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Drug Atlas · C5 Antivirals / 抗ウイルス薬

ソトロビマブ

sotrovimab

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
ゼビュディ
商品名(EU)
Xevudy
科目
Pharmacology
トピック
C5: Agents to treat Herpes simplex (HSV), varicella-zoster (VZV), cytomegalovirus (CMV). Anti-influenza agents. Drugs against Corona- and other viruses
承認適応
COVID-19
標的微生物
SARS-CoV-2
副作用
インフュージョンリアクション

🧠 全体像//とは出自が異なるで、2003年のSARS流行(SARS-CoV-1)から回復した患者の血液から単離された抗体を土台にしている。狙うエピトープもRBD上の(ACE2との結合面そのもの)ではなく、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2の両方に共通する、機能上変異しにくいを選んでいる。この設計のおかげで他剤より長くOmicron初期株(BA.1)への活性を保ったが、Omicron BA.2に対しては中和にの約50倍高い力価を要するまでに活性が低下し、FDAは2022年3月からBA.2優勢地域でEUAの適用を順次除外、2022年4月上旬までに全米で使用が中止された12現在を承認・推奨している国はなく、学習上は「保存エピトープを狙っても最終的には変異に追い付かれた」というの構造的限界を示す歴史的教材として位置づける。

薬効群の中での位置づけ

//
抗体の起源 SARS-CoV-2感染回復者 SARS-CoV-1感染回復者(2003年)
狙うエピトープ RBD上の(ACE2結合面) RBD上の保存された領域(ACE2結合面の外側)
変異への強さ 弱い(結合面は免疫で変異しやすい) やや強いは機能維持のため変異しにくい)
Omicron BA.1への活性 消失 保持(承認当初はOmicron期の主力だった)
Omicron BA.2以降への活性 消失 消失にも変異が及んだ)

「保存されたエピトープを狙えば長持ちする」という仮説は部分的に正しかったが、最終的な結末は同じだった。 これはSARS-CoV-2のを通じて極めて広範な変異を蓄積し続けたことを示しており、という戦略そのものの構造的な脆さを裏づける事例として重要。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sotrovimab'>ソトロビマブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spike protein'>スパイク蛋白</span>RBD上の<br>保存されたエピトープ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='receptor-binding motif, RBM'>受容体結合モチーフ</span>の外側)に結合"] --> B["RBDを『下向き』構造に固定し<br>ACE2への結合を間接的に妨げる"]
    B --> C["ウイルスの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell entry'>細胞侵入</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane fusion'>膜融合</span>が阻害される"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc region'>Fc領域</span>を介した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effector function'>エフェクター機能</span><br>(ADCC等)も動員される"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fc region'>Fc領域</span>へのLS改変<br>(FcRnとの結合を高める変異)"] --> F["半減期を延長し、<br>気道粘膜・肺組織への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetration'>移行性</span>を高める"]

狙うエピトープはSARS-CoV-1とSARS-CoV-2に共通するで、そのものを直接ふさぐのではなく、RBDの構造を「下向き」(ACE2と結合できない状態)に固定することで間接的に感染を防ぐ。加えてを介した(ADCC等)も併せ持つ。この設計は/のような「を直接ふさぐ」設計より変異への耐性が高いはずだったが、そのものにも変異が及べば同様に無効化されるという限界を最終的に露呈した。

もう一つの特徴的な設計がのLS改変(FcRnとの結合を高める変異)で、(FcRn)によるリサイクル経路を活用して半減期を延長し、気道粘膜・肺組織へのを高める狙いがあった3。単回投与で効果を発揮する設計はこの改変に支えられている。

適応

軽症〜中等症のCOVID-19で重症化リスクを持つ患者への早期治療薬として2021年にを取得したが、Omicron BA.2の出現後、FDAは2022年3月からBA.2優勢地域でEUAの適用を順次除外し、2022年4月上旬までに全米で使用が停止された12。WHOのliving guidelineも非重症COVID-19患者への使用を「強く推奨しない」としている4

⚠️ 現在が使用可能な適応は実質的に存在しない。 重症化リスクの高い非入院患者の現行の第一選択はで、代替としてが用いられる4を含むという枠組みで一時的に承認されたに過ぎず、ワクチンによるや正式承認された抗ウイルス薬とは位置づけが異なる点も混同しないよう注意する。

用法・用量

単回の(一部地域ではも承認)。前述の通り現在はいずれの流行株に対しても推奨されておらず、実際に投与される場面はない。 学習上は「単回投与で完結する」の投与形態の一例として位置づける。

禁忌・注意

他のと同様、のような臓器毒性・薬物相互作用の問題は少ない。過去に投与が行われていた時期も、は投与時点の流行株次第であり、感受性データを確認せず投与すれば無効な治療になるリスクが最大の注意点だった。

副作用

過敏症・に注意する。まれにアナフィラキシー様の重篤な反応も報告されており、両者は初発時の臨床像が重なるため、気道・呼吸・循環を優先する初期対応は共通する。

まとめ

  • はSARS-CoV-1回復者由来の抗体で、RBD上の保存されたエピトープ(の外側)を標的とし、RBDを「下向き」構造に固定して間接的にACE2結合を妨げる。のLS改変による半減期延長も特徴的である。
  • を狙う設計により、Omicron初期株(BA.1)へは他剤より長く活性を保った。
  • しかしOmicron BA.2以降のでは活性を失い、FDAは2022年3月から順次EUAの適用地域を除外して2022年4月上旬までに全米で使用を停止した。WHOも非重症COVID-19患者への使用を強く推奨しないとしている。
  • ⚠️ 現在を承認・推奨している国はない。 重症化リスクの高い非入院患者の現行の第一選択は(代替は)である。
  • 「保存エピトープ戦略」も万能ではなかったことは、全体の変異の広がりの大きさを物語る歴史的教材として位置づける。

出典

  1. 1.FDA Updates Sotrovimab Emergency Use Authorization(U.S. Food and Drug Administration・2022)Omicron BA.2亜系統に対して承認用量の有効性が見込めないとして、FDAが2022年3月からBA.2優勢地域を対象にソトロビマブのEUA適用地域を順次除外していったことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Evaluating in vivo effectiveness of sotrovimab for the treatment of Omicron subvariant BA.2 versus BA.1: a multicentre, retrospective cohort study(BMC Research Notes・2024)米国およびカナダ(オンタリオ州)では2022年4月上旬までにソトロビマブの治療推奨が撤回されたこと、BA.2に対する中和には野生株比で約50倍高い力価を要したことを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Therapeutics and COVID-19: living guideline(World Health Organization・2023)WHOが非重症COVID-19患者へのソトロビマブおよびカシリビマブ/イムデビマブの使用を「強く推奨しない」としたこと、非重症の最高リスク患者にはニルマトレルビル・リトナビルを推奨していることを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.In vivo biodistribution and pharmacokinetics of sotrovimab, a SARS-CoV-2 monoclonal antibody, in healthy cynomolgus monkeys(European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging・2023)ソトロビマブのFc領域に加えられたLS改変(FcRn結合を高める変異)が半減期延長と気道粘膜・肺組織への移行性向上に寄与することを確認した。閲覧 2026-08-03