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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 疾患

萎縮性腟炎

Genitourinary syndrome of menopause (atrophic vaginitis)

別名
閉経関連泌尿生殖器症候群閉経期泌尿生殖器症候群GSMVulvovaginal atrophy外陰腟萎縮
臓器系
生殖・産婦人科腎・泌尿器
科目
Translational Medicine and PathophysiologyObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
病態生理学 1-27:閉経後(ポストメノポーズ)婦人科 13:外陰・腟の炎症性疾患
鑑別疾患
トリコモナス症細菌性腟症
続発疾患
尿路感染症
関連疾患
更年期症状
治療薬
エストラジオールDHEA
症状
腟乾燥性交痛掻痒排尿痛尿失禁
検査値
腟pH
適応薬
エストラジオールオスペミフェンデヒドロエピアンドロステロン

🧠 全体像:は、閉経に伴うエストロゲン低下がを菲薄化させることで生じる病態である。2014年にISSWSH・NAMSが提唱した現行の疾患概念では、この変化は腟だけでなく尿道・にも及ぶため「(GSM)」という語に置き換えられ、はそのの一つという位置づけになった。臨床的に重要なのは、エストロゲン低下→萎縮→グリコーゲン減少→減少→上昇という連鎖が、乾燥・だけでなくの温床にもなる点で、閉経後女性のを評価するときは必ずこの病態を鑑別に挙げる。治療はが有効だが、乳癌既往者への適応は一次資料の間でも立場が割れており、腫瘍医と相談のうえ個別に判断する。

用語の変遷

「」「」という旧称は、変化の範囲が腟に限られるかのような誤解を生む。2013年のISSWSH・NAMS用語コンセンサス会議を経て2014年に正式採用された「(GSM)」は、腟・外陰だけでなく尿道・を含む下部泌尿生殖器全体の変化を包括する語である1。本ノートでは、呼び元の尿路感染症など臨床で今なお広く使われる「」を表題の表記として用いるが、指す病態は現行のGSM概念と同一である。

疫学

⭐ GSMは閉経後女性のおよそ27〜84%に生じるとされ、報告により幅が大きいのは・調査方法の違いに加え、症状を訴えない・受診しない患者が多く過小診断・過小治療の状態にあるためである2。自然閉経が主な背景だが、、化学療法、放射線治療、/、乳癌治療(・)など、閉経以外のでも同じ病態が生じうる。

病態

flowchart TD
    A["閉経・エストロゲン低下"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal epithelium'>腟上皮</span>の成熟低下・菲薄化"]
    B --> C["上皮グリコーゲン減少"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lactobacillus'>乳酸桿菌</span>減少・乳酸産生低下"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal pH'>腟pH</span>上昇(>5.0)"]
    E --> F["病原菌が定着しやすい環境"]
    B --> G["尿道・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trigone of the bladder'>膀胱三角部</span>粘膜の同様の萎縮"]
    F --> H["反復性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginitis'>腟炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent urinary tract infection'>反復性尿路感染症</span>"]
    G --> H

の維持はで、低下すると上皮のグリコーゲン蓄積が減り、これを基質とするが減少して腟内は酸性から中性〜アルカリ性へ傾く3。この機序はで追えるであり、正常な優位の酸性環境が失われることで大腸菌などの病原菌が定着しやすくなる。同じ低は尿道・の粘膜にも及ぶため、腟内環境の変化と下部尿路のが同時に進み、両者が合わさって尿路感染症の反復につながる。

💡 「閉経後ので結石やを探しても異常がない」ときこそ、この萎縮性の変化を疑う場面である。腟内の減少と尿道粘膜のは同じ機序の表と裏であり、片方だけを見て評価を終えない。

臨床像

症状 特徴
腟症状 、灼熱感、、掻痒、の
尿路症状 、頻尿、、尿失禁、反復する尿路感染症
診察所見 の蒼白・平滑化・消失、脆弱性、の短縮・狭小化

⭐ 症状の重症度と診察所見は必ずしも一致せず、無症状のまま所見だけが進行することもある。反復性をに受診した閉経後女性では、尿路症状だけでなく腟症状のとを組み合わせて評価する。

診断

診断は主に病歴と診察による臨床診断で、単一の検査で確定するものではない3。は正常でも5.0を超えることが多いが、日常診療でのルーチン測定は必須ではない。単独では・など他の高pH疾患と鑑別できないため、の性状やなど他の所見と合わせて判断する。

