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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 腫瘍

副腎皮質癌

Adrenocortical carcinoma

別名
ACC
臓器系
内分泌・代謝腫瘍
科目
SurgeryPathology
トピック
外科学 B/01:副腎の外科的疾患病理学 C/88:副腎の機能異常・腫瘍
鑑別疾患
褐色細胞腫
続発疾患
クッシング症候群原発性アルドステロン症
関連疾患
原発性副腎不全
治療薬
シスプラチンドキソルビシンエトポシド
症状
筋力低下体重減少高アンドロゲン血症多毛症
検査値
カリウムコルチゾールアンドロステンジオンDHEA-S
スコア
TNM分類
原因となる疾患
Li-Fraumeni症候群

🧠 全体像は、多くが健診・他疾患精査の腹部画像で見つかる「」として発見される、まれだが予後不良な悪性腫瘍である。学習の軸は2つ。①サイズと画像所見で悪性度を推定し(4 cm以上・低脂肪含有=高HU値・が遅い)、②見つかったら必ずホルモン評価を行う(自律的コルチゾール分泌、アンドロゲン、まれにアルドステロンや複数ホルモンの混合分泌があれば良性腺腫より癌を強く示唆)。治療は完全外科的切除(R0)が唯一の根治的手段であり、高リスク例にはとしてを、遠隔転移例にはEDP-M化学療法を用いる。同じ副でも髄質由来でカテコールアミンを産生するとは、・分泌ホルモン・臨床像がまったく異なる点に注意。

発見の経緯:副腎偶発腫としてのACC

は年間発症率100万人あたり0.7〜2人程度とまれな腫瘍で、症状から見つかることもあるが、実地臨床でより頻度が高いのは他の目的で撮影した腹部CT/MRIで発見されるとしての提示である。全体のうち悪性(ACCまたは)が占める割合は数%程度にすぎず、大半はの良性腺腫だが、「を見たら悪性度とホルモン産生の両方を評価する」という原則は共通である。

画像所見による悪性度評価

所見 良性腺腫を示唆 を示唆
サイズ 4 cm未満 4 cm以上(6 cm以上はとくに悪性の可能性が高い)
値(脂質含有量を反映) ≤10 HU(脂質に富む=低吸収値) >10〜20 HU(脂質に乏しい=低脂肪含有)
境界・均一性 均一、境界明瞭 不均一(壊死・出血を反映)、境界不明瞭
15分での相対的 60%以上(速い) 60%未満(遅い)

💡 insight:良性のは細胞内に脂質を豊富に蓄えているため、で低吸収域(低HU値)として描出される。逆にACCは脂質に乏しい(低脂肪含有)ため高HU値を示し、も遅い。「低HU・速い=安心、高HU・遅い」という対応関係を覚えておくと画像診断が速い。

  • 4 cm未満・値低値・均一という「三拍子そろった良性所見」であれば経過観察でよいが、4 cm以上、または画像上不均一・高HU値・遅延などの悪性所見があれば、ホルモン評価を経て外科的切除を検討する。
  • ⚠️ 悪性を疑う副に対するは原則行わない。細胞診では良性腺腫と癌を組織学的に鑑別できないうえ、被膜を破ってを来す危険がある。生検を検討する場合は、必ず先にを生化学的に除外しておく(除外前に穿刺するとを誘発しうる)。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenal incidentaloma'>副腎偶発腫</span>を画像で発見"] --> B{"サイズ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncontrast CT'>単純CT</span>値・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='washout'>洗い出し</span>"}
  B -->|"4cm未満・低HU(≤10)・均一・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='washout'>洗い出し</span>速い"| C["良性腺腫が示唆される"]
  B -->|"4cm以上、または高HU・不均一・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='washout'>洗い出し</span>遅い"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ACC'>悪性</span>が示唆される"]
  C --> E["ホルモン評価(自律的コルチゾール分泌・アンドロゲン・アルドステロン等)"]
  D --> E
  E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-functional'>非機能性</span>かつ良性所見"| F["経過観察(画像・ホルモンフォロー)"]
  E -->|"機能性、または悪性が示唆される"| G["外科的切除(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Adrenalectomy'>副腎摘出術</span>)"]

ホルモン評価:分泌パターンが悪性度のヒントになる

ACCの約半数は臨床的に明らかな症状を呈する機能性腫瘍で、残りは(または画像・生化学検査でしか捉えられない程度の軽微な分泌)として発見される。良性腺腫との鑑別で重要なのは、単一ホルモンのみの過剰よりも、複数ホルモンの混合分泌パターンの方がACCを強く示唆するという点である。

評価項目 検査 コメント
1 mg 「自律的コルチゾール分泌」として軽度〜を来す
アンドロゲン・前駆ステロイド 、テストステロン、 ACCで特徴的。女性の・男性化などで気づかれることがある
(高血圧・があれば) 頻度は低いが機能性ACCの一部でみられる
混合分泌 上記の複数項目が同時に異常 良性腺腫では稀。ACCを積極的に疑う所見

