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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬

ソトロビマブ

sotrovimab

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
ゼビュディ
商品名(EU)
Xevudy
科目
Pharmacology
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other viruses
承認適応
COVID-19
標的微生物
SARS-CoV-2
副作用
インフュージョンリアクション

🧠 全体像:は/・/とは出自が異なるで、2003年のSARS流行(SARS-CoV-1)から回復した患者の血液から単離された抗体を土台にしている。狙うエピトープもRBD上の(との結合面そのもの)ではなく、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2の両方に共通する、機能上変異しにくいを選んでいる。この設計のおかげで他剤より長くOmicron初期株(BA.1)への活性を保ったが、Omicron BA.2以降(BA.4・BA.5・BQ.1.1・XBB系統)では中和に高い濃度を要するまでに感受性が低下し、によって臨床使用が大きく制限された12。米国ではが2024年12月13日に取り消され3、では2026年2月18日に販売承認が取り下げられた4。学習上は「保存エピトープを狙っても最終的には変異に追い付かれた」というの構造的限界を示す歴史的教材として位置づける。

薬効群の中での位置づけ

/・/
抗体の起源 SARS-CoV-2感染回復者 SARS-CoV-1感染回復者(2003年)
狙うエピトープ RBD上の(結合面) RBD上の保存された領域(結合面の外側)
変異への強さ 弱い(結合面は免疫で変異しやすい) やや強い(は機能維持のため変異しにくい)
Omicron BA.1への活性 消失 保持(承認当初はOmicron期の主力だった)
Omicron BA.2以降への活性 消失 消失(にも変異が及んだ)

⭐ 「保存されたエピトープを狙えば長持ちする」という仮説は部分的に正しかったが、最終的な結末は同じだった。 これはSARS-CoV-2のがを通じて極めて広範な変異を蓄積し続けたことを示しており、という戦略そのものの構造的な脆さを裏づける事例として重要。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sotrovimab'>ソトロビマブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spike protein'>スパイク蛋白</span>RBD上の<br>保存されたエピトープ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='receptor-binding motif, RBM'>受容体結合モチーフ</span>の外側)に結合"] --> B["RBDを『下向き』構造に固定し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin-converting enzyme 2'>ACE2</span>への結合を間接的に妨げる"]
    B --> C["ウイルスの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell entry'>細胞侵入</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane fusion'>膜融合</span>が阻害される"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc region'>Fc領域</span>を介した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effector function'>エフェクター機能</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antibody-dependent cellular cytotoxicity'>ADCC</span>等)も動員される"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc region'>Fc領域</span>へのLS改変<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neonatal Fc receptor'>FcRn</span>との結合を高める変異)"] --> F["半減期を延長し、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway mucosa'>気道粘膜</span>・肺組織への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetration'>移行性</span>を高める"]

狙うエピトープはSARS-CoV-1とSARS-CoV-2に共通するで、そのものを直接ふさぐのではなく、RBDの構造を「下向き」(と結合できない状態)に固定することで間接的に感染を防ぐ。加えてを介した(等)も併せ持つ。この設計は/のような「を直接ふさぐ」設計より変異への耐性が高いはずだったが、そのものにも変異が及べば同様に無効化されるという限界を最終的に露呈した。

もう一つの特徴的な設計がのLS改変(との結合を高める変異)で、()によるリサイクル経路を活用して半減期を延長し、・肺組織へのを高める狙いがあった5。単回投与で効果を発揮する設計はこの改変に支えられている。

適応

軽症〜中等症のCOVID-19で重症化リスクを持つ患者への早期治療薬として、米国では2021年5月26日に(EUA 100)、では2021年12月17日に販売承認、日本では2021年9月27日に特例承認を受けた64。しかしOmicron BA.2の出現後は感受性が低下し、によって臨床使用が大きく制限された12。のliving guidelineは現行版(2025年8月)でも非重症に対する使用を、リスク層別を置かずに強い反対推奨としている7。

規制上の経過を段階ごとに分ける

⚠️ 「使えなくなった」には少なくとも3つの別々の段階があり、日付も理由も違う。 ひとまとめにすると、変異による無効化がそのまま許可の取消しだったように読めてしまう。

