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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

尿路感染症

Urinary tract infection

別名
UTI
臓器系
腎・泌尿器感染症
科目
Internal MedicineUrologyPediatrics
トピック
内科学 L-39:尿路感染症・無症候性細菌尿内科学 I-09:尿路感染症:無症候性細菌尿・膀胱炎・前立腺炎内科学 I-10:尿路感染症:腎盂腎炎・カテーテル関連尿路感染症泌尿器科学 U-15:膀胱炎と尿道炎小児科 3-27:小児尿路感染症
鑑別疾患
間質性膀胱炎夜尿症
合併症
急性腎障害
続発疾患
敗血症精巣上体炎・精巣炎尿失禁
関連疾患
前立腺炎
治療薬
ニトロフラントインホスホマイシンピブメシリナムスルファメトキサゾール+トリメトプリムセフトリアキソンセフェピムメロペネムゲンタマイシンドキシサイクリンアジスロマイシンメトロニダゾールシプロフロキサシンセフタジジム+アビバクタムセフトロザン+タゾバクタムトスフロキサシンロメフロキサシンファロペネム
原因薬剤
ダパグリフロジンエンパグリフロジン
原因微生物
Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeProteus mirabilisEnterococcus faecalisStaphylococcus saprophyticusPseudomonas aeruginosaNeisseria gonorrhoeaeChlamydia trachomatis D–KTrichomonas vaginalisCandida albicansAcinetobacter baumanniiProteus vulgaris
症状
悪寒悪心圧痛血尿恥骨上部痛排尿痛発熱頻尿嘔吐尿意切迫感
画像所見
水腎症
下位分類
急性腎盂腎炎・腎膿瘍膿腎症
元疾患
重複腎盂尿管腎盂尿管移行部閉塞尿管瘤馬蹄腎
原因となる疾患
萎縮性腟炎神経因性膀胱前立腺肥大症尿路結石症包茎・傍包茎
適応薬
スルファメトキサゾール+トリメトプリムセフィキシムセフォペラゾンセフタジジム+アビバクタムセフメタゾールテイコプラニントスフロキサシンナリジクス酸ノルフロキサシンバボルバクタムピブメシリナムファロペネムメテナミンレレバクタムロメフロキサシン

🧠 全体像:尿路感染症()は「尿培養陽性=感染」ではない——診断の核心は症状の有無と部位(膀胱に限局しているか、発熱や全身症を伴って膀胱外へ進展しているか)を確認することにある。2025年改訂ガイドラインはこの発想を徹底し、性別を問わず膀胱限局なら単純性(uncomplicated)、膀胱外へ進展していれば(complicated)と再定義した。もう一つの軸は(ASB)で、これは原則として治療しない疾患単位であり、例外は妊娠と尿路粘膜を損傷する内視鏡的処置前だけに限られる。この「治療する部位」と「治療しない状態」を最初に切り分けることが、診療全体の骨格になる。

病態

感染経路と病原体

多くのは腸管内細菌が会陰部に定着し、尿道から膀胱へ上行することで始まる。原因菌の第一位はEscherichia coliで、Klebsiella pneumoniae、Proteus mirabilis、Enterococcus faecalis、Staphylococcus saprophyticusなどが続く。、医療曝露、抗菌薬使用歴があると、Pseudomonas aeruginosa、耐性Enterobacterales、Candida albicansなどのカンジダ属の比重が上がる。

flowchart TD
    A["会陰部への腸内細菌の定着"] --> B["尿道から膀胱への上行"]
    B --> C["膀胱炎"]
    C --> D["尿管を上行"]
    D --> E["腎盂腎炎"]
    C --> F["前立腺への侵入(男性)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial prostatitis'>細菌性前立腺炎</span>"]
    H["閉塞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual urine (post-void residual)'>残尿</span>・異物(カテーテル)・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vesicoureteral reflux (VUR)'>膀胱尿管逆流</span>"] --> C
    H --> E
    I["性行為・既往<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary tract infection'>UTI</span>・尿路異常・結石・抗菌薬曝露"] --> B

