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Disease Atlas · 消化器 · 先天性疾患

胎便性イレウス

Meconium ileus

臓器系
消化器
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 A/14:嚢胞性線維症小児科 13:胎便性イレウス、腸閉鎖症、幽門狭窄症、横隔膜ヘルニア小児科 2-12:新生児消化管閉塞:胎便性イレウス・肥厚性幽門狭窄症・腸閉鎖
鑑別疾患
ヒルシュスプルング病十二指腸閉鎖
合併症
腹膜炎・消化管穿孔
症状
嘔吐
画像所見
気液面ダブルバブルサイン
元疾患
嚢胞性線維症

🧠 全体像は、嚢胞性線維症でCFTRの働きが障害された腸管が、水分の乏しい異常に粘稠な胎便を作り、その塊がに栓のように詰まって生じるの腸閉塞である。「詰まった場所よりは拡張し、使われなかった肛門側はむしろ細い」というの原則が、そのまま画像所見(腸管の拡張+造影で見える)に対応する。からの捻転・虚血・穿孔を伴わないであれば、穿孔がないことを確認したうえで剤注腸だけで解除できることが多く、伴えば()手術に進む——このの区別がを決める最大のになる。閉塞の解除で終わらせず、必ず・CFTRで嚢胞性線維症の有無を確定する。

定義

新生児の腸閉塞のうち、蛋白質に富み水分の少ない異常に粘稠な胎便がに栓状に嵌頓し、を来したものをと呼ぶ。例の約80〜90%は嚢胞性線維症(CF)に伴い、CF患児の約15〜20%はにこのとして発症する——CFの消化器症状としては最も代表的なものである。

病態

CFTRはでCl⁻・HCO₃⁻の管腔側への分泌を担う。CFTRの機能喪失により腸管分泌液のCl⁻・水分が減少し、Na⁺・水の再吸収が相対的に優位となる。これに加えにより膵(特に)がに届かず、胎便中の蛋白質が十分に消化されない。「水分減少」と「蛋白質過多」が重なることで、胎便は正常より著しく粘稠・膠状になる。

flowchart TD
    A["CFTR機能喪失"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal lumen'>腸管腔</span>のCl-分泌低下<br>Na+・水の再吸収優位"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic insufficiency'>膵外分泌不全</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraluminal'>管腔内</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='trypsin'>トリプシン</span>欠乏"]
    B --> D["胎便の水分含有量低下"]
    C --> E["胎便中の蛋白質が未消化のまま残存"]
    D --> F["異常に粘稠・膠状の胎便"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal ileum'>回腸末端</span>で胎便が栓状に嵌頓"]
    G --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='embryonic period'>胎生期</span>に捻転・虚血・穿孔を伴うか"}
    H -->|"伴わない"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple'>単純型</span>"]
    H -->|"伴う"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complex'>複雑型</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='volvulus'>軸捻転</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic necrosis'>虚血性壊死</span>・腸閉鎖・穿孔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meconium peritonitis'>胎便性腹膜炎</span>"]

💡 閉塞部位よりの腸管は内容物が停滞して拡張するのに対し、閉塞部位より肛門側の結腸はにほとんど内容物が流れず使われないまま細くとなる。この「は拡張、肛門側は細い」という対応関係が、後述する画像所見をそのまま説明する。

単純型と複雑型

病型 病態 特徴
粘稠な胎便によるのみ 血流障害を伴わず、の生存性は保たれる
拡張腸管の・続発性の腸閉鎖・穿孔・ 穿孔した胎便が腹腔内に散布されて化学的炎症を起こし、しばしば石灰化を残す。緊急手術を要する

臨床像

  • 出生前:超音波で腸管の高化、腸管拡張を認め、では腹腔内石灰化や腹水を伴うことがある。ではを伴わないことが多く、これは閉塞部位がより遠位にあり、腸管がある程度水分を吸収し続けられるためである。
  • 出生後:生後24〜48時間以内の初回胎便排出がない、進行する腹部膨満、胆汁性嘔吐の3主徴。腹壁越しに硬く触れる腸管ループ(粘土様腫瘤と呼ばれ、指で圧すと圧痕が残る特徴的な触感)を触知することがある。
  • では出生直後から著明な腹部膨満・腹壁発赤・全身状態不良を呈することがあり、緊急対応を要する。

