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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

閉塞性細気管支炎

Bronchiolitis obliterans

別名
obliterative bronchiolitis
臓器系
呼吸器免疫・膠原病
科目
PulmonologyInternal Medicine
トピック
呼吸器内科 19:肺移植内科学 H-34:同種造血幹細胞移植内科学 S-45:自家・同種造血幹細胞移植
鑑別疾患
器質化肺炎細気管支炎(RSウイルス)
治療薬
アキサチリマブフルチカゾンアジスロマイシンモンテルカスト
症状
労作時呼吸困難咳嗽
検査値
スパイロメトリー
元疾患
移植片対宿主病

🧠 全体像は「という最も細い気道が瘢痕性に狭窄・閉塞し、二度と広がらない」という一言で捉える。急性の炎症ではなく線維化による不可逆的なであり、いったん成立するとにもステロイドにも乏しくしか反応しない点が、多くのと一線を画す。後の慢性GVHD・後の慢性拒絶という2つの移植関連の文脈が最も代表的だが、・吸入・小児のウイルス感染後にも起こりうる、単一の病名ではなく複数の原因が同じ)に収束する病態である。

細気管支炎(RSウイルス)器質化肺炎との違い

⚠️ 名前が似た2つの疾患と混同しない。

  • (RSウイルス)は、生後6か月未満の乳児に多いRSウイルスなどによる急性の感染症で、多くは1〜2週間で自然軽快する。本ノートが扱うは、という不可逆的な病態であり、乳児の急性とはも予後もまったく異なる。
  • はかつて「を伴う(BOOP)」と呼ばれていたが、病態の主体は肺胞・を埋める器質化であり、の換気障害と・浸潤影を呈し、ステロイドによく反応する。この名称に含まれる「」は付随的な所見にすぎず、本ノートが扱う閉塞性とは呼吸機能障害の型( vs 閉塞性)も治療反応性も正反対であるため、現在はBOOPという呼称自体が使われなくなっている。

病態

の炎症性線維化により内腔が求心性に狭窄・閉塞し、不可逆的なを来す1。この線維化は一度成立するとにもステロイドにも乏しくしか反応せず、進行を止めることはできても失われた気道内腔を取り戻すことはできない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>上皮の傷害"] --> B{"背景にある機序"}
    B -->|"慢性GVHD"| C["ドナー<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune cell'>免疫細胞</span>による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>上皮への持続的な攻撃"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung transplantation'>肺移植</span>後慢性拒絶"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allograft'>同種移植</span>免疫応答による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>上皮への持続的な攻撃"]
    B -->|"吸入<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toxic substance'>毒性物質</span>・感染後・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='connective tissue disease (collagen vascular disease)'>膠原病</span>"| E["直接傷害または自己免疫的な炎症"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>の炎症性線維化"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["内腔の求心性狭窄・閉塞"]
    G --> H["不可逆的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructive ventilatory defect'>閉塞性換気障害</span>"]

原因

背景 特徴
後の慢性GVHD 肺は慢性GVHDの中でを反映して特別に重く扱われる臓器で、生検で確認されたはそれ単独で慢性GVHDの診断を確定できる所見()である2
後の のうち、閉塞性の表現型として現れる型。とは対をなす
関節リウマチ、など1
吸入曝露 ジアセチル(ポップコーン香料)、硫黄マスタード、窒素酸化物、フライアッシュ、グラスファイバーなど1
感染後 ・RSウイルスなどの感染後、特に小児で報告される1

臨床像・診断

数週〜数か月かけて進行する持続性の咳嗽が主症状で、喘息のような発作性の経過を取らない点が特徴である1ではを認めることがあるが、喘鳴を欠くことも多い。

では、FEV1低下を伴うのパターンを示す1。移植後の経過観察では、なFEV1低下そのものが早期発見の手がかりになる。

画像では呼気時CTでモザイク状の吸収値低下・を認める1。持続性の肺陰影(浸潤影・)を伴わないことが、など他の移植後肺合併症との鑑別点になる。

⚠️ 移植後の患者で、生検を伴わない臨床診断としての後の診断や、慢性GVHDにおける肺のとしての所見)は、単独では確定診断にならない。 慢性GVHDの文脈では、他臓器に慢性GVHDに特徴的な所見が存在するときに限って、臨床診断としてのが診断的な意味を持つ2

