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Drug Atlas · A4 Adrenergic agonists / アドレナリン作動薬 · 必修

ドーパミン

dopamine

分類
Adrenergic agonists / アドレナリン作動薬Cardiac glycosides & inotropes / 強心薬
商品名(日本)
イノバンカコージン
科目
Pharmacology
トピック
A4: Catecholamines
禁忌疾患
褐色細胞腫
副作用
動悸
解毒薬
フェントラミン
対象疾患
急性胆管炎徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)
原因となる疾患
薬剤の血管外漏出

🧠 全体像:は同じ受容体系列の中を用量で移動するという、の中でも特異な薬。低用量ではD1・D2受容体、中用量ではβ1、高用量ではα1が優位になり、1つの薬なのに用量帯によって性格が変わる。ただしこの「低用量=腎保護」という古典的な語られ方は、現在は臨床的には否定されている点が重要なになる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 α1 β1 β2 D(ドパミン受容体) 主な適応
ノルアドレナリン +++ + − − (第一選択)
エピネフリン +++ +++ +++ − アナフィラキシー・心停止
高用量で+ 中用量で+ − 低用量で+ (第二選択)、選択的な低血圧・
ほぼなし +++ + − ・(強心)
− +++ +++ − 徐脈・房室ブロック

⭐ の第一選択はもはやではなくノルアドレナリンである。 かつては両者が同列で使われた時代もあったが、SOAP II試験(2010年)ではノルアドレナリンより不整脈(特に心房細動)が多く、Surviving Sepsis Campaignは第一選択をノルアドレナリンとし、は徐脈を伴う患者などごく限られた場面の代替に位置づけを下げた。の治療ではに対し無効後の第二選択(と並ぶ)として今も使われる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dopamine'>ドーパミン</span>投与量"] --> B["低用量(米国添付文書 5 µg/kg/分未満)"]
    A --> C["中用量(米国添付文書 5〜10 µg/kg/分)"]
    A --> D["高用量(米国添付文書 10 µg/kg/分超)"]
    B --> B1["D1・D2受容体(腎・腸間膜・冠血管)刺激"]
    B1 --> B2["Gs→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic adenosine monophosphate'>cAMP</span>↑→血管拡張"]
    B2 --> B3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal blood flow'>腎血流</span>・尿量が増える"]
    C --> C1["β1受容体(心筋)刺激が優位に"]
    C1 --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic adenosine monophosphate'>cAMP</span>↑→収縮力・心拍数↑"]
    D --> D1["α1受容体(末梢血管)刺激が優位に"]
    D1 --> D2["血管収縮→血圧↑"]

⚠️ この3段の区切りは「教科書の目安」ではなく、米国添付文書(PLR様式、Revised 4/2024)12.2 が定めている数値である。 逐語では 5 µg/kg/分未満=D1・D2受容体(腎・腸間膜・冠血管)→ 5〜10 µg/kg/分=β1 → 10 µg/kg/分超=α1 であり、低用量で拡張するに冠血管が入る点は覚えておく価値がある1。ただし境界の数値もの並びも文書の版で違う:旧様式(PLR前)の同成分ラベルは 0.5〜2 µg/kg/分=ドパミン受容体(腎・腸間膜・冠・脳血管)/2〜10 µg/kg/分=β1/10〜20 µg/kg/分=α1が一部/20 µg/kg/分超=α1優位、と4段に分けていた2。日本の電子添文(イノバン注)には受容体別の用量帯という書き方そのものが無い(後述)3。「1〜3/3〜10/10超」のような数字を単一の正解として暗記しないこと。

💡 用量の境界は連続的でおおよその目安に過ぎず、・で実際に優位になる受容体は前後する。「は腎保護的」という考え方は、・尿量を増やす自体は本当でも、の発症・・死亡率を改善しないことが複数の(ANZICS Clinical Trials Group, 2000年など)で示され、現行のガイドラインは腎保護目的の「腎用量ドパミン」を推奨していない。 尿量が増えても腎臓が守られているとは限らない、という区別が重要。

薬物動態

項目 値・特徴
IV持続静注のみ(経口不可、内因性で消化管・肝臓で速やかに分解)
作用発現 数分以内
半減期 約2分(末梢の・で速やかに代謝)
特記 ノルアドレナリンのでもある(体内で一部がβ-によりノルアドレナリンへ変換される)

適応

⚠️ 承認された効能又は効果の書き方は国で違う。

文書 効能又は効果(逐語の要約)
米国添付文書(PLR様式、Revised 4/2024)1 「、または心拍出量低下によるショック」の患者で血行動態を改善すること
日本の電子添文(イノバン注、2026年3月改訂・第4版)3 急性循環不全(、)。①・乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態、②脈拍数の増加した状態、③他の強心・昇圧剤で副作用が出たか好ましい反応が得られない状態、に使う

