疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 肝胆膵 · 疾患

急性胆管炎

Acute cholangitis

臓器系
肝胆膵感染症
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 I-12:腹腔内感染症:胆管炎・胆嚢炎・腹腔内膿瘍・憩室炎・腹膜炎
続発疾患
敗血症
関連疾患
急性膵炎
治療薬
セフトリアキソンメトロニダゾールピペラシリンタゾバクタムメロペネムゲンタマイシンシプロフロキサシンドーパミンノルアドレナリン
原因微生物
Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeEnterococcus faecalisEnterobacter cloacaeBacteroides fragilis
症状
悪寒悪心意識障害黄疸発熱腹痛乏尿嘔吐
検査値
ビリルビン血算白血球数
画像所見
超音波内視鏡
スコア
Charcot三徴
原因となる疾患
Caroli病原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎胆石症胆道癌(胆管癌・胆嚢癌)
適応薬
セフメタゾール
禁忌薬
ウルソデオキシコール酸

🧠 全体像は「胆管の閉塞」に「細菌感染」が重なることで成立する、胆道系そのものが感染源となる敗血症である。閉塞の原因は結石()が最多だが、悪性狭窄・良性狭窄・閉塞・術後合併症など結石以外の原因も臨床上重要である。診断はTokyo Guidelines 2018(TG18)(全身炎症+胆汁うっ滞または画像所見)で確定し、(軽症・中等症・重症)に応じて「いつ・どの方法でするか」を決めるのが治療の骨格になる。重症では蘇生と並行した、軽症では抗菌薬による初期治療を優先し、いずれも安定後に原疾患(結石除去・狭窄治療など)を根治する。

病態生理(閉塞+感染)

胆管が閉塞するだけでは胆汁うっ滞にとどまるが、そこに細菌感染が加わることで胆管内圧が上昇し、を介して胆汁中の細菌・が血中へ逆流するが起こる。これが菌血症・敗血症へ進展する機序であり、そのものの結石形成過程(コレステロール/)はに譲り、ここでは「閉塞+感染→敗血症」という胆管炎に固有の連鎖に焦点を当てる。

flowchart TD
    A["胆管の閉塞(結石・悪性狭窄・良性狭窄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stent'>ステント</span>閉塞など)"] --> B["胆汁うっ滞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased intrabiliary pressure'>胆管内圧上昇</span>"]
    B --> C["胆管内での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial growth'>細菌増殖</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholangiovenous reflux'>胆管静脈逆流</span>"]
    D --> E["菌血症"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic inflammatory response'>全身性炎症反応</span>・敗血症"]
    F --> G{"新規の臓器障害を伴うか"}
    G -->|"はい"| H["TG18 Grade III(重症)"]
    G -->|"いいえ・全身炎症所見が高度"| I["TG18 Grade II(中等症)"]
    G -->|"いいえ・軽微"| J["TG18 Grade I(軽症)"]

💡 胆管炎が「胆道系の敗血症」であるという理解がの起点になる。抗菌薬だけでは閉塞という感染源が残ったままであり、敗血症どおり感染源のコントロール(=が生命予後を左右する。

病型・重症度分類

結石以外を含む病因

の病因は結石にとどまらない。結石以外の病因を見落とすと、抗菌薬とドレナージだけで満足し原疾患の治療が遅れる。

病因カテゴリー 代表例
胆石性(最多) 。詳細な結石形成機序はを参照
悪性狭窄 部・・乳頭部癌による・浸潤
良性狭窄 術後胆管狭窄(後のなど)、による多発狭窄
ERCP後の胆道閉塞、の閉塞・偶発的逸脱
寄生虫性 Clonorchis sinensis)、回虫(Ascaris lumbricoides)などによる胆管内寄生
医原性 ERCP後胆管炎(造影のみ行い十分なが得られなかった場合など)

⭐ 結石以外の病因は再発性・難治性の胆管炎で特に疑う。高齢者の悪性狭窄、既存例の閉塞、の多発狭窄は、いずれも「結石を探しても見つからない胆管炎」の典型的な背景である。

TG18診断基準

Tokyo Guidelines 2018(TG18)は、全身炎症・胆汁うっ滞・画像所見の3系統(A・B・C)でを診断する。

系統 項目 内容
A:全身炎症 A-1 発熱(38℃以上)または
A:全身炎症 A-2 炎症反応の異常〈10,000/μL超または4,000/μL未満〉またはCRP 1 mg/dL以上)
B:胆汁うっ滞 B-1 黄疸(2 mg/dL以上)
B:胆汁うっ滞 B-2 異常(ALP・γ-GTP・AST・ALTのいずれかがの1.5倍超)
C:画像所見 C-1 胆管拡張
C:画像所見 C-2 病因を示す画像所見(狭窄・結石・など)
  • :Aから1項目+BまたはCから1項目
  • :A・B・Cそれぞれから1項目ずつ

⚠️ (後述)は特異的だが感度が低く、三徴がそろわないことを理由にTG18基準での診断を放棄しない。

TG18重症度分類

診断確定後は重症度(軽症・中等症・重症)を判定し、ドレナージのを決める。

Grade 定義 具体的基準
Grade III(重症) 新規発症の臓器障害を1つ以上伴う 循環器(または任意量のノルアドレナリンを要する低血圧)、神経(意識障害)、呼吸器(300未満)、腎(乏尿またはCr 2.0 mg/dL超)、肝( 1.5超)、血液(10万/mm³未満)のいずれか1項目以上
Grade II(中等症) 下記5項目のうち2項目以上 異常(12,000/mm³超または4,000/mm³未満)、高熱(39℃以上)、年齢75歳以上、5 mg/dL以上、アルブミン基準下限の0.7倍未満
Grade I(軽症) Grade II・IIIのいずれも満たさない 初期治療(抗菌薬など)に良好に反応することが多い

