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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

細菌性肝膿瘍

Pyogenic liver abscess

別名
化膿性肝膿瘍
臓器系
感染症肝胆膵
科目
Internal MedicineSurgery
トピック
内科学 I-12:腹腔内感染症:胆管炎・胆嚢炎・腹腔内膿瘍・憩室炎・腹膜炎外科学 A/10:腹膜炎の診断と治療内科学 L-54:急性腹症・腹痛の鑑別診断
鑑別疾患
横隔膜下膿瘍腸管原虫症
合併症
敗血症眼内炎細菌性髄膜炎
治療薬
セフトリアキソンメトロニダゾールメロペネム
原因微生物
Klebsiella pneumoniaeEscherichia coliBacteroides fragilis
症状
発熱右季肋部痛肝腫大黄疸
検査値
アルカリホスファターゼC反応性蛋白(CRP)抗体価
画像所見
リング状増強病変敗血症性肺塞栓
原因となる疾患
急性胆管炎

🧠 全体像:を読む鍵は、「どこから来た膿瘍か」が菌・膿瘍の数・治療の全部を決めることにある。胆道やから続発した古典的な型はで多発しやすく、原疾患の処置が治療の中心になる。これに対しアジアで顕在化した Klebsiella pneumoniae による侵襲性症候群は、糖尿病患者に単発・の膿瘍を作り、そこから・髄膜炎へ転移する。そして臨床の現場で最初に問われるのは、この2つより先に「ではないか」という分岐である。

アメーバ性肝膿瘍との鑑別が出発点

を見たときの最初の分岐は細菌性かアメーバ性かで、ここを外すと治療がまるごと変わる(アメーバ側の詳細はに譲る)。

分かれ目
数 胆道由来では多発が多い。性の Klebsiella 型は単発が典型 単発が典型で右葉に好発1
膿の性状 黄色〜緑色で悪臭を伴う真の膿。塗抹・培養で菌が出る 濃い褐色で無臭の「」。死んだ肝細胞とからなり、がなければ無菌1
血清抗体 診断に用いない が約95%で陽性。ただし感染後5〜7日経たないと陽性化せず、治癒後も6〜12か月持続する1
背景 胆道系疾患(胆管炎・胆道閉塞・胆道手術後)、、糖尿病 流行地への渡航歴・在住歴。生殖年齢の男性に強く偏り、アルコール摂取と強く関連する1
ドレナージ 原則として必要 非合併例では不要なことが多い1

⚠️ 血清抗体の解釈を発症時期とで変える。 発症第1週は偽陰性になりうるため、陰性1回でアメーバを除外しない。逆にの住民では既往曝露で陽性が出るため、単回陽性の特異度が下がる1。

感染経路と起因菌

flowchart TD
    A["胆道系(胆管炎・胆道閉塞・胆道<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stent'>ステント</span>・胆道手術後)"] --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>に膿瘍を形成"]
    B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal system'>門脈系</span>(虫垂炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diverticulitis'>憩室炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease, IBD'>炎症性腸疾患</span>・大腸癌の穿通)"] --> E
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic artery'>肝動脈</span>経由の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>(遠隔の菌血症)"] --> E
    D["直接波及・外傷・肝の局所治療後"] --> E
    E --> F["被膜に囲まれた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abscess cavity'>膿瘍腔</span><br>抗菌薬が届きにくい"]
    F --> G["菌血症"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metastatic complication'>転移性合併症</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endophthalmitis'>眼内炎</span>・髄膜炎/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain abscess'>脳膿瘍</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic pulmonary embolism'>敗血症性肺塞栓</span>"]

歴史的にはの大半が胆道閉塞やに続発する二次性であり、起因菌は好気性と嫌気性のであることが多かった2。代表的な菌は大腸菌をはじめとする腸内細菌科、腸球菌・、そしてBacteroides fragilisなどの嫌気性菌である。が同定できない例はと呼ばれる。

⭐ 中年以降で原因不明のを見たら、大腸癌の穿通を疑って大腸の評価を行う。 からの経路はの検索を促す所見であり、膿瘍の治療だけで終えない。

アジア型:Klebsiella pneumoniae による侵襲性肝膿瘍症候群

⭐ これは「を起こす菌の一つ」ではなく、固有のである。 1980年代の台湾で最初に認識され、その後アジアを中心に増加して世界へ広がった2。

  • 性・単発の膿瘍を、などの明らかなを持たない患者に作る。二次性・の古典的なとは成り立ちが違う2。
  • 糖尿病が最もよく知られた素因で、アジアのコホートではKlebsiellaによるの50〜70%が糖尿病を合併すると報告されている。高血糖が好中球のとを損なうことが背景にあると考えられている2。糖尿病に加えて、菌側の特定のが素因になる3。
  • は K1〜K80 が記載されているが、K1・K2(それぞれ ST23・ST65)がとに最も強く結びつく。K5・K20・K54・K57 も侵襲性感染から報告される。これらは rmpA/rmpA2 や座といったと共存し、血流への侵入と遠隔臓器への播種を説明する2。
  • ⚠️ が本症候群の顔である。 菌血症を経て、髄膜炎・、、を起こす32。と診断したら・眼痛を必ずする。 は数時間〜数日で不可逆な視力障害に至るため、疑えば直ちに眼科へ回す。
  • を確認する「」は簡便で広く行われているが、感度・特異度とも十分ではない。座や rmpA を標的とするのほうが正確だが、研究用途にとどまる2。

