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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

腹膜炎・消化管穿孔

Peritonitis and hollow viscus perforation

臓器系
消化器
科目
Surgery
トピック
外科学 A/10:腹膜炎の診断と治療外科学 S-23:腹膜炎と消化管穿孔
続発疾患
敗血症
治療薬
セフトリアキソンメトロニダゾールピペラシリンタゾバクタムセフェピムメロペネムセフォキシチンセフタジジム+アビバクタムセフトロザン+タゾバクタム
原因微生物
大腸菌Bacteroides fragilisEnterococcus faecalisKlebsiella pneumoniaePseudomonas aeruginosa
症状
圧痛発熱腹痛乏尿
検査値
血算乳酸
画像所見
腹腔内遊離ガス
下位分類
特発性細菌性腹膜炎
元疾患
胎便性イレウス中毒性巨大結腸症腸チフス腸回転異常・中腸軸捻転
原因となる疾患
急性虫垂炎憩室症・憩室炎消化性潰瘍腸間膜虚血(急性・慢性、虚血性大腸炎を含む)腸重積症潰瘍性大腸炎
適応薬
エラバサイクリンセフォペラゾンセフタジジム+アビバクタムセフメタゾールテイコプラニンバボルバクタムレレバクタム

🧠 全体像:腹膜炎は「感染・汚染源が腹腔内のどこにあるか」で治療のすべてが決まる。一次性(腹腔内に明らかながない)はまれで、圧倒的多数を占める二次性(消化管穿孔・虚血・術後合併症など腹腔内のから波及)では、抗菌薬だけでなく感染源そのものを取り除くが予後を左右する。診療の幹は、①蘇生・抗菌薬・画像評価を並行して進める、②消化管穿孔なら遊離ガス・原因臓器を造影CTで同定する、③・自由穿孔・壊死腸管・制御不能な敗血症では手術を遅らせない、の3段階である。

定義と分類

腹膜炎はで、感染源の由来によって3型に分ける。

機序 代表例
一次性 腹腔内に明らかな消化管穿孔・がなく、血行性・に細菌が腹膜へ達する 肝硬変・腹水を背景とする関連腹膜炎
二次性 消化管・胆道・膵などの穿孔、壊死、の破裂から波及する。腹膜炎の大多数を占める 穿孔性消化性潰瘍、穿孔性虫垂炎、、虚血性腸壊死、外傷、術後漏出
一次・を適切に治療した後も、48時間以上にわたり感染が遷延・する 重症・免疫抑制患者での持続性。低病原性菌・耐性菌・Enterococcus・カンジダなどが関与しやすい

消化性潰瘍・胃酸・胆汁・膵液・尿の漏出は当初は化学性の炎症だが、とともに細菌感染が加わり細菌性腹膜炎へ移行する。

病態と原因

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrointestinal wall'>消化管壁</span>の全層破綻・虚血・膿瘍破裂・術後合併症"] --> B["腹腔内へガス・消化液・腸内容・細菌が漏出"]
    B --> C["腹膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute inflammation'>急性炎症</span>"]
    C --> D["限局性:膿瘍形成"]
    C --> E["びまん性:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized peritonitis'>汎発性腹膜炎</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic shock'>敗血症性ショック</span>・多臓器障害"]

の原因は、、虫垂炎、、悪性腫瘍の穿孔、虚血性腸壊死、外傷(穿損傷)、術後合併症(漏出、腸管損傷、遺残ガーゼなどの異物)に大別される。原因によって重症度・死亡率は段階的に異なり、軽症(虫垂炎、穿孔性潰瘍、急性で死亡率10%未満)→中等症(限局した、非血管性小腸穿孔、で20%未満)→重症(大腸穿孔、虚血性小腸損傷、、術後合併症で20〜80%)と上昇する。

臨床像

  • 持続性で体動・咳嗽・くしゃみにより増悪する腹痛、
  • は、炎症を起こした臓器を圧痛から守るための防御反応である。
  • による腸雑音低下・腹部膨満、横隔膜下刺激による肩・背部への
  • 発熱、頻脈、低血圧、乏尿、意識変容は敗血症・ショックを示す所見であり、高齢者・免疫抑制患者・妊婦ではが乏しくても重症化しうる。投与を診断確定まで不必要に遅らせない。

