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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

横紋筋肉腫

Rhabdomyosarcoma

別名
RMS
臓器系
腫瘍運動器
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-05:小児の悪性骨・軟部腫瘍
上位概念
軟部肉腫
鑑別疾患
悪性リンパ腫滑膜肉腫Ewing肉腫神経芽腫・ウィルムス腫瘍線維形成性小円形細胞腫
治療薬
ビンクリスチンダクチノマイシンシクロホスファミドイホスファミドイリノテカンドキソルビシンビノレルビン
症状
圧痛血尿骨痛腫脹出血脳神経麻痺頻尿腹痛閉塞性黄疸嚥下障害疼痛
画像所見
水腎症
スコア
TNM分類
組織像
横紋筋肉腫(脳への進展例)横紋筋肉腫(脳病変:直接進展か転移かの鑑別編)
原因となる疾患
神経線維腫症1型
適応薬
イホスファミドビノレルビンビンクリスチン

🧠 全体像は、横紋筋への分化を示す未熟から生じる、小児で最も代表的な軟部肉腫である。横紋筋のない眼窩・胆道・膀胱などにも発生し、部位ごとに「」「鼻閉・脳神経症状」「血尿・」「」と入口が変わる。診断の幹は計画的生検+マーカー+PAX3/7::FOXO1融合の検索、治療の幹は全例への+機能を守る局所制御である。無計画な腫瘤切除は、その後の根治切除と放射線を不必要に広げる。

病態

は横紋筋そのものではなく、骨格筋系へ分化しうる未熟な前駆細胞から生じる。したがって、四肢の筋肉だけでなく眼窩、頭頸部、泌尿生殖器、胆道など、骨格筋に乏しい部位にも発生する。小児軟部肉腫の中では最多で、乳幼児から思春期までみられる。

病理学的にはの一つで、横紋を確認できない未分化例でも、、MyoD1などのマーカーで分化を証明する。現在は形態だけでなく分子異常を組み合わせて分類する。

病型 好発・形態 代表的分子異常 臨床的意味
乳幼児、頭頸部・泌尿生殖器に多い。型やブドウ状型を含む 11p15の性消失、RAS経路異常など。通常はFOXO1融合陰性 融合陰性群の中心で、同じ条件なら融合陽性群より予後良好
年長児・思春期、四肢・体幹に多い。に沿って胞に配列 PAX3::FOXO1またはPAX7::FOXO1 融合陽性は独立した不良因子で、治療強度を上げる
乳児の傍精巣・頭頸部など。または豊富な硬化性間質 乳児のVGLL2関連融合は比較的良好、MYOD1変異は侵襲的 同じ形態名でも分子型で生物学が大きく異なる
主に成人の四肢 複雑なゲノム異常 小児では極めてまれで、成人型軟部肉腫として扱う

形態の約70〜80%にPAX3/7::FOXO1融合を認める。融合陰性の「」は分子像と臨床経過がに近いため、形態名より融合状態を優先してリスクを考える

flowchart TD
    A["未熟<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mesenchymal'>間葉系</span>前駆細胞"] --> B["骨格筋系への分化プログラムが障害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhabdomyosarcoma'>横紋筋肉腫</span>"]
    C --> D["FOXO1融合陰性"]
    C --> E["PAX3/7::FOXO1融合陽性"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='botryoides'>胎児型</span>を中心とする<br>RAS経路・11p15異常など"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar type'>胞巣型</span>形態が典型<br>転移・再発リスクが高い"]
    F --> H["部位・大きさ・年齢・切除後遺残・リンパ節で層別化"]
    G --> H
    H --> I["化学療法の強度と局所制御を個別化"]

ほとんどは例だが、非常に若い発症、家族内の多発がん、びまん性、特徴的な奇形を伴う場合は、TP53をもつDICER1症候群、HRAS関連などの腫瘍素因を考える。とくに子宮頸部のではDICER1の評価が重要になる。

