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Drug Atlas · C14 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

シプロフロキサシン

ciprofloxacin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
シプロキサン
商品名(EU)
Ciprobay
科目
Pharmacology
トピック
C14: Quinolones and fluoroquinolones
禁忌疾患
重症筋無力症大動脈瘤大動脈解離
標的微生物
Pseudomonas aeruginosaEscherichia coliSalmonella typhiShigella dysenteriaeVibrio choleraeYersinia pestisNeisseria meningitidisBacillus anthracis
副作用
下痢悪心めまい皮疹痙攣
影響検査値
血糖
相互作用
アゴメラチンテオフィリンデュロキセチンポマリドミド硫酸マグネシウム硫酸鉄
対象疾患
コレラペスト化膿性関節炎(敗血症性関節炎)外耳炎気管支拡張症急性腎盂腎炎・腎膿瘍急性胆管炎憩室症・憩室炎血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)骨髄炎細菌性急性胃腸炎細菌性髄膜炎常染色体優性多発性嚢胞腎赤痢前立腺炎腸チフス尿路感染症
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症大動脈解離大動脈瘤低血糖(非糖尿病性)

🧠 全体像の中でもっともグラム陰性菌・緑膿菌に強いタイプで、を阻害して細菌のDNA複製そのものを止める。同じフルオロキノロンでもは肺炎球菌など呼吸器病原体に強い「呼吸器型」に寄っているのに対し、肺炎球菌カバーが弱い代わりに緑膿菌に強いという非対称なスペクトラムを持つ。この非対称性のせいで「の第一選択にはならないが、緑膿菌が絡む複雑感染や腸管感染では欠かせない」という立ち位置になる。、末梢神経障害、中枢神経系作用、・解離というフルオロキノロン共通の重大副作用に対するFDA/EMAのは、このを軸に理解しておくと他剤にも応用しやすい。

薬効群の中での位置づけ

は語尾が共通して「-floxacin」で、スペクトラムの重心によって大まかに4タイプへ分かれる。

タイプ 代表薬 得意な相手 弱点
尿路寄り(旧世代) 尿路Gram陰性菌 組織移行が乏しく尿路・腸管以外に不向き
Gram陰性・緑膿菌型 緑膿菌、腸内細菌科、の一部 肺炎球菌カバーがレボ/モキシより弱い
呼吸器型 肺炎球菌・ は尿中濃度が低くUTIに不向き
特殊型(MRSA/皮膚) MRSAを含む皮膚軟部組織感染・ データの蓄積がまだ他剤より少ない

「シプロ=Pseudo」と覚える。 は緑膿菌を含むGram陰性菌に対する殺菌力が全フルオロキノロンの中でも最強クラスである一方、肺炎球菌に対する活性は弱く、には向かない。この弱点を補うために側鎖を改良して肺炎球菌活性を高めたのがという「」である。

⚠️ FDA(2016年)・EMA(2018年)はいずれも、症のようにフルオロキノロンでなくても治療できる感染症では、他に肢がある限りを使わないよう勧告している。 ・末梢神経障害・中枢神経系作用・/解離という不可逆的でありうる重大な副作用が、軽症感染症で得られる利益に見合わないという判断による。この位置づけの転換(かつての「便利な広域」から「他に手段がないときの選択肢」へ)は現行ガイドラインの前提として必ず押さえる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciprofloxacin'>シプロフロキサシン</span>が菌体内へ移行"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DNA gyrase'>DNAジャイレース</span>(Gram陰性菌で主標的)・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='topoisomerase IV'>トポイソメラーゼIV</span>(Gram陽性菌で主標的)に結合"]
    B --> C["酵素とDNAの複合体(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cleavage complex'>開裂複合体</span>)を安定化"]
    C --> D["DNA二<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heavy chain'>重鎖</span>切断が再結合できず蓄積"]
    D --> E["DNA複製・染色体分配が停止"]
    E --> F["菌体は増殖を続けようとして自滅(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]

の前方でDNAのを解消し、は複製後のを分離する酵素で、どちらもDNA鎖を一時的に切って再結合する反応を担う。フルオロキノロンはこの「切って再結合する」過程の再結合だけを止めるため、切断されたDNAが蓄積し細胞死に至る。