治療

治療は非を出発点とし、効果不十分ならへ進む段階構造を取る。

段階 治療 位置づけ
第一選択 腟・ 非。全例で開始してよい
第二選択 腟局所の低用量エストラジオールなどの 全身への吸収が少なく、ほど強い禁忌には縛られない
代替 ()、腟DHEA挿入剤 エストロゲン忌避例で検討。は既知・疑いのある乳癌患者への使用は添付文書上非推奨

⚠️ 乳癌既往でのの扱い:米国は歴史的に乳癌既往者へのを添付文書上の禁忌としてきたが、米国産科婦人科学会(ACOG)はその使用を支持している。低用量は全身への吸収が少なく、再発・死亡率の増加を示すエビデンスはないとされる一方、使用中の患者を含め長期的な安全性データは十分ではないため、腫瘍医と相談のうえ個別に判断する32。

⭐ 反復性の予防としての位置づけ:2025年のAUA/CUA/SUFUガイドライン改訂は、禁忌がない限り、反復性のある・閉経後女性に療法を推奨している(中程度の推奨、Grade B)4。の治療は尿路感染症のにおける非抗菌薬予防の柱の一つであり、両疾患をつなぐ最も実践的な接続点である。

まとめ

  • は閉経後のエストロゲン低下による萎縮で、2014年以降は尿道・膀胱を含む「(GSM)」という広い概念に包括される。閉経後女性の27〜84%に生じるとされ、過小診断・過小治療の状態にある。
  • 機序は萎縮→グリコーゲン減少→減少→上昇で、同じ低が尿道・にも及ぶため、閉経後女性の反復性の重要な背景因子になる。
  • 診断は臨床診断が中心で、単独では・と鑑別できない。
  • 治療は・を第一選択とし、不十分ならへ進む。乳癌既往者ではACOGが使用を支持する一方、データは限られ個別判断を要する。
  • 2025年のAUA/CUA/SUFUガイドラインは、反復性のある閉経後女性への療法をGrade Bで推奨しており、の治療は尿路感染症の再発予防策そのものでもある。

出典

  1. 1.Genitourinary syndrome of menopause: new terminology for vulvovaginal atrophy from the International Society for the Study of Women's Sexual Health and the North American Menopause Society(Maturitas / ISSWSH・NAMS 用語コンセンサス会議・2014)2013年の用語コンセンサス会議を経て、旧称の外陰腟萎縮・萎縮性腟炎に代わり「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」がNAMSとISSWSHにより2014年に正式に採用されたこと、GSMが外陰・腟・尿道・膀胱にまたがるエストロゲン低下による変化の総称と定義されることを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.The 2020 genitourinary syndrome of menopause position statement of The North American Menopause Society(North American Menopause Society (NAMS)・2020)GSMが閉経後女性の約27〜84%に生じ過小診断・過小治療の状態にあること、腟潤滑剤・保湿剤、腟エストロゲン・腟DHEA、全身ホルモン療法、オスペミフェンが症状の重症度に応じた治療選択肢であること、腟エストロゲン・腟DHEA・オスペミフェンの長期的な安全性データ(特に乳癌既往者)は不足していることを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Genitourinary Syndrome of Menopause(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)エストロゲン低下が腟上皮成熟低下・グリコーゲン減少・乳酸桿菌減少・腟pH上昇という連鎖を経て易感染性に至る機序、診断は病歴と診察による臨床診断で単一の検査では確定しないこと、治療は非ホルモン療法(潤滑剤・保湿剤)を第一選択とし不十分なら腟局所エストロゲンへ進む段階構造、乳癌既往者への腟エストロゲンについて米国FDAは添付文書上禁忌とする一方ACOGは使用を支持しており低用量腟エストロゲンでの再発・死亡率増加のエビデンスはないが、アロマターゼ阻害薬使用中を含め長期安全性データは限られることを確認した。閲覧 2026-08-20
  4. 4.Recurrent Uncomplicated Urinary Tract Infections (rUTI) in Women: AUA/CUA/SUFU Guideline (2025 Amendment)(American Urological Association / Canadian Urological Association / SUFU・2025)禁忌がない限り、反復性UTIのある閉経周辺期・閉経後女性には将来のUTIリスクを下げるため腟エストロゲン療法を推奨する(Statement 20、中程度の推奨、エビデンスレベルGrade B)ことを確認した。閲覧 2026-08-20