スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

TNM分類

TNM classification

別名
TNM
臓器系
腫瘍
科目
PathologySurgery
トピック
病理学 B-20:癌のグレード分類と病期分類(Grading/Staging)外科学 A-07:外科的腫瘍学 I:診断の基本原則
適用疾患
メルケル細胞癌悪性中皮腫悪性末梢神経鞘腫瘍胃癌陰茎癌横紋筋肉腫滑膜肉腫胸腺腫甲状腺癌甲状腺髄様癌上咽頭癌食道癌腎細胞癌精巣腫瘍前立腺癌唾液腺腫瘍大腸癌頭頸部癌軟部肉腫乳癌肺癌皮膚癌皮膚有棘細胞癌副腎皮質癌胞巣状軟部肉腫肛門管癌膀胱癌膵癌

🧠 全体像:分類はの解剖学的な広がりを、T()・N(所属リンパ節)・M(遠隔転移)という3つの独立した軸で記述する共通言語である。(、G1〜G4)とは別物で、グレードは「腫瘍がどれだけ悪性らしい顔つきをしているか」、は「どこまで広がっているか」を表す——両者はしばしば併記されるが、答えている問いが違う。患者の全身状態を評価するECOG PSともは評価軸が異なり、が決めるのは病期、PSが決めるのは治療に耐えられるかである。本ノートは(American Joint Committee on Cancer)/(Union for International Cancer Control)が共同で定める枠組みのを扱い、臓器別の具体的なT/N/M区分(例:肺癌のT1a/T1b、大腸癌のT4a/T4b)は各疾患ノートに譲る。

目的と適用場面

内容
目的 の(病期)を標準化して記述する
対象 ほぼすべての(一部の腫瘍は対象外、後述)
使う場面 診断確定後の決定、予後推定、の症例選択、治療成績の施設間比較
評価しないもの (グレード)、患者の全身状態・臓器、

構成要素と配点

は点数を合計するスコアではなく、3因子をそれぞれ独立にカテゴリー分類し、その組み合わせでを決める。各因子の一般的な意味は次のとおりで、実際の数値区分(T1〜T4のなど)は臓器ごとに異なる。

因子 意味 一般的なカテゴリー
T(Tumor) の大きさ・局所浸潤の深さ TX(評価不能)、T0(の証拠なし)、()、T1〜T4(大きさ・浸潤が進むほど数字が増える)
N(Node) 所属リンパ節への転移の広がり NX(評価不能)、N0(転移なし)、N1〜N3(転移個数・部位が広がるほど数字が増える)
M(Metastasis) 遠隔転移の有無 MX(評価不能、現行版では省略する臓器が多い)、M0(遠隔転移なし)、M1(遠隔転移あり)

💡 数字が大きいほど進行している、という向きだけは全臓器で共通している。「T2が何cmか」「N1が何個か」は臓器ごとに定義が異なるため、本ノートでは扱わない。

病期分類の基本ロジック

T・N・Mの組み合わせを、臨床的に意味のある(Stage 0〜IV)へ集約する。多くの臓器でおおむね次の論理に従う。

flowchart TD
    A["Tis N0 M0"] --> S0["Stage 0(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carcinoma in situ, CIS'>上皮内癌</span>)"]
    B["限局した早期のT、N0、M0"] --> S1["Stage I"]
    C["Tがより進行、またはN0のまま増大"] --> S2["Stage II"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='regional lymph node metastasis'>所属リンパ節転移</span>あり(N1〜N3)"] --> S3["Stage III"]
    E["M1(遠隔転移)"] --> S4["多くの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carcinoma'>癌腫</span>でStage IV:TとNを問わない<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiated thyroid cancer (DTC)'>分化型甲状腺癌</span>の55歳未満など例外あり)"]

⭐ 多くのでは、M1が確定した時点でTとNの値にかかわらず病期はIVへ引き上がる。 遠隔転移の有無が予後を最も強く規定するためである。

⚠️ 「M1なら必ずIV期」ではない。 第8版のでは年齢が病期の定義に入り、55歳未満は遠隔転移があってもStage IIに分類される1。第9版の解説も、を年齢が病期の定義に含まれる「まれな例外」として挙げている2。

Stage I〜IIIの具体的なT/N境界は臓器ごとに大きく異なり、同じ「Stage II」でもが違えば予後は一致しない。

cTNM・pTNM・ypTNMの違い

同じ患者でも、評価するタイミングによっての接頭辞が変わる。

表記 評価のタイミング 性質
() 治療開始前 画像・内視鏡・生検などで得られるに基づく推定
() 手術後 の病理検索に基づく確定情報で、より一般に正確
(術後) (化学療法・放射線療法)後の手術後 による腫瘍縮小・消失を反映するため、未治療のと同じStage表記でも予後の意味が異なる

⚠️ を受けた症例をと知らずにのデータと比較すると、治療効果を過大・過小評価しうる。

R分類(切除後の遺残腫瘍)