💡 であり、のβラクタム系とは効果の決まり方が違う。/MIC比やAUC/MIC比が効果と相関するため、1回量を十分に確保することが治療成功の鍵になる(1日1回〜2回で高用量、というレジメン設計につながる)。

薬物動態

項目 値・特徴
約70〜80%
食事の影響 吸収の総量への影響は小さいが、Ca²⁺・Fe²⁺・Mg²⁺・Al³⁺・Zn²⁺を含む製剤(・乳製品・)とを作り吸収が大きく低下する。同時服用を避け前後2〜6時間空ける
分布 骨・前立腺・肺・胆汁へ良好。は乏しい(髄膜炎の第一選択にはならない)
代謝 一部がを受け、CYP1A2を阻害する(の血中濃度上昇に注意)
排泄 主に(未変化体+代謝物)。一部は胆汁・糞便排泄
半減期 約4時間

なので「/MIC」「AUC/MIC」が効果を決める。 βラクタム系のようなの薬と混同しない。

適応

領域 使いどころ
尿路・前立腺 (前立腺組織への移行が良い数少ない抗菌薬)
腸管感染 Salmonella typhi)、Shigella dysenteriae)、Vibrio cholerae)の代替、
緑膿菌関連感染 ・嚢胞性線維症の、緑膿菌性骨髄炎・
予防投与 髄膜炎菌(Neisseria meningitidisへの予防
特殊感染症 Bacillus anthracis)の曝露後予防・治療、Yersinia pestis)の代替治療

⚠️ の第一選択ではない。 肺炎球菌活性が弱いため、呼吸器感染でが必要なときはを選ぶ。

用法・用量

経口では成人1回500〜750 mgを1日2回、重症・感染では上限側を選択する。静注では1回400 mgを1日2〜3回。・赤痢など腸管感染では短期(3〜7日程度)で終了することが多い。腎機能低下例ではを延長する。 実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌重症筋無力症をさらに障害し、筋力低下・クリーゼを誘発しうる。FDAの
  • ⚠️ :FDA(2018年)・EMAは・解離のリスクを高めうるとしており、既往やリスク因子(高齢・動脈硬化・など)がある患者では他に選択肢がなければ避ける
  • ⚠️ (特に):高齢者、ステロイド併用、腎移植後、腎機能低下で頻度が上がる。運動を控え、症状が出たら直ちに中止する
  • ⚠️ 末梢神経障害:不可逆的なことがあり、が出たら中止を検討する
  • ⚠️ 中枢神経系作用:不眠、めまい、まれに・せん妄。を下げるためNSAIDs併用や既往のてんかんで注意
  • 妊婦・小児では原則避けるが報告されており、発育中の軟骨への影響が懸念される(ただし曝露後予防など利益がリスクを上回る場合は使用する)
  • CYP1A2阻害の血中濃度上昇に注意(相互作用の詳細は各薬のノートを参照)
  • :Ca²⁺・Fe²⁺・Mg²⁺・Al³⁺を含む製剤・乳製品で吸収低下

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心下痢、頭痛、めまい
注意 皮疹血糖異常(低血糖・高血糖の両方向)
重篤・まれ 痙攣、末梢神経障害(不可逆例あり)、・解離、QT延長、

まとめ

  • を阻害してDNA複製を止める
  • フルオロキノロンの中でGram陰性菌・緑膿菌に対する活性が最強クラスだが、肺炎球菌カバーは弱い(→の第一選択にはならない)。
  • 尿路感染・前立腺炎・腸管感染(・赤痢・)・緑膿菌関連感染・・髄膜炎菌予防が主な使いどころ。
  • FDA/EMAは・気管支炎・では他の選択肢がある限り使わないよう勧告している。
  • ・解離、、末梢神経障害、中枢神経系作用というフルオロキノロン共通の重大副作用を必ず押さえる。
  • Ca/Fe/Mg/Alとので吸収低下。CYP1A2阻害での血中濃度が上がる。
  • 妊婦・小児ではの懸念から原則避ける。