臨床像

共通する所見は、短期間に増大する無痛性または圧痛を伴うである。一方、狭い解剖学的空間では小さくても閉塞・圧迫症状が先行する。

原発部位 典型的な臨床像 見逃してはいけない進展
眼窩 急速な片側性、眼瞼腫脹、 視神経・端への進展
頭頸部 持続する鼻閉、、中耳炎様症状、、嚥下障害 頭蓋底、頭蓋内・髄膜進展
頭頸部 頸部・口腔・頬部の腫瘤 頸部リンパ節転移
膀胱・前立腺 血尿、頻尿、、尿閉、 尿路閉塞、水腎症
膣・子宮頸部 血性、性器出血、膣口から突出する 骨盤内進展。幼児の膣原発と若年女性の子宮頸部原発では分子背景が異なる
傍精巣 陰嚢・の無痛性腫瘤 腹膜後リンパ節転移、とくに10歳前後以降
四肢 深部で増大する硬い腫瘤、疼痛、運動制限 同側の腋窩・鼠径リンパ節転移
胆道 、淡色便、腹痛 胆管炎、部進展

転移先は肺、骨、骨髄、遠隔リンパ節が中心である。では貧血・血小板減少・を呈し、白血病に似たびまん性となることもある。

💡 は肉腫の中では転移が比較的多い。とくに四肢原発と傍精巣原発では、画像上正常にみえる所属リンパ節にも微小転移が隠れうるため、後述の外科的リンパ節評価が治療強度を変える。

診断

画像と生検

局所評価の第一選択は、と所属リンパ節を含む造影MRIである。全身病期評価として胸部CTで肺転移を検索し、またはPET/MRI、利用できなければ全身MRIでリンパ節・骨などの遠隔病変を評価する。はPETが利用できる場合の定型検査ではない。

⚠️ 生検前に小児肉腫チームへ紹介する。生検は、将来の根治切除で瘢痕と生検路をに切除できる経路に置く。画像誘導下が基本で、断、FOXO1を含む分子検査に十分な検体を確保する。機能・整容を損なわずできると、アプローチで完全切除できる傍を除き、診断前の全摘やは行わない。

病理では形態に加えて、MyoD1を確認し、FISH、RT-PCRまたはPAX3/7::FOXO1融合を調べる。鑑別にはEwing肉腫小円形細胞腫などのが含まれる。

flowchart TD
    A["増大する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='soft-tissue mass'>軟部腫瘤</span>・部位特異的な閉塞症状"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>と所属リンパ節を含む造影MRI"]
    B --> C["胸部CT+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FDG PET/CT'>FDG-PET/CT</span>・PET/MRIで全身病期評価"]
    C --> D["小児肉腫チームが生検路を計画"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='core needle biopsy'>コア針生検</span>"]
    E --> F["形態+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmin'>デスミン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myogenin'>ミオゲニン</span>・MyoD1"]
    F --> G["PAX3/7::FOXO1などの分子検査"]
    G --> H["TNM病期+IRS臨床群+分子・臨床因子で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='risk stratification'>リスク層別化</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic chemotherapy'>全身化学療法</span>"]
    I --> J["機能温存手術・放射線療法による局所制御"]

リンパ節・骨髄評価

  • 画像または診察で疑わしいリンパ節は、組織学的に確認する。
  • 四肢原発では画像上陰性でも所属リンパ節を外科的に評価し、可能ならを行う。
  • 傍精巣原発では全例で腹膜後リンパ節をFDG-PET-MRI/CTで評価し、10歳以上では画像上陰性でも同側腹膜後リンパ節の外科的を行う12 で年齢の閾値は一致しており、いずれも10歳以上である。サンプリングを行う場合は同側後腹膜の複数領域から7〜12個を採取する2
  • はPETだけでは除外できないため、両側の・生検で評価する。とくにリンパ節転移、遠隔転移、FOXO1融合陽性では省略しない。
  • 原発では、禁忌がなければ髄液細胞診を行い、髄膜播種を評価する。

