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Drug Atlas · A15 Other / その他 · 必修

ガストログラフィン

diatrizoate meglumine and sodium

分類
Water-soluble iodinated contrast media / 水溶性ヨード造影剤
商品名(日本)
ガストログラフイン
科目
PharmacologyMedical Biophysics
トピック
A15: Intravenous anesthetics. Perioperative medication16.09: X-ray contrast media
副作用
呼吸困難悪心
監視検査値
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
対象疾患
遠位腸管閉塞症候群胎便性イレウス胎便栓症候群

🧠 全体像:()は、「造影剤」でありながら「治療薬」でもあるという二面性が本体である。X線を吸収するヨード原子によって腸管の輪郭を描き出す診断用医薬品としての顔と、性そのものが腸管内へ水を引き込み、嵌頓したを軟化させて閉塞を解除する治療薬としての顔を、同じ1分子・同じ性質(水溶性・・イオン性)が両立させている。⚠️ この「性に水を引き込む」という同じ性質が、誤嚥時には肺水腫という重篤な副作用の原因にもなる——効かせたい場所(腸管内)で起これば治療、間違った場所(肺)で起これば重篤な合併症、という表裏一体の理解が本ノートの軸になる。

薬効群の中での位置づけ

造影剤 ・電離 消化管穿孔での位置づけ 腸閉塞への治療効果
(水溶性・イオン性・) 水溶性 の代わりに用いる第一選択(腹腔内に漏出しても吸収・排泄されを起こさない) あり(性に水を引き込みを軟化)
() 穿孔が疑われる場合は禁忌(腹腔内漏出でを来す) なし
低浸透圧性・(静注用) 水溶性 血管内投与が主体で消化管穿孔評価には用いない なし

⭐ 「消化管穿孔が疑われるときはでなくを使う」という原則は、水溶性で腹腔内に漏出しても速やかに吸収・排泄される一方、は不溶性で腹腔内に残留し重篤なを起こすという違いに基づく。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gastrografin (water-soluble contrast medium)'>ガストログラフィン</span>を経口/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasogastric tube (NG tube)'>経鼻胃管</span>/注腸で投与"] --> B["水溶性・イオン性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span><br>(原液は高張。1対4.6希釈でほぼ等張)"]
    B --> C["ヨード原子がX線を吸収<br>→ 消化管の輪郭を造影"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span>性に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal lumen'>腸管腔</span>へ水を引き込む"]
    D --> E["嵌頓した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impacted stool (fecal mass)'>便塊</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meconium plug'>胎便栓</span>が軟化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydration'>水和</span>"]
    E --> F["排出が促され閉塞が解除される"]
    D --> G["⚠️ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='circulating plasma volume'>循環血漿量</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal lumen'>腸管腔</span>へ移動<br>→ 脱水・電解質異常のリスク"]
    B --> H["⚠️ 誤嚥した場合、同じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span>性が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary capillary'>肺毛細血管</span>から肺胞へ水を引き込む"]
    H --> I["重篤な肺水腫"]

💡 同じ「性に水を引き込む」性質が、治療効果(D→E→F)と重篤な有害事象(G、H→I)の両方の起点になっている。 腸管内で起これば治療、から起これば脱水、誤嚥後の肺で起これば肺水腫——が変わるだけで同じ機序が効果にも害にもなるという理解が、禁忌・注意点を覚えるときの近道になる。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 経口/では腸管からわずかに吸収されるが大部分は未変化体のまま通過・排泄される
分布 消化管腔内にとどまる(静注用の血管内造影剤とは体内動態が異なる)
排泄 大部分は糞便中へ排泄。吸収された分は腎から排泄される
浸透圧 原液は高張。1対4.6に希釈するとジアトリゾ酸塩16.5%のほぼとなり、これより希釈の弱い溶液はすべて高張である1

適応

領域 使いどころ
消化管造影(診断) 狭窄疑い・急性消化管出血・穿孔の危険性がある場合の、における2
消化管閉塞の評価・治療() 部分的なでは診断と治療を兼ねて用いる「」の適応となる。投与後24時間以内に造影剤が結腸へ到達すれば保存的治療での軽快が予測され、到達しなければ手術を要すると判断する。使用そのものが手術の必要性・軽快までの時間・を減らす3
(DIOS)・などのによる閉塞 希釈して経口または・注腸で投与し、性によりを軟化・排出させる。系と並ぶ第一選択の一つ4

⚠️ 消化管閉塞の解除への使用は、日本の添付文書上の効能・効果()そのものではなく、造影という同じ手技が結果としてに働くという位置づけである。 実施にあたっては各施設のプロトコル・ガイドラインに従う。

