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Lab values · Published

デヒドロエピアンドロステロン硫酸

DHEA-S

別名
DHEAS硫酸デヒドロエピアンドロステロンDHEA sulfate
臓器系
内分泌・代謝生殖・産婦人科
科目
PhysiologyInternal MedicinePathophysiology
トピック
生理学 7.2:副腎皮質の機能内科学 L-31:副腎不全病態生理学 1-20:急性・慢性副腎皮質機能低下症;先天性副腎過形成
関連疾患
クッシング症候群原発性副腎不全思春期早発症先天性副腎過形成副腎皮質癌
監視対象薬
デヒドロエピアンドロステロン

🧠 全体像は副腎皮質のがほぼ独占的に産生するステロイドであり、高アンドロゲン症を評価する際に「副腎性かか」を切り分ける数少ない手掛かりになる。しかし腫瘍を示唆する確立した単一のは存在しない——分かりやすい閾値を期待して読むと最も誤解しやすい点である1そのものを手掛かりにし、臨床像・画像とあわせて判断する。

何を測っているか

は、で合成されるDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)が、SULT2A1によってを受けた分子である。DHEA自体は卵巣や末梢組織でもわずかに産生されうるが、への変換はほぼ副腎に限られるため、は副腎由来をほぼ特異的に示すマーカーとして扱われる。そのものは弱いアンドロゲンにすぎず、末梢組織でテストステロン・エストロゲンへ変換される前駆体である。

臨床で実際に測るのはDHEAではなくだが、その理由は両者の血中動態の違いにある。

項目 DHEA
短い(分単位) 長い(数時間程度)
大きい(ACTHのに伴いコルチゾールと並行して変動) ほとんどない
血中濃度 低い 高い(DHEAの100倍以上)
由来の特異性 副腎・卵巣・末梢組織 ほぼに特異的
単回採血での解釈 のため難しい 随時採血で評価できる

💡 「なぜDHEAではなくを測るか」はこの表の3行目までで説明がつく。 DHEAは半減期が短くが大きいため単回値の解釈が難しいが、は半減期が長く血中濃度も高いためにがほとんどなく、随時採血で足りる。

flowchart TD
    A["ACTH"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zona reticularis'>副腎皮質網状帯</span>"]
    B --> C["DHEA"]
    C -->|"SULT2A1(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfotransferase, ST'>硫酸転移酵素</span>)"| D["DHEA-S"]
    D --> E["末梢組織<br>アロマターゼ・17β-HSD等"]
    E --> F["テストステロン・エストロゲンへ変換"]

基準値と単位

代表的な単位はμg/dLμmol/Lで、測定法・施設で幅があり報告書のを優先する。

1 μmol/L36.8 μg/dL1\ \mu\mathrm{mol/L} \approx 36.8\ \mu\mathrm{g/dL}

⚠️ は年齢差が極めて大きく、成人のをそのまま小児・高齢者に当てはめてはならない。

時期 の動き
出生時〜乳児期早期 由来で一時的に高値、生後急速に低下
小児期(乳幼児期〜学童期前半) 低値のまま推移する(前の谷)
(副腎皮質機能発来、目安は女児8歳・男児7歳頃) の機能発現に伴い上昇し始める2
思春期〜20代 上昇を続け、20代前後でピークに達する
30代以降 加齢とともに直線的に低下し、70〜80歳では若年成人の10〜20%程度になる3

したがって「内かどうか」は必ず年齢・性別を揃えたで判定する。同じ数値でも学童期の子どもと成人とでは意味がまったく異なる。

高値の意味

高値は副腎性の指標であり、機序で群分けすると整理しやすい。

機序 代表例 手掛かり
による自律産生 、急速発症の高アンドロゲン症・男性化、画像上の悪性所見
酵素欠損による前駆体シャント (非を含む) 緩徐進行の高アンドロゲン症状、17-OHP高値
ACTH依存性の駆動 ACTH依存性のCushing症候群(下垂体性・ ACTH高値、コルチゾール過剰の他の所見
副腎皮質機能の早期発現 年齢相応のとの比較が必須

⚠️ 同じCushing症候群でも、原因によっての動きは逆になる。 ACTH依存性のCushing症候群ではACTHがを駆動しも上昇するが、によるCushing症候群ではACTHが抑制されるためはむしろ低下する。この乖離はCushing症候群の原因診断(ACTH依存性か非依存性か)を絞り込む手掛かりになる。

