病理学

病理学 · A/14

嚢胞性線維症

Cystic fibrosis

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
胎便性イレウス、腸閉鎖症、幽門狭窄症、横隔膜ヘルニア遺伝性肺疾患
疾患
胎便性イレウス嚢胞性線維症

🧠 全体像:嚢胞性線維症はCFTR(Cl⁻チャネル)という単一の遺伝子異常が、汗腺では「再吸収できない→塩辛い汗」、気道・消化管では「分泌できない→脱水した粘稠な粘液→閉塞と感染」という正反対の症状を生む——同じチャネル異常が臓器によって逆向きの結果になる点が理解の核心。

定義

  • 嚢胞性線維症 = 白人で最も多いの疾患。
  • の障害で、呼吸器・消化管・生殖器のが侵される。
  • 三徴:反復性・慢性の肺感染症、、汗中の高NaCl。

発生機序

  • CFTR遺伝子の変異 → の上皮Cl⁻チャネルの欠陥 → 粘液の性状が変化。⭐ はI〜VI型に分類され、クラスI(で機能する蛋白が作られない)・II(Phe508delなど蛋白ので分解される)・III()はCFTRがほとんど機能せず重症の表現型になりやすく、クラスIV(伝導低下)・V(発現量低下)・VI(不安定な蛋白)はが保たれるなど軽症になりやすい。はクラスによりする変異が異なり、遺伝子型に応じて適応薬が定められている1。
  • : 通常はCFTRがCl⁻を再吸収し、それに伴ってNa⁺も(上皮Na⁺チャネルを介して)再吸収される → 欠陥 → 高張(塩辛い)汗。
  • 気道・消化管: CFTRは通常Cl⁻を分泌する → 欠陥 → Cl⁻分泌の低下、Na⁺/H₂O再吸収の増加 → 脱水した粘稠な粘液 → の障害 → 閉塞+感染。
flowchart TD
    A["CFTR遺伝子の変異"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic adenosine monophosphate'>cAMP</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='regulated'>調節性</span>の上皮Cl-チャネルの欠陥"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sweat duct'>汗管</span>:Cl-/Na+再吸収の障害"]
    C --> D["高張(塩辛い)汗"]
    B --> E["気道・消化管:Cl-分泌の低下<br>Na+/H2O再吸収の増加"]
    E --> F["脱水した粘稠な粘液"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucociliary clearance'>粘液線毛クリアランス</span>の障害"]
    G --> H["閉塞+感染<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiectasis'>気管支拡張症</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic insufficiency'>膵外分泌不全</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meconium ileus'>胎便性イレウス</span>等)"]

臓器別の所見

臨床経過

  • 診断: 塩辛い汗(汗中クロライド試験)、、家族歴、。⭐ 陽性・CFに合致する臨床像・家族歴のいずれかがある人で、60 mmol/L以上ならCFと診断できる。陽性例で30 mmol/L未満ならCFらしくない。30〜59 mmol/L(中間域)が2回別々の機会に出たら、CFの可能性があるものとして拡張CFTRやCFTRを検討する2。
  • CFと診断された患者の約20%はを生じ、しばしばこれがCFの初発症状となる3。
  • 85〜90%がを来す → (浮腫)、 → (A・D・E・K)欠乏+下痢。
  • 最多の死因: 心肺(、、)。ほかに肝疾患、移植合併症。⭐ 米国の生存期間中央値は2006年の36.3歳から2021年には53.1歳へ延びている4。

💡 ポイント: CFTRのCl⁻チャネル欠陥 → 全身で粘稠な分泌物。汗=塩辛い(再吸収低下)、気道・膵・腸=閉塞(分泌低下)。三徴:反復性の肺感染(緑膿菌など)、、汗中の高NaCl。新生児ではが初発症状になりうる。男性は不妊(欠損)。

まとめ

  • 嚢胞性線維症はCFTR遺伝子変異によるCl⁻チャネル欠陥が原因の、白人で最多の。
  • ではCl⁻/Na⁺再吸収障害→高張な汗、気道・消化管ではCl⁻分泌低下→脱水した粘稠な粘液→閉塞と感染という逆向きの機序で症状が出る。
  • 肺(、緑膿菌などの日和見感染)が最も重篤で、(、A・D・E・K欠乏)、、、()を来す。
  • 診断は汗中クロライド試験、、検査による。
  • 最多の死因は心肺合併症(、、)。

出典

  1. 1.Progress in precision medicine in cystic fibrosis: a focus on CFTR modulator therapy(Breathe・2021)CFTR変異はI〜VI型に分類され、クラスI(早期終止コドンで機能する蛋白が作られない)・II(Phe508delなど蛋白の折り畳み異常で細胞内分解される)・III(チャネルのゲーティング異常)はCFTRがほとんど機能せず重症の表現型になりやすく、クラスIV(伝導低下)・V(細胞表面での発現量低下)・VI(不安定な蛋白)は膵外分泌が保たれるなど軽症の表現型になりやすいことを確認した。CFTR調節薬はクラスにより奏効する変異が異なり、承認されている調節薬の適応が遺伝子型ごとに定められている閲覧 2026-08-27
  2. 2.Diagnosis of Cystic Fibrosis: Consensus Guidelines from the Cystic Fibrosis Foundation(2017)新生児スクリーニング陽性後の確定診断における汗中クロール濃度のカットオフ(60 mmol/L以上でCFに合致、30 mmol/L未満でCFらしくない、30〜59 mmol/Lは中間域として遺伝学的・CFTR機能検査を追加する)を確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Meconium ileus in Cystic Fibrosis(2017)抄録で、胎便性イレウスは嚢胞性線維症と診断された患者の約20%に生じ、しばしばCFの初発症状となることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Cystic Fibrosis: A Review(2023)嚢胞性線維症の米国内生存期間中央値が2006年の36.3歳(95%CI 35.1-37.9)から2021年には53.1歳(95%CI 51.6-54.7)に延びたこと、米国患者の約85.5%がF508del変異を有すること、多職種診療で進行を遅らせうること、CFTR調節薬4剤が承認されていることを抄録で確認した(生存期間の延長を調節薬に帰する記載は抄録には無い)閲覧 2026-08-27