段階 地域 時点 何が起きたか 理由
使用の停止 米国 2022年4月5日 EUAの枠は残したまま、全米で使用を停止 オミクロンBA.2株の流行に効果が期待できないため6
推奨の撤回 米国・カナダ(オンタリオ州)・ 2022年4月上旬〜 治療推奨からの撤回、は強い反対推奨 BA.2の中和に比で約50倍の力価を要するなどの感受性低下27
許可・承認の消滅 米国 2024年12月13日 EUA 100の取消し(revocation) GSKの申請による。EUAに基づき製造・表示・流通した全ロットが有効期限切れで、今後米国で提供する意図がないため3
同上 2026年2月18日 欧州委員会による販売承認の取下げ 販売承認取得者の申請による。商業上の理由で販売を恒久的に中止するため4

💡 最後の2段は「効かないから取り消した」ではない。 が挙げた根拠条項はFD&C法564(g)(2)(C)(上の保護のために取消しが適切)で、564(g)(2)(B)(許可の要件を満たさなくなった)ではない3。感受性の低下で使われなくなった結果として在庫が失効し、企業が自ら取消しを申請した、という順序である。同じ日に/(REGEN-COV)・・EVUSHELD(チキサゲビマブ/シルガビマブ)のEUAも同じ理由で取り消された3。

⚠️ 日本の特例承認については、本ノートは現況を確かめられていない。 2021年9月27日の特例承認(販売開始2021年9月29日)は厚生労働省の資料で確認できるが6、その承認が現在も有効かを述べた公的文書には到達できていない。「どの国でも承認されていない」とは書けない——確認できたのは米国と欧州の2極である。

非重症の患者について、の現行版は入院に至るリスクで3層に分けている——/は高リスク群に強い推奨(使用する方向)、群に条件付き推奨(使用する方向)、低リスク群には条件付き推奨(使用しない方向)である。は高リスク群に条件付き推奨(使用する方向)にとどまる7。を含むは(EUA)や特例承認という枠組みで一時的に使えるようになったに過ぎず、ワクチンによるや通常の審査を経た抗ウイルス薬とは位置づけが異なる点も混同しないよう注意する。

用法・用量

単回の(一部地域ではも承認された)。米国のEUAも欧州の販売承認も既に消滅しており34、は非重症に対して強い反対推奨を出している7ので、実際に投与を検討する場面はない。学習上は「単回投与で完結する」の投与形態の一例として位置づける。

禁忌・注意

他のと同様、のような臓器毒性・薬物相互作用の問題は少ない。過去に投与が行われていた時期も、は投与時点の流行株次第であり、感受性データを確認せず投与すれば無効な治療になるリスクが最大の注意点だった。

副作用

過敏症・に注意する。まれにアナフィラキシー様の重篤な反応も報告されており、両者は初発時の臨床像が重なるため、気道・呼吸・循環を優先する初期対応は共通する。

まとめ

  • はSARS-CoV-1回復者由来の抗体で、RBD上の保存されたエピトープ(の外側)を標的とし、RBDを「下向き」構造に固定して間接的に結合を妨げる。のLS改変によるも特徴的である。
  • を狙う設計により、Omicron初期株(BA.1)へは他剤より長く活性を保った。
  • しかしOmicron BA.2以降の(BA.4・BA.5・BQ.1.1・XBB系統)では in vitro の感受性が低下して中和に高い濃度を要するようになり1、は2022年3月から順次EUAの適用地域を除外したうえで、2022年4月5日に全米で使用を停止した6。は現行版(2025年8月)でも非重症患者への使用を強い反対推奨としている7。
  • ⚠️ 「使用の停止」「推奨の撤回」「許可・承認の消滅」は別の出来事である。 米国のEUAが取り消されたのは2024年12月13日、の販売承認が取り下げられたのは2026年2月18日で、いずれも企業の申請による在庫失効・販売中止が理由であり、変異による無効化そのものを根拠条項にしたものではない34。日本の特例承認(2021年9月27日)の現況は本ノートでは確認できていない6。
  • 重症化リスクの高い非入院患者について、は/を高リスク群に強い推奨・群に条件付き推奨とし、は高リスク群に条件付き推奨としている7。
  • 「保存エピトープ戦略」も万能ではなかったことは、全体の変異の広がりの大きさを物語る歴史的教材として位置づける。