💡 尿培養が陽性でも、それだけではと診断しない。(下記)との鑑別が常に必要で、診断の主眼は「症状」と「感染が膀胱にとどまっているか、膀胱を越えて全身へ及んでいるか」の2点である。

分類

部位・重症度による分類(2025年改訂IDSA)

2025年の改訂は、を性別ではなく症状の局在で分類する枠組みへ刷新した1。これは2010年版以来の改訂で、それまで健康な閉経前女性の単純性感染に限定されていた指針を、男性・高齢者・入院患者にも拡張したものである。

分類 定義 具体例
感染が膀胱に限局 健康な女性の。男性でも膀胱限局の症状のみなら単純性に含めうる
発熱・菌血症などの全身症を伴い、感染が膀胱外(腎盂・前立腺など)へ進展 腎盂腎炎、前立腺炎、カテーテル関連の症候性感染

⚠️ 糖尿病・免疫抑制・尿路の解剖学的異常があるというだけで自動的にとは判定しない。一方で次の因子は、耐性・再発・・の必要性を高めるため、分類とは別に必ず確認する。

解剖・機能因子 宿主・医療曝露因子
結石・腫瘍などの閉塞 妊娠
・などの異物 糖尿病・免疫抑制
・による 男性での前立腺関与
(VUR) 、直近の抗菌薬使用歴、耐性菌の既往
などの先天性 —
直近の —

無症候性細菌尿(ASB)

ASBは、尿路症状に帰属できる症状がないのに、通常≥10⁵ CFU/mLの細菌尿を認める状態。非の女性は同一菌の連続2検体、男性は1検体で定義し、の有無は定義を変えない2。

スクリーニング・治療する 原則スクリーニング・治療しない
妊娠(早期に尿培養、感受性に基づき治療) 健康な非妊娠女性、閉経後女性
尿路を伴う内視鏡的泌尿器処置前(術後敗血症予防のため処置前培養に基づく標的薬を通常1〜2回、処置30〜60分前から) 高齢者、糖尿病、施設入所高齢者、・、、非泌尿器手術前
— 腎移植後1か月を超えた患者、腎以外の患者

⚠️ 腎移植後1か月以内は治療の利益を示す証拠が不十分で、移植施設の方針に従う。・・悪臭だけではにならない。

⭐ 高齢者のせん妄や転倒だけを理由にASBを抗菌薬治療してはならない2。局所尿路症状・発熱・循環不全がなければ他の原因を検索して観察する。不要な培養と治療は副作用、Clostridioides difficile感染、耐性化を増やすだけである。

カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)

CAUTIは、尿路中または後48時間以内に発症した症候性を指す。症候の存在と他感染源の除外に加え、通常は適切な検体で≥10³ CFU/mLのを確認する3。表面にはが形成され、留置日数とともに細菌尿はほぼ必発となるため、無症候の細菌尿・だけでCAUTIとは診断しない——例でははCAUTIのにならず、尿のや臭いだけでと区別してはならない3。抗菌薬を開始する前にを交換またはする3。

所見 解釈
細菌尿・のみ CAUTIを意味しない。原則として培養・治療しない
・悪臭 感染の特異的所見ではない
発熱、悪寒、側腹部痛、骨盤部不快感、急性血尿など 他の感染源を除外したうえでCAUTIを検討
カテーテル後の・頻尿 CAUTIの症状になり得る
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catheterization'>カテーテル留置</span>中の発熱"] --> B["肺・血流・皮膚など他感染源を評価"]
    B --> C{"尿路由来の症状・所見があるか"}
    C -->|"ない"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='asymptomatic bacteriuria, ASB'>無症候性細菌尿</span>として治療しない"]
    C -->|"ある"| E["不要ならカテーテルを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='removal (of a tube/catheter/drain)'>抜去</span>"]
    E --> F["なお必要・長期留置なら新品へ交換"]
    F --> G["新カテーテルから無菌的に尿培養"]
    G --> H["重症度に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric therapy'>経験的治療</span>を開始"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood/culture results'>培養結果</span>で狭域化"]

⚠️ せん妄だけで尿路を感染源と断定せず、低酸素、薬剤、脱水、他の感染を評価する。カンジダ尿は無症候であれば多くの場合カテーテル除去だけでよく、抗真菌薬を自動的に投与しない。

