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Drug Atlas · B13 Steroids / ステロイド · 必修

デヒドロエピアンドロステロン

dehydroepiandrosterone

分類
Steroids / ステロイド
科目
Pharmacology
トピック
B13: Mineralocorticoids. Topically applied glucocorticoids. Adrenocortical antagonists, inhibitors of corticosteroid synthesis
承認適応
原発性副腎不全
副作用
多毛頭痛
監視検査値
DHEA-S

🧠 全体像:DHEAは、で失われる3本目のホルモン軸を埋める補充薬である。)・)が生命維持に必須で補充が必須であるのに対し、が作るDHEAは必須ではない補助的な補充にとどまる。エビデンスの強さも他の2軸とは対照的に弱く、「補充すべきかどうか」自体に議論が残る点が理解の軸になる。米国では処方薬ではなくのダイエタリーとして流通していることも、他の副腎皮質ホルモン補充薬との決定的な違いである。

薬効群の中での位置づけ

の慢性期治療は、副腎皮質が失う3系統のホルモンをそれぞれ別の薬で補う構造になっている。

系統 代表薬 必須性 エビデンスの強さ
生命維持に必須(急な中断はを招く) 確立した標準治療
生命維持に必須(原発性に特有) 確立した標準治療
DHEA 必須ではない補助的補充 弱い推奨(グレード2)が乏しく議論が残る1

「3本目の軸だけエビデンスと必須性の両方が一段弱い」という非対称性が、この薬を理解する最大のポイントである。 糖質・の補充を怠ればという致死的事態に直結するのに対し、DHEA非補充は生命を脅かさない。だからこそガイドラインは「補充すべき」ではなく「試してみてよい」という弱い推奨にとどめている1

機序

flowchart TD
    A["正常では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zona reticularis'>副腎皮質網状帯</span>がDHEA・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DHEA sulfate'>DHEA-S</span>を分泌"] --> B["末梢組織(脂肪・皮膚・脳など)で<br>アンドロゲン・エストロゲンへ変換される"]
    B --> C["性機能・活力・気分・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Renal Osteodystrophy'>骨代謝</span>などに寄与"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary adrenal insufficiency'>原発性副腎不全</span>では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zona reticularis'>副腎皮質網状帯</span>も破壊され<br>DHEA分泌がほぼ消失する"] --> E["特に女性で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased libido'>性欲低下</span>・活力低下・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='depressed mood'>抑うつ気分</span>などQOL低下が生じうる"]
    F["DHEAを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> G["末梢組織で弱アンドロゲン・エストロゲンへ変換"]
    G --> H["症状の一部改善が期待される<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='individual variation'>個人差</span>が大きく効果は一定しない)"]

💡 DHEA自体はへの親和性が弱く、「そのもの」として強く作用する薬ではない。 末梢組織でテストステロンやエストロゲンへ変換されて初めてを発揮するプロホルモンという性質が、効果のの大きさや、標準治療になりきれない理由の一端になっている。

適応

十分な糖質・補充を行ってもなお、・活力低下が持続するの女性で試行を検討する(特に女性で恩恵が期待されるとされる)1。糖質・のように診断確定後に一律開始する薬ではない。

用法・用量

25〜50mgを朝1回する1。内服前の早朝血清を測定し、正常中央値付近を目安に用量を調整する。6か月間投与しても持続的な症状の改善が得られなければ中止する、という試行期間を区切った運用が推奨される1

禁忌・注意

  • 米国では本剤(この適応での使用)は処方薬ではなくのダイエタリーとして流通しており、FDAによる有効性・安全性の審査を経た処方薬ではない2症状に対するプラステロン(プラステロンはDHEAのINNであり、代謝物ではなくDHEAそのもの)は別の適応・別の剤形で承認された処方薬であり、本稿の副腎不全に対する経口DHEA補充とは区別する
  • ⚠️ 前立腺癌・肝癌・乳癌など腫瘍の増殖を刺激しうるとの懸念があり、これらの既往・家族歴がある患者では特に慎重に検討する(十分に実証された知見ではないが、アンドロゲン・エストロゲンへ変換されるプロホルモンという性質上、理論的なリスクとしてできない)2
  • 抗凝固薬との併用で出血リスクが増強しうる、抗うつ薬との併用でを誘発しうる、の効果に拮抗しうる、トリアゾラムの血中濃度を上昇させうる、の効果を減弱させうるなどの相互作用が指摘されている2
  • 低下、トリグリセリド上昇などの脂質への影響が報告されている

副作用

想定される副作用は男性ホルモン変換に由来するものが中心で、(女性)、乳房肥大・乳房圧痛(男性)、頭痛、気分変化などが挙げられる2。ただしとしての流通実態上、な安全性データの集積は限定的である。

まとめ

  • DHEAは、で失われる糖質・に続く3本目のホルモン軸(を埋める補助的な補充薬。
  • 糖質・と異なり生命維持に必須ではなく、エビデンスも弱い推奨(グレード2)にとどまる。
  • 適応は、十分な糖質・補充後も・活力低下が持続する女性での試行に限られ、6か月で効果が無ければ中止する。
  • 用量は25〜50mgを朝1回、早朝を目安にモニタリングする。
  • 米国では処方薬ではなくのダイエタリーとして流通しており、FDAが有効性・安全性を審査した処方薬のは存在しない(審査対象の処方薬自体が無いための「無し」であり、審査を経て安全性が確認された結果としての「無し」ではない点に注意)。腫瘍への理論的懸念や複数の薬物相互作用があり、漫然と長期使用しない。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Primary Adrenal Insufficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2016)DHEA補充について、糖質・鉱質コルチコイド補充を最適化してもなお性欲低下・抑うつ気分・活力低下が持続する原発性副腎不全の女性を対象とした弱い推奨(グレード2)であること、用量は25〜50mgを朝1回経口投与し、内服前の早朝血清DHEA-Sを正常中央値付近に保つようモニタリングすること、6か月間で持続的な効果が確認できなければ中止すること、糖質・鉱質コルチコイドと異なり生命維持に必須の補充ではないことを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Dehydroepiandrosterone (DHEA) — Merck Manual Consumer Version(Merck Manual・2026)米国ではDHEAが処方薬ではなく市販のダイエタリーサプリメントとして流通していること(腟萎縮治療薬プラステロンの腟坐剤は別の適応の処方薬であること)、想定される副作用(痤瘡・頭痛・気分変化・女性の多毛・男性の乳房肥大・HDL低下・トリグリセリド上昇)と前立腺癌・肝癌・乳癌などホルモン感受性腫瘍の増殖を刺激しうるとの懸念(いずれも十分に実証されていない)、抗凝固薬・抗うつ薬・タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬・トリアゾラム・BCGワクチンとの相互作用を確認した。閲覧 2026-08-10