用法・用量

診断目的では、検査部位・目的に応じて希釈した溶液を経口・経腸・注腸で投与する。腸閉塞の評価・では、経口またはから希釈した溶液を投与し、なX線・で腸管への到達を追跡する。⚠️ 性によりへ体液が移動し、・低血圧を来しうる。 投与前に電解質異常を補正しておき、衰弱例・電解質異常例では処置後の水分・・電解質・臨床状態を監視する。小児(10 kg未満)・脱水例・衰弱例では添付文書に定められた希釈で調製し、⚠️ 小児・重度衰弱例では低血圧やショックが起きた場合に備えて静脈ルートを確保しておく1。実際の希釈濃度・投与量・は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:ヨードまたはに対する過敏症の既往歴のある患者2。米国添付文書でも禁忌は本剤・その成分への過敏症の既往1項目のみで、誤嚥は禁忌ではなくとして扱われる1
  • ⚠️ 誤嚥は肺水腫・・死亡を含む重篤な肺合併症を起こしうる。 のある患者では使用を避け、それ以外の全例でも誤嚥のリスクを最小化する1。嚥下障害・意識障害など誤嚥のリスクがある患者では適応を慎重に判断し、高齢者・小児では投与中・投与後の観察を十分に行う2
  • ⚠️ であるため脱水症・水電解質代謝異常を起こしやすい。 特に大量投与・乳児・既存の脱水では、十分な輸液を並行しないと症状が悪化しうる2
  • 甲状腺機能亢進症の既往・疑いがある患者ではに注意する。(を用いる検査を含む)は本剤投与前に実施する2

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心、下痢(への水分移動による)
注意 脱水、電解質異常、甲状腺機能低下症
重篤・まれ 誤嚥に伴う呼吸困難・肺水腫、過敏反応

まとめ

  • は水溶性・イオン性・ので、造影剤としての顔と、性により腸管内へ水を引き込みを軟化させる治療薬としての顔を併せ持つ。
  • ⭐ 消化管穿孔が疑われるときは、腹腔内漏出時にを起こしうるの代わりにを用いる。
  • ⚠️ 同じ性が、腸閉塞の解除には有効に働く一方、脱水・低血圧(小児・衰弱例では静脈ルートを確保しておく)と誤嚥時の重篤な肺合併症という2つのリスクの原因にもなる。
  • 禁忌はヨード過敏症の既往であり、誤嚥は禁忌ではなく「では避け、全例でリスクを最小化する」というの位置づけである。甲状腺機能亢進症ではを投与前に済ませておく。
  • DIOS・などのによる閉塞では、系と並ぶ第一選択の一つとして用いられる。

出典

  1. 1.GASTROGRAFIN- diatrizoate meglumine and diatrizoate sodium liquid(Bracco Diagnostics Inc./DailyMed (U.S. National Library of Medicine)・2021)米国添付文書の適応が消化管(食道・胃・近位小腸・結腸)のX線造影検査であり、非水溶性で粘稠な硫酸バリウムが実施困難または危険となりうる場合にとくに適応となること、禁忌が本剤またはその成分への過敏症の既往のみであること、高張液の投与では腸管からの体液喪失により循環血漿量減少・低血圧を来しうること、1対4.6の希釈でジアトリゾ酸塩16.5%のほぼ等張液となりそれより希釈の弱い溶液は高張であること、衰弱例・電解質異常例では処置後の水分・血清浸透圧・電解質・臨床状態の監視が必須であり、小児・重度衰弱例では低血圧・ショックに備えて静脈ルートを確保しておくことが望ましいこと、誤嚥は肺水腫・肺臓炎・死亡を含む重篤な肺合併症を起こしうるため食道気管瘻の患者では使用を避け全例で誤嚥のリスクを最小化することを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.ガストログラフイン経口・注腸用 添付文書(バイエル薬品/PMDA医療用医薬品情報・2021)日本の効能・効果が消化管撮影(狭窄疑い・急性出血・穿孔の危険性がある場合等)およびコンピューター断層撮影における上部消化管造影であること、禁忌がヨードまたはヨード造影剤に過敏症の既往歴のある患者に限られること、高張液であるため脱水症や水・電解質代謝異常を起こしやすく症状が悪化しうること、誤嚥により呼吸困難・肺水腫等を起こすおそれがあり高齢者・小児では観察を十分に行うこと、副作用に甲状腺機能低下症があり甲状腺機能検査等の放射性ヨードによる検査は本剤投与前に実施することを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Bologna guidelines for diagnosis and management of adhesive small bowel obstruction (ASBO): 2017 update of the evidence-based guidelines from the world society of emergency surgery ASBO working group(World Journal of Emergency Surgery(World Society of Emergency Surgery)・2018)部分的な癒着性小腸閉塞が水溶性造影剤(ガストログラフィン)の診断的かつ治療的な適応であり、投与後24時間以内に造影剤が結腸へ到達すれば保存的治療での軽快が予測され、到達しなければ手術が必要と判断されること、水溶性造影剤の使用は安全で手術の必要性・軽快までの時間・在院日数を減らすことを確認した。閲覧 2026-08-19
  4. 4.Guidelines for the diagnosis and management of distal intestinal obstruction syndrome in cystic fibrosis patients(European Cystic Fibrosis Society (Journal of Cystic Fibrosis)・2011)遠位腸管閉塞症候群(DIOS)の第一選択治療が経口/経鼻胃管からのガストログラフィンまたはポリエチレングリコール系腸管洗浄液の投与であり、手術は保存的治療が無効な場合の最終手段であることを確認した。閲覧 2026-08-19