培養は採尿バッグではなく、交換後の採取ポートまたは新カテーテルから無菌的に採取する。治療期間は速やかに反応すれば通常7日、反応が遅ければ10〜14日を目安に個別化する。

CAUTI予防は、①適応(尿閉、正確な尿量測定、特定手術など明確な場合のみ挿入)、②挿入(、最小径、閉鎖式ドレナージ)、③維持(バッグを膀胱より低く保ち、屈曲・閉塞を避け、接続を開放しない)、④(毎日必要性を確認し最短期間で、や外部デバイスを検討)の4段階で組み立てる。予防的、定期的、定期日程だけのカテーテル交換はルーチンに行わない。

反復性膀胱炎

反復性は一般に6か月で2回以上、または12か月で3回以上の症候性エピソードと定義する。を選ぶ前に、必ず培養で反復性を確認する。

flowchart TD
    A["反復する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding symptoms'>排尿症状</span>"] --> B["症候性エピソードを尿培養で確認"]
    B --> C["結石・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual urine (post-void residual)'>残尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrophic vaginitis'>萎縮性腟炎</span>・性行動などを評価"]
    C --> D["水分摂取・誘因(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spermicide'>殺精子薬</span>など)の調整"]
    D --> E["閉経後なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal estrogen'>腟内エストロゲン</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methenamine'>メテナミン</span>など非抗菌薬予防を検討"]
    F --> G["なお再発するなら性交後または連日の抗菌薬予防"]
  • 水分摂取不足があれば増量し、が誘因なら中止する。
  • 閉経後女性では上昇・減少を背景とするを評価し、該当すればが有効で、全身エストロゲンとは区別する。
  • ・は、腎肝機能や尿路異常を確認したうえで選択肢とする。
  • 製剤の利用可否・推奨度は地域で異なる。
  • なお反復するなら、自己開始・性交後・連日投与のうち患者に合う最小曝露をで選ぶ。

細菌性前立腺炎

病型 臨床像 治療の要点
発熱、悪寒、、、圧痛のある腫大前立腺 尿・血液培養。重症例は静注薬から開始し、安定後は前立腺のある感受性薬へ切り替える
3か月以上の骨盤症状、同一菌による反復 培養に基づき前立腺の薬剤を通常4〜6週以上投与
培養で細菌が証明されない 抗菌薬のを避け、多面的治療を行う

⚠️ 急性期に強いを行うと菌血症を誘発し得るため避ける。尿閉では操作を最小限にし、泌尿器科と膀胱ドレナージ法を相談する。膿瘍は画像評価とドレナージを検討する。

尿道炎との関係

尿道炎は尿路感染症と隣接する病態だが、多くは性感染症()が主体で、・治療がとは異なる。

分類 特徴 主な起因菌
性感染症が主体。17〜23歳の若年男性に多い Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis D–K、Ureaplasma urealyticum、Trichomonas vaginalis、
・などの泌尿器科的処置や後に生じる Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa

症状は陰茎からの・、排尿時・時の灼熱感やヒリヒリ感で、診断は尿道の鏡検、、()による。

小児UTIの特徴

乳幼児のは発熱だけで発症しうる点が成人と最も異なる。原因菌は成人と同様に大腸菌が最多で、Klebsiella、Proteus、Enterobacter、Enterococcusなどが続く。VUR、尿路閉塞、排尿・障害、カテーテル、既往がリスクとなり、男児では乳児期、女児では乳児期以降に多い。

項目 成人 小児
主な症状 ・頻尿・・(膀胱炎)、発熱・悪寒・側腹部痛(腎盂腎炎) 乳児では発熱、、、嘔吐、体重増加不良、黄疸など非特異的。年長児は成人と同様の局所症状が出現しうる
、必要に応じカテーテル 排尿可能なら、排尿不能ならカテーテルまたは膀胱穿刺。採尿バッグは培養の偽陽性が多く、陰性による除外以外には不向き
画像検査 ルーチンでは行わず、敗血症・閉塞疑い・治療不応など個別の適応で選択 初回の全例には不要。、VCUG、を年齢・非典型所見・反復・超音波異常に応じて選択