治療

原因により肢は限られ、多くは対症療法(吸入など)にとどまる1

  • 慢性GVHDに伴う:全身免疫抑制の強化に加え、アジスロマイシン(FAM療法)とステロイドパルスの併用が、新規発症例の肺機能低下を抑え全身ステロイド量を減らす選択肢として報告されている(3か月時点の率6% vs 歴史的対照40%)3。既存治療に抵抗する慢性GVHDでは、を標的とするなど、線維化フェーズを狙う新規治療も選択肢に加わっている。
  • 後の:免疫抑制の調整、アジスロマイシンの長期投与などが試みられるが、進行を完全に止める治療は確立していない。
  • 吸入・感染後からの隔離、感染症治療に加え、症状に応じたなどの支持療法が中心となる。

⭐ いずれの背景でも、一度成立すると失われた気道機能を取り戻せないため、治療の主眼は進行を止めること、そして移植後患者では定期的なによる早期発見に置かれる。

まとめ

  • の炎症性線維化による不可逆的なで、急性のRSウイルス(旧称BOOP)とはいずれも別の病態である。
  • 代表的な背景は後の慢性GVHDと後のだが、・吸入・小児のウイルス感染後にも起こる。
  • 臨床像は数週〜数か月かけて進行する・咳嗽で、で閉塞性パターン、呼気時CTでモザイク状吸収値低下・を認める。
  • 慢性GVHDでは、生検確認例だけが単独でとなり、生検を伴わない臨床診断は他臓器のを伴って初めて診断的意味を持つ。
  • 治療は原因治療とFAM療法などの対症療法が中心で、失われた気道機能は取り戻せないため進行を止めることと早期発見が主眼になる。

出典

  1. 1.Bronchiolitis Obliterans(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)閉塞性細気管支炎の病態が細気管支の炎症性線維化による内腔の求心性狭窄であり不可逆的な閉塞性換気障害を来すこと、肺移植・造血幹細胞移植後が最も頻度の高い非感染性合併症であること、原因が吸入毒性物質(ジアセチルなど)・自己免疫疾患(関節リウマチ・全身性エリテマトーデスなど)・小児を中心とするウイルス感染後(アデノウイルス・RSウイルス)にも及ぶこと、臨床像が数週〜数か月かけて進行する持続性の労作時呼吸困難・咳嗽であり喘息と異なり発作性ではないこと、呼吸機能検査でFEV1低下を伴う閉塞性パターンを示すこと、呼気時CTでモザイク状の吸収値低下・エアトラッピングを認めること、原因により治療選択肢が限られ吸入気管支拡張薬などの対症療法にとどまることが多いことを確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.National Institutes of Health Consensus Development Project on Criteria for Clinical Trials in Chronic Graft-versus-Host Disease: I. The 2014 Diagnosis and Staging Working Group Report(NIH Consensus Development Project(Biology of Blood and Marrow Transplantation誌)・2015)慢性GVHDの肺病変で、生検により確認された閉塞性細気管支炎がそれ単独で慢性GVHDの診断を確定できる「診断的所見」に位置づけられる一方、生検を伴わない臨床診断としての閉塞性細気管支炎は他臓器に特徴的所見があるときに限り診断的に扱われること、胸部CTでのエアトラッピング・気管支拡張が「特徴的所見」に位置づけられること、重症度スコアでは肺だけが罹患臓器数によらず特別扱いされ肺score 1のみで全身「中等症」・score 2以上で「重症」となることを確認した。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Fluticasone, Azithromycin, and Montelukast Treatment for New-Onset Bronchiolitis Obliterans Syndrome after Hematopoietic Cell Transplantation(Biology of Blood and Marrow Transplantation・2016)造血幹細胞移植後の新規発症閉塞性細気管支炎症候群36例を対象とした第II相単群多施設試験の抄録から、フルチカゾン・アジスロマイシン・モンテルカスト(FAM)とステロイドパルス併用により3か月時点の治療失敗率(FEV1の10%以上低下)が6%(2/36)と歴史的対照の40%より低かったこと(P<.001)、評価可能例の48%で3か月時点のステロイド用量を50%以上減量できたことを確認した。閲覧 2026-08-12