⚠️ の原因の多くは手術で解決するが、は手術禁忌である。したがって診断の第一歩は必ず膵炎の除外であり、・リパーゼ上昇があれば膵炎を優先的に疑う。

合併症

  • 腹腔・腸管への体液喪失による高度の脱水・電解質異常。
  • 、腎不全、肝不全、への進展。
  • (虫垂周囲、横隔膜下、骨盤、、肝・脾・膵周囲など)、腹腔内癒着・物形成。
  • 術後腹膜炎は、術中臓器損傷(胆道系、尿管、膀胱、消化管)、漏出(を要する)、(膿瘍や炎症性癒着の原因となり、除去されるまで持続する)から生じうる。

診断

  1. 血算、電解質、腎肝機能、凝固、乳酸、血液ガス、血液培養、を採取する。
  2. 血行動態が安定していれば、造影CTが第一選択の検査であり、を除外しつつ穿孔部位・遊離ガス・遊離液・膿瘍・原因病変・を同時に評価する。
  3. の横隔膜下遊離ガスは有用だが、陰性でも穿孔を除外できない。
  4. が不安定でCTへの移動が危険な場合は、で遊離液などを確認しつつ蘇生と手術判断を進める。

治療

初期対応とソースコントロール

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute abdomen'>急性腹症</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal signs'>腹膜刺激徴候</span>"] --> B["ABC・太い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV access'>静脈路</span>・採血・乳酸"]
    B --> C["晶質液を反応性に投与・酸素・尿量監視"]
    C --> D["腸内グラム陰性菌と嫌気性菌を覆う抗菌薬"]
    D --> E["安定例:造影CT"]
    E --> F["穿孔・壊死・汚染源を同定"]
    F --> G["内視鏡・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous drainage'>経皮ドレナージ</span>・手術から最短の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='source control'>ソースコントロール</span>"]
    G --> H["洗浄、穿孔閉鎖、壊死腸管切除、必要時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stoma'>ストーマ</span>"]
  • 診断が確定していなくても、特に膵炎が除外され手術の可能性が高い場合には投与が妥当であり、蘇生・抗菌薬・ではなく並行して進める。
  • 絶飲食とし、嘔吐・上部閉塞・著明な膨満では胃管減圧を行うが、全例へのな胃管留置は不要である。
  • 抗菌薬は市中・院内発症、直近の抗菌薬使用歴、耐性菌リスク、腎機能、感染源に合わせて選び、が出たら化する。市中発症・低リスクではセフトリアキソンメトロニダゾールなど、重症・医療関連では+メトロニダゾール、などのから選ぶ。
  • 明らかな、自由穿孔、壊死腸管、制御不能な敗血症では緊急手術を遅らせない。限局膿瘍で生理学的に安定していれば、と抗菌薬が選択肢となる。

二次性腹膜炎の外科的管理

外科的の目的は、①感染源の除去、②腹腔内のの軽減、③遷延・再発性の予防である。具体的には、ドレーン留置、計画的な、創を開放したままにする管理などを組み合わせる。

原因 代表的な
穿孔性潰瘍 単純閉鎖と被覆を中心に、原因・欠損径で個別化
穿孔性虫垂炎 と必要な膿瘍処置(を参照)
洗浄、±保護などを生理状態・汚染・併存症で選択(を参照)
虚血性腸壊死 可能性を評価し、非生存腸管を切除。疑わしい腸管は再評価(を参照)
・透析関連腹膜炎 全区画の洗浄。培養に基づく抗菌薬が治療の中心(詳細はを参照)

⚠️ 穿孔性を一律にとするのは古い整理である。循環が保たれた選択例ではも検討し、ショック・高度汚染・脆弱性が強ければ安全な段階手術を選ぶ。

まとめ

  • 腹膜炎は一次性・二次性・に分類し、二次性(腹腔内からの波及)が大多数を占める。
  • 重症度は原因臓器と病態で層別化され、死亡率は10%未満〜80%まで幅広い。
  • 診断の要は造影CTで、の除外が最優先(膵炎は手術禁忌のため)。
  • 蘇生・抗菌薬・は並行して進め、・自由穿孔・壊死腸管・制御不能な敗血症では手術を遅らせない。
  • 術式は原因だけでなく、ショック、汚染の程度、腸管生存性、患者の脆弱性に合わせて個別化する。