⚠️ 小児で画像検査の適応となる非典型所見には、重症全身状態、、腹部・膀胱腫瘤、Cr上昇、敗血症、非大腸菌感染、適切な治療48時間以内に改善しない場合などが含まれる。VCUGはVUR評価、は・瘢痕評価に用いる。反復予防では便秘と排尿習慣の是正、十分な水分摂取、、排尿を我慢しないことを指導し、抗菌薬予防は高リスク例へ個別に検討する。

臨床像

  • :感染から24時間以内に、頻尿、、が出現。血尿を伴うこともあり、発熱を伴うこともある。20〜40歳女性の約25%が年1回以上罹患し、再発は約30%にみられる(2週間未満のは同一菌による、2週間以上空いた再発は新規菌によると解釈する)。
  • :発熱、悪寒、側腹部痛、(CVA)、悪心・嘔吐。・頻尿を伴うことも伴わないこともある。高齢者ではせん妄・全身衰弱、妊婦では早産リスクが問題となる。
  • 前立腺炎:発熱、、、前立腺圧痛。尿閉や膿瘍の合併に注意する。
  • カテーテル関連:局所または全身症状にが加わる。との区別が最重要。

⚠️ やだけでは感染と診断しない。症状との組合せで解釈する。

診断

典型的なは症状とで診断できる。尿培養は、腎盂腎炎、男性、妊娠、再発、非典型例、治療不応、、複雑な尿路背景がある場合に行う。腎盂腎炎では全例で尿培養を採取し、感受性判明後にへ切り替える。

flowchart TD
    A["尿路症状または発熱"] --> B{"全身症・側腹部痛があるか"}
    B -->|"なし"| C["膀胱炎として評価"]
    B -->|"あり"| D["腎盂腎炎・全身性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary tract infection'>UTI</span>として評価"]
    C --> E["非典型・再発・男性・妊娠なら尿培養"]
    D --> F["尿培養+感受性、血液検査"]
    F --> G{"敗血症・閉塞リスク・妊娠、または48〜72時間治療不応"}
    G -->|"はい"| H["超音波または造影CT+緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='source control'>感染源コントロール</span>"]
    G -->|"いいえ"| I["地域耐性率に基づく抗菌薬治療"]
    H --> J{"水腎症・結石・膿瘍があるか"}
    J -->|"あり"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ureteral stent'>尿管ステント</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrostomy'>腎瘻</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urgent decompression'>緊急減圧</span>"]
    J -->|"なし"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV antibiotics'>静注抗菌薬</span>から感受性薬へ変更"]

⭐ 腎盂腎炎の画像適応:敗血症・ショック・腎機能悪化、結石・閉塞・泌尿器奇形・直近器械操作、糖尿病・免疫不全・、有効な治療開始後48〜72時間で改善しない場合、や腎・を疑う場合。感染性尿路閉塞は抗菌薬だけでは治らない緊急病態であり、またはによる減圧を急ぐ。

としては、の(/など)、性感染症由来の尿道炎、、腎結石なども考慮する。

治療

急性単純性膀胱炎

選択 薬剤例 位置づけ
第一選択 (通常5日)、(3 g単回)、 腎実質・前立腺への移行は不十分なため腎盂腎炎・前立腺炎には用いない
第二選択(地域の大腸菌耐性率が低い場合) (通常3日) 地域耐性率と個人の感受性歴を確認して選択
温存 (など) 有効だが耐性化・/リスクなどの副作用のため、他の選択肢があるでは温存し、より重症のや腎盂腎炎のために残す

⚠️ 現行の・ガイドラインでは、に対するフルオロキノロンの使用は推奨されない。第一選択は・・であり、TMP-SMXは地域の大腸菌耐性率が20%未満の場合の代替薬として位置づけられる3。の側からも、EMAは通常推奨される他の抗菌薬が使えない場合を除いて軽症・中等症の細菌感染症にキノロン系を用いないこと、再発性下部尿路感染症の予防に用いないことを求めている4。

