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Microbe Atlas · 細菌

Pseudomonas aeruginosa

緑膿菌

分類
G− 桿菌・好気性 / Gram− rods (aerobic)Pseudomonas
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli好気性 Aerobic
科目
Medical Microbiology
トピック
2/19: Pseudomonas group and Acinetobacter, Burkholderia, Stenotrophomonas genus5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis5/12: The most important bacteria causing meningitis and encephalitis (list), their diagnosis, and principles of treatment
自然耐性薬
アンピシリンセフトリアキソンエルタペネムスルファメトキサゾール+トリメトプリム
原因となる疾患
Fournier壊疽グラデニーゴ症候群グラム陰性毛包炎悪性外耳道炎院内肺炎化膿性関節炎(敗血症性関節炎)化膿性屈筋腱鞘炎化膿性仙腸関節炎外耳炎角膜炎眼内炎気管支拡張症急性骨髄性白血病急性腎盂腎炎・腎膿瘍結膜炎骨髄炎細菌性髄膜炎細菌性皮膚感染症(伝染性膿痂疹・毛包炎・せつ・よう)市中肺炎耳介軟骨膜炎心臓デバイス関連感染性心内膜炎人工呼吸器関連肺炎尿路感染症熱傷嚢胞性線維症脳膿瘍膿腎症敗血症腹膜炎・消化管穿孔涙嚢炎
作用する薬剤
アズトレオナムアミカシンイミペネム+シラスタチンオフロキサシンゲンタマイシンコリスチンシタフロキサシンシプロフロキサシンセフィデロコルセフェピムセフォペラゾンセフタジジムセフタジジム+アビバクタムセフトロザン+タゾバクタムトスフロキサシントブラマイシンドリペネムネチルマイシンピペラシリンポリミキシンBメロペネムロメフロキサシン転化石鹸

🧠 全体像:緑膿菌を理解する鍵は病原性の強さそのものよりの広さにある。外膜の低透過性・・という3つの防御機構を生まれつき備えているため、使える抗菌薬の一覧()は最初から限られている。アンピシリン・セフトリアキソン・・ST合剤はそもそも守備範囲外——広域にすればするほど効くという直感がここで崩れる。水回り・湿潤環境を好むで、健常者にはほとんど無害だが、カテーテル・・・好中球減少という「バリアが破れた場所」を狙う・院内感染の代表菌である。

微生物学的な特徴

項目 内容
形態 グラム陰性桿菌、単一ので運動性あり
酸素要求性 ——のE. coliなど腸内細菌科との重要な鑑別点
酵素 、
生息地 土壌・水・湿潤環境に広く分布。正常皮膚フローラの一員でもある
培養所見 血液寒天培地でβ溶血。青緑色色素(+)と果実様・ブドウ様の芳香を伴うコロニー

⭐ はの中での位置づけを決める。 同じ非発酵菌でもAcinetobacter baumanniiはであり、この1点だけで緑膿菌と鑑別できる。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["緑膿菌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exotoxin A'>外毒素A</span><br>EF-2をADP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribosylation'>リボシル化</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm formation'>バイオフィルム形成</span><br>(カテーテル・CF気道粘液)"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrinsic resistance'>自然耐性</span>の3機構<br>低透過性外膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='efflux pumps'>排出ポンプ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inducible AmpC'>誘導性AmpC</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein synthesis inhibition'>蛋白合成阻害</span><br>細胞死"]
    C --> F["抗菌薬・免疫から隔離<br>慢性化・除菌困難"]
    D --> G["使える<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antipseudomonal agent'>抗緑膿菌薬</span>が<br>最初から少数に限定"]
    E --> H["組織障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ecthyma gangrenosum'>壊疽性膿瘡</span>"]

💡 はジフテリアA毒素と同一機序。 (EF-2)をADPして蛋白合成を止める点で、Corynebacterium diphtheriaeのと収束進化している——系統の全く異なる菌が同じ分子標的に行き着いた好例である。