診断

治療

  • ⚠️ 抗菌薬単独では治らないことが多い。 膿瘍は被膜に囲まれ壊死物質を含むため抗菌薬の移行が制限され、長期投与とドレナージを要する2。適切な抗菌薬との併用がを高める3。
  • は腸内細菌科と嫌気性菌を覆う。(セフトリアキソンなど)+メトロニダゾール、あるいはβラクタム/の合剤が基本で、重症例・産生菌が多い地域ではなどのを選ぶ。が出たら狭域化する。
  • ドレナージはのが第一選択で、小さなの病変では、大きな病変や再貯留する病変ではが選ばれる。、壊死組織が多い、瘻孔・を伴う、経皮的に到達できない例ではを検討する。
  • 抗菌薬の期間は固定できない。 臨床像、画像上の膿瘍の縮小、微生物学的な清浄化に応じて数週から数か月に及ぶ2。ドレナージによるが十分に得られたかどうかが、期間を決める最大の因子になる。
  • の処置を並行する。胆道閉塞があれば、大腸病変があればその治療を行わなければ再発する。糖尿病のも治療の一部である。

まとめ

  • を見たら、まず細菌性かアメーバ性かを分ける。単発・右葉・無臭で褐色の「」の内容・渡航歴はアメーバ性、胆道系疾患の既往・多発・悪臭を伴う膿は細菌性を示唆する。
  • 血清は約95%で陽性になるが、発症第1週は偽陰性となり、では既往曝露で特異度が下がる。
  • 古典的なは胆道・門脈由来の二次性で。が不明なら、中年以降では大腸癌の穿通を含めて原因を探す。
  • アジアでは糖尿病患者に性・単発の膿瘍を作る Klebsiella pneumoniae 侵襲性症候群が固有の型として重要で、K1・K2 が中心となる。・髄膜炎などのが本症候群の顔であり、のを欠かさない。
  • 治療は抗菌薬とドレナージの併用が原則。膿瘍は被膜化して薬剤が届きにくく、投与期間は画像と臨床の反応で決まるため数週から数か月に及ぶ。の処置を並行しなければ再発する。

出典

  1. 1.Amebic liver abscess: An update(World Journal of Hepatology・2024)アメーバ性肝膿瘍が熱帯地域では肝膿瘍の4分の3以上を占めること、死んだ肝細胞と細胞残渣からなる非化膿性の病変であること、生殖年齢の男性に強く偏りアルコール摂取と強く関連し右葉に好発すること、ドレナージなしで治癒しうること、穿刺液が濃く褐色で無臭のアンチョビペースト様であり二次感染がなければ通常は無菌であること、抗アメーバ抗体が約95%で検出される一方で感染後5〜7日経たないと陽性化せず治癒後も6〜12か月持続するため発症第1週には偽陰性となりうるうえ流行地域では有用性が下がること、非合併例ではドレナージを要さないことが多く合併例では外科手術より経皮的治療が選ばれるようになったことを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Klebsiella pneumoniae and pyogenic liver abscess: Emerging clinical threats, virulence mechanisms and therapeutic strategies (Review)(Molecular Medicine Reports・2026)歴史的には肝膿瘍の大半が胆道閉塞や腹腔内感染に続発する二次性で多菌性であったのに対し、高病原性Klebsiella pneumoniaeによる単一菌性の肝膿瘍が1980年代の台湾で最初に認識され世界へ広がったこと、莢膜型はK1〜K80が記載されそのうちK1・K2(それぞれ配列型ST23・ST65)が肝膿瘍と転移性合併症に最も強く結びつきK5・K20・K54・K57も侵襲性感染から報告されること、これらがrmpA/rmpA2やアエロバクチン座と共存すること、転移性合併症として内因性眼内炎・髄膜炎や脳膿瘍・敗血症性肺塞栓が典型であること、糖尿病が最もよく知られた素因でほぼすべてのコホートで肝膿瘍患者の半数超が糖尿病を有すると報告されること、高粘稠性を見る「ストリング試験」は広く用いられるが感度・特異度とも十分でないこと、膿瘍が被膜化し壊死物質を含むため抗菌薬の移行が制限され長期投与とドレナージを要すること、抗菌薬の投与期間は臨床像・画像上の縮小・微生物学的な清浄化に応じて数週から数か月に及ぶことを確認した。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Klebsiella pneumoniae liver abscess: a new invasive syndrome(The Lancet Infectious Diseases・2012)過去20年にアジアで肝膿瘍を起こす特有の侵襲性症候群の報告が増え世界的な疾患として広がりつつあること、糖尿病と菌側の2つの特定の莢膜型が肝膿瘍とその後の転移性合併症(菌血症・髄膜炎・眼内炎・壊死性筋膜炎)の素因になること、適切な抗菌薬と肝膿瘍の経皮ドレナージの併用が生存率を高めることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得で、抄録には莢膜型の型名の記載は無い。閲覧 2026-09-03