を評価するときは「サイズ・画像所見」と「ホルモン評価」の両方を必ずセットで行う。ホルモンがでも大きい(4 cm以上)・悪性所見があれば手術適応になりうるし、逆に小さくても機能性であれば手術適応になる(外科学 B/01で扱う判断アルゴリズムと同じ骨格)。

病理学的評価:Weiss score・Ki-67・ENSAT病期分類

組織学的悪性度:Weiss score

の良悪性は、画像や術中所見だけでは確定できず、最終的にはによる。代表的な評価法がWeiss scoreで、高高頻度(>5/50 HPF)、、明細胞≤25%、、壊死、という9項目のうち3項目以上を満たせば悪性(ACC)と判定する。

増殖能の指標:Ki-67指数

(増殖細胞の割合)は、診断の補助であると同時に、)の適応判断に用いる最重要のでもある。Ki-67が高いほど再発リスクが高く、後述する補助の適応基準(Ki-67 >10%)に直結する。

病期分類:ENSAT病期分類

をもとにしたENSAT(European Network for the Study of Adrenal Tumors)が国際的に用いられる。

病期 定義
I 腫瘍径 ≤5 cm、副腎に限局
II 腫瘍径 >5 cm、副腎に限局
III 周囲組織・臓器への浸潤、または所属リンパ節転移(腫瘍径を問わない)
IV 遠隔転移あり

💡 insight:ENSAT病期は「サイズ(I/II)→局所浸潤・リンパ節転移(III)→遠隔転移(IV)」という進行の時間軸をそのまま反映している。IとIIの境界は5 cmという単純なサイズだが、IIIになった瞬間に予後は大きく悪化する。I〜IIおよびIIIの大半は根治的切除の適応となる。

臨床像

  • 機能性腫瘍では、様の、女性の・男性化()、まれに様の高血圧・などが急速に進行する形で現れる。
  • 腫瘍は、腫瘤自体による腹部・痛、圧迫症状、体重減少などの非特異的症状で気づかれることが多く、すでに大きくなってから(あるいはとして)発見される。
  • 局所進行例では下大静脈へのを来すことがある。

治療

完全外科的切除(R0切除)が唯一の根治的治療

ENSATI〜II、および多くのIIIは、根治的切除(陰性)の適応となる。は腫瘍被膜を破らないに準じた丁寧な手技で行い、周囲への浸潤やリンパ節転移が疑われれば周囲組織・リンパ節の合併切除を行う。手術は年間手術症例数の多い施設・に集約することが推奨されている。

術後補助療法:ミトタン

は副腎皮質細胞に選択的にを示す薬剤で、ACCの・進行例の全身治療の中心的な薬剤である。

補助の適応基準(以下のいずれかを満たす高リスク例):

  • ENSATIII
  • 陽性(R1)または評価不能(RX)
  • >10%

上記に該当しない低〜例(I〜II・・Ki-67 ≤10%)では、に対する明確な効果が示されておらず、補助は推奨されない。

⭐ 補助を開始する場合は最低2年間の投与を継続する(長くても5年程度まで)。血中濃度をモニタリングしながら(薬剤自体が副腎皮質を破壊するため)に注意し、必要ならグルココルチコイド補充を行う。の薬剤性原因としてが挙げられるのはこのためである。

転移例・進行例:全身化学療法

遠隔転移やな進行例には、+シスプラチン+併用)が標準的な一次化学療法として用いられる。・生存期間の改善は限定的であり、などの新規治療は段階にとどまる。

姑息的減量手術

・転移性のACCであっても、増殖が比較的緩徐なホルモン産生性腫瘍では、を減らす症状の緩和に有効なことがある(外科学 B/01)。

褐色細胞腫との違い

同じ副としての鑑別に挙がるが、・分泌ホルモン・臨床像はまったく異なる。

項目
副腎皮質 副腎髄質
分泌ホルモン コルチゾール・アンドロゲン・アルドステロン等のも多い) カテコールアミン(・エピネフリン)
代表的な臨床像 Cushing様症状、・男性化、非特異的腫瘤症状 発作性頭痛・頻脈・発汗の
術前の最重要注意点 ホルモン評価に基づく手術適応判断 術前による(なければ

まとめ

  • の多くはとして発見される。サイズ(4 cm、とくに6 cm以上)・値(低脂肪含有=高HU値)・パターンで悪性度を評価する。
  • を見たら必ずホルモン評価を行う。自律的コルチゾール分泌・アンドロゲン・アルドステロンの混合分泌パターンは良性腺腫より癌を示唆する。
  • 病理学的にはWeiss score(3項目以上で悪性)、の指標)、(I〜IV)で悪性度・進行度を評価する。
  • 完全外科的切除(R0)が唯一の
  • 補助III、R1/RX切除、Ki-67 >10%のいずれかを満たす高リスク例に推奨され、最低2年間投与する。
  • 転移・例にはEDP-M化学療法、症状緩和目的のが用いられる。
  • 同じ副でも、皮質由来・過剰のと、髄質由来・カテコールアミン過剰のは病態・臨床像が根本的に異なる。