⚠️ の広さは3つの機構の重なりで生まれる。 外膜の低透過性が薬剤の侵入自体を妨げ、(MexAB-OprMなど)が侵入した薬剤を汲み出し、セファロスポリナーゼがβラクタムを分解する。この3層構造のため、アンピシリン・第1〜2世代セファロスポリン・セフトリアキソン・・ST合剤はそもそも守備範囲に入らない——「使える薬」を最初からという別カテゴリーで覚える必要がある。

感染経路と疫学

起こす疾患

疾患・病態 押さえどころ
・ 主要な起因菌の一つ。耐性化の危険因子があればでを2剤重ねることがある(下記)
嚢胞性線維症の慢性気道感染 粘稠な気道粘液の中でを作って居座り、で測る呼吸機能の低下に関わる
骨髄炎 糖尿病患者・に多い
熱傷創感染 入院中の熱傷患者に多く、敗血症の起点になりうる
角膜炎 者のの代表的な起因菌
尿路感染症・・ 尿路カテーテル関連の院内感染
「」。糖尿病では性のへ進行しうる
緑膿菌菌血症・敗血症を示唆する特徴的皮疹。斑を伴う
まれだが神経外科手術・に関連
腹膜炎・消化管穿孔 ・術後で問題になる

⚠️ を見たら緑膿菌敗血症を直ちに疑う。 菌血症から敗血症に至り毒素が組織を障害する過程で生じる特徴的皮疹で、早期の広域開始の根拠になる。

診断

  • 血液寒天培地でのβ溶血、青緑色色素+果実様芳香というコロニー所見で強く示唆される
  • ・という生化学的性状で腸内細菌科と鑑別
  • ごとのが必須:株ごとのの差が大きく、をそのまま維持できるとは限らない。は、施設ごとの感受性集計()と患者の耐性化の危険因子から選ぶ1

治療と予防

という限られたカテゴリーからしか選べない点が最大の特徴。

系統 代表薬
+
抗緑膿菌セファロスポリン セフタジジム、
抗緑膿菌 、、(のみ緑膿菌をカバーしない点に注意)
——βラクタムアレルギーでもが少ない(例外はセフタジジムで、側鎖が共通のため交差しうる)
新規βラクタム系(配合剤を含む) 、、+、(多剤耐性株向け)
アミノグリコシド 、、
フルオロキノロン 、
——多剤耐性株にも活性が残りうるが腎毒性が強く、新規βラクタム系が使える状況では優先されない
  • 併用は「当てる確率を上げる」ためのの手段であって、感受性が分かったあとの原則ではない。 ・では、耐性化の危険因子(90日以内のなど)がある患者、死亡リスクが高いの患者(肺炎による人工呼吸・)、グラム陰性菌の10%超が単剤に耐性の病棟や感受性集計の無いのに限って、系統の異なる2剤でを始めることが提案されている。感受性が判明すれば、ショックや高い死亡リスクが無い患者では感受性のある1剤へ絞るが推奨され、ショックが続く・死亡リスクが高い患者に限って感受性のある2剤の併用が提案される。肺炎をアミノグリコシド単剤で治療しない1
  • 💡 なぜ併用を続けないのか。 緑膿菌について、の手引きは、有効なβラクタムへの感受性が確認されたあとの併用は単剤より転帰を改善せず、抗菌薬による有害事象を増やすとし、アミノグリコシドやの毒性も理由に挙げる。併用で耐性化を防げるという臨床データも無い。従来の抗緑膿菌βラクタムに感受性があれば、を温存する目的でそちらを優先する2
  • ⚠️ 治療が特に難しい耐性株:緑膿菌とは、・・セフタジジム・・・・・+のすべてに非感受性の株を指す。ここで使う新規βラクタム4剤(、、++、)は、・アミノグリコシド・を組み合わせた従来の治療より転帰がよく(観察研究)、感受性が確認されれば併用療法は勧められない2

