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Drug Atlas · C15 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

アジスロマイシン

azithromycin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
ジスロマック
商品名(EU)
Zithromax
科目
Pharmacology
トピック
C15: Macrolides. Pleuromutilins
禁忌疾患
重症筋無力症
標的微生物
Streptococcus pyogenes / GASMycoplasma pneumoniaeLegionella pneumophilaChlamydia trachomatis D–KMycobacterium avium-intracellulare complex / MACBordetella pertussisCampylobacter jejuniHaemophilus ducreyi
副作用
悪心嘔吐下痢皮疹
対象疾患
HIV感染症・AIDSKartagener症候群クラミジア性器感染症コレラマイコプラズマ肺炎(非定型肺炎)レジオネラ症気管支拡張症急性胸部症候群急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍結膜炎骨盤内炎症性疾患細菌性急性胃腸炎市中肺炎赤痢前期破水前立腺炎腸チフス軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫症・鼠径肉芽腫尿路感染症猫ひっかき病嚢胞性線維症非結核性抗酸菌症百日咳閉塞性細気管支炎慢性閉塞性肺疾患猩紅熱
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)

🧠 全体像:アジスロマイシンは14員環マクロライドから15員環の「」へ改良された薬で、細菌のを止める薬。最大の特徴は長い組織内半減期と少ないCYP相互作用——マクロライドの多くがCYP3A4を阻害して相互作用に悩まされるのに対し、アジスロマイシンはこの阻害がごくわずかで、短期・単回投与というほかのマクロライドにはない使い方ができる。この上の特徴が、性感染症の単回治療から呼吸器感染の3〜5日レジメンまで幅広い適応を支えている。

薬効群の中での位置づけ

マクロライド系は「を止める」という共通機序を持ちながら、CYP相互作用・組織移行・特殊な適応で棲み分けている。

薬剤 系統 際立つ特徴 主な適応
アジスロマイシン (15員環) CYP阻害少なめ・半減期が長く短期投与向き 非定型肺炎、Chlamydia、百日咳、MAC予防
マクロライド(14員環) CYP3A4を強く阻害、相互作用が多い H. pylori除菌、
マクロライド(14員環) に近い構造だがCYP阻害はやや弱い 呼吸器・皮膚軟部組織感染(欧州・アジア中心)
マクロライド(16員環) 胎盤を通過しにくい
(別系統) 50S結合部位はマクロライドと一部重なるが別系統

「-thromycin」=マクロライド、と語尾で覚える。 全マクロライドに共通する注意点はQT延長・消化器症状・肝障害だが、アジスロマイシンだけはCYP相互作用が少なく、この一点がとの使い分けの核になる。

機序

flowchart TD
    A["アジスロマイシンが菌体内へ移行"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='50S ribosome'>50Sリボソーム</span>サブユニット<br>(23S rRNA)に結合"]
    B --> C["リボソームの転座を阻害"]
    C --> D["mRNA上でリボソームが先へ進めない"]
    D --> E["蛋白合成が止まる(主に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriostatic'>静菌的</span>)"]
    F["菌が23S rRNAをメチル化(erm遺伝子)<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='efflux pumps'>排出ポンプ</span>を発現"] -.->|"結合部位を変化・薬剤を排出"| B

50Sサブユニットの付近に結合し、伸長中のペプチド鎖がリボソームに沿って移動する転座をブロックする。だが、菌種や濃度によってはにも働く。

💡 はマクロライド全体で共有される。 erm遺伝子による23S rRNAのメチル化はマクロライド・Bにを生む(MLSb型耐性)。mef遺伝子によるはマクロライドだけを排出する(M型耐性)。

薬物動態

項目 値・特徴
約37%(低いが、組織への高い取り込みで補われる)
分布 組織内・細胞内(特に内)へ大量に蓄積し、血中濃度よりはるかに高い組織濃度を保つ
代謝 肝でわずかに代謝されるが、CYP450阻害はマクロライドの中で最小限
排泄 主に胆汁排泄(未変化体)
半減期 約68時間という極端に長い組織内半減期

この長い半減期と性のおかげで、3〜5日間の短期投与や単回投与(クラミジア尿道炎など)で治療が完結する。 が悪い患者やSTIのようにフォローが難しい状況で特に有利になる。

適応

領域 使いどころ
呼吸器 を含む)、Legionella pneumophila)、Mycoplasma pneumoniae)、百日咳(Bordetella pertussis
性感染症 Chlamydia trachomatis D–K、単回投与で治療完結)、Haemophilus ducreyi
消化管感染 カンピロバクター腸炎(Campylobacter jejuni)、(後述)、赤痢の代替
HIV関連 症(Mycobacterium avium-intracellulare complex / MAC)の予防・治療
咽頭・皮膚 Streptococcus pyogenes / GAS、ペニシリンアレルギー時の代替)
慢性 ・COPD増悪予防としての低用量長期投与(抗炎症作用を利用)

では「代替薬」ではなく経験的第一選択の一つになった。 株の拡大により、アンピシリン・セフトリアキソン・・ST合剤が効かない一方、アジスロマイシンとは感受性を保つ。パキスタン・イラクへの渡航歴がある患者、および渡航歴のない患者には、非重症例でアジスロマイシン・重症例でを経験的に開始する1。フルオロキノロンは南アジア由来株での非感受性が広がっており、感受性が確認された場合を除き経験的第一選択にはしない1

用法・用量

急性感染症では成人1回500 mgを1日1回、3〜5日間(初日500 mg、2〜5日目250 mgというレジメンもよく使われる)。クラミジア尿道炎・では1 g単回投与。慢性の増悪予防では週1〜3回の低用量長期投与が用いられることがある。実際の用量は適応・年齢・体重で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌・慎重投与:過敏症、重症筋無力症(マクロライド系はを悪化させ症状を増悪させうる)
  • QT延長、他のQT延長薬併用、電解質異常で注意。マクロライド全体に共通するがアジスロマイシンでも報告がある
  • 💡 CYP相互作用はマクロライドの中で最小限だが、ゼロではない。重大な相互作用が疑われる併用薬は個別に確認する
  • 肝障害:まれに
  • 長期・高用量投与では可逆性の難聴・を生じることがある

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心下痢、腹痛
注意 嘔吐皮疹、QT延長
重篤・まれ 肝障害、難聴(高用量・長期投与)、

まとめ

  • 15員環に結合し転座を阻害する薬。
  • マクロライドの中でCYP相互作用が最も少なく、長い組織内半減期を活かした短期・単回投与ができる。
  • 非定型肺炎・・百日咳・カンピロバクター腸炎・症の予防治療など適応が広い。
  • との使い分けの核心は「CYP相互作用の有無」。
  • QT延長・消化器症状・まれな肝障害はマクロライド共通の注意点。
  • 妊娠中は比較的安全に使われるマクロライドの一つ(とは目的が異なる)。

出典

  1. 1.Extensively Drug-Resistant Salmonella Typhi Infections Among U.S. Residents Without International Travel — Health Alert Network Advisory(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)・2021)XDR チフス菌はアンピシリン・セフトリアキソン・クロラムフェニコール・シプロフロキサシン・ST合剤に耐性だがカルバペネム・アジスロマイシンに感受性を保つこと、渡航歴のない患者およびパキスタン・イラクへの渡航歴がある患者には経験的にカルバペネムまたはアジスロマイシン(重症例はカルバペネムを優先)を用いるべきこと、それ以外の流行地からの帰国者は感受性菌である可能性が高くセフトリアキソンを初期選択としてよいことを確認した閲覧 2026-08-03