病期とリスク

治療前TNM病期と、初回手術後の遺残を表すIRS臨床群は別の軸である。数字が似ていても混同しない。

COG/NCI治療前病期 定義
1期 予後良好部位、M0。腫瘍径・所属リンパ節は問わない
2期 予後不良部位、5 cm以下、N0/NX、M0
3期 予後不良部位で、5 cm以下かつN1、または5 cm超、M0
4期 原発部位・腫瘍径・リンパ節にかかわらずM1

このでの予後良好部位は、眼窩、を除く頭頸部、膀胱・前立腺以外の泌尿生殖器である。欧州のリスク群は部位の扱いを含めて定義が異なるため、COG/NCI病期をそのまま欧州リスク群へ読み替えず、所属プロトコルの層別化を用いる。

IRS臨床群 手術後の状態
I群 、肉眼的にも顕微鏡的にも遺残なし
II群 、または切除された所属リンパ節転移あり
III群 あり、または生検のみ
IV群 診断時に遠隔転移あり

現代のでは、転移の有無、FOXO1融合、原発部位、腫瘍径、年齢、リンパ節、IRS臨床群を統合する。代表的な不良因子は遠隔転移、融合陽性、・四肢などの不利な部位、腫瘍径5 cm超、10歳以上、所属リンパ節転移、である。

⭐ 局所病変の5年は70%を超える一方、診断時遠隔転移例は現在も予後不良である。単一の「か」だけではなく、分子・部位・病期・切除後遺残を合わせて説明する。

治療

基本戦略

は、肉眼的完全切除後でもが必要である。化学療法単独では局所再発を防ぎきれず、手術または放射線療法、しばしば両者を組み合わせて局所制御を行う。

構成要素 原則
化学療法 北米では(VAC)が中心で、一部のではを含むVAC/VIを用いる。VAC/VIはVACよりイベントフリー率を改善しなかったが、曝露を抑える選択肢としてプロトコルに組み込まれている3。欧州では低リスクのVA、高リスクのIVA()、・転移例のIVADo(IVA+)など、リスク別に強度を変える
手術 初回から機能・整容を損なわずできる場合だけ完全切除する。それ以外は生検後にを行い、縮小後の遅延切除を検討する
放射線療法 顕微鏡的・、融合陽性、所属リンパ節転移、病変などで用いる。線量・時期・は臨床群、部位、年齢、反応で変える

低リスクの融合陰性・IRS I群では、完全切除後の化学療法だけで放射線療法を省略できることが多い。一方、融合陽性、、リンパ節転移では局所照射の必要性が高い。照射対象となった所属リンパ節は、化学療法で消失または手術で切除できても、診断時の病変範囲を基準に照射する。

欧州では、高リスク以上で標準治療後に完全寛解へ到達した患者に、+低用量経口による維持療法を加えることが標準となっている4。転移例では最適な強度がなお確立しておらず、への参加を積極的に検討する。

⚠️ 「完全切除」を目指して眼球、膀胱、前立腺、顔面構造や主要神経血管を犠牲にするのが初期治療の原則ではない。生検→化学療法→手術・放射線による局所制御という順序で、治癒率と成長後の機能を両立させる。

部位別の局所制御

部位 局所治療の考え方
眼窩 生検と化学療法に放射線療法を組み合わせ、は通常避ける
頭頸部 初回完全切除は原則行わず、化学療法と放射線療法が中心。頭蓋内進展を含め照射計画を立てる
膀胱・前立腺 化学療法後の縮小を利用し、膀胱・尿道・性機能を保つ手術やを検討する
膣・子宮 化学療法への反応が良いことが多く、を優先。遺残・再発では局所手術や放射線療法を追加する
傍精巣 から行い、陰嚢切開は避ける。年齢に応じて腹膜後リンパ節を外科的に評価する
四肢 生検時から機能を守る切除経路を設計し、所属リンパ節を外科的にする

