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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

慢性血栓塞栓性肺疾患

Chronic thromboembolic pulmonary disease

別名
CTEPDCTEPD without pulmonary hypertension
臓器系
呼吸器循環器
科目
Pulmonology and Thoracic Surgery
トピック
呼吸器内科 42:肺高血圧症呼吸器内科 41:肺塞栓症
鑑別疾患
慢性血栓塞栓性肺高血圧症
治療薬
ワルファリン
症状
労作時呼吸困難
画像所見
換気血流シンチグラフィ

🧠 全体像:(CTEPD)は、後に血栓が器質化・線維化して肺動脈内に残存する病態を指す包括的な概念で、安静時の肺高血圧の有無で2つに分かれる。安静時肺高血圧(20 mmHg超)を伴えばCTEPH、伴わなければ「CTEPD without PH」と呼ぶ——⚠️ 両者は別実体ではなく、同じ血栓塞栓性病変の重症度スペクトラムを、安静時の血行動態という1本の線で二分したものである。CTEPD without PHでもなどの症状は生じ、運動時には異常な上昇を示しうる。

定義:CTEPHとの関係を血行動態で切り分ける

2022年/ガイドラインは、少なくとも3か月の抗凝固後も血栓塞栓性病変が器質化・線維化して残存する病態をCTEPDと定義する1。この中で、安静時肺高血圧(20 mmHg超)を満たすものがCTEPH、満たさないものがCTEPD without PHである1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pulmonary thromboembolism'>急性肺血栓塞栓症</span>"] --> B["少なくとも3か月の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic'>治療的</span>抗凝固"]
    B --> C{"血栓塞栓性病変が<br>器質化・線維化して残存するか"}
    C -->|"いいえ:完全に溶解・吸収"| D["治癒(CTEPD/CTEPHへ進行しない)"]
    C -->|"はい:残存"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic thromboembolic pulmonary disease'>慢性血栓塞栓性肺疾患</span>(CTEPD)"]
    E --> F{"安静時肺高血圧<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mean pulmonary arterial pressure'>平均肺動脈圧</span>20 mmHg超)があるか"}
    F -->|"なし"| G["CTEPD without PH<br>(労作時症状・運動時PHはありうる)"]
    F -->|"あり"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic thromboembolic pulmonary hypertension'>慢性血栓塞栓性肺高血圧症</span>(CTEPH)"]

⚠️ 「CTEPD without PHだから軽症で放置してよい」と読まない。 安静時の血行動態が正常でも、運動時には–血流関係の傾きが増大するなど異常な反応を示しうるため、症状は説明できる。CTEPDという呼び名は、CTEPHという確立した重症型に「まだ至っていない、あるいは至らない」一群を切り出して研究・管理の対象にするために導入された概念である。

画像所見:器質化血栓に特徴的なパターン

(CTPA)では、肺動脈内の血栓が線維性にリモデリングして恒久的なを来したことを示す、特徴的な所見がみられる2。

所見 内容2
の輪状の狭小化
ウェブ病変 内腔を部分的に閉塞する線維性の膜様構造
内腔がほぼ閉塞しわずかな血流のみ残る病変
器質化した線維性物質による血管の完全な閉塞
に伴い血管が屈曲・する所見

これらはでの型とあわせて評価され、少なくとも3か月の抗凝固後もこれらの所見が残存することが、急性期の血栓と器質化した慢性病変を区別する目安になる1。

症候

患者は、の低下、の程度に応じた機能制限を呈する2。安静時には肺高血圧の血行動態基準を満たさないため、通常の心エコー・安静時だけでは異常を捉えにくく、症状が先行して画像所見が追いつくという経過をたどることが多い。

治療:PEA・BPAはIIa-C、エビデンスは限定的

慢性の抗凝固(ワルファリンなど)を治療の土台とすることはCTEPHと共通する。

⭐ CTEPD without PHであっても、症候性であれば(PEA)または(BPA)が選択肢になる。 2022年/ガイドラインは、症候性のCTEPD without PH患者に対するPEA・BPAをいずれもClass IIa・Level of evidence Cの推奨として位置づけている1。

⚠️ この推奨の強さを読み違えない。 Class IIa-Cは「合理的に考慮してよい」という水準であり、支持する根拠はではなく限られた小規模の症例集積研究にとどまる12。CTEPHに対するPEA・BPAの位置づけほど確立していないため、はCTEPHチームに準じたのもとで個別に判断する。

まとめ

  • CTEPDは、後に血栓が器質化・線維化して肺動脈内に残存する病態の総称で、少なくとも3か月の抗凝固後も病変が残存することを要件とする。
  • ⚠️ CTEPDとCTEPHは別の病気ではなく、安静時肺高血圧(20 mmHg超)の有無で分ける同じスペクトラム上の呼び名である。伴えばCTEPH、伴わなければ「CTEPD without PH」。
  • CTPAでは・ウェブ病変・亜全閉塞・・病変といったに特徴的な所見がみられる。
  • CTEPD without PHでもなどの症状は生じ、運動時には異常な上昇を示しうる——安静時の血行動態が正常でも軽症とは限らない。
  • 慢性抗凝固を土台とし、症候性であればPEA・BPAも選択肢になるが、2022年/ガイドラインでの位置づけはClass IIa-Cにとどまり、エビデンスは限られた症例集積研究に基づく。

出典

  1. 1.2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension(European Society of Cardiology / European Respiratory Society・2022)慢性血栓塞栓性肺疾患(CTEPD)が、少なくとも3か月の治療的抗凝固後も血栓塞栓性病変が器質化・線維化して残存する病態を指し、安静時肺高血圧(平均肺動脈圧20 mmHg超)を伴う場合を「CTEPH」、伴わない場合を「CTEPD without PH」と呼んで区別すること、CTEPD without PHの患者でも運動時には異常な肺動脈圧上昇を示しうること、症候性のCTEPD without PH患者に対する肺動脈内膜摘除術(PEA)とバルーン肺動脈形成術(BPA)がいずれもClass IIa・Level of evidence Cの推奨として位置づけられたこと、ただしこの対象群への介入を支持するエビデンスは限られた症例集積研究にとどまることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Emerging Role of Balloon Pulmonary Angioplasty in Chronic Thromboembolic Pulmonary Disease—Insights from the 2022 ESC Guidelines(Journal of Clinical Medicine・2023)PMC10455782の全文を確認した。CTPA(CT肺動脈造影)でのCTEPD/CTEPHに特徴的な器質化血栓の所見が輪状狭窄(ring-like stenosis lesion)、ウェブ病変(web lesion)、亜全閉塞(subtotal lesion)、完全閉塞(total occlusion lesion)、蛇行病変(tortuous lesion)の5型であり、これらが肺動脈内の血栓の線維性リモデリングによる恒久的な機械的閉塞を反映すること、患者は労作時呼吸困難・運動耐容能低下・血管閉塞の程度に応じた機能制限を呈すること、CTEPD without PHへのPEA・BPAはガイドライン上Class IIa・Level Cにとどまり、支持するエビデンスが限られた小規模の症例集積にとどまることを確認した。閲覧 2026-09-06