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Drug Atlas · B25 Laxatives / 下剤 · 必修

ポリエチレングリコール

polyethylene glycol

分類
Laxatives / 下剤
商品名(日本)
モビコールニフレック
科目
Pharmacology
トピック
B25: Drugs used in constipation (laxatives) and diarrhea. Drugs promoting digestion. Pharmacology of liver and biliary tract
禁忌疾患
イレウス・腸閉塞
副作用
腹部膨満悪心下痢
監視検査値
クレアチニンカリウム
対象疾患
リチウム中毒遠位腸管閉塞症候群急性鉄中毒慢性巨大結腸症

🧠 全体像:(PEG)は、腸管から吸収されずに水分子を抱え込んだまま便まで運ぶという一点だけで効くである。電解質を積極的に動かすやと違い、PEGそのものは電解質の出入りに関与しないため、同じ「腸管内へ水を引く」薬でも電解質異常を起こしにくいという特徴を持つ。この一つの性質が、少量を毎日使う慢性便秘薬、電解質を添加して大量に飲む、そしてさらに大量に使ってそのものを溶かす腸閉塞の解除という、用量も目的もまったく違う3つの使い方に枝分かれする。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 電解質への影響 特徴
PEG(ポリマー) 単剤では電解質の移動が乏しい 用量を変えるだけで便秘薬から薬まで連続的に使える
大腸細菌による発酵産物を介した二次的な変化 肝性脳症治療という別の顔を持つ
Mg²⁺・SO₄²⁻自体が吸収・分泌に関与しうる 腎機能低下例でのリスク

💡 「PEGは分子として不活性なポリマーである」ことが電解質を動かさない理由である。 のように腸内細菌に代謝されることも、のようにイオンとして吸収・分泌に関わることもなく、ただ大きな分子として水を抱え込んだまま便まで到達する。この「反応しない」という性質が、後述するすべての用途に共通する土台になる。

機序

flowchart TD
    A["PEGを内服"] --> B["高分子ポリマーが水分子と水素結合"]
    B --> C["腸管内での水の再吸収を妨げる"]
    C --> D["腸管内に水分が保持される"]
    D --> E["便が軟化・便容積が増加"]
    E --> F["少量:排便が促される(慢性便秘)"]
    E --> G["大量:腸管内容物が洗い流される(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conditioning'>前処置</span>)"]
    E --> H["さらに大量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span>:<br>嵌頓した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impacted stool (fecal mass)'>便塊</span>そのものが軟化・溶解する(腸閉塞の解除)"]

⭐ 用量の違いだけで薬効の性格が変わるという点が、PEGを理解するうえでの最大のポイントである。同じ「腸管内に水を保持する」という一つの機序が、少量なら、大量なら剤、さらに大量かつなら閉塞を解除する治療薬として働く1。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 ほぼ吸収されない(高分子ポリマーのまま腸管を通過)
代謝 受けない(腸内細菌による分解にも依存しない)
作用発現 慢性便秘:初回の排便までおおむね2〜4日1
排泄 未変化体のまま糞便中

適応

領域 使いどころ
慢性便秘 少量を毎日内服するとして第一選択の一つ
・の 電解質配合PEG液、またはPEG 3350をスポーツドリンクに溶いた液を短時間に大量内服し、腸管内容物を排出させる
(DIOS)・の解除 電解質配合PEG液を経口またはから大量投与し、嵌頓したを軟化・排出させる。穿孔がないことを確認したうえで、と並ぶ第一選択の一つ2

⚠️ 同じ「PEG」でも、慢性便秘の少量投与と、・閉塞解除の大量投与とでは、使う製剤(電解質添加の有無)も監視すべき点も異なる。 大量投与で用いる電解質配合液は、PEG自体が電解質を動かさない代わりに、添加された電解質と大量のそのものが循環・電解質へ影響しうる。

用法・用量

慢性便秘:PEG 3350として17 gを液体約240 mL(8オンス)に溶かして1日1服する。効果発現は2〜4日とゆるやかである。としての自己判断使用は2週間を超えない1。