出典

  1. 1.The Shifting Paradigm of Monoclonal Antibodies in COVID-19 Management: From Early Triumphs to Viral Resistance and Future Perspectives(Antibodies (Basel)・2026)ベブテロビマブがBA.2流行期に迅速な経路で認可されたこと、K444T・N460Kなどの変異を持つBQ.1・BQ.1.1亜系統の台頭によりベブテロビマブの結合能・中和活性が著しく低下したこと、ソトロビマブはBA.2以降(BA.4・BA.5・BQ.1.1・XBB系統)で感受性が低下して中和に高い濃度を要するようになり、規制当局によって臨床使用が大きく制限されたことを、Europe PMC の全文(PMC13295941)で確認した。⚠️ ベブテロビマブについて本総説は逐語で which led to withdrawal of its authorization by late 2022 と書くが、FDA自身の官報告示ではEUA 111の取消しは2024年12月13日である(→ fda-eua-revocation-covid-mabs-2025)。総説の年次はそのままでは規制上の事実と一致しない閲覧 2026-08-25
  2. 2.Evaluating in vivo effectiveness of sotrovimab for the treatment of Omicron subvariant BA.2 versus BA.1: a multicentre, retrospective cohort study(BMC Research Notes・2024)米国およびカナダ(オンタリオ州)では2022年4月上旬までにソトロビマブの治療推奨が撤回されたこと、BA.2に対する中和には野生株比で約50倍高い力価を要したことを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Revocation of Emergency Use of a Drug Product During the COVID-19 Pandemic; Availability(U.S. Food and Drug Administration(Federal Register 90 FR 35685)・2025)官報告示の全文を取得して確認した。FDAは2024年12月13日にREGEN-COV(EUA 091)・ソトロビマブ(EUA 100)・EVUSHELD(EUA 104)・ベブテロビマブ(EUA 111)の4件の緊急使用許可を取り消した。ソトロビマブはGSKが2024年11月22日に、ベブテロビマブはLillyが2024年12月5日に取消しを申請したもので、理由はいずれも逐語で all lots ... have expired, and that [企業] does not intend to offer this product in the United States anymore である。根拠条項は FD&C Act 564(g)(2)(C)(公衆衛生上の保護のために取消しが適切)であって、564(g)(2)(B)(許可の要件を満たさなくなった)ではない閲覧 2026-09-17
  4. 4.Xevudy(European Medicines Agency・2026)EMAの製品ページの状態表示が Withdrawn(この医薬品の承認は取り下げられた、の意)であること、欧州委員会が2026年2月18日にXevudy(ソトロビマブ)のEU販売承認を取り下げたこと、取下げが販売承認取得者 GlaxoSmithKline Trading Services Limited の申請によるもので理由が商業上の理由による販売の恒久的中止であること、2021年12月17日にCOVID-19の治療として承認され当初5年間有効であったことを確認した閲覧 2026-09-17
  5. 5.In vivo biodistribution and pharmacokinetics of sotrovimab, a SARS-CoV-2 monoclonal antibody, in healthy cynomolgus monkeys(European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging・2023)ソトロビマブのFc領域に加えられたLS改変(FcRn結合を高める変異)が半減期延長と気道粘膜・肺組織への移行性向上に寄与することを確認した。閲覧 2026-08-03
  6. 6.医薬品等行政評価・監視委員会における海外調査(個別医薬品の欧米での承認状況)第25回 資料4(厚生労働省 医薬品等行政評価・監視委員会・2026)2026年9月17日付の資料でゼビュディ点滴静注液500mg(ソトロビマブ(遺伝子組換え))が調査対象品目R3-12として掲げられ、国内承認日2021年9月27日(特例承認)・国内発売日2021年9月29日と記載されていること、米国欄が2021年5月26日EUA発行・2024年12月13日EUA失効とし、備考に逐語で「2022/4/5に、オミクロンBA.2株の流行に効果が期待できないとして、全米でのEUAを停止。」と書かれていることを確認した。⚠️ EMA欄は最終調査日2022年7月25日で調査完了扱いのため、2026年2月18日のEU販売承認取下げは反映されていない。この資料は海外の承認状況の調査であって、国内の承認が現在も有効かどうかを述べた文書ではない閲覧 2026-09-17
  7. 7.Therapeutics and COVID-19: living guideline, August 2025(World Health Organization・2025)現行版(198頁)の全文を取得して確認した。ソトロビマブの推奨はリスク層別を置かず非重症COVID-19全体に対して We recommend against treatment with sotrovimab (strong recommendation against) であり、13 Jan 2023 の改訂内容がそのまま維持されている。ニルマトレルビル・リトナビルは入院高リスク群に強い推奨(使用する方向)、中等度リスク群に条件付き推奨(使用する方向)、低リスク群に条件付き推奨(使用しない方向)と3層に分かれ、レムデシビルは高リスク群に条件付き推奨(使用する方向)である。カシリビマブ・イムデビマブも強い反対推奨閲覧 2026-09-17