手術で腫瘍を切除した後は、遺残の有無を別軸で記録する。本体の一部ではないが、術後の・予後説明でとセットで扱われることが多い。

分類 意味
R0 顕微鏡的にも遺残なし(完全切除)
R1 あり(に癌が及ぶ)
R2 あり

AJCC/UICCと改訂

分類は(米国)と(国際)が協働して改訂しており、はその改訂をとのと病期が一致するように行っている2。ただし2団体で版の出し方が違う。 は2025年7月に分類第9版を1冊として刊行し、2026年1月1日からの適用を推奨している3。一方は部位ごとに「Version 9」を順次公開・施行しており、第8版(2017年発行・2018年施行)は未改訂の部位では依然として現行版で、発行元も逐語で「第8版のすべての部位は、第9版に置き換わるまで現行である」と述べている。でVersion 9へ移行済みの部位は、・関連(2026年1月1日発効)、肺癌・瘍・びまん性胸膜・(2025年)、6部位(虫垂・結腸直腸・十二指腸およびVater・空腸回腸・膵・胃)と(2024年)、虫垂癌・肛門癌・脳(2023年)、(2021年)である。改訂された部位は公表の翌年1月1日から施行される4。改訂ごとにN分類の細分化やStage群の再編が行われることがあり、例えば肺癌の第9版ではN2がN2a/N2bへ、M1cがM1c1/M1c2へ細分化されている(詳細は肺癌ノート)5。「第◯版」とその施行年を確認せずに病期を解釈すると、旧版と現行版でStage群の境界がずれていることがある。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ を使わない、または単独で使えない場面がある。

状況 理由
血液腫瘍(白血病・リンパ腫・) 全身性疾患であり、解剖学的な・所属リンパ節という概念になじまない。リンパ腫はなど別体系を用いる
など一部の腫瘍 転移がまれで、部位・大きさ・境界・組織型からの局所再発・切除困難リスクを層別化する体系を優先することがある
頭蓋外への転移が実質的にないため、・ grade・切除範囲・分子所見による評価が中心になる
の判断 はの記述であり、主要血管への浸潤範囲や患者の全身状態を統合したの判断はだけでは決まらない

⚠️ は患者が治療に耐えられるかを評価しない。全身状態の評価にはECOG PSなど別のツールを併用する。

まとめ

  • はT()・N(所属リンパ節)・M(遠隔転移)という3つの独立した軸でを記述する共通言語で、分類(G1〜G4)とは別物。
  • はの組み合わせで決まり、多くのではM1が確定すると病期はIVへ引き上がる(ただし第8版のでは55歳未満のM1はStage II)。
  • 評価タイミングにより(術前)・(術後病理)・(後)を使い分ける。
  • 手術後の遺残は本体とは別に、R分類(R0〜R2)で記録する。
  • /は協働して改訂するが、は第9版(2025年刊行、2026年1月から適用推奨)を一括で出し、は部位ごとにVersion 9へ順次移行するため、では同時期でも臓器によって現行版(第8版のままかVersion 9へ移行済みか)が異なりうる。
  • 血液腫瘍、一部の、などはを用いない、または他の体系を優先する。
  • 患者の全身状態(治療に耐えられるか)はではなくなど別軸で評価する。

出典

  1. 1.Updated American Joint Committee on Cancer/Tumor-Node-Metastasis Staging System for Differentiated and Anaplastic Thyroid Cancer (Eighth Edition): What Changed and Why?(Thyroid・2017)全文(PMC5467103)で、AJCC第8版の分化型甲状腺癌では55歳未満の遠隔転移例(M1)がStage IIに分類されること(第7版でStage IVだった45〜54歳のM1例はStage IIへ移り、その10年疾患特異的生存率は68%)を確認した。閲覧 2026-09-23
  2. 2.The 9th Edition of the UICC TNM Classification of Malignant Tumours: Updates and Rationale for Change(Union for International Cancer Control (UICC)・2026)全文(PMC13432304、Int J Cancer 2026;159:1588–1601)で、UICC TNM分類第9版が刊行済みで(本文中の書誌は Wiley, 2025)、第8版から第9版への変更点を要約した総説であること、改訂はAJCCと協働しUICCとAJCCのTNMと病期が一致するよう行われていること、第9版で改訂されなかった部位は今後AJCCとともに見直す予定であることを確認した。本文は分化型甲状腺癌を、年齢が病期の定義に含まれる「まれな例外」として挙げている。閲覧 2026-09-23
  3. 3.9th Edition of the UICC TNM Classification of Malignant Tumours now available!(Union for International Cancer Control (UICC)・2025)UICCが2025年7月にTNM分類第9版を刊行したと告知し、第9版を2026年1月1日から適用するよう推奨していることを確認した。閲覧 2026-09-23
  4. 4.AJCC Version 9 Cancer Staging System(American College of Surgeons(AJCC)・2026)掲載ページを取得して確認した。逐語で「All disease sites in the 8th Edition Cancer Staging Manual remain current until replaced with Version 9.」「Updated Version 9 disease sites go into effect on January 1 following their release.」とある。同ページが年別に掲げる Version 9 プロトコルの一覧は、2026年が Salivary Glands(唾液腺)と Oropharynx (HPV-Associated)(HPV関連中咽頭)、2025年が Lung(肺)・Thymus(胸腺)・Diffuse Pleural Mesothelioma(びまん性胸膜中皮腫)・Nasopharynx(上咽頭)、2024年が NET Appendix・NET Colon and Rectum・NET Duodenum and Ampulla of Vater・NET Jejunum and Ileum・NET Pancreas・NET Stomach の神経内分泌腫瘍6部位と Vulva(外陰)、2023年が Appendix(虫垂)・Anus(肛門)・Brain & Spinal Cord(脳脊髄)、2021年が Cervix Uteri(子宮頸部)である。ここに挙がっていない部位(乳房、食道および食道胃接合部、皮膚黒色腫を含む)は第8版が現行版である。閲覧 2026-09-21
  5. 5.Breaking: The New 9th Version TNM Classification for Lung Cancer is Now in Use(IASLC(Thoracic Research and Practice誌)・2025)肺癌TNM第9版(2025年1月1日発効)でT分類に大きな変更はなく、N2がN2a/N2bへ、M1cがM1c1/M1c2へ細分化されたこと閲覧 2026-08-02