:PEG 3350として238 gを2 Lのスポーツドリンクに溶かし、検査前日に内服する。⚠️ この用法では電解質はドリンク側が供給するため、水で溶いてはならない。 午後の検査では前日に1 L・当日に1 Lとすることができる1。

小児の:1〜1.5 g/kg/日を3〜6日間(最大6日間)投与する1。

DIOS・腸閉塞の解除:電解質配合PEG液を経口またはから投与し、排泄液が透明になるまで継続する。実際の・総量は施設のプロトコル・添付文書で確認し、十分な補液を並行する2。

禁忌・注意

  • 禁忌:既知または疑われる腸閉塞、消化管穿孔、虫垂炎、の、PEGへの過敏症1
  • ⚠️ 腸閉塞・消化管穿孔が疑われる場合は使用しない。 閉塞・穿孔が疑われる患者にを投与すると病態を悪化させうるため、投与前に閉塞・穿孔の除外が前提になる
  • PEG自体はほとんど吸収されないため毒性はきわめてまれである。ただし、PEGを溶媒とする静注製剤の長期使用・PEGの大量摂取・製剤の長期塗布が腎障害および代謝性アシドーシスと関連したという症例報告がある1
  • ⚠️ ・閉塞解除で用いる大量投与では、大量のと添加された電解質そのものが循環・電解質へ影響しうる。 高齢者・腎機能低下患者では投与前後の電解質・腎機能の確認が望ましい

副作用

頻度 内容
高頻度 、悪心、、腹部膨満
注意 下痢
重篤・まれ 過敏反応。大量摂取や製剤の長期使用に伴う腎障害・代謝性アシドーシス(症例報告レベル)1

まとめ

  • PEGは腸管から吸収されず水分子を保持したまま便まで運ぶで、電解質の出入りに関与しないため電解質異常を起こしにくい点が・との違いである。
  • 同じ機序のまま用量だけを変えることで、慢性便秘(少量・毎日)、(電解質配合・大量・短時間)、DIOS・の解除(電解質配合・大量、⚠️ 輸液併用)の3用途に使い分けられる。
  • ⚠️ 腸閉塞・消化管穿孔が疑われる場合は禁忌であり、投与前に除外する。
  • ⚠️ ・閉塞解除の大量投与では、大量のと添加された電解質そのものが循環・電解質へ影響しうるため、高齢者・腎機能低下患者では電解質・腎機能を確認する。
  • DIOSではと並ぶとして位置づけられる。

出典

  1. 1.Polyethylene Glycol(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)ポリエチレングリコールが水分子と水素結合して腸管内での水の再吸収を妨げ便中に水分を保持するという浸透圧性下剤としての機序を持ち、電解質を大きく吸収しないこと、慢性便秘の標準的な成人用量が17 gを8オンス(約240 mL)の水に溶いて1日1回であること、慢性便秘での初回効果発現が2〜4日であること、大腸内視鏡前処置では238 gを2Lのスポーツドリンクに溶いて検査前日に内服し午後の検査では前日・当日に1Lずつ分割投与できること(投与速度の記載はない)、小児の便塞栓に対する用量が1〜1.5 g/kg/日を3〜6日間(最大6日間)であること、既知または疑われる腸閉塞・虫垂炎・炎症性腸疾患の急性増悪・消化管穿孔が禁忌であること、PEG自体の毒性は非常にまれだが、PEGを溶媒とする静注製剤の長期使用・PEGの大量摂取・低分子量PEG製剤の長期塗布が腎障害および代謝性アシドーシスと関連したという症例報告があることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Guidelines for the diagnosis and management of distal intestinal obstruction syndrome in cystic fibrosis patients(European Cystic Fibrosis Society (Journal of Cystic Fibrosis)・2011)遠位腸管閉塞症候群(DIOS)の第一選択治療が経口/経鼻胃管からのガストログラフィンまたはポリエチレングリコール系腸管洗浄液の投与であり、手術は保存的治療が無効な場合の最終手段であることを確認した。閲覧 2026-08-19