遠隔転移例にはを行い、可能な範囲で、リンパ節、遠隔病変にも根治的局所治療を加える。ただし転移例で診断時から広範な切除を行う意義は乏しく、まず全身治療への反応をみて機能温存可能な局所治療を選ぶ。

有害事象と長期フォロー

治療後は局所再発と肺・骨・を診察と画像で追う。再発の多くは治療後早期に起こるが、成長期の治療では治癒後の合併症も長く残る。

  • :末梢神経障害、便秘・、顎痛。
  • :骨髄抑制、肝障害、。放射線療法との投与時期を治療プロトコルに沿って調整する。
  • :骨髄抑制、、不妊。ではと脳症にも注意する。
  • 性心筋障害。使用した例では長期の心機能評価が必要である。
  • 放射線療法:、左右非対称、、臓器機能障害、二次がん。可能なら正常組織線量を減らすを選ぶ。

治療開始前から年齢に応じた妊孕性温存を相談し、治療後は、排尿・性機能、聴視覚、内分泌、心腎機能、心理社会面を原発部位と治療曝露に合わせて評価する。

まとめ

  • は小児で代表的な軟部肉腫で、眼窩、頭頸部、泌尿生殖器、四肢など発生部位により症状が変わる。
  • 病理では・MyoD1で分化を示し、PAX3/7::FOXO1融合の有無を必ずへ組み込む。
  • 生検は将来の根治切除を設計する小児肉腫チームが行う。や、機能を犠牲にした初回の広範切除は避ける。
  • 局所MRI、胸部CT、またはPET/MRIで病期評価し、四肢原発と10歳前後以降の傍精巣原発では、画像陰性でも所属リンパ節を外科的に評価する。
  • 治療は全例へのと、手術・放射線療法による局所制御を組み合わせる。切除できたかだけでなく、融合状態、転移、部位、径、年齢、リンパ節を統合して強度を決める。
  • 局所病変は高率に治癒可能だが、遠隔転移と融合陽性は大きな不良因子である。治癒後も成長、臓器機能、妊孕性、二次がんまで長期に追跡する。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines for Patients with Rhabdomyosarcoma (European Standard Clinical Practice, version 1.6)(EpSSG / CWS / SIOPE・2022)傍精巣横紋筋肉腫は全例で後腹膜リンパ節をFDG-PET-MRI/CTで評価し、10歳以上では画像陰性でも外科的病期診断を行う。サンプリングは7〜12個閲覧 2026-08-03
  2. 2.Impact of Local Control and Surgical Lymph Node Evaluation in Localized Paratesticular Rhabdomyosarcoma: A Report from the Children's Oncology Group Soft Tissue Sarcoma Committee(Children's Oncology Group・2020)傍精巣横紋筋肉腫では10歳以上で画像陰性でも同側腹膜後リンパ節の外科的病期診断(RPLND)を行う閲覧 2026-08-03
  3. 3.Maintenance Chemotherapy in Patients With High-Risk Rhabdomyosarcoma: Long-Term Survival Analysis of the European Paediatric Soft Tissue Sarcoma Study Group RMS 2005 Trial(European Paediatric Soft Tissue Sarcoma Study Group (EpSSG)・2025)高リスク横紋筋肉腫で標準治療後に完全寛解へ到達した患者へのビノレルビン+低用量経口シクロホスファミド維持療法が全生存を改善し標準治療となった閲覧 2026-08-03
  4. 4.Addition of Vincristine and Irinotecan to Vincristine, Dactinomycin, and Cyclophosphamide Does Not Improve Outcome for Intermediate-Risk Rhabdomyosarcoma: A Report From the Children's Oncology Group(Children's Oncology Group・2018)中間リスクでVAC/VI(イリノテカン併用)はVAC単独よりイベントフリー生存・全生存を改善しなかったが血液毒性・シクロホスファミド累積量を減らす閲覧 2026-08-03