腎盂腎炎

状況 方針
安定した外来例 フルオロキノロン、TMP-SMX、適切な経口βラクタムなどを地域感受性・培養で選ぶ
地域のが高い・感受性不明 セフトリアキソンまたはアミノグリコシド(など)の初回静注後になどへ切り替えを検討
入院・敗血症 セフトリアキソン、、、などのから重症度・で選択
・高度耐性菌 過去培養と迅速検査を参考に有効な薬剤へ。重症尿路外感染ではなど

⭐ 2025年では、良好に反応するに対しフルオロキノロン5〜7日、非フルオロキノロン7日という短期治療を提案する1。ただし、膿瘍、、免疫不全、カテーテル、、前立腺炎などはこの短期化の試験から除外されており、個別に判断する。

妊娠中のUTI

病型 方針
通常4〜7日間の2。は単回治療の選択肢だが、薬剤安全性・妊娠週数・感受性を産科と確認する
尿培養を採り、妊娠中に使用可能な感受性薬で通常5〜7日治療。・アモキシシリン単剤は大腸菌耐性率が高いため避ける
腎盂腎炎 原則入院・静注治療。総14日間を目安に産科と個別化する

男性のUTI・細菌性前立腺炎

男性を一律にフルオロキノロンで治療しない。前立腺関与の有無、、、地域耐性に基づいて選択する。フルオロキノロンは安全性と耐性を踏まえて適応を絞る。

尿道炎の治療

病原体 現行の標準治療
淋菌(Neisseria gonorrhoeae) セフトリアキソン単剤(筋注、体重に応じた増量投与)。クラミジア合併が除外できない場合はドキシサイクリンを併用
クラミジア(Chlamydia trachomatis D–K) ドキシサイクリンが第一選択(妊婦はアジスロマイシンを選択)
(Trichomonas vaginalis) メトロニダゾールなどの

⚠️ 淋菌は化が進んでおり、は現在の治療には用いられない。クラミジア合併を前提とした一律のアジスロマイシン併用も、現行の性感染症治療ガイドラインでは見直されている。セックスパートナーの同時治療は防止のため必須である。

小児UTIの治療

尿採取後、年齢、重症度、上部/下部の別、既往培養、地域の耐性率に基づいて経験的抗菌薬を開始し、で狭域化する。敗血症、嘔吐・脱水、内服不能、若年乳児では静注治療・入院を検討する。セファロスポリンを一律第一選択にしたり、画像評価終了まで全新生児にアンピシリンを継続したりせず、地域ガイドラインと感受性に従って個別化する。

