疽

急性心筋梗塞

  • 心臓は本来、閉塞による白色()梗塞の代表である。ただし再灌流を受けた梗塞では、傷んで透過性の高くなった血管から血液が漏れ出すため出血性となりやすい(A/08・A/06参照)。

肺梗塞(二重支配)

  • 原因: (大腿・腸骨・)からの。
    • 大型・鞍状塞栓 → 突然死しうる。形態変化を来す時間がない。
    • 中・小型 → → 出血。
  • 古典的には、梗塞となるのはCHF()・の障害がある場合が主とされてきた。形態は下葉に多く、(は側)、赤青色 → 赤褐色()→ 白色瘢痕へと変化。
  • ⚠️ ただしこの古典的説明には反する所見がある。で診断された急性肺塞栓335例ではは31%にみられ、梗塞を伴う患者はむしろ若く心血管疾患が少なかった4(詳細はA/06)。
  • 肺塞栓の約60〜80%は小さく臨床的に無症状。大きな塞栓では上昇、心拍出量低下、右心不全、低酸素血症を来す。

腸梗塞(SMA/IMAの二重支配)

  • のうち、()の閉塞 → その(十二指腸から空腸・回腸、を経ての近位約3分の2まで)の壊死 → 出血、腹膜炎、。
  • IMA()の血栓 → 通常はで代償される。
  • 門脈・の血栓 → 還流域の腸管の出血性(うっ血性)壊死。
  • 病型:(しばしば可逆的)→ → (壊疽、穿孔。致死率が高い)。

💡 ポイント: 心臓・腎臓・脾臓での、「ghost」の輪郭を保ったで蒼白な梗塞 = 。心臓由来の塞栓(心房細動、)が腎・の古典的な。

まとめ

  • はが先行し(ghost細胞の輪郭)が保たれる壊死で、心臓・腎臓・脾臓など臓器のに典型的(脳は例外)。
  • 梗塞の色調は白色(・流入の問題、臓器)と赤色(出血性・排出の問題、・疎な組織・・再灌流)に分かれる。
  • ・は蒼白な病変を呈する。心臓由来の塞栓(心房細動、など)が古典的なだが、では傷害・・原因不明も多く、ではも主要な原因となる。臨床的に診断されるではほぼ全例で腹痛・側腹部痛を伴い、でも限局性のが約半数にみられる。
  • ・腸梗塞はのため、動脈が1本詰まっただけでは梗塞に至らないことが多い。古典的には基礎循環(CHF等)の障害が条件とされてきたが、急性肺塞栓の約3割にがみられ、梗塞を伴う患者はむしろ若く心血管疾患が少なかったという前向き研究もある。
  • 腸梗塞は(しばしば可逆的)→→(壊疽・穿孔、致死率が高い)と進行する。

出典

  1. 1.Acute renal infarction: a case series(Clinical Journal of the American Society of Nephrology・2013)1989〜2011年に診断された腎梗塞94例を後方視的に集めた症例集積で、原因は心原性塞栓23例(約4分の1)、腎動脈自体の傷害(解離・外傷・血管内操作)29例、凝固亢進状態15例、原因不明27例に分かれ、この集団では心原性塞栓が「大半」ではなかった。腹部または側腹部痛が96.8%、乳酸脱水素酵素の上昇が90.5%、CRP上昇が77.6%、腎機能障害が40.4%にみられた。単一の後方視的症例集積であり、紹介元の診療科の偏りを受けうる点に注意する閲覧 2026-08-27
  2. 2.Acute renal embolism. Forty-four cases of renal infarction in patients with atrial fibrillation(Medicine (Baltimore)・2004)心房細動に伴う腎梗塞44例では平均年齢69.5±12.6歳、腹痛68%、血尿54%、凝固壊死を反映し血清乳酸脱水素酵素が400 U/dLを超えた例が93%(平均1100±985 U/dL)であった閲覧 2026-08-27
  3. 3.Splenic Infarcts(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)2023年7月17日更新版(Wayback保存の本文)で確認した。脾梗塞のもっとも一般的な2つの原因は血栓塞栓性疾患と浸潤性血液疾患であり、40歳未満では血液疾患がもっとも多い原因とされる。引用される26例の症例集積(平均52歳)では限局性の左側腹部痛50%、左側腹部圧痛36%、脾腫32%で、31%は脾の領域に限局する徴候・症状をもたなかった閲覧 2026-09-23
  4. 4.Predictors of Pulmonary Infarction(Medicine (Baltimore)・2015)抄録で確認した。急性肺塞栓では肺梗塞は主に心機能が低下した人に起こるとみなされてきたが、CT血管造影で診断された急性肺塞栓の前向き335例(イタリア中部18病院)で肺梗塞の頻度は31%であり、梗塞を伴う患者はむしろ有意に若く心血管疾患が少なかった(P<0.001)閲覧 2026-09-23