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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬 · 必修

パリビズマブ

palivizumab

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
シナジス
商品名(EU)
Synagis
科目
Pharmacology
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other viruses
標的微生物
Respiratory syncytial virus
自然耐性の微生物
Human metapneumovirus
対象疾患
細気管支炎(RSウイルス)常染色体劣性多発性嚢胞腎

🧠 全体像:は治療薬ではなく予防抗体である、という一点を最初に押さえる必要がある。に感染してから使う薬ではなく、シーズンの前から高リスク乳児に月1回注射して発症・重症化を防ぐという発想の薬で、抗ウイルス薬というより受動免疫に近い。長らくこの領域唯一の選択肢だったが、より半減期の長い次世代抗体の登場により、単回投与で1シーズンをカバーできる時代へ移行し、の相対的な位置づけは大きくした。

薬効群の中での位置づけ

世代 代表薬 投与形態 特徴
第一世代(モノクローナル抗体) シーズン中、月1回のを反復 半減期が比較的短く、シーズンを通した予防にはが必須
第二世代(型モノクローナル抗体) 単回で1シーズンをカバー 改変でを大幅に延長。現在の第一選択へ移行

⭐ からへの移行は「から単回投与へ」という進歩の典型例。 は有効血中濃度を保つために月1回のが必要で、対象は早産児・児・児などの高リスク群に限定されていた。は半減期を延ばすFc改変により単回投与で足りるため、対象をすべての乳児(初回シーズンを迎える健康な乳児を含む)へ拡大できたという点が臨床上の最大の違いになる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palivizumab'>パリビズマブ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='humanized monoclonal antibody'>ヒト化モノクローナル抗体</span>)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramuscular injection'>筋肉内注射</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory syncytial virus'>RSV</span>のF蛋白(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fusion protein'>膜融合蛋白</span>)の<br>特定エピトープに結合"]
    B --> C["F蛋白がウイルス-細胞膜融合に必要な<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conformational change'>構造変化</span>を起こせなくなる"]
    C --> D["ウイルスの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell entry'>細胞侵入</span>(融合・侵入)が阻害される"]
    E["血中に一定濃度の抗体が存在する間だけ予防効果が持続"] -.->|"半減期が比較的短いため"| F["月1回の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repeated administration'>反復投与</span>が必要"]

💡 F蛋白を狙う理由:F蛋白(fusion protein)はの表面蛋白のなかでも構造が比較的保存されており、株間でのの変異が少ない。の標的として安定している点で、ごとに有効性が揺らぐSARS-CoV-2のSpike抗体群とは対照的である。

適応

領域 使いどころ
高リスク乳児の(RSウイルス)予防 早産児(在胎週数による基準あり)、(など)、血行動態的に問題のあるを持つ乳幼児——米国添付文書は在胎35週以下・シーズン開始時生後6か月以下の早産児、過去6か月以内に治療を要したBPDで同24か月以下の小児、血行動態的に問題のあるで同24か月以下の小児と定義する1。の適応基準もほぼ同一だが在胎35週以下・生後6か月未満という区切りで、日数の丸め方に細かな差がある2

用法・用量

が流行するシーズンの開始前から開始し、シーズン中は月1回、体重1kgあたり15mgをでする1。実際の投与対象・用量は施設のプロトコル・添付文書、および現行の対象基準(との使い分けを含む)で確認する。

禁忌・注意

  • 過敏症以外のは少ない
  • ⚠️ 治療薬ではないため、すでに感染を発症した患者への投与は意味がない(予防目的の抗体である点を混同しない。米国添付文書も疾患の治療についての有効性・安全性は確立していないと明記する)1
  • 月1回のが必要なため、(通院の継続)が予防効果を左右する
  • ⭐ 米国では2025年12月31日をもって供給終了となり、単回投与で足りる・へ置き換わった(ももはやルーチンには推奨していない)3。一方では2026年8月時点でもが維持されており、この販売終了は米国市場に限られた動きである2。他国での取り扱いは各国のの文書で個別に確認する必要がある

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位反応
注意 発熱
重篤・まれ 過敏症反応(まれ)

まとめ

  • はのF蛋白を標的とする予防抗体であり、治療薬ではない。
  • 半減期が比較的短いため、シーズン中は月1回のが必要だった。
  • 半減期を延ばした次世代抗体の登場により単回投与で1シーズンをカバーできるようになり、対象年齢も拡大されて、現在は第一選択がへ移行している。
  • 対象は早産児・・血行動態的に問題のあるなどの高リスク乳児に限定されていた。
  • F蛋白は株間で変異が少ないため、SARS-CoV-2のSpike抗体群のような「での失効」は起こりにくい。

出典

  1. 1.SYNAGIS (palivizumab) injection, solution — Prescribing Information(Swedish Orphan Biovitrum AB (publ) / DailyMed (U.S. FDA)・2025)米国添付文書は在胎35週以下でRSVシーズン開始時に生後6か月以下の早産児、過去6か月以内に治療を要した気管支肺異形成症でRSVシーズン開始時に生後24か月以下の小児、血行動態的に問題のある先天性心疾患でRSVシーズン開始時に生後24か月以下の小児を適応とすること、用量は体重1kgあたり15mgを月1回筋肉内注射すること、RSV疾患の治療についての有効性・安全性は確立していないと明記していることを確認閲覧 2026-08-27
  2. 2.Synagis (palivizumab) — Overview / European public assessment report (EPAR)(European Medicines Agency (EMA)・2026)EUでは1999年8月13日に承認され、在胎35週以下でRSVシーズン開始時に生後6か月未満の小児、過去6か月以内にBPDの治療を要したRSVシーズン開始時に生後24か月未満の小児、血行動態的に問題のある先天性心疾患を有するRSVシーズン開始時に生後24か月未満の小児を対象とした重症下気道感染予防を適応としており、2026年8月時点でも承認状態(Authorised)が維持されていること——米国が2025年末に販売終了となるのとは対照的であることを確認閲覧 2026-08-27
  3. 3.Use of Clesrovimab for Prevention of Severe Respiratory Syncytial Virus–Associated Lower Respiratory Tract Infections in Infants: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2025(CDC Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)・2025)パリビズマブは月1回の反復投与が必要な第一世代の抗体で、単回投与でシーズンをカバーする長時間作用型モノクローナル抗体(ニルセビマブ・クレソロビマブ)の登場に伴い、米国では2025年12月31日をもって供給されなくなること、米国小児科学会はもはやパリビズマブをルーチンには推奨していないことを確認閲覧 2026-08-27