臨床像

の古典的な臨床像は、閉塞・胆汁うっ滞・全身感染の3要素をそのまま反映している。

  • :発熱・悪寒、黄疸、右上腹部痛の3つ。特異度は高いが感度は低く、そろわない症例も多い。
  • に低血圧・意識障害を加えたもので、重症胆管炎(おおむねTG18 Grade IIIに相当)を示唆する。
  • そのほか、悪心・嘔吐、、菌血症に伴うショック徴候(頻脈・末梢・乏尿)を伴いうる。

⚠️ 高齢者・免疫不全者では(発熱を欠く、腹痛が乏しいなど)となりやすく、症状が乏しいからといって重症胆管炎を除外できない。

診断

初期評価は血液検査(血算・CRP・肝・ビリルビン・凝固・血液培養)と画像検査を並行して行い、に照らしてを判定したうえで、でドレナージのを決める。

  • 腹部超音波を初期画像の第一選択とし、胆管拡張や結石の有無を評価する。
  • 超音波で不明瞭な場合は造影CT(膿瘍・穿孔などの局所合併症の評価にも有用)、MRCPを追加する。
  • 血液培養は治療開始前に必ず採取する。胆管炎は血液培養陽性率が他のより高い。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute cholangitis'>急性胆管炎</span>を疑う臨床像(発熱・黄疸・右上腹部痛など)"] --> B["血液検査+血液培養+腹部超音波"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='TG18 diagnostic criteria'>TG18診断基準</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suspected diagnosis'>疑診</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confirmed diagnosis'>確診</span>を判定"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='TG18 severity grading'>TG18重症度分類</span>で軽症・中等症・重症を判定"]
    D --> E{"Grade IIIか"}
    E -->|"はい"| F["ICUレベルの臓器支持+緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biliary drainage'>胆道ドレナージ</span>"]
    E -->|"いいえ"| G{"Grade IIか"}
    G -->|"はい"| H["早期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biliary drainage'>胆道ドレナージ</span>"]
    G -->|"いいえ(Grade I)"| I["抗菌薬±補液による初期治療"]
    I --> J{"初期治療に反応するか"}
    J -->|"いいえ"| F
    J -->|"はい"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機的</span>に原疾患(結石・狭窄など)を治療"]
    F --> L["全身状態安定後に原疾患を根治的に治療"]
    H --> L

治療

は「胆道系の敗血症」として扱い、蘇生・)を同時に進める。ドレナージのに従う。

重症度別のドレナージ方針

重症度 ドレナージ方針 原疾患治療のタイミング
Grade III(重症) 循環・呼吸などの臓器支持と並行し、緊急にを行う(内視鏡的ドレナージが第一選択、目安として24時間以内) 全身状態が安定してから原疾患(結石除去・狭窄治療など)を行う
Grade II(中等症) 早期(目安として24〜48時間以内)にを行う ドレナージ後、状態を見ながら早期に原疾患を治療する
Grade I(軽症) まず抗菌薬(±補液)で初期治療し、反応不良の場合にドレナージを行う 反応が良好であれば原疾患の治療はでよい

によるが第一選択である。ERCPが技術的に困難・不能(術管再建、十二指腸狭窄など)または施設に内視鏡医が不在の場合は、またはを代替手段として検討する。EUS-BDは近年、ERCP不成功例や術管再建例での選択肢として普及が進んでいる。

抗菌薬

の主な起因菌は腸内細菌科のグラム陰性桿菌であり、と共通する。

分類 主な起因菌
グラム陰性腸内細菌 Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeEnterobacter cloacae
Enterococcus faecalis
嫌気性菌 Bacteroides fragilis

原疾患の治療

安定後は原疾患を根治的に治療する。結石性であれば同一入院中または早期にERCPでの採石、必要に応じての項に準じたを計画する。悪性狭窄であればに、による狭窄であれば同疾患の管理方針に従う。閉塞例では交換・種類の見直し(メタリックへの変更など)を検討する。

まとめ

  • は「胆管の閉塞+細菌感染」による胆道系の敗血症であり、)が予後を決める。
  • 病因は結石が最多だが、悪性狭窄()、良性狭窄(など)、閉塞、寄生虫性、医原性も見落とさない。
  • 診断は(全身炎症+胆汁うっ滞またはCの画像所見で、A・B・C全てで)で行う。
  • 重症度は(Grade I〜III)で判定し、Grade IIIは緊急(目安24時間以内)、Grade IIは早期(目安24〜48時間以内)にドレナージを行い、Grade Iはまず抗菌薬で初期治療する。
  • ERCPが第一選択のドレナージ手段であり、不成功・不能な場合はPTBDやEUS-BDを代替とする。
  • 抗菌薬はグラム陰性腸内細菌・Enterococcus・Bacteroidesをカバーし、重症度・医療関連歴に応じてする。適切なドレナージ後は4〜7日程度で終了できる。
  • は診断の手がかりだが感度が低く、そろわなくてもTG18基準での評価を省略しない。