実際に臨床で使われる場面は、添付文書の効能又は効果より広い。

領域 使いどころ
で無効後の第二選択(と並行、AHAアルゴリズム)。ERC/RCUKアルゴリズムでは同じ位置づけに/エピネフリンを用いる。⚠️ この位置づけは蘇生アルゴリズム由来であり、上の2つの添付文書はいずれも徐脈を効能又は効果として挙げていない
ショック・ の第一選択はノルアドレナリンへ移っており、は選択的な場面の代替。(TG18)のGrade III(循環不全)でもノルアドレナリンと並び記載される

用法・用量

IV持続静注。にが変わるため、目的とする効果(心拍数か、血圧か)に応じてする。⚠️ 添付文書が定める用量の幅は国でかなり違うので、どちらの数字を言っているかを意識する。

文書 増量・上限
米国添付文書(PLR様式)1 成人・小児とも 2〜5 µg/kg/分 の持続静注 血行動態とを見て 5〜10 µg/kg/分ずつ増量。50 µg/kg/分を超えない
日本の電子添文(イノバン注)3 1〜5 µg/kg/分 の 病態に応じ 20 µg/kg/分まで増量可。血圧・脈拍数・尿量で適宜増減

でを起こしうるため、可能な限り太い静脈()から投与する。実際の用量は病態・年齢・体重・腎肝機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:。これは現行の米国添付文書と日本の電子添文が一致して挙げる唯一の禁忌である(内因性過剰にさらにしを誘発しうる)。日本の電子添文は同じ項でも並べる13
  • ⚠️ 「未補正の・が禁忌」は現行の文書の記述ではない。 これを禁忌として2項目めに挙げていたのは旧様式(PLR前)の米国添付文書であり2、PLR様式への改訂で禁忌はの1項目に絞られた。日本の電子添文でも「未治療の又はの患者」は禁忌ではなく9.1.2「特定の背景を有する患者に関する注意」(により症状が悪化するおそれ)に置かれている3。投与してはならないのではなく、・がある例では悪化に注意して使う、が現在の書き方である
  • (糖尿病・アルコール中毒・・・レイノー症候群・など):作用で症状が悪化しうる(日本の電子添文 9.1.1)3
  • からの投与:によるのリスク。米国添付文書は漏出時の処置として、虚血部にメシル酸塩5〜10 mgを0.9%注射液10〜15 mLに溶いて(小児は0.1〜0.2 mg/kg、1回最大10 mg)細い針でできるだけ早く浸潤させるよう定め、12時間以内に浸潤させれば局所の充血がただちに現れるとする1。日本の電子添文も末梢の虚血に対し必要があればα-遮断剤をするとしている3
  • 甲状腺機能亢進症:感受性が高まっており不整脈・過度の昇圧を起こしやすい
  • アルカリ性薬剤との混合:pH8.0以上で着色することがあり、などと混合しない(日本の電子添文 14.1)3

副作用

頻度 内容
5%以上(日本の電子添文)3 不整脈(・心房細動・心室性頻拍など)。発現時はを投与するか本剤を中止する
0.1〜5%未満(同)3 、・嘔吐・腹部膨満・腹痛
0.1%未満(同)3 、注射部位の変性壊死、起毛
頻度不明(同)3 頻脈
重大な副作用(同)3 (0.1%未満)、末梢の虚血(末梢血管の収縮により0.5%等が起こり、壊疽を生じることもある)
米国添付文書1 最も多い副作用はによる局所の血管収縮

まとめ

  • にが変化する唯一無二の:低用量=D1・D2(腎・腸間膜・冠血管の拡張)→中用量=β1(強心)→高用量=α1(血管収縮)。
  • 区切りの数値はどの文書を引くかで変わる。米国添付文書(PLR様式)は5未満/5〜10/10超 µg/kg/分、旧様式の米国添付文書は0.5〜2/2〜10/10〜20/20超 µg/kg/分(低用量のに脳血管を含む)、日本の電子添文には受容体別の用量帯そのものが無く用法は1〜5(最大20)µg/kg/分。用量の境界は連続的な目安であり、厳密な閾値ではない。
  • 「低用量=腎保護」という古典的な語りは現在は否定されている。尿量は増えてもAKI・死亡率は改善しない。
  • の第一選択はノルアドレナリンへ移行済み(SOAP II試験、不整脈リスクの差)。は徐脈を伴う場合などの代替。
  • では無効後の第二選択(AHAアルゴリズム)。ERCでは/エピネフリンが対応する位置にある。
  • 禁忌は(日本はも)だけ。 「未補正の・」は旧様式の米国添付文書の禁忌欄に載っていた記述で、現行の米国添付文書では禁忌から外れ、日本の電子添文では「特定の背景を有する患者に関する注意」に置かれている。
  • からのはを起こすため、からの投与が望ましい。