診断

  • :拡張した小腸に、胎便と嚥下空気が混和した状の)をを中心に認める。胎便が粘稠すぎて層をなさないため、他の遠位と比べて)が乏しいのが特徴で、この所見の乏しさ自体が診断的価値を持つ。ではや石灰化を認めうる。
  • 剤による注腸造影で使われずとなった(細い結腸)を確認し、の胎便栓によるを描出する。診断と同時に治療を兼ねる。
  • 腸管の拡張パターンだけでは)と紛らわしいことがあるが、ダブルは閉塞部が近位(十二指腸)にあるため遠位腸管ガスが完全に消失するのに対し、は閉塞がより遠位()にあるため多発する拡張腸管ガス像を認める点で区別する。
flowchart TD
    A["初回胎便排出遅延+腹部膨満+胆汁性嘔吐"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plain abdominal radiograph'>腹部単純X線</span>"]
    B --> C{"遊離ガス・石灰化など穿孔所見があるか"}
    C -->|"あり(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complex'>複雑型</span>を強く疑う)"| D["外科的評価・手術"]
    C -->|"なし"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water-soluble contrast'>水溶性造影</span>剤注腸<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcolon'>微小結腸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal ileum'>回腸末端</span>の胎便栓を確認"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluoroscopy'>透視</span>下で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span>造影剤による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic'>治療的</span>注腸"]
    F --> G{"胎便が排出され閉塞が解除されたか"}
    G -->|"はい"| H["経過観察・経口哺乳再開"]
    G -->|"いいえ/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complex'>複雑型</span>疑い"| D
    H --> I["嚢胞性線維症の確定検索へ"]
    D --> I

治療

  • 治療(注腸):穿孔・腹膜炎・を示唆する所見がなければ、下で剤(等)を用いた注腸を第一選択とする。の造影剤がへ浸透圧的に水分を引き込むことで粘稠な胎便を軟化・させ、排出を促す。
  • ⚠️ 造影剤はへの急激な体液移動を起こすため、処置前後の十分な輸液と、脱水・減少の監視が必須である。輸液を怠ると性ショックに至りうる。複数回の注腸を要することもある。
  • 治療がしない、または最初からが疑われる場合は開腹手術を行う。腸管の生存性を確認したうえで、術中洗浄で胎便をに除去できる場合は一次修復し、腸管壊死・広範な病変があれば病変部を切除し、または一時的なする。
  • 手術・非手術いずれの場合も、の解除自体で診療は終わらない。 原因検索としての嚢胞性線維症の確定診断へ進む。

嚢胞性線維症の確定検索

の大部分はCFに伴うが、一部は非CF性(など)にも起こりうるため、症状の解除後に必ず原因検索を行う

  • を測定する)を行う。は発汗量が少なく判定が難しいことがあり、必要に応じて日を改めて再検する。
  • CFTR遺伝子変異パネルまたはより広範な遺伝学的検査を行い、の結果と統合してCFを確定・除外する。
  • 高値が先行している場合は、その結果と合わせて評価する。

鑑別

新生児の胎便排出遅延・腸閉塞様症状を来す疾患は複数あり、症状だけでは区別できないことが多い。

疾患 特徴
粘稠な胎便によるの閉塞。造影で。約80〜90%が嚢胞性線維症に伴う
胎便自体の性状は正常だが、結腸機能の一過性未熟性によりより(結腸)で停滞する。多くは造影注腸やで胎便栓が排出されれば軽快し、CFとの関連は乏しい
直腸を含む遠位腸管のによるでのでの欠如で確定する
より近位(十二指腸)の構造的閉塞。、遠位腸管ガスの完全消失が典型

⭐ いずれも新生児の胎便排出遅延・胆汁性嘔吐という共通の入り口を持つため、症状のみで確定せず、画像所見(の有無、閉塞部位)と、必要に応じ直腸生検・を組み合わせて鑑別する。

まとめ

  • は、CFTR機能喪失による腸管分泌異常とによる蛋白消化障害が重なり、水分に乏しく粘稠な胎便がに栓状に嵌頓するの腸閉塞である。
  • 約80〜90%が嚢胞性線維症に伴い、CF患児の約15〜20%がにこの病態で発症する。
  • ・虚血・穿孔を伴わないと、伴うに分け、を分岐させる。
  • 単純X線ではに乏しい状陰影()、注腸造影ではが特徴的で、とは区別できる。
  • 穿孔がなければ剤による注腸を第一選択とし、輸液管理下で行う。・注腸無効例は手術を要する。
  • 治療後は必ず・CFTRで嚢胞性線維症を確定・除外し、との鑑別を念頭に置く。