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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬 · 必修

ニルセビマブ

nirsevimab

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
ベイフォータス
商品名(EU)
Beyfortus
科目
Pharmacology
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other viruses
承認適応
細気管支炎(RSウイルス)
標的微生物
Respiratory syncytial virus
副作用
発疹注射部位反応

🧠 全体像を理解する軸は「が積み残した課題を、半減期延長という一点で解決した薬」という点にある。同じくRSVのF蛋白を標的とするモノクローナル抗体だが、にYTE変異を導入してを約71日まで延ばしたことで、RSVシーズン中の単回だけで1シーズンをカバーできる。この半減期延長が、対象を早産児・児などの高リスク群限定から、初回RSVシーズンを迎えるすべての乳児へ拡大する土台になった。

薬効群の中での位置づけ

世代 代表薬 対象 投与
第一世代 早産児・などの高リスク乳児に限定 RSVシーズン中、月1回の反復筋注
第二世代(半減期延長型) 初回RSVシーズンを迎える全乳児+2回目シーズンも重症化リスクが残る生後24か月までの小児 単回筋注(体重5kg未満50mg/5kg以上100mg、2回目シーズンは体重によらず200mg)
第二世代(別エピトープ) クレソロビマブ 初回RSVシーズンを迎える乳児のみ(2回目シーズンの適応なし) 単回筋注(体重によらず固定105mg)

「月1回の」から「単回投与」への転換が、対象年齢を高リスク児限定から全乳児へ広げた最大の理由になる。 は有効血中濃度を維持するためにが不可欠で、対象を絞らざるを得なかったが、は半減期そのものを延ばすことで、1回の注射でRSVシーズンを通じた受動免疫が成立する1。同じ半減期延長という発想を共有しつつ、標的エピトープが異なり体重によらない固定用量で使えるクレソロビマブという選択肢も同時期に登場している。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nirsevimab'>ニルセビマブ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fully human'>完全ヒト型</span>IgG1モノクローナル抗体)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramuscular injection'>筋肉内注射</span>"] --> B["RSVのF蛋白(プレフュージョン構造)の<br>特定エピトープに結合"]
    B --> C["F蛋白が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane fusion'>膜融合</span>に必要な<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conformational change'>構造変化</span>を起こせなくなる"]
    C --> D["ウイルスの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell entry'>細胞侵入</span>が阻害される"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc region'>Fc領域</span>に3つのアミノ酸置換(YTE変異)を導入"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neonatal Fc receptor, FcRn'>新生児Fc受容体</span>(FcRn)への<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='binding affinity'>結合親和性</span>が上昇"]
    F --> G["抗体が分解されずリサイクルされる"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma half-life'>血中半減期</span>が約71日まで延長"] --> I["単回投与でRSVシーズンをカバー"]

💡 YTE変異は「抗体を分解から守る仕組み」であり、抗体そのもののを強めるものではない。 F蛋白へのと同様の原理だが、FcRnを介したリサイクル効率を高めることで血中に長くとどまる——効果の強さではなくを変えた改良という理解が重要になる1

適応

領域 使いどころ
(RSウイルス)の予防 初回RSVシーズンを迎える新生児・乳児(高リスクに限定しない)1。米国ACIPは生後8か月未満を目安とする2。2回目シーズンも・嚢胞性線維症などの高リスク基準を満たす生後24か月までの小児には追加投与する1

用法・用量

初回RSVシーズン:体重5kg未満は50mg、5kg以上は100mgを単回する。2回目シーズン(高リスク児のみ):体重によらず200mg(100mgを2か所に分けて筋注)を投与する1。添付文書は生後24か月までを上限とし、米国ACIPは生後8〜19か月の高リスク児を対象基準としている2。実際の対象基準・投与時期は現行のガイドライン・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌または添加物に対する重篤な過敏症(アナフィラキシーを含む)の既往1
  • ⚠️ 治療薬ではないため、すでにRSV感染を発症した患者への投与は意味がない(予防目的の抗体である点をと同様に混同しない)
  • 単回投与で足りるため、で問題になった「」という課題自体が解消される

副作用

頻度 内容
主なもの(いずれも1%未満) 発疹(0.9%)、注射部位反応(0.3%)1
重篤・まれ 過敏症反応(アナフィラキシーを含む、まれ)

まとめ

  • はRSVのF蛋白(プレフュージョン構造)を標的とする予防抗体で、と同じ標的に作用する。
  • 最大の違いはのYTE変異によるの延長(約71日)で、これにより単回投与で1シーズンをカバーできるようになった。
  • 半減期延長という上の改良が、対象を高リスク児限定から初回RSVシーズンを迎える全乳児へ拡大する根拠になった。
  • 2回目シーズンは高リスク基準を満たす小児にのみ追加投与する。
  • 発疹・注射部位反応が主な副作用だが、いずれも1%未満と頻度は低く軽微。

出典

  1. 1.Use of Clesrovimab for Prevention of Severe Respiratory Syncytial Virus–Associated Lower Respiratory Tract Infections in Infants: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2025(CDC Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)・2025)ニルセビマブの用量(体重5kg未満50mg・5kg以上100mgの単回筋注)、2回目シーズンに高リスク児へ追加投与する対象基準、およびパリビズマブが2025年12月31日で販売終了となることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.BEYFORTUS (nirsevimab-alip) injection — Prescribing Information(Sanofi / DailyMed (U.S. FDA)・2023)2023年の米国初回承認、適応(初回RSVシーズンを迎える新生児・乳児、および2回目シーズンも重症化リスクが残る生後24か月までの小児)、2回目シーズンの用量が体重によらず200mg(100mgを2回に分けて筋注)であること、機序(RSV F蛋白のプレフュージョン構造上のエピトープを標的とし、Fc領域のYTE変異により新生児Fc受容体との結合を高めて血中半減期を約71日に延長)、主な副作用(発疹0.9%、注射部位反応0.3%)を確認した閲覧 2026-08-10