まとめ

  • 尿培養陽性やだけでと診断せず、症状の有無と部位(膀胱限局か膀胱外進展か)を確認する。2025年分類は性別を問わず膀胱限局を単純性、膀胱外進展をとする。
  • ASBを治療する主な場面は妊娠とを伴う内視鏡的泌尿器処置前のみで、健康な非妊娠女性・高齢者・糖尿病・・は原則治療しない。
  • ・・はの第一選択だが、腎実質・前立腺への移行が不十分なため腎盂腎炎・前立腺炎には用いない。フルオロキノロンはでは温存する。
  • 腎盂腎炎は全例で尿培養を採り、敗血症・閉塞リスクを評価する。感染性尿路閉塞は抗菌薬だけでは治らずを要する。
  • カテーテル関連の細菌尿・・悪臭だけではCAUTIではなく、真の症候性CAUTIでは不要なカテーテルをし、必要なら交換後の検体でする。
  • は培養で確認したうえで、行動調整・・非抗菌薬予防を経て、必要なら抗菌薬予防を個別化する。
  • 尿道炎は一次性()と二次性(医原性)に分け、淋菌はセフトリアキソン単剤、クラミジアはドキシサイクリンが標準治療で、パートナーの同時治療が必須である。
  • 小児は発熱のみで発症しうる。は抗菌薬投与前に年齢に応じた清潔な方法で採取し、画像検査は全例一律ではなく非典型・反復・リスクに応じて選択する。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines by Infectious Diseases Society of America: 2025 Guideline on Management and Treatment of Complicated Urinary Tract Infections–Selection of Antibiotic Therapy for Complicated Urinary Tract Infections(Infectious Diseases Society of America・2025)2025年7月17日公開の改訂版が、単純性・複雑性の区分を性別ではなく「感染が膀胱を越えたことを示す局所症状・全身症状(とくに発熱)の有無」で組み直したこと(原文:"We therefore focused our revised classifications of uncomplicated and complicated UTI on the presence or absence of localized or systemic symptoms, particularly fever, that would suggest the infection had progressed beyond the bladder")、および基準を解剖学的異常や尿閉のような泌尿器科的評価を要する因子ではなく、バイタルサインやカテーテルの有無といった診療現場で把握できる因子に置いたことを確認した。あわせて、有効な治療に反応している複雑性UTI(急性腎盂腎炎を含む)にはフルオロキノロン5〜7日または非フルオロキノロン7日の短期治療を10〜14日より提案すること、根拠となった試験の多くが留置カテーテル・重症敗血症・免疫抑制状態・尿路の膿瘍・慢性腎臓病・細菌性前立腺炎・完全尿路閉塞・泌尿器手術予定の患者を除外していること、急性細菌性前立腺炎が疑われる男性の発熱性UTIでは10〜14日の長期治療が有益となりうることを確認した。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Clinical Practice Guideline for the Management of Asymptomatic Bacteriuria: 2019 Update by the Infectious Diseases Society of America(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2019)無症候性細菌尿をカテーテル非留置例では排尿尿の10⁵ CFU/mL以上(膿尿の有無を問わない)と定義し、女性は望ましくは2週間以内の連続2検体、男性は1検体で足りるとしていること、スクリーニングと治療を推奨するのが妊婦(妊娠初期の受診時に尿培養、4〜7日間の抗菌薬治療)と粘膜損傷を伴う内視鏡的泌尿器処置前(処置前の尿培養に基づく標的治療を1〜2回、処置の30〜60分前に開始)に限られること、小児・健康な閉経前および閉経後女性・機能障害のある地域在住高齢者・施設入所高齢者・糖尿病・脊髄損傷・短期および長期の留置カテーテル・待機的非泌尿器手術前・移植から1か月を超えた腎移植例・腎以外の固形臓器移植例では推奨しないこと、腎移植1か月以内は推奨を出すための証拠が不十分であること、細菌尿にせん妄または転倒を伴っても局所尿路症状や発熱・血行動態不安定がなければ抗菌薬ではなく他原因の検索と慎重な経過観察を強く推奨すること(Clostridioides difficile感染・耐性化・薬剤有害事象の回避を重視するため)を確認した。閲覧 2026-09-04
  3. 3.EAU Guidelines on Urological Infections(European Association of Urology・2026)2026年3月版が、女性の膀胱炎の第一選択をホスホマイシントロメタモール3g単回・ピブメシリナム400mg 1日3回3〜5日・ニトロフラントイン100mg 1日2回5日(およびニトロキソリン)とし、アミノペニシリンとフルオロキノロンは膀胱炎に使用しない(Strong)としていること、トリメトプリム単剤およびST合剤160/800mg 1日2回3日は大腸菌の地域耐性率が20%未満の地域でのみ第一選択となる代替薬であること、ニトロフラントイン・経口ホスホマイシン・ピブメシリナムを腎盂腎炎に使用しない(Strong)こと、無症候性細菌尿を中間尿の10⁵ CFU/mL以上(女性は連続2検体、男性は1検体)と定義することを確認した。閲覧 2026-09-04
  4. 4.Quinolone and fluoroquinolone containing medicinal products(European Medicines Agency・2019)本Article-31 referralに基づきEMAが公表した2018年11月16日付プレスリリースで、CHMPがキノロン・フルオロキノロン系について、腱・筋・関節・神経系に及ぶ持続的で不可逆となりうる副作用を理由に、無治療でも軽快しうる感染症や重症でない感染症(咽頭炎など)、非細菌性感染症(非細菌性の慢性前立腺炎など)、旅行者下痢症および再発性下部尿路感染症(膀胱を越えない尿路感染症)の予防、ならびに通常推奨される他の抗菌薬が使用できない場合を除く軽症・中等症の細菌感染症には使用すべきでないという制限を確認したことを確認した。閲覧 2026-09-04