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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

細気管支炎(RSウイルス)

Bronchiolitis (RSV)

別名
RSV細気管支炎Respiratory syncytial virus bronchiolitis
臓器系
感染症呼吸器
科目
Medical MicrobiologyPediatrics
トピック
微生物学 3/28:パラミクソウイルス:RSウイルス・パラインフルエンザウイルス小児科 30:閉塞性気管支炎、気管支喘息、急性声門下喉頭炎小児科 2-38:ウイルス誘発性喘鳴と気管支喘息
鑑別疾患
気管支喘息閉塞性細気管支炎
関連疾患
クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎
治療薬
パリビズマブニルセビマブクレソロビマブ
原因微生物
Respiratory syncytial virusHuman metapneumovirusHuman adenovirus
症状
呼気性喘鳴発熱鼻汁喘鳴
適応薬
クレソロビマブニルセビマブ

🧠 全体像は「生後6か月未満の乳児でという最も細い気道が、ウイルス性炎症と粘液で詰まる」という一言で理解する。原因の大半を占めるRSウイルスはに付着し、F蛋白によるで増殖しながら上皮を壊死させる——その結果、気道内腔が浮腫・粘液・壊死上皮で狭窄し、を来す。診断はのみで行い、検査や画像をルーチンに追加しないこと、そして治療の中心がでもステロイドでもなく支持療法であることが、この疾患を学ぶ上での最大のポイントである。

病原体と発症機序

RSウイルス)は・エンベロープを持つParamyxovirus科の一員で、により伝播する。表面のを介して細胞に接着し、F蛋白によるで合胞体を形成しながら増殖する——このは、ウイルスが細胞外に出ずに隣接細胞へ直接広がることでからの攻撃を回避する免疫の機序でもある。

生後6か月未満の乳児は気道径がもともと小さいため、同じ程度の炎症でもわずかなが大きなにつながりやすく、乳児の・非定型肺炎の第1位の原因となる。年長児・成人では多くが感冒として経過する。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory droplets'>飛沫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contact transmission'>接触感染</span>でRSウイルスが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway epithelium'>気道上皮</span>へ"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='G protein'>G蛋白</span>で上皮に接着"]
  B --> C["F蛋白による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='syncytium formation'>合胞体形成</span>で増殖・上皮壊死"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>の浮腫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucus plugging'>粘液栓</span>・上皮脱落"]
  D --> E["乳児:気道径が小さく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luminal narrowing'>内腔狭窄</span>が顕著"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='expiratory wheeze'>呼気性喘鳴</span>・頻呼吸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chest wall retraction (subcostal/intercostal retractions)'>陥没呼吸</span>"]
  E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='V/Q mismatch'>換気血流不均衡</span>による低酸素血症"]

臨床像

上気道炎様の・軽度発熱で発症し、1〜3日で下(頻呼吸、)へ進行する。症状は発症後2〜3日目でピークを迎え、多くは1〜2週間で自然軽快する。

所見 内容
びまん性の、fine crackles
重症化の危険因子 早産児、生後12週未満、、免疫不全、神経筋疾患
無呼吸 特に早産児・月齢の低い乳児で、喘鳴に先行して無呼吸のみが初発症状になることがある
・脱水 頻呼吸により哺乳が困難になり、経口摂取量低下から脱水を来しうる

⚠️ 月齢の低い乳児・早産児では、喘鳴がまだ目立たない段階で無呼吸が初発症状になることがある。 「喘鳴がないからではない」と除外しないこと。

診断

臨床診断が基本であり、典型例では検査・画像をルーチンに追加しない。

  • 病歴(先行する上気道炎症状、月齢、流行状況)と身体所見(頻呼吸、、fine crackles)で診断する。
  • 胸部X線は典型例では不要——・浸潤影は非特異的で、抗菌薬の不要な処方につながりやすい。
  • ウイルス抗原・PCR検査(RSV、RT-PCR、IFA、ELISA)は院内の感染対策目的()で有用なことがあるが、個々のを変えるものではない。
  • 細菌性肺炎、百日咳、心不全、異物、先天性気道奇形を鑑別に含める。

