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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

慢性肺移植片機能不全

Chronic lung allograft dysfunction

別名
CLAD
臓器系
呼吸器
科目
Pulmonology and Thoracic SurgeryInternal Medicine
トピック
呼吸器内科 19:肺移植内科学 S-45:自家・同種造血幹細胞移植
治療薬
アジスロマイシンタクロリムス
症状
労作時呼吸困難咳嗽
検査値
スパイロメトリー
画像所見
すりガラス影
下位分類
閉塞性細気管支炎

🧠 全体像:(CLAD)は、「を受けた患者に、移植後3か月以降、持続的な肺機能低下が生じたとき」に使う傘(アンブレラ)用語である。単一の病気ではなく、気道側が壊れる閉塞性の表現型(、臨床的にはと呼ばれる)と、肺実質・胸膜側が壊れるの表現型(、RAS)という、性質の異なる2つのパターンを束ねている。⭐ とRASは対をなす——閉塞性かか、可逆か不可逆か、予後が相対的に良いか悪いかが、ほぼ鏡合わせになる。

定義

CLADのは、ベースライン(術後の最良2回の測定値の平均、3週間以上間隔を空けて測定)と比較してが持続的に20%以上低下することである1。急性の可逆的な原因(感染・・胸水など)を除外したうえで、移植後3か月を超えて生じた肺機能低下に対して用いる1。

表現型

CLADと確定した患者は、表現型ごとに分類される。

表現型 換気パターン 主な基準・特徴
() 閉塞性 の持続的20%以上低下。の瘢痕性線維化。・進行性2
(RAS) 基準に加え、TLCがベースラインから10%以上低下し、胸部画像で持続する・浸潤影などの陰影を伴う。優位の胸膜実質線維弾性症を特徴とし、CLADの約30%を占める12
好中球性可逆性機能障害 主に閉塞性 アジスロマイシンに反応しうる可逆性の病態で、との鑑別が重要2
混合型 閉塞性+ が確立したのちにRASが加わるなど、両方の性質を併せ持つ1

⚠️ RASとは名前が似ているが対照的な病態である。 RASは胸部画像の陰影を伴うで優位の線維化を来す一方、は画像上は目立つ陰影を伴わないにとどまる(のノートも参照)。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung transplantation'>肺移植</span>後3か月以降に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='forced expiratory volume in one second'>FEV1</span>が<br>ベースラインから持続的に20%以上低下"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic lung allograft dysfunction'>慢性肺移植片機能不全</span>(CLAD)と確定"]
    B --> C{"表現型を判定"}
    C -->|"閉塞性のみ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiolitis obliterans syndrome'>BOS</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiolitis obliterans syndrome'>閉塞性細気管支炎症候群</span>)"]
    C -->|"TLC10%以上低下+<br>持続する陰影を伴う"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restrictive allograft syndrome'>拘束性同種移植片症候群</span>(RAS)"]
    C -->|"両方の性質"| F["混合型"]
    C -->|"アジスロマイシンに反応"| G["好中球性可逆性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='graft'>移植片</span>機能障害"]

危険因子

確定的な危険因子は急性細胞性・リンパ球性気管支炎・の非遵守である。潜在的な危険因子として感染・高齢ドナー・長時間の虚血時間が挙げられる2。RASに特化した危険因子としては、(DSA)や症も報告されており、⭐ とRASは多くの危険因子を共有する1。

治療の限界

⚠️ CLADは基本的に不可逆的で、確立した治療法がない。 に対してはアジスロマイシン(250 mg/日を5日間投与し、その後250 mgを週3回へ切り替えて少なくとも3か月継続)と、への変更など免疫抑制の調整が試みられるが、進行を完全に止める治療は確立していない。長期生存のための唯一の選択肢は再移植である2。

⚠️ RASの治療エビデンスはよりさらに乏しい。 と同様の治療戦略が用いられるものの反応率は低く、再移植後の成績もより不良である12。

一方、好中球性可逆性機能障害は名前のとおり可逆性があり、アジスロマイシンなどの適切な治療に反応しうる点でと一線を画す2。

まとめ

  • CLADは、後3か月以降にがベースラインから持続的20%以上低下した状態を指す傘用語で、(閉塞性)と(RAS)という対照的な2表現型、および混合型・好中球性可逆性機能障害を含む。
  • RASはの基準に加えTLC10%以上低下と持続する胸部陰影を要し、優位の線維化を特徴とする。CLADの約30%を占め、より予後不良である。
  • 危険因子は急性・リンパ球性気管支炎・の非遵守などとRASで多くが共有される。
  • ⚠️ いずれの表現型も確立した治療法に乏しく基本的に不可逆的で、長期生存の柱は再移植である。可逆性を持つのは好中球性可逆性機能障害のみ。

出典

  1. 1.Chronic lung allograft dysfunction: Definition and update of restrictive allograft syndrome—A consensus report from the Pulmonary Council of the ISHLT(International Society for Heart and Lung Transplantation (ISHLT) Pulmonary Council / The Journal of Heart and Lung Transplantation・2019)PDFを自分で取得し全文を確認した。慢性肺移植片機能不全(CLAD)の一般的な診断基準がベースライン(術後の最良2回のFEV1測定値の平均、3週間以上間隔を空けて測定)と比較してFEV1が持続的に20%以上低下することであること、拘束性同種移植片症候群(RAS)はこれに加えベースラインと比較してTLCが10%以上低下し胸部画像で持続する陰影(すりガラス影・浸潤影など)を伴う場合に診断されること、BOS確立後にRASが生じる混合型表現型が存在すること、RASの危険因子として急性細胞性拒絶反応・リンパ球性気管支炎・慢性感染症・ドナー特異的抗体(DSA)が挙げられBOSと危険因子を一部共有すること、RASの治療に関する頑健なエビデンスが乏しく転帰はBOSより一貫して不良であることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Lung Transplant Rejection(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)慢性肺移植片機能不全に閉塞性の気管支細気管支炎症候群(BOS)・好中球性可逆性移植片機能障害・拘束性の同種移植片症候群(RAS、CLADの約30%を占め上葉優位の胸膜実質線維弾性症を特徴とする)の3表現型があること、BOSがFEV1の持続的20%以上低下を伴う不可逆性・進行性の閉塞性パターンであるのに対し好中球性可逆性移植片機能障害はアジスロマイシンに反応しうる可逆性の病態であること、確定的な危険因子が急性拒絶反応・リンパ球性気管支炎・免疫抑制薬の非遵守であり潜在的危険因子にサイトメガロウイルス感染・高齢ドナー・長時間の虚血時間があること、BOSの治療がアジスロマイシン250 mg/日を5日間その後250 mgを週3回へ切り替え少なくとも3か月継続する方法とシクロスポリンからタクロリムスへの変更などの免疫抑制調整であり基本的に不可逆的で再移植が唯一の長期生存手段であること、RASはBOSと同様の治療戦略をとるが反応率が低く再移植後の成績もBOSより不良であることを確認した。閲覧 2026-09-06