緑膿菌では感染部位で薬の並びが変わる。 尿路とそれ以外で推奨薬が違うので、まとめて覚えない2。

部位 推奨薬 代替薬
尿路以外 、、++(肺炎ではを優先)
上の3剤との4剤が同格(優劣を付けない) 1日1回投与のまたは
  • 💡 はなぜ尿路以外では代替なのか。 株に対するの活性はむしろ4剤中で最も高いが、試験の部分集団では代替治療(主にの併用)とが同じで、優ることを示せていない。加えて、腸内細菌目の産生株や本菌以外の非発酵菌にも効く数少ない薬なので、そちらのために温存する意味もある2
  • ⚠️ 肺炎でを優先するのは上皮被覆液のによる。 は血中濃度の50%が上皮被覆液に達し、の全域で判定基準の4 µg/mLを超える。一方セフタジジムとはいずれも血中の約30%しか達さず、両成分の曝露がそろって必要なでは不足しうる。観察研究でも肺炎の臨床的成功は51%に対し63%だった2
  • ⚠️ が同定されたら薬の選び方が変わる。 米国のでは産生はまだ少ない。一方、株のうちを産生するものの割合は、ラテンアメリカ約69%・アジア57%・南欧50%と地域によって大きく違う(主に型とVIM型)。遺伝子の検査は新規βラクタムの感受性結果より早く出ることが多いので、先に型が分かる場面が実際にある2
酵素 推奨薬 勧められない薬とその理由
型 、、++(感受性結果で選ぶ) ——はを阻害しない
(・VIM・IMP) ・・++——いずれの阻害薬もに活性が無い。+も本菌では勧められない(腸内細菌目との違い。のためが標的のPBP3に十分届かない)

⚠️ 産生株でが使えないときに限り、との併用を考える。 遺伝子が分かってもを省いてよいわけではない2。

  • ⚠️ 治療中の耐性化が4剤すべてで問題になる。 新規βラクタムで治療した株の約20%が治療中に非感受性化し、とでは約24%に達する。この2剤はセファロスポリン骨格を共有するためが50%を超えるので、一方が効かなくなったときに他方へ替えても効かないことが多い。治療中に得られたはをやり直す2
  • 予防はカテーテル・の管理、、CF患者の慢性気道感染に対する管理が中心

まとめ

  • 緑膿菌は・のグラム陰性桿菌で、青緑色色素と果実様芳香を伴うコロニーで同定される。
  • 病原性の核は(EF-2のADP、と同一機序)と。
  • の広さ(低透過性外膜・・)により、アンピシリン・セフトリアキソン・・ST合剤は最初から効かない——使える薬はという限られたリストに絞られる。
  • CF患者の慢性肺感染、感染、、(菌血症の特徴的皮疹)が臨床像の柱。
  • 治療はに基づくの単剤が原則で、2剤併用を考えるのは、主に耐性化の危険が高い患者のと、感受性判明後もショックが続く重症例である。緑膿菌には新規βラクタム系(尿路以外では、、++が推奨薬で代替が、では4剤同格)を用い、腎毒性の強いは優先されない。
  • が同定されたら選び方が変わる:型ではが外れ、産生株ではだけが残る(腸内細菌目と違い、+は本菌には勧められない)。新規βラクタムはいずれも治療中に約20%が耐性化する。