💡 前述のとおり、には腫瘍を示唆する確立した単一の閾値はない1。高アンドロゲン症の評価で「テストステロン優位なら優位なら副腎性」という原臓器推定の手がかりにはなるが、この振り分けだけで確定診断はできない。

低値の意味

低値は副腎皮質機能の低下、またはACTHによる駆動の低下を反映する。

機序 代表例 手掛かり
ACTH高値、コルチゾール低値、色素沈着
(ACTH欠損) によるACTH分泌低下 ACTH低値〜、他のの低下
加齢による生理的低下 高齢者の生理的な低値( 年齢相応のとの比較が必須、他の異常所見を伴わない
慢性ステロイド投与による抑制 長期グルココルチコイド投与による抑制 ステロイド使用歴、急な減量・中止歴

単独でも副腎不全の評価に 0.81程度の診断性能を示すとの報告があるが、直近のグルココルチコイド使用があると性能が低下する( 0.72程度)ため、単独診断ではなくコルチゾール値・臨床経過とあわせて解釈する4

⚠️ 測定上の注意

  • ⚠️ 腫瘍を示唆する確立した閾値がない。 であること、他の(急速発症・男性化)・画像所見と組み合わせて評価する1
  • ⚠️ 「アンドロゲンが上がっていないから副ではない」と読むのは誤り。 によるCushing症候群ではがむしろ低いことがあり、単独の高低で副の有無を判断してはならない。
  • のDHEAの服用歴があると偽性に高値となる。高値を見たら使用歴を必ず確認する
  • 妊娠・経口避妊薬の使用は血中アンドロゲン全般の解釈に影響しうるため、服とあわせて評価する。
  • の種類によって・精度が異なり、境界域の値は測定法を確認したうえで解釈する。

経時変化とモニタリング

がほとんどないため、コルチゾールのように採血時刻をそろえる必要がなく、随時採血で評価できる。この点は、が大きく採血タイミングの管理が必須なDHEAやコルチゾールとは対照的である。

やアンドロゲン産生腫瘍の治療では、17-OHPやテストステロンとあわせての推移を追うことで、治療反応や腫瘍の再発を評価する。腫瘍摘出後にが正常化しない、あるいは治療後にする場合は、残存病変や再発を疑う契機になる。

まとめ

  • がほぼ独占的に産生し、DHEAからSULT2A1によりされて生じる。半減期が長くがほとんどないため随時採血で評価できる。
  • は年齢差が極めて大きく、(女児8歳・男児7歳頃)で上昇し、20代でピークに達したのち加齢とともに直線的に低下する。年齢・性別を揃えて判定する。
  • 高値は副・ACTH依存性Cushing症候群・など、機序で群分けして考える。
  • によるCushing症候群ではがむしろ低下しうる——「アンドロゲン非上昇=副なし」ではない。
  • 低値は原発性・、加齢、慢性ステロイド投与による抑制で説明できる。
  • 腫瘍を示唆する確立した単一のは存在せず、であること自体と臨床像・画像を組み合わせて判断する。

出典

  1. 1.Society for Endocrinology Clinical Practice Guideline for the Evaluation of Androgen Excess in Women(Society for Endocrinology・2025)DHEA-Sには副腎腫瘍を示唆する確立した単一のカットオフ値がなく、著明高値であること自体を手掛かりにするしかないことを確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Reference values for serum dehydroepiandrosterone-sulphate in healthy children and adolescents with emphasis on the age of adrenarche and pubarche(Clinical Endocrinology・2015)健常小児531人の検討で、血清DHEA-Sが立ち上がるアドレナーキ(副腎皮質機能発来)年齢の目安が女児8.0歳・男児7.0歳であることを確認した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.A Review of Age-Related Dehydroepiandrosterone Decline and Its Association with Well-Known Geriatric Syndromes: Is Treatment Beneficial?(Rejuvenation Research・2013)DHEA・DHEA-Sは20〜30代でピークに達した後は加齢とともに直線的に低下し、70〜80歳では若年成人の10〜20%程度にまで下がる「アドレノポーズ」現象を示すことを確認した。閲覧 2026-08-02
  4. 4.Performance of Dehydroepiandrosterone Sulfate and Baseline Cortisol in Assessing Adrenal Insufficiency(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2025)DHEA-S単独でも副腎不全評価にAUROC 0.81程度の診断性能を示すが、直近のグルココルチコイド使用があるとAUROCが0.72まで低下し性能が損なわれることを確認した。閲覧 2026-08-02