出典

  1. 1.DOPAMINE HYDROCHLORIDE injection(Hikma Pharmaceuticals USA Inc.(米国添付文書・DailyMed)・2024)印字された改訂表示が「Revised 4/2024」の米国添付文書(PLR様式)。12.2 Pharmacodynamics が用量帯を3段に書き分ける——逐語で「At <5 mcg/kg/minute, dopamine HCl activates dopamine D1 and D2 receptors in the renal, mesenteric, and coronary vasculature causing vasodilation」「At 5 to 10 mcg/kg/minute, dopamine HCl activates beta-1 receptors enhancing heart rate and contractility」「At >10 mcg/kg/minute, dopamine HCl activates alpha-1 receptors causing vasoconstriction and increased blood pressure」。1 の適応は逐語で「indicated to improve hemodynamic status in patients in distributive shock or shock due to reduced cardiac output」。4 の禁忌は逐語で「Dopamine is contraindicated in patients with pheochromocytoma」の1項目のみで、頻脈性不整脈・心室細動は挙がらない。2.2 は成人・小児とも開始2〜5 mcg/kg/分、5〜10 mcg/kg/分ずつ漸増し50 mcg/kg/分を超えないと定める。5.1 の血管外漏出は、虚血部へフェントラミンメシル酸塩5〜10 mgを0.9%塩化ナトリウム注射液10〜15 mLに溶いて(小児は0.1〜0.2 mg/kg、1回最大10 mg)できるだけ早く浸潤させるとし、逐語で「if the area is infiltrated within 12 hours」なら局所の充血がただちに現れるとする。同じPLR様式のHospira版(setid 1f306ad2-3606-4525-5a8a-ce78f426c1a2、Revised 9/2023)も用量帯・禁忌・開始用量が同一であることを併せて確認した閲覧 2026-09-17
  2. 2.DOPAMINE HYDROCHLORIDE injection [Medical Purchasing Solutions, LLC](Medical Purchasing Solutions, LLC(米国添付文書・DailyMed、旧様式)・2020)印字された改訂表示が「Revised August 2020」の旧様式(PLR前)の米国添付文書。CLINICAL PHARMACOLOGY が用量帯を4段に分け、逐語で「At low rates of infusion (0.5 - 2 mcg/kg/min) dopamine causes vasodilation ... in the renal, mesenteric, coronary, and intracerebral vascular beds」「At intermediate rates of infusion (2 - 10 mcg/kg/min) dopamine acts to stimulate the beta1-adrenoceptors」「At higher rates of infusion (10 - 20 mcg/kg/min) there is some effect on alpha-adrenoceptors」「At very high rates of infusion (above 20 mcg/kg/min), stimulation of alpha-adrenoceptors predominates」とする。CONTRAINDICATIONS は2項目で、逐語で「Dopamine HCl should not be used in patients with pheochromocytoma」に加え「Dopamine HCl should not be administered to patients with uncorrected tachyarrhythmias or ventricular fibrillation」を挙げる。すなわち用量帯の区切り・拡張する血管床(脳血管を含むか)・禁忌の項目数はいずれもPLR様式への改訂で変わっている閲覧 2026-09-17
  3. 3.イノバン注100mg 電子添文(2026年3月改訂・第4版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA。テルモ株式会社)・2026)電子添文の本文を取得して確認した。冒頭の作成又は改訂年月が2026年3月改訂(第4版)で、その前は2024年12月改訂(第3版)。YJコードは2119402A1299。4. 効能又は効果は「急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)」で、無尿・乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態、脈拍数の増加した状態、他の強心・昇圧剤で副作用や好ましい反応が得られない状態に使うとする。6. 用法及び用量は逐語で「通常ドパミン塩酸塩として1分間あたり1〜5μg/kgを点滴静脈投与し、患者の病態に応じ20μg/kgまで増量することができる。」であり、米国添付文書の受容体別の用量帯に相当する記載は無い。2. 禁忌は「褐色細胞腫又はパラガングリオーマのある患者」の1項目のみで、「未治療の頻脈性不整脈又は心室細動の患者」は9.1.2(特定の背景を有する患者に関する注意)に置かれ禁忌ではない。14.2 は血管外漏出について硬結・壊死を起こすことがあるとしできるだけ太い静脈を確保するよう求め、11.1.2 の末梢の虚血では必要があればα-遮断剤を静脈内投与するとする。18. 薬効薬理は腎血流量増加作用・上腸間膜血流量増加作用をドパミン受容体を介するものとするが、冠血管については心収縮力増強作用の項で冠動脈血流が投与量に比例して増加したと述べるにとどまる。11.2 その他の副作用の表は列を4段(5%以上/0.1〜5%未満/0.1%未満/頻度不明)に取り、5%以上に循環器の不整脈(心室性期外収縮、心房細動、心室性頻拍等)、0.1〜5%未満に動悸と嘔気・嘔吐・腹部膨満・腹痛、0.1%未満に静脈炎・注射部位の変性壊死・起毛、頻度不明に頻脈を置く。11.1 重大な副作用は麻痺性イレウス(0.1%未満)と末梢の虚血(四肢冷感0.5%等、壊疽を生じることもある)の2項目閲覧 2026-09-17