出典

  1. 1.Management of Adults With Hospital-acquired and Ventilator-associated Pneumonia: 2016 Clinical Practice Guidelines by the IDSA and ATS(Infectious Diseases Society of America / American Thoracic Society・2016)IDSA の掲載ページ(2026-09-27 時点でガイドライン一覧の表示は Current)の全文で、緑膿菌によるHAP/VAPでは確定治療の薬剤を感受性結果に基づいて選ぶこと、敗血症性ショックでなく死亡リスクも高くない患者で感受性が判明していれば感受性のある1剤による単剤療法を併用療法より推奨すること(strong、low)、感受性判明時にも敗血症性ショックまたは死亡リスクが高い(>25%)患者では感受性のある2剤の併用を提案すること(weak、very low)、アミノグリコシド単剤療法は推奨しないこと(strong、very low)を確認した。経験的治療で異なる系統の抗緑膿菌薬2剤を用いるのは、人工呼吸器関連肺炎では耐性化の危険因子がある患者、単剤候補薬への耐性がグラム陰性菌の10%を超える病棟、局所の感受性データが無いICUに限って(weak、low)、院内肺炎では緑膿菌などのグラム陰性菌の可能性を高める因子(90日以内の静注抗菌薬)または高い死亡リスク(肺炎による人工呼吸・敗血症性ショック)がある患者に限って提案されており(weak、very low。2026-09-27に横断監査でPMC4981759の全文から院内肺炎の条件を追記)、パネル自身のメタ解析(人工呼吸器関連肺炎の経験的治療の無作為化試験)では1剤と2剤で死亡・臨床効果・有害事象・耐性獲得に差が無かったとしている。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Infectious Diseases Society of America 2026 Guidance on the Treatment of Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2026)DOI 先の academic.oup.com は bot 判定で 403 を返すが、2026-09-28 に IDSA の掲載ページにブラウザの User-Agent を付けた curl で全文を取得し、Version 4.0(2026年7月30日公開、内容は2026年3月1日時点)の第4節を照合した。DTR緑膿菌がアズトレオナム・セフェピム・セフタジジム・シプロフロキサシン・イミペネム・レボフロキサシン・メロペネム・ピペラシリン・タゾバクタムのすべてに非感受性の株と定義されること、尿路以外のDTR緑膿菌感染症ではセフタジジム・アビバクタム、セフトロザン・タゾバクタム、イミペネム・レレバクタムが推奨薬(肺炎ではセフトロザン・タゾバクタムを優先)でセフィデロコルが代替薬とされること(Question 4.3)、複雑性尿路感染症ではこれと異なりセフィデロコルも含む4剤がいずれも推奨薬で優劣を付けず、1日1回のアミカシンまたはトブラマイシンが代替であること(Question 4.2)、観察研究ではこれら新規薬のほうがポリミキシン・アミノグリコシド・カルバペネムを組み合わせた従来の治療より転帰がよかった一方、セフィデロコルはランダム化試験の部分集団で代替治療を上回れなかったこと、新規βラクタムへの感受性が確認されれば併用療法は勧めないこと(併用で転帰は改善せず有害事象が増える)、アミノグリコシドとポリミキシンの毒性を考慮していること、従来の抗緑膿菌βラクタムに感受性があればカルバペネムより従来薬を優先すること(カルバペネムは治療中の耐性出現がより多く、転帰の改善を伴わない)を確認した。2026年版で新設された Question 4.4 では、KPC産生株にはセフィデロコル・セフタジジム・アビバクタム・イミペネム・レレバクタムが推奨薬でセフトロザン・タゾバクタムは勧めない(タゾバクタムはKPCを阻害しない)こと、NDM・VIM・IMP(メタロβラクタマーゼ)産生株にはセフィデロコルが推奨薬で他の3剤は勧めず、腸内細菌目と違ってアズトレオナム・アビバクタムも勧めない(排出ポンプでアズトレオナムがPBP3に届かない)こと、セフタジジム・アビバクタム+アズトレオナムはセフィデロコルが使えないときに限ること、米国ではカルバペネマーゼ産生自体がまだ少ないがラテンアメリカ約69%・アジア57%・南欧50%と地域差が大きいことを確認した。Question 4.5 では新規βラクタム4剤いずれでも治療中の耐性出現が約20%に起こるとされ、セフタジジム・アビバクタムとセフトロザン・タゾバクタムでは約24%、両者の交差耐性が50%超であることを確認した。閲覧 2026-09-28