治療

治療の中心は支持療法であり、・全身ステロイドをルーチンに使用しないことが現行ガイドラインの一貫した骨子である。

対応 内容
呼吸管理 経鼻的な吸引、低酸素があれば酸素投与。中等症〜重症ではを用いることがある
水分・栄養 頻呼吸で哺乳困難ならまたはで補液する
ルーチン使用しない——個々の患者で明確な反応があれば試行的に継続を検討する程度にとどめる
全身/ ルーチン使用しない——喘息と異なりアレルギー性炎症が主体ではないため無効
吸入 効果は限定的で一律には推奨されない
抗菌薬 細菌感染の合併を疑う根拠がなければ不要
重症・免疫不全患者に限定的に検討されることがあるが、日常臨床でのルーチン適応ではない

⚠️ 入院・重症化の指標は、SpO₂低下、哺乳量50%未満、無呼吸、著明な、脱水である。 鎮静薬は呼吸抑制のリスクから避ける。

予防

かつては早産児・などの高リスク児に限定した(F蛋白を標的とする短半減期のモノクローナル抗体、シーズン中に毎月筋注)が唯一の予防手段だったが、2023年以降に承認されたモノクローナル抗体(およびそれに続くクレソロビマブ)がRSV予防の第一選択に置き換わった。

  • /クレソロビマブ:初回RSVシーズンを迎える生後8か月未満のすべての乳児に単回筋注する(高リスク児に限定しない)。体重により用量が異なる(:体重5kg未満は50mg、5kg以上は100mg。クレソロビマブは体重によらず固定105mg)。1回の投与でシーズンを通じた受動免疫が得られる点が、毎月投与が必要だったとの最大の違いである1
  • 2回目シーズンの追加免疫:生後8〜19か月で・嚢胞性線維症などの高リスク基準を満たす児には、(クレソロビマブは2回目シーズンの適応なし)を追加投与する1
  • 母体RSVワクチン:妊娠32週0日〜36週6日の妊婦への季節性接種により、した抗体でのRSV重症化を予防できる(乳児への受動免疫を出生前に前倒しする位置づけ)2
  • は高リスク児に限定的に用いられてきたが、・クレソロビマブの登場によりAAPはもはやルーチンには推奨しておらず、2025年12月31日をもって販売終了となった1

まとめ

  • RSウイルスはに接着しF蛋白でしながら増殖するParamyxovirusで、生後6か月未満の乳児での炎症・狭窄を来す非定型肺炎の第1原因である。
  • 臨床像は上気道炎症状に続く頻呼吸・で、月齢の低い乳児・早産児では無呼吸が初発症状になりうる。
  • 診断はのみで行い、典型例では胸部X線・ウイルス検査をルーチンに追加しない。
  • 治療は支持療法(酸素・補液・吸引)が中心で、・全身ステロイド・抗菌薬をルーチン使用しない。
  • 予防は/クレソロビマブが第一選択となり、初回RSVシーズンを迎えるすべての乳児に単回投与するへ移行した(は高リスク児限定の毎月投与から置き換わり、2025年末で販売終了)。

出典

  1. 1.Use of Clesrovimab for Prevention of Severe Respiratory Syncytial Virus–Associated Lower Respiratory Tract Infections in Infants: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2025(CDC Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)・2025)ニルセビマブ(体重5kg未満50mg/5kg以上100mg)とクレソロビマブ(固定105mg、初回シーズン限定)の用量・適応、および2回目シーズンはニルセビマブのみ対象であること、パリビズマブが2025年12月31日で販売終了となることを確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Maternal RSV Vaccination(American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG)・2025)母体RSVワクチン(Abrysvo)は妊娠32週0日〜36週6日の間に季節性接種として単